GHS分類結果 (過年度実施分類結果の再分類)

名称:三塩化りん
CAS番号:7719-12-2

結果:
物質ID: 21B3009
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分外 - - - - 不燃性(ホンメル(1996))である。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団、あるいは自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 不燃性(ホンメル(1996))である。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 不燃性(ホンメル(1991))である。
12 水反応可燃性化学品 分類できない - - - - リンを含む化合物であるがデータがなく分類できない。 なお当該物質は水と激しく反応し、発熱とともに可燃性のPhosphineを生成し、発火爆発の可能性がある(NFPA(13th, 2006))、発火性のあるdiphoshaneの発生を伴う(Bretherick(7th, 2007))等の情報があるが、国連危険物輸送分類クラス4.3は付されていないため、発火性の危険範囲外と思われる。
13 酸化性液体 分類できない - - - - 塩素を含む化合物であるが、酸化性のデータがなく分類できない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 無機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分2 危険 H300: 飲み込むと生命に危険 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値 18 mg/kg、200 mg/kg、550 mg/kg(SIDS(access on April. 2009))のデータより、危険性が高い 18 mg/kg のデータに基づき、区分2とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - ウサギのLD50値 >1000 mg/kg、>250 mg/kg(SIDS(access on April. 2009))のデータがあるが、この情報のみではデータ不足で分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分2 危険 H330: 吸入すると生命に危険 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P284: 呼吸用保護具を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P320: 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLC50値 104ppm/4h(ACGIH(2001))に基づき、区分2とした。(本試験は飽和蒸気圧濃度の90%以下で実施されたと考えられ、気体の基準値で分類した。)
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1A 危険 H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギの試験で60秒間の適用で重度(highly)の腐食性(SIDS(2009))、別のウサギの試験で刺激性または腐食性(SIDS(2009))のデータから、区分1Aとした。なお、EU分類では R35で(C)に分類されている。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
ウサギの試験で、腐食性との結果があり(SIDS(2009))、また他の試験で、壊死を伴う不可逆的な視力の損傷を起こすとの結果により(SIDS(2009))、区分1とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - 当該物質製造に関わる労働者が、当該物質の吸入暴露後1-8週で、咽頭の刺激や喘息性気管支炎の症状を示したとの報告がある(ACGIH(2001))。またその他にもヒトに対して、吸入暴露により肺機能の低下や喘息性気管支炎を発症したとの報告が複数あるが(SIDS(2009))、何れも特異的な呼吸器過敏症を引き起こす証拠としては不十分であるためデータ不足により分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - ヒトの末梢リンパ球を用いた染色体異常試験(体細胞in vivo変異原性試験)及び腹腔内投与におけるマウスの骨髄細胞を用いた小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)で何れも陰性(SIDS(2009))の結果に基づき、区分外とした。なお、Ames試験(in vitro変異原性試験)でも陰性(SIDS(2009))であった。
6 発がん性 分類できない - - - - データなし。
7 生殖毒性 分類できない - - - - ラットの経口投与試験(器官形成期:妊娠5-16日)で仔に化骨遅延が見られたが、その他の異常は観察されなかった(SIDS(2009))との情報があるが、性機能及び生殖能に関する情報がなくデータ不足で分類できないとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器系) 危険 H370: 臓器の障害(呼吸器系) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
吸入暴露(1.8-27ppm)した23人の労働者に、眼や咽喉の炎症、咽頭粘膜の刺激、中等度の気管支炎が暴露後2-6時間以内に見られた(ACGIH(2001))。また充填作業時の流出事故で、17人に呼吸困難、吐き気、肺活量の減少が報告された(ACGIH(2001))。以上の報告により区分1(呼吸器系)した。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器系) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器系) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトの反復吸入暴露後1-8週間で, 咽頭刺激、咳発作、喘息性気管支炎の発症、少なくとも1年間暴露した患者の中に、肺気腫の発症例が時ー報告された(ACGIH(2001))。またラットの4週間の蒸気による吸入試験で、区分1のガイダンス値内である10ppm/6h(0.0561 mg/L/6h:90日換算値:0.019 mg/L/6h)で気道上皮の炎症と扁平化生が観察された(SIDS(access on April. 2009))。以上の報告により区分1(呼吸器系)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
藻類(Desmodesmus subspicatus)での72時間ErC50 = 33 mg/L(SIDS, 2006)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 水溶液が強酸となることが毒性の要因と考えられるが、環境水中では緩衝作用により毒性影響が緩和されるため、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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