GHS分類結果

名称:硫酸ビス(ヒドロキシルアンモニウム)
CAS番号:10039-54-0

結果:
物質ID: 20A2250
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 区分外 - - - - UNRTDG クラス8 III(2855)に分類されている。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - UNRTDG クラス8 III(2855)に分類されている。
8 自己反応性化学品 タイプG - - - - UNRTDG クラス8 III(2855)に分類されている。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 発火点が120℃(IUCLID(2000))で、70℃を越えている。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - UNRTDG クラス8 III(2855)に分類されている。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属又は半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 区分外 - - - - 「酸化性物質ではない(no oxidizing property)(IUCLID(2000))」とあり、区分外とした。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 無機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。(融点:>120℃(IUCLIS, 2000))

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値が >500、545、568-725、642 mg/kg bw(IUCLID(2000))であり、EUの分類ではXn; R21/22 であることから区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分4 警告 H312: 皮膚に接触すると有害 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
LD50値は、ラットで >200 mg/kgおよび >500 mg/kg、ウサギで 100-500 mg/kg、1500-2000 mg/kgおよび >400 mg/kg(以上全て IUCLID (2000))と報告されている。これらの中でガイドライン(OECD TG402、GLP)に準拠した試験データであるラットのLD50値 >500 mg/kgおよびウサギのLD50値 1500-2000 mg/kgに基づき、区分4とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギを用いた試験で80%水溶液の20時間適用で刺激性(重度〜軽微な紅斑がみられ8日後に回復)、40%水溶液の20時間適用で刺激性、25%水溶液の20時間適用で刺激性なし(IUCLID(2000))の結果からJIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分3)とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ウサギを用いた試験で、25%水溶液(被験物質6mg相当)の1時間適用で軽微な刺激性(紅班が24時間まで見られる)、40%水溶液の適用で軽微な刺激性(軽微な発赤、浮腫が見られ24〜48時間で回復))とされているが(IUCLID(2000))、50mgの24時間適用で重度の刺激性(軽微な紅班、重度の浮腫、角膜混濁がみられ8日間継続)とされ(IUCLID(2000))、更にEUの分類においてXi; R36/38であることから、区分2Aとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
モルモットを用いたマキシマイゼーション試験とパッチテストでいずれも陽性(IUCLID(2000))であり、ヒトの複数のパッチテストでも明確な陽性反応(IUCLID(2000))が観察されている。EUの分類がXi; R43であり、MAK/BATにShの記載があることから区分1とした。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウスを用いた腹腔内投与による優性致死試験(in vivo経世代変異原性試験)で陰性、マウスを用いた腹腔内投与による精原細胞を用いる細胞遺伝学的試験(生殖細胞in vivo変異原性試験)で陰性、マウスを用いた強制経口投与による小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)で陰性の結果(いずれもIUCLID(2000))に基づき区分外とした。なお、Ames試験は陰性(NTP DB(Access on Dec. 2008)(IUCLID(2000))であるがマウスリンフォーマアッセイは陽性である(IUCLID(2000))。
6 発がん性 分類できない - - - - マウスの雌C3H/HeN(provirus carrier)を用いた123週間の飲水による試験において肝細胞がん、肺腺腫、リンパ腫、卵巣腫瘍の発生は対照群と比較して有意ではなかったが、脾臓の血管腫瘍の増加が認められている(IUCLID(2000))。マウスの雌雄(C3H/HeJ(+)(Virus carrier))を用いた105週間の飲水による試験において雄のリンパ節の血管腫瘍とリンパ腫の増加が認められている(IUCLID(2000))。マウスの雌雄(AKR(m.), C3H(f.), Swiss(m.))を用いた生涯にわたる混餌による試験において腫瘍の発生の減少がC3Hにおいて認められているが、腫瘍発生の増加は認められていない(IUCLID(2000))。なお、血管腫瘍の増加の認められたマウスはprovirus carrierにおけるデータであり、他の動物種でのデータがない事から分類できないとした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - ラットの器官形成期に強制経口投与した発生毒性試験(OECD TG-GLP)では母体への影響として脾臓の重量増加と血液毒性(溶血性貧血)が観察されたが、仔に関しては催奇形性や先天性異常は認められていない(IUCLID(2000))。しかし、親の性機能、生殖能に関するデータがなく、分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(血液)、区分2(中枢神経系) 危険
警告
H370: 臓器の障害(血液)
H371: 臓器の障害のおそれ(中枢神経系)
P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P309+P311: 暴露したとき、又は気分が悪いとき:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経口投与試験において、ガイダンスの区分2に該当する370mg/kgの用量で軽度のチアノーゼ、無関心、緊張減退、麻痺が見られ、他のラットを用いた経口投与試験において、ガイダンスの区分1に該当する250mg/kgの用量でチアノーゼ、区分2に相当する2500mg/kgの用量でチアノーゼ、流涙、麻痺がみられた。また、ウサギを用いた経皮投与試験で用量ガイダンスの区分1に相当する 100mg/kg以上の用量でチアノーゼ、脾臓の腫脹がみられ、他のウサギを用いた経皮投与試験ではガイダンスの区分1に該当する500mg/kgの用量でチアノーゼ、低体温、赤血球数の減少、網状赤血球数の増加、脾臓の腫脹が認められている(IUCLID(2000))ことから区分1(血液)、区分2(中枢神経系)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2(造血系) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(造血系) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた4週間の経口投与試験(飲水)(用量:25、100、400、1600 mg/L(換算値2.25、9、36、144mg/kg))のガイダンスの区分1に相当する36mg/kg(90日換算12、48mg/kg)以上の用量において溶血性貧血と脾臓の腫脹が見られ、3ヶ月間の経口投与試験(飲水)(用量:10、50、250mg/L(換算値ca. 0.9、4、21 mg/kg))においてはガイダンスの区分1に該当する4、21 mg/kgの用量で溶血性貧血と脾臓の腫脹(IUCLID(2000))が認められている。また、ウサギを用いた3週間の経皮試験(用量:0.73、1.47、5.85、11.7 mg/kg)ではガイダンスの区分1に相当する1.47mg/kg(90日換算:0.37mmg/kg)の用量で貧血が観察(IUCLID(2000))されたため区分1相当であるが、リスト2のデータであるため区分2(造血系)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(ミジンコ)の48h-EC50=5.0mg/L(IUCLID 2000)であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急性毒性区分2であり、無機物であることから急速分解性はないと判断されるが、藻類での96h-EC0=5,000mg/L(IUCLID 2000)であることから、区分外とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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