GHS分類結果 (過年度実施分類結果の再分類)

名称:ノルマル‐ヘプタン
CAS番号:142-82-5

結果:
物質ID: 21B3055
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点(-4℃(Merck(14th, 2006)))が<23℃、初留点(98.4℃(Merck(14th, 2006)))が>35℃であり、さらにUNRTDGクラス・3IIに分類されている。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHS定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性又は自己反応性に関連する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が204℃(NFPA(12th, 1997))で70℃を超えている。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHS定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属又は半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素及び塩素原子を含まない有機化合物である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - マウスLD50 = 5000 mg/kg bw(IUCLID(2000))、およびマウスで致死量が1.5g/kg以上との報告(HSDB(2006))より区分外とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギLD50 = 3000 mg/kg(IUCLID(2000))より、JIS分類の基準による区分外(国連分類基準の区分5)とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分外 - - - - ラットLC50 = 25184ppm/4h(PATTY4th, 1994)よりJIS分類の基準の区分外(国連分類基準の区分5または区分外)とした。飽和蒸気濃度は60526ppmVである。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ヒト皮膚に1時間接触して刺激性と皮膚炎が認められたとの報告(DFGOT(vol.11, 1998))、皮膚へ直接ばく露すると疼痛、火傷、掻痒を生じ、回復にやや時間を要するとの記述(産衛学会勧告(1988))、さらにEU分類ではR38に区分されている(EU-Annex I(No689/2008))ことから区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
ウサギを用いた試験で軽度な刺激性(slightly irritating)との結果(IUCLID(2000))に基づき区分2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - in vivo試験の結果がなく、分類できない。なお、in vitro試験においては、エームズ試験およびラット肝細胞の染色体異常試験でいずれも陰性(IRIS(Access on Nov 2005), IUCLID(2000))である。
6 発がん性 区分外 - - - - EPAの発がん性評価でDに分類されている(IRIS(2005))ことから、区分外とした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データなし。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(麻酔作用、気道刺激性) 警告 H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用、気道刺激性) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
マウスに10000〜15000ppmを吸入ばく露により麻酔作用をもたらした(ACGIH(7th, 2001))と記述され、ヒト被験者にヘプタンをばく露した試験では1000ppmを6分間ばく露後、軽度のめまいに始まる用量依存的な中枢神経抑制を来たした(DFGOT vol.11(1998))との報告もあり区分3(麻酔作用)とした。また、マウスに吸入ばく露後、上気道に対する刺激が鼻腔粘膜にある三叉神経終末の受容体の興奮を起こし、呼吸数の低下となって現れたと述べられ(DFGOT vol.11(1998))、ヒトでも呼吸器への刺激や粘膜の刺激が報告されている(産衛学会勧告(1988)、PATTY(5th, 2001))ことに基づき区分3(気道刺激性)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - ラットに28日間吸入ばく露により、聴性脳幹反応の有意な低下があり(DFGOT vol.11(1998))、ラットに13週間経口投与により膀胱重量の変化など報告されている(HSDB(2006))が、いずれもガイダンス値範囲区分外に相当する用量での所見である。一方、ヒトでは職業ばく露により、多発性神経障害、運動性神経伝達速度の低下、四肢の感覚異常・麻痺、無力症筋、筋痙攣、眩暈などの有害影響が報告されているが、いずれも混合物ばく露の結果であり、その原因をn-ヘプタン自体に求めること、あるいは結論付けたりすることはできないと述べられている(ACGIH(7th, 2001)、DFGOT vol.11(1998))。したがって、実験動物およびヒトともに分類できる情報は得られていない。
10 吸引性呼吸器有害性 区分1 危険 H304: 飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそれ P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P331: 無理に吐かせないこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
炭化水素であって、動粘性率が20℃で0.61mm2/s(20℃での粘性率0.4169mPa・s(Ullmanns(E)(5th, 1995)A13)と密度0.68376g/cm3(Ullmanns(E)(5th, 1995)A13)から算出)であることから、40℃の動粘度が20.5mm2/s以下であるので区分1とした。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(ミシッドシュリンプ)での96時間LC50 = 0.1 mg/L(HSDB, 2006)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性区分1であり、生物蓄積性が高いと推定される(log Kow=4.66(PHYSPROP Database、2009))ことから、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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