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7 環境中の生物への影響

7.1 水生生物に対する影響

7.1.1 微生物に対する毒性

直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩 (アルキル基の炭素数が10から14までのもの及びその混合物に限る。) (LAS) の微生物に対する毒性試験結果を表 7-1 に示す。
C11.2LASは、淡水細菌であるシュードモナス、またアオコの原因生物である藍色細菌の増殖を阻害し、そのEC50は、8時間で3,200~5,600 mg/L、96時間で32~56 mg/Lである (Canton and Slooff, 1982)。また、アルキル基の炭素数が12であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム (DOBS) は海洋に棲む発光細菌であるビブリオの生育の指標である発光も阻害し、発光阻害のEC50は39.2 mg/Lであり、NOECは5 mg/Lであった (Radix et al., 2000)。3つの例ではあるが、LASの水生細菌に対する影響の程度は、細菌の種類によって大きく異なることを示唆している。シュードモナスと比べると、藍色細菌、ビブリオに対するLASの毒性は強い。


表 7-1 LASの微生物に対する毒性試験結果
生物種LAS 組成 温度
(℃)
エンドポイント濃度
(mg/L)
文献
Pseudomonas fluorescens
(シュードモナス)
C11.2

228時間EC50増殖阻害3,200-5,600Canton &
Slooff, 1982
Microcystis aeruginosa
(藍色細菌)
C11.2

2396時間EC50増殖阻害
バイオマス


32-56
Canton &
Slooff, 1982
Vibrio fischeri
(ビブリオ)
DOBS1)
(C12)

2722時間EC50
22時間NOEC
発光阻害39.2
5
(n)
Radix et al.,
2000
ND:データなし、(n): 設定濃度
1) DOBS: ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム (アルキル基の炭素数: 12)

7.1.2 藻類に対する毒性

LASの藻類に対する毒性試験結果を表 7-2に示す。
淡水産の緑藻であるクロレラ (Chlorella vulgaris)の生長阻害に対するC11.2LASの96時間のEC50は18~32 mg/Lであった (Canton and Slooff, 1982)。
種の異なる淡水産のクロレラ (Chlorella pyreniodosa) と海産の珪藻類 (Thalassiosira pseudonana) の生長に及ぼすLASの影響が調べられている。クロレラの生長阻害に対するLASの7日間EC50は4.4 mg/Lであった。また、淡水緑藻であるセレナストラムの生長阻害の72時間EC50は103 mg/L、NOECは1 mg/Lであり (Radix et al., 2000)、6日間EC50は83 mg/Lと求められた (紺野ら, 1987)。
海産珪藻類T. pseudonanaに対するDOBSの生長阻害の7日間EC50は1.4 mg/Lであった (近藤ら, 1983)。
全国のノリ漁場で養殖されているスサビノリの幼芽の生長に及ぼす影響を調べた報告がある。スサビノリ幼芽を用いた生長阻害試験の結果、培養10日後における対照区の幼芽1個体あたりの平均細胞数は115±4.6であった。0.18~0.32 mg/LのC11.8LASでは対照区と同様な生長を示したが、0.56 mg/Lでは生長速度が低下し、1.8 mg/L以上では全く生長しなかった。10日間における幼芽の生長阻害のNOECは0.32 mg/Lである (滝田, 1985)。

以上の結果から、藻類の中でLASの毒性を強く受けているのは、淡水では緑藻のセレナストラムであり、そのNOECは1 mg/Lである。海水では紅藻のスサビノリであり、そのNOECは0.32 mg/Lである。


表 7-2 LASの藻類に対する毒性試験結果
生物種LAS組成 温度
(℃)
エンドポイント濃度 (mg/L) 文献
淡水
Chlorella vulgaris
(緑藻、クロレラ)
C11.2

2296時間EC50生長阻害
バイオマス
18-32Canton &
Slooff, 1982
Chlorella pyreniodosa
(緑藻、クロレラ)
DOBS1)
(C12)

227日間EC50

生長阻害
バイオマス
4.4


(n)
近藤ら,
1983
Selenastrum capricornutum2
(緑藻、セレナストラム)

DOBS
(C12)

2372時間EC50
72時間NOEC
生長阻害
細胞数
103
1
(n)
Radix et al.,
2000
C11.7

206日間EC50

生長阻害
生長速度
83
(n)
紺野ら,
1987
海水
Thalassiosira pseudonana
(珪藻類)
DOBS
(C12)

227日間EC50



生長阻害1.4


(n)
近藤ら,
1983
Porphyra yezoensis
(紅藻、スサビノリ)
C11.8 1010日間NOEC

幼芽生長阻害
細胞数
0.32
(a)
滝田,
1985
ND: データなし、(a): 被験物質を測定したが、設定濃度により表示、(n): 設定濃度
1) DOBS: ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム (アルキル基の炭素数: 12);
2) 現学名: Pseudokirchneriella subcapitata
太字はリスク評価に用いたデータを示す。

7.1.3 無脊椎動物に対する毒性

LASの無脊椎動物に対する毒性試験結果を表 7-3 に示す。
オオミジンコに対するLASの急性毒性に関して求められたLC50は、止水条件下48時間で18~32 mg/Lであった (Canton and Slooff, 1982)。他に、24時間のLC50が17 mg/Lであったという報告 (若林ら, 1988)、また、LASのアルキル基の平均炭素数が11.8であるC11.8LASを用いて流水条件下96時間LC50を求めたところ、3.94 mg/Lであったという報告もある (Maki, 1979)。
オオミジンコと種が異なるセスジミジンコとミジンコに対するLASの24時間の急性毒性を調べると、セスジミジンコの遊泳阻害EC50は30 mg/Lであり、ミジンコLC50は18 mg/Lであった (服部ら, 1984; 若林ら, 1988)。
オオミジンコの繁殖に対するC11.8LASの毒性については、親オオミジンコの総産仔数を指標にした21日間のEC50は1.50 mg/Lであり、NOECは1.18 mg/Lであった。この時の21日間のLC50は1.67 mg/Lであった (Maki, 1979)。他に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム (DOBS) による繁殖阻害のNOECが1.65 mg/Lであったという結果も得られている (Radix et al., 2000)。
セスジミジンコの繁殖阻害がDOBSを用いて調べられており、21日間のNOECは9.6 mg/Lであった (服部ら, 1984)。
ツボワムシの繁殖に対するDOBSの48時間EC50NOECは、それぞれ、4.0 mg/L、2.5 mg/Lであった (Radix et al., 2000)。
以上の結果から求められる無脊椎動物に対するLASの最小NOECは、平均アルキル鎖長が11.8であるC11.8LASによるオオミジンコ21日間NOEC (繁殖阻害)の1.18 mg/Lである。


表 7-3 LASの無脊椎動物に対する毒性試験結果
生物種LAS
組成
大きさ/
成長段階
試験法/
方式
温度
(℃)
硬度
(mg CaCO3/L)
pHエンドポイント濃度 (mg/L) 文献
Daphnia magna
(甲殻類、
オオミジンコ)
C11.8

生後
12時間
以内
流水211207.496時間LC503.94Maki,
1979
21日間LC50
21日間EC50
21日間NOEC
繁殖
1.67
1.50
1.18
(m)
C11.2

生後
24時間
以内

止水





19NDND48時間LC5018-32Canton &
Slooff, 1982
C11.7

生後
24時間
以内
止水20257.2-
7.4
24時間LC5017
(n)
若林ら,
1988
DOBS1)
(C12)

生後
24時間
以内
OECD 202
半止水
20140-160ND21日間NOEC
繁殖
1.65
(n)

Radix et
al., 2000
Daphnia carinata
(甲殻類、
セスジミジンコ)
DOBS
(C12)



生後
24時間
以内
OECD 202
止水

22±0.5696.724時間EC50
遊泳阻害
30
(n)
服部ら,
1984
21日間NOEC
繁殖
9.6
(n)
Daphnia pulex
(甲殻類、ミジンコ)
C11.7

生後
24時間
以内
止水20257.2-
7.4
24時間LC5018
(n)
若林ら,
1988
Brachionus calyciflorus
(輪虫類、
ツボワムシ)
DOBS
(C12)



24時間
以内
止水25NDND48時間EC50
48時間NOEC
繁殖
4.0
2.5
(n)
Radix
et al.,
2000

Aedes aegypti
(昆虫類、
ネッタイシマカ)
C11.2 3-4日間
(幼生)
止水23NDND48時間LC5056-
100
Canton &
Slooff, 1982
ND: データなし、(m): 測定濃度、(n): 設定濃度
1) DOBS: ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム (アルキル基の炭素数: 12) 太字はリスク評価に用いたデータを示す。

7.1.4 魚類に対する毒性

LASの魚類に対する急性毒性試験結果を表 7-4 に示す。
メダカを用いて、測定時間によるLC50の違いが硬度25 mg CaCO3/Lの条件下で調べられた。24時間、48時間と暴露時間の延長にともなって、LC50は9.2 mg/L、8.7 mg/Lと低下し、72時間で8.4 mg/Lとなり、それ以降は一定になることが確かめられた (若林ら, 1986)。硬度を75 mg CaCO3/Lと硬水の条件にすると、24時間LC50は6.3と下がり、LASの毒性が強まった (若林ら, 1986)。他に、硬度65 mg CaCO3/Lの条件下では、24時間及び48時間LC50は同一であり、その値は4.0 mg/Lであった (飯森ら, 1979)。また、硬度は不明であるが、96時間LC50が10~18 mg/Lという結果も報告されている (Canton and Slooff, 1982)。
欧米に広く分布しているファットヘッドミノーに対するLASの急性毒性に関して、アルキル基の鎖長が10~14のLASを用いて、硬度100 mg CaCO3/Lの条件下で48時間 LC50が求められた。C10LAS、C11LAS 、C12LAS 、C13LAS 、C14LAS の48時間LC50は、それぞれ、43.0、16.0、4.7、0.4、0.4 mg/Lであった。一方、平均鎖長が13.3のLASでは1.7 mg/Lであった (Kimerle and Swisher, 1977)。他に、硬度40 mg CaCO3/Lの条件下で、平均鎖長が11.2、11.7、13.3のLASの96時間LC50は、12.3、4.1、0.86 mg/Lと求められた (Holman and Macek, 1980)。熱帯魚であるグッピーに対する96時間 LC50は5.6~10 mg/Lであった (Canton and Slooff, 1982)。
国内の河川・湖沼に生育する魚類のコイ、ニジマス、ヤマメ、アブラハヤ、アユの24~96時間のLC50は、1.17~4.8 mg/Lであった (Sueishi et al, 1988; 若林ら, 1984, 1986)。
一方、海水魚であるコバルトスズメの48時間LC50は人工海水中で1.3 mg/Lであり、エドハゼの48時間LC50は試験用水の塩分が20‰の実験で1.7 mg/L、塩分濃度が25‰によるボラの96時間LC50は1.3 mg/Lであった (飯森ら, 1979; 若林ら, 1984, 1986)。


表 7-4 LASの魚類に対する急性毒性試験結果
生物種LAS
組成
大きさ/
成長段階
試験法/
方式
温度
(℃)
硬度
(mg CaCO3/L)
pHエンドポイント濃度 (mg/L)文献
淡水
Oryzias latipes
(メダカ)
ND

成魚

JIS K0102
半止水

20

25ND24時間LC50
48時間LC50
72時間LC50
9.2
8.7
8.4
(n)
若林ら,
1986



75ND24時間LC506.3
(n)

分子量
348.5
0.20 gNDND65ND24時間LC50
48時間LC50
4.0
4.0
(n)
飯森ら,
1979
C11.2

4-5週間半止水23NDND96時間LC5010-18Canton &
Slooff, 1982
Pimephales promelas
(ファットヘッドミノー)
C13.3
C10
C11
C12
C13
C14

ND止水ND100ND48時間LC50
C13.3 LAS
C10 LAS
C11 LAS
C12 LAS
C13 LAS
C14 LAS


1.7
43.0
16.0
4.7
0.4
0.4
(n)
Kimerle
&
Swisher, 1977
C11.2
C11.7
C13.3

2-3か
月齢



U.S. EPA
流水
21407.496 時間LC50
C11.2LAS    
C11.7LAS    
C13.3 LAS    


12.3
4.1
0.86
(m)
Holman
& Macek,
1980
Poecilia reticulata
(グッピー)
C11.2

3-4週間半止水

23NDND96時間LC505.6 -10Canton &
Slooff, 1982
Cyprinus carpio
(コイ)
ND

仔魚半止水2125ND24時間LC50
48時間LC50
72時間LC50
4.8
2.6
2.6
(n)
若林ら,
1986
C11.2

378 g半止水20.5-
21.0
75ND96時間LC504.4
(n)
若林ら,
1984
Oncorhynchus
mykiss
(ニジマス)

ND

仔魚JIS K0102
半止水
1225ND48時間LC50
72時間LC50
3.4
3.3
(n)
若林ら,
1986
C11.2258 g半止水8.8-
10.9
25ND96時間LC504.7
(n)
若林ら,
1984
Oncorhynchus
masou
(ヤマメ)
C11.2平均
234 g
半止水8.5-
9.6
27.5ND96時間LC504.4
(n)
Phoxinus lagowskii steindachneri
(アブラハヤ)
ND

仔魚JIS K0102
半止水
2075ND24 時間LC50



2.6
(n)
若林ら,
1986
Plecoglossus altivelis
(アユ)

ND成魚
28.0 g
NDNDNDND48時間LC501.17Sueishi et al.,
1988



海水
Chrysiptera hollisi
(コバルトスズメ、スズメダイ科)
分子量
348.5

1.2 gNDNDNDND24時間LC50
48時間LC50
1.3
1.3
(n)
飯森ら,
1979
Chaenogobius macrognathus
(エドハゼ)
ND

仔魚JIS K0102
半止水
20塩分濃度
20%o
ND24 時間LC50
48時間LC50
2.0
1.7
(n)
若林ら,
1986
Mugil cephalus
(ボラ)
C11.7

1,190g

半止水20.6-
22.0
塩分濃度
25%o
ND96時間LC501.3
(n)
若林ら,
1984
ND: データなし、(m): 測定濃度、(n): 設定濃度

LASの魚類の発生段階の違いによる毒性試験結果を表 7-5 に示す。
LASに対する魚類の感受性は同種の生物でもその成長段階によって異なる。そこで、魚の発生段階の違いによるLASの毒性が、コイの卵 (胚)、仔魚、稚魚を用いて調べられた。
コイは、国内の多くの河川に棲んでいることから、硬度として、国内の河川の平均水質に近い硬度25 mg CaCO3/Lが選ばれた。暴露時間は、卵に対してふ化までの時間の80時間、仔魚及び稚魚に対しては48時間とされた。胚の発眼、ふ化を指標にしたEC50が、暴露時間について発生段階を産卵後2時間から26時間、その後50時間、そしてふ化までの3期間に区切って求められた。それぞれ、15、25、32 mg/Lであり、全期間の暴露では10.5 mg/Lであった。NOECは、それぞれ7.7、20、20、7.7 mg/Lであった。また、産卵からふ化までに要する時間は、対照区と同じほぼ80時間であり、濃度別のふ化までの時間の変動はわずかであった。一方、産卵2時間後の卵、ふ化後7日目の仔魚、6か月齢の稚魚の24時間 LC50を比べると、それぞれ、15、5.6、10 mg/Lであった。これらの結果は、 (1)LASの毒性に対する感受性は、卵が最も低く、ふ化仔魚で最も高くなり、成長とともに低くなっていくこと、 (2)同じ卵のなかでは発生の初期ほど影響を受けやすく、発生が進むにつれて受けにくくなることを示している (有馬ら, 1981)。仔魚と稚魚のNOECを実験データから推定すると、2及び5 mg/Lと求められる。 卵がふ化するまでの全期間でのNOECは7.7 mg/Lであるので、卵から稚魚に至るコイの発生・成長に影響しないLAS濃度NOECは2 mg/Lである。
アユの仔魚、稚魚に対する96時間LC50が0.45、0.57 mg/Lであったという報告がある (Sueishi et al., 1988)。しかし、試験条件についての詳細な記載がなく、信頼性の評価ができない。


表 7-5 LASの魚類の発生段階の違いによる毒性試験結果
生物種LAS
組成
大きさ/
成長段階
試験法/
方式
温度
(℃)
硬度
(mg CaCO3/L)
pHエンドポイント濃度 (mg/L) 文献
Cyprinus carpio
(コイ)
C11.7

卵(胚)止水

22256.7-
7.1
ふ化率 NOEC
発生段階
(暴露時間)
2 -ふ化まで
2-26
26-50
50 -ふ化まで






7.7
7.7
20
20
(n)
有馬ら,
1981

ふ化率EC50
発生段階
(暴露時間)
2 -ふ化まで
2-26
26-50
50 -ふ化まで






10.5
15
25
32
(n)
産卵
2時間後
24時間LC5015
(n)
仔魚
7日齢

止水22257.024時間LC50
24時間NOEC
48時間LC50
48時間NOEC
5.6
2
5.6
2
(n)
稚魚
6か月齢

止水22256.6-
7.1
24時間LC50
24時間NOEC
48時間LC50
48時間NOEC
10
5
10
5
(n)
Plecoglossus
altivelis
(アユ)
ND 仔魚
0.29g
稚魚
1.24g
NDNDNDND96時間LC50


96時間LC50

0.45


0.57

Sueishi
et al.,
1988
ND: データなし、(n): 設定濃度



LASの魚類に対する長期毒性試験結果を表 7-6 に示す。
平均アルキル鎖長が11.2、11.7、13.3の3種のLASを用いて、ファットヘッドミノーでの全生活段階毒性試験により生存、成長、繁殖への毒性が調べられた。C11.7LASの273日間のNOECは、3指標とも1.09 mg/L以上であり、C13.3LASの263日間のNOECは、0.25 mg/L以上であった。また、同じファットヘッドミノーでの初期生活段階毒性試験において、ふ化率、仔魚の40日間生存率についてのNOECは、硬度39.0 mg CaCO3/Lの条件下でC11.2LASでは9.8及び8.4 mg/Lであり、C11.7LASでは、≧0.74及び0.48 mg/Lであった。以上の全生活段階毒性試験及び初期生活段階毒性試験から求められるNOECは、C11.2LASでは8.4 mg/L、C11.7LASでは0.48 mg/L、C13.3LASでは0.11~0.25 mg/Lである (Holman and Macek, 1980)。他に、雌のファットヘッドミノーの繁殖毒性について、親1個体当りの産仔数、産卵数を指標に調べられたところ、C11.8LASとC13.3LASNOECは、0.90及び0.15 mg/Lであり、C13.3LASの方がC11.8LASより毒性が強いことが示されている (Maki, 1979)。



表 7-6 LASの魚類に対する長期毒性試験結果
生物種LAS
組成
大きさ/
成長段階
試験法/
方式
温度
(℃)
硬度
(mg CaCO3/L)
pHエンドポイント濃度 (mg/L) 文献
Pimephales promelas
(ファットヘッドミノー)

C11.7
C13.3
NDNDND120NDNOEC
C11. 8LAS
C13.3LAS
繁殖


0.90
0.15
(m)
Maki,
1979
C11.7

10日齢
(全生活段階毒性試験)
U.S. EPA
流水
2539.06.4-
7.4
273日間NOEC
致死、成長、繁殖
≧1.09
(m)
Holman
&
Macek, 1980
C13.3

22日齢
(全生活段階毒性試験)

U.S. EPA
流水
2539.06.4-
7.4
263日間NOEC
致死、成長、繁殖
≧0.25
(m)
親60日間致死
親60日間成長
0.11
≧0.25
(m)
F1 ふ化率
F1 60日間致死
F1 60日間成長
≧0.25
0.11
0.11
(m)
C11.2
C11.7
受精卵
(初期生活段階毒性試験)
U.S. EPA
流水



2539.06.4-
7.4
C11.2LASNOEC
ふ化率
40日間致死


9.8
8.4
(m)
39.06.4-
7.4
C11.7LASNOEC
ふ化率
30日間致死


≧0.74
0.48
(m)
2006.4-
7.4
C11.7LASNOEC
ふ化率
30日間致死


≧1.78
0.65
(m)
Poecilia reticulata
(グッピー)
C11.2

3-4週間半止水

23NDND21日間NOEC3.2Canton
& Slooff,
1982
(m): 測定濃度
太字はリスク評価に用いたデータを示す。


LASのアルキル鎖長、フェニル基位置の違いによる毒性
LASのアルキル鎖長、フェニル基位置の違いによる同族体、異性体及び代謝中間体の毒性が、LC50を指標として、甲殻類のオオミジンコ、魚類のファットヘッドミノー、メダカについて調べられている。LASの同族体、異性体及び代謝中間体の毒性試験結果を表 7-7 に示す。
オオミジンコに対するC10LAS、C11LAS、C12LAS、C13LAS、C14LAS の24時間LC50は、それぞれ、53.1、15.8、10.7、2.7、1.2 mg/Lであった。一方、平均鎖長が13.3のLASでは、2.6 mg/Lであった。生分解中間体として知られている3種のスルホフェニルアルキルカルボン酸塩 (SPC) を用いて、SPCの急性毒性が検討された。その結果、スルホフェニルウンデカン酸ナトリウム (C11SPC) の24時間LC50 は355 mg/L、スルホフェニルバレリアン (ペンタン) 酸ナトリウム (C5SPC) では、約12,000 mg/L、スルホフェニルブタン酸ナトリウム (C4SPC) では、約12,000 mg/Lという値が得られている (Kimerle and Swisher, 1977)。
ファットヘッドミノーに対するC10LAS、C11LAS 、C12LAS 、C13LAS 、C14LAS の24時間 LC50は、それぞれ、48.0、17.0、4.7、1.7、0.6 mg/Lであった。一方、平均鎖長が13.3のLASでは、1.9 mg/Lであった。スルホフェニルウンデカン酸ナトリウム (C11SPC) の24時間LC50 は175 mg/L、スルホフェニルバレリアン酸ナトリウム (C5SPC) では、約6,000 mg/L、スルホフェニルブタン酸ナトリウム (C4SPC) では、約10,000 mg/Lという値が得られている (Kimerle and Swisher, 1977)。
メダカに対するC10LAS、C12LAS、C14LAS の24時間LC50は、それぞれ、76、7.6、1.45 mg/Lであった。C12LASのフェニル基の位置が1、3、5位の異性体の24時間LC50は、それぞれ、1.55、7.1、12.5 mg/Lであった (大場ら, 1977)。
他に、藻類のスサビノリに関して、スサビノリの幼芽の生長阻害は、アルキル基の鎖長が長いほど毒性が強く、フェニル基が末端に位置するほど生長を阻害する傾向が認められたという結果もある (滝田, 1985)。しかし、LC50が求められていないので、表に含めない。
以上の結果は、スサビノリ、ミジンコ、ファットヘッドミノー、メダカについてLASはアルキル基の鎖長が長いほど毒性が強く、フェニル基が末端に位置するほど生長を阻害する傾向を示している。また、LAS代謝中間体は、未変化体のLASと比べて毒性が弱いことが示された。


表 7-7 LASの同族体、異性体及び代謝中間体の毒性試験結果
(Kimerle and Swisher, 1977、大場ら, 1977)
LAS (組成) オオミジンコ ファットヘッドミノー メダカ

24時間LC50 24時間LC50 24時間LC50
市販品 (平均鎖長13.3) 2.6 1.9
鎖長
 10
 11
 12
 13
 14


53.1
15.8
10.7
2.7
1.2


48.0
17.0
4.7
1.7
0.6


76


7.6


1.45
フェニル位置(C12LAS
 1
 3
 5










1.55
7.1
12.5
代謝中間体
 C4SPC 1)
 C5SPC
 C11SPC


12,000
12,000
355


10,000
6,000
175




1) C4SPC, スルホフェニルブタン酸ナトリウム; C5SPC, スルホフェニルバレリアン
(ペンタン)酸ナトリウム; C11SPC, スルホフェニルウンデカン酸ナトリウム.
-: データなし


7.1.5 その他の水生生物に対する毒性

LASの両生類に対する毒性試験結果を表 7-8 に示す。
アフリカツメガエルの幼生についてLC50が求められており、5.6~10 mg/Lであった (Canton and Slooff, 1982)。



表 7-8 LASの両生類に対する毒性試験結果
生物種LAS
組成
大きさ/
成長段階
試験
方式
温度
(℃)
エンドポイント濃度 (mg/L) 文献
Xenopus laevis
(両生類、
アフリカツメガエル)
C11.2 3-4週間
(幼生)
半止水2196時間LC505.6-10Canton &
Slooff, 1982

7.2 陸生生物に対する影響

7.2.1 微生物に対する毒性

調査した範囲内では、LASの微生物 (土壌中の細菌や菌類等) に対する毒性に関する試験報告は得られていない。

7.2.2 植物に対する毒性

LASの農作物の発芽・生長に対する影響試験結果を表 7-9 に示す。
植物には、自然環境中に生育する植物、人の手によって栽培・収穫されるものがある。特に、農作物の種子の発芽・生長に対するLASの影響に関する試験報告がある。コマツナ、ダイコン、イネの種子を水耕栽培法で発芽・生長させた時のLASNOECと毒性濃度が求められている。用いられたLASは、アルキル基の炭素数は10~14、平均分子量346をナトリウム塩であった。その結果、コマツナの10日間NOECと毒性濃度は、それぞれ、20、35 mg/Lであり、ダイコンでは10、20 mg/Lである。イネとして日本晴が選ばれ、その15日間NOECと毒性濃度は、20、35 mg/Lである (滝田, 1982)。著者は毒性濃度の定義を与えていないが、数値の大きさから考えて、最小影響濃度 (LOEC) を意味していると判断する。したがって、表中では、毒性濃度 (LOEC) と記述する。



表 7-9 LASの農作物の発芽・生長に対する影響試験結果
生物種LAS
組成
試験条件エンドポイント

濃度 (mg/L) 文献
コマツナ
(葉菜)
平均分子量
346

水耕
栽培法
25℃
10日間NOEC
10日間毒性濃度 (LOEC)
発芽・生長

20
35
滝田, 1982
ダイコン
(根菜、時無大根)
10日間NOEC
10日間毒性濃度(LOEC)
10
20
イネ
(穀実作物、日本晴)
15日間NOEC
15日間毒性濃度(LOEC)
20
35

7.2.3 動物に対する毒性

2種のミミズ、Eisenia foetidaLumbricus terrestris、に対するLASの毒性が調べられている。平均鎖長11.36のLAS水溶液が、試験用土壌に含水率35%または25%となるように加えられた。E. foetidaL. terrestris の14日間LC50は、それぞれ、最大投与濃度の1.0、1.3 g/kg土壌 以上であった。また、E. foetida の体重減少ついてのNOECは0.235 g/kg (測定値)、L. terrestrisの体重減少、もぐりこみ行動についてのNOECは0.613 g/kg (測定値) であった (Mieure et al., 1990)。

7.3 環境中の生物への影響 (まとめ)

水生、陸生の動植物に対して、LASは急性・長期の毒性を及ぼしている。
水生細菌に対するLASの毒性は、細菌の種類によって大きく異なる。シュードモナス、藍色細菌、海洋細菌のビブリオに対するEC50は、32~5,600 mg/Lとなる。これらの細菌のうち、LASの影響を最も強く受けるのはビブリオであり、その発光阻害による22時間NOECは5 mg/Lである。
藻類について、LASの毒性を示す生長阻害のEC50は、淡水藻類のクロレラ類に対して4.4~32 mg/L、セレナストラムでは83~103 mg/L、海産珪藻では1.4 mg/Lであり、クロレラ (C. pyreniodosa) と海産珪藻 (T. pseudonana) に対する値はGHS急性毒性有害性区分IIに相当し、強い有害性を示す。また、幼芽の生長阻害を指標とした紅藻のスサビノリのNOECは0.32 mg/Lである。これらの藻類の中で、LASの影響を最も強く受けるのは淡水では緑藻のセレナストラムであり、そのNOECは1 mg/Lである。海水では紅藻のスサビノリであり、そのNOECは0.32 mg/Lである。
無脊椎動物の中では、甲殻類のオオミジンコ、セスジミジンコ、ミジンコに対するLASの急性毒性のLC50は3.94~32 mg/Lであり、最小値はGHS急性毒性有害性区分IIに相当し、強い有害性を示す。オオミジンコ及びセスジミジンコの21日間の繁殖試験でのNOECは1.18~9.6 mg/Lである。輪虫類のツボワムシの繁殖に関するEC50NOECは、それぞれ、4.0、2.5 mg/Lである。無脊椎動物の中で、LASの影響を最も強く受けるのは、オオミジンコの繁殖であり、そのNOECは1.18 mg/Lである。
魚類については、多くのデータがある。淡水、海水の魚類に対するLASの急性毒性を示すLC50は0.4~43 mg/Lである。最小値はGHS急性毒性有害性区分Iに相当し、極めて強い有害性を示すが、これは市販のLASに含まれる最長のアルキル鎖をもつC14LASの毒性として求められた値であり、43 mg/Lは最短のC10LASからの値である。
淡水魚のコイの発生・成長過程でLASの毒性は異なり、胚、仔魚、稚魚のLC50は、それぞれ、15、5.6、10 mg/Lであり、仔魚がLASの影響を最も強く受けている。一方、ファットヘッドミノーの生存及び繁殖に対する長期毒性のNOECは0.11~8.4 mg/Lである。0.11 mg/Lは、ファットヘッドミノーの仔魚に対する平均鎖長13.3のLASの60日間致死、成長阻害のNOECとして求められた値である。通常に用いられるLASは平均鎖長が11.8のLASであることを考慮すると、環境中のLASが示しうる最も強い毒性は、C11.7LASを用いたファットヘッドミノー仔魚の致死において認められ、その30日間NOECは0.48 mg/Lである。
藻類、甲殻類、魚類に対するLASの毒性は、同族体また異性体によって異なる。今回、調査したアルキル基の鎖長が10~14の範囲で致死、生長阻害作用を指標にして毒性の強さを比較すると、LASのアルキル基の鎖長が長くなるにつれ、毒性はより強く、またアルキル基の長さが同じでも、フェニル基の位置がアルキル基の末端に位置する程より強く現れている(7.1.4項、表 7-7 参照)。これらのアルキル基の鎖長効果、またフェニル基の位置効果は、3分類の生物に認められているので、他の水生生物にも現れるものと思われる。
その他の水生生物として、両生類のアフリカツメガエルの幼生に対して毒性が認められ、96時間LC50は5.6~10 mg/Lである。
他に、陸生動植物について、LASはコマツナ、ダイコン、イネの種子の発芽・生長を阻害し、そのNOECは10~20 mg/Lである。

以上のデータから、LASの水生生物に対する急性毒性は、魚類に対してGHS急性毒性有害区分Iに相当し、極めて強い有害性を示す。
得られた毒性データのうち水生生物に対する最小値は、魚類であるファットヘッドミノーのC11.7LASを用いた初期生活段階毒性試験での致死を指標とした30日間NOECの0.48 mg/Lである。


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