GHS分類結果

名称:ジエチレングルコールモノブチルエーテル【2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール】
CAS番号:112-34-5

結果:
物質ID: H27-B-008/C-029B_P
分類実施者: 厚生労働省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分4 - 警告 H227: 可燃性液体 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点78℃ (closed cup) (HSDB (Access on June 2015)) に基づいて区分4とした。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が204℃ (HSDB (Access on June 2015)) であり、常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットのLD50値として、5,660 mg/kg (ACGIH (7th, 2013)、DFGOT vol. 7 (1996))、5,080 mg/kg (雌)、6,530 mg/kg (雄)、6,560 mg/kg (PATTY (6th, 2012))、9,600 mg/kg (給餌)、7,300 mg/kg (絶食) (ACGIH (7th, 2013))、9,623 mg/kg (給餌)、7,292 mg/kg (絶食) (PATTY (6th, 2012)、EU-RAR (1999)、ECETOC TR 64 (1995)) との報告に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ラットのLD50値として、> 2,000 mg/kg (DFGOT vol. 7 (1996))、ウサギのLD50値として、2,764 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、EU-RAR (1999)、ECETOC TR 64 (1995))、3,000-4,000 mg/kg (DFGOT vol. 7 (1996))、4,000 mg/kg (PATTY (6th, 2012)) との報告に基づき、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。ラットに飽和蒸気 (28.8 ppm) を7時間ばく露した結果 (4時間換算値:38.1 ppm)、死亡例なしとの報告 (EU-RAR (1999)、ECETOC TR 64 (1995)) があるが、このデータのみでは分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - 本物質 (未希釈) をウサギ又はモルモットに適用した結果、軽度の刺激性がみられたとの報告 (PATTY (6th, 2012)) や、ウサギの皮膚に長期間または反復適用した結果軽度の刺激性がみられたとの記載 (ECETOC TR64 (2005)、BUA 204 (1997)) がある。なお、EU-RAR (1999) は、ウサギ又はラットを用いた経皮への反復投与 (2000mg/kg) で影響がみられなかったことから皮膚刺激性の区分はつかないと判断している (EU-RAR (1999))。詳細は不明であるがヒトに対する原液のパッチテストの結果、何人かに紅斑がみられたとの報告がある (DFGOT vol. 7 (1996))。以上の結果から、区分外 (国連分類基準の区分3) とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ウサギの眼に本物質0.1 mLを適用した結果、中等度の眼刺激性が認められたが14日以内に回復した (ECETOC TR 64 (1995)、ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012)) との報告がある。なお、本物質は、EU CLP分類において「Eye. Irrit. 2 H319」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on June 2015))。中等度の刺激性との記載、及び回復性の記載からガイダンスに従い区分2Aとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。 
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、モルモットを用いたMaximization testにおいて感作性はみられなかった (ECETOC TR. 64 (1995)、BUA 204 (1997)) との報告や、感作性がないとの試験報告 (EU-RAR (1999)) があるが、結果の詳細等不明であるため分類に用いるには不十分なデータと判断した。 情報を精査し区分を変更した。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - ガイダンスの改訂により「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。すなわち、in vivoでは、マウス骨髄細胞の小核試験で陰性 (DFGOT vol. 7 (1996)、EU-RAR (1999)、ACGIH (7th, 2013)、PATTY (6th, 2012))、in vitroでは、マウスリンフォーマ試験で弱陽性の結果はあるが、それ以外の試験、すなわち、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験、遺伝子突然変異試験、不定期DNA合成試験で陰性である (ACGIH (7th, 2013)、DFGOT vol. 7 (1996)、EU-RAR (1999)、PATTY (6th, 2012))。
6 発がん性 分類できない - - - - 国際機関による分類もされておらず、データ不足のため分類できない。
7 生殖毒性 分類できない - - - - ヒトの生殖影響に関する情報はない。実験動物では、本物質をラットの雌雄いずれかに交配前から強制経口投与し、非ばく露のペアーと交配させた1世代試験において、1,000 mg/kg/dayまでの用量で、雌雄親動物の繁殖能への有害影響はみられなかったが、1,000 mg/kg/dayのF1出生児に哺育期後期の体重増加抑制がみられた (EU-RAR (1999))。また、ラットに交配前13週間、及び雌は妊娠20日まで、2,000 mg/kg/dayを経皮適用した1世代試験でも雌雄ともに繁殖能への有害影響は認められなかった (EU-RAR (1999)、ACGIH (7th, 2013))。 一方、発生毒性影響としては、妊娠雌ラットの器官形成期 (妊娠6-15日) に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物の25%が死亡する高用量 (2,050 mg/kg/day) まで投与しても、新生児の出生数、生後3日までの生存率、体重推移に影響はみられなかった (催奇形性の有無は評価対象外) との記述、並びに妊娠雌ラットの全妊娠期間を通して混餌投与した催奇形性試験では、母動物に体重増加抑制がみられる用量でも、出生前後の発生影響はみられなかったとの記述がある (EU-RAR (1999)、ACGIH (7th, 2013))。また、妊娠ウサギの器官形成期 (妊娠8-19日) に閉塞経皮適用した催奇形性試験において、母動物に統計的に有意ではないが体重増加抑制の傾向がみられ、皮膚刺激性が観察される用量まで投与したが、胎児には奇形も含めて発生毒性はみられなかったとの記述がある (EU-RAR (1999)、ACGIH (7th, 2013))。 以上、実験動物では経口及び経皮の2経路で、親動物の繁殖能への有害影響、及び奇形を含む発生毒性影響は概ね生じないと考えられるが、経口経路のラット1世代試験では高用量群の出生児に哺育期間中の成長抑制を示唆する結果も得られており、「区分外」とするにはヒトの知見も含めてデータが不十分と判断された。よって、本項は「分類できない」とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3 (麻酔作用) 警告 H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトに関する情報はない。実験動物では、ウサギへの区分2相当の2,000 mg/kg経口投与で死亡が発生し、1,060 mg/kgで腹臥位、一過性の無緊張、脱力状態、呼吸促進、麻酔症状、腎臓傷害がみられた (DFGOT vol. 7 (1996))。また、「本物質は経口及び経皮経路で急性毒性は弱い。」との情報、「マウス、ラットの経口投与で、死亡前の毒性徴候は活動低下、努力呼吸、食欲低下、衰弱、振戦」であるが、その用量は区分2を超えること、「ウサギの経皮ばく露で、食欲低下、腎臓肥大、腎盂の褪色、胸腺における浮腫や出血性傷害」がみられたが、その用量は区分2を超える (以上、EU-RAR (1999))。 以上より、ウサギの経皮ばく露で腎臓への影響が考えられるが、区分2を超える用量範囲のため、腎臓を区分対象としなかった。その他の所見は、麻酔作用によるものであるため、区分3(麻酔作用) とした。 情報を確認し、旧分類の区分を見直した。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (呼吸器、肝臓) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器、肝臓) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトに関する情報はない。 実験動物では、ラットを用いた5週間吸入毒性試験において、117 mg/m3 (ガイダンス値換算:0.0325 mg/L) で肝臓の相対重量増加、肝細胞脂肪変性がみられている (EU-RAR (2000))。また、ラットを用いた2週間吸入毒性試験において、100 mg/m3 (ガイダンス値換算:0.011 mg/L) で血管周囲及び気管支周囲の顆粒球白血球の細胞浸潤、細気管支化、肺重量増加がみられている (EU-RAR (2000))。これらはいずれも区分1の範囲でみられた。なお、血液系 (赤血球) への影響として溶血がみられたが区分2の範囲を超える用量であった。 ラットを用いた6週間強制経口投与毒性試験において、溶血性貧血、肝臓重量増加、前胃の角化亢進・棘細胞増生がみられ (EU-RAR (2000)、PATTY (6th, 2012)、DFGOT vol. 7 (1996))、13週間飲水投与毒性試験において溶血性貧血、肝臓重量増加がみられた (PATTY (6th, 2012))。これらは区分2の範囲を超える用量であった。 ラットを用いた13週間経皮投与毒性試験において、全身影響はみられていない (EU-RAR (2000)、PATTY (6th, 2012))。 したがって、区分1 (呼吸器、肝臓) とした。 旧分類では吸入経路での毒性影響が明確でないことから分類できないとなっていた。しかし、得られた吸入経路の情報から分類が可能であった。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、HSDB (Access on June 2015) に収載された数値データより、動粘性率計算値は0.069 mm2/sec (20℃) (粘性率: 0.0649 mPa・s; 密度 (比重) : 0.9536) と算出される。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外 - - - - 藻類(セネデスムス)96時間EC50 > 100 mg/L、甲殻類(オオミジンコ)48時間EC50 > 100 mg/L、魚類(ブルーギル)96時間LC50 = 1300 mg/L(いずれもEU-RAR, 1999)であることから、区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 信頼性のある慢性毒性データが得られていない。難水溶性ではなく(水溶解度=1000000 mg/L、PHYSPROP Database 2009)、急性毒性が区分外であることから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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