GHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 1310-58-3
名称 水酸化カリウム
物質ID H29-B-117
分類実施年度 平成29年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク)  
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-
-
- -    爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外
-
-
- -    エアゾール製品ではない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外
-
-
- -    不燃性 (ICSC (J) (2010)) である。
8 自己反応性化学品 分類対象外
-
-
- -    分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外
-
-
- -    不燃性 (ICSC (J) (2010)) である。
11 自己発熱性化学品 区分外
-
-
- -    不燃性 (ICSC (J) (2010)) である。
12 水反応可燃性化学品 区分外
-
-
- -    金属 (K) を含むが、水溶解度は110 g/100 mL (25℃) (ICSC (J) (2010)) との測定結果がある。溶解時に発熱することがあるが、引火性ガスを発生することはない。
13 酸化性液体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない
-
-
- -    酸素を含む無機化合物であるが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 分類対象外
-
-
- -    無機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-
-
- -    固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3


危険
H301 P301+P310
P264
P270
P321
P330
P405
P501
   ラットのLD50値として、273 mg/kg、365 mg/kg (いずれもSIDS (2004)) との報告があり、1件が区分3、1件が区分4に該当する。有害性の高い区分を採用し、区分3とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1


危険
H314 P301+P330+P331
P303+P361+P353
P305+P351+P338
P304+P340
P260
P264
P280
P310
P321
P363
P405
P501
   固体の本物質は腐食性を示すとの記載 (SIDS (2004)) がある。ヒトの皮膚へのばく露で、III度の薬傷を生じた事例や電池の電解液 (本物質25%含有) により小穿孔を伴う組織の腐食がみられた事例 (いずれもSIDS (2004)) がある。ウサギを用いた複数の皮膚刺激性試験で腐食性を示すとの記載 (SIDS (2004)、ECETOC TR66 (1995)) がある。又、本物質の水溶液のpHは約13で、強アルカリ性を示すとの記載 (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1978)、PATTY (6th, 2012)) がある。試験によりばく露時間が異なるため細区分はせず、区分1とした。なお、EU CLP分類において本物質はSkin Corr. 1A, H314 に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on August 2017))。本物質は「労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物並びに厚生労働大臣が定める疾病」に、皮膚障害を起こす化学物質として記載されている。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1


危険
H318 P305+P351+P338
P280
P310
   皮膚腐食性/刺激性が区分1に分類されている。本物質は2.0%以上の濃度で眼に対して腐食性を示すとの記載 (SIDS (2004)) があり、ウサギを用いた眼刺激性試験で強い腐食性との記載 (SIDS (2004)) がある。又、本物質の水溶液のpHは約13で、強アルカリ性を示すとの記載 (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1978)、PATTY (6th, 2012)) がある。よって、区分1とした。なお、本物質は「労働基準法施行規則別表第一の二第四号1の厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物並びに厚生労働大臣が定める疾病」に、前眼部障害を起こす化学物質として記載されている。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
   
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- -    モルモットを用いた皮膚感作性試験で陰性との記載や、カリウムイオン (K+) 及び水酸化物イオン (OH-) は生体内に元から存在するので皮膚感作性の原因とは考えにくいとの記載 (いずれもSIDS (2004)) があるが、試験の詳細が不明でありヒトにおける報告もないため、分類できないとした。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-
-
- -    ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。本物質に関するin vivoデータはなく、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陰性である (SIDS (2004))。SIDS (2004) は、本物質、水酸化ナトリウム (CAS番号 1310-73-2) 、塩化カリウム (CAS番号 7447-40-7)、炭酸カリウム (CAS番号 584-08-7) の包括的な情報から変異原性について評価している。すなわち、水酸化ナトリウムはin vivoにおいて、マウス骨髄細胞の小核試験、マウス卵母細胞の染色体異常試験で陰性の結果があり (SIDS (2004))、in vitroでは被験物質の培地における高いpHや浸透圧のartifactsによる影響を除けば、水酸化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウムは細菌の復帰突然変異試験で、塩化カリウムは哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験で、炭酸カリウムは哺乳類培養細胞の染色体異常試験で、いずれも陰性である (SIDS (2004))。以上より、SIDS (2004) はこれらの物質には遺伝毒性がないと考えられるとの見解を示している。
6 発がん性 分類できない
-
-
- -    マウスの皮膚に本物質の3~6%水溶液を25~46週間適用した結果、適用部位局所に腫瘍 (発生率: 約15%) がみられた (SIDS (2004)、PATTY (6th, 2012)) が、SIDSによれば信頼性ランク3の報告である。この皮膚腫瘍は重度の皮膚損傷の結果生じた間接的な細胞増殖によるもので、反復刺激及び持続性炎症がもたらした二次的な非遺伝毒性機序によると考えられている (SIDS (2004))。また、ヒトに外挿可能なばく露条件下で、本物質が発がん性があるという証拠はないと結論されている (SIDS (2004))。
   以上、SIDSでは本物質はヒトでは発がん性を示す証拠はないと結論されているが、信頼性のある試験データはなく、国際機関による分類結果もない。したがって、データ不足のため分類できないとした。
7 生殖毒性 分類できない
-
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- -    本物質自体のデータはないが、カリウムイオンの生殖発生影響に関しては塩化カリウム及び炭酸カリウムを用いた試験報告がある。すなわち、塩化カリウムをマウス又はラットに経口投与した1世代試験において、マウスで235 mg/kg/dayまで、ラットで310 mg/kg/dayまで親の生殖及び出生児への影響はみられなかった (SIDS (2004))。また、炭酸カリウムを妊娠マウス又は妊娠ラットの器官形成期に経口投与した発生毒性試験において、マウスで290 mg/kg/day まで、ラットで180 mg/kg/day まで親動物、胎児ともに影響はみられなかった (SIDS (2004))。SIDSは非刺激性の用量/濃度では本物質に対する生殖発生影響はないと考えられると結論している (SIDS (2004))。以上、カリウム塩を用いた生殖発生毒性試験において、カリウムイオンによる有害な生殖発生影響は検出されなかったが、親動物に一般毒性影響が発現する用量まで投与されておらず、影響を評価する上で投与量が十分であったとは言い難い。したがって、データ不足のため分類できないとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器)


危険
H370 P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
   本物質は皮膚、粘膜に対して強アルカリとして作用して、粉じん又はミストの吸入ばく露により上気道の刺激及び組織障害を起こし、鼻中隔の傷害や肺水腫を生じる可能性もあると記載されている (ACGIH (7th, 2001)、SIDS (2004)、PATTY (6th, 2012)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1978))。したがって区分1 (呼吸器) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
   ヒトについては、本物質の粉じん、ミストの吸入によって起こる障害は、主に上部気道の炎症であり、慢性的な作用によって鼻中隔に潰瘍を生じることが注意されている。ただし、気中濃度と障害発生に関する調査・研究の報告はない (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1978))。粉じんあるいはミストのばく露によって、おそらく眼及び気道の刺激、鼻中隔の病変を生じる (ACGIH (7th, 2001))。
   以上のように十分な情報はないが、本物質は、アルカリ性物質であり吸入により呼吸器に炎症性の影響を起こすことは明白であることから、区分1 (呼吸器) とした。
   なお、ヒトについて症例報告、疫学調査の情報が得られなかったものの、上記情報源の記載を採用したことから、旧分類と分類結果が異なった。
10 吸引性呼吸器有害性 区分1


危険
H304 P301+P310
P331
P405
P501
   本物質を非意図的又は自殺目的で経口摂取した死亡例で、死因の一部に食道から気管への誤嚥、肺炎などがある (ACGIH (7th, 2001)) との記述、及びアルカリの気道への誤嚥は喉頭、気管・気管支、肺に致命的な傷害を生じる (SIDS (2004)) との記述から、本項は区分1とした。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない
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- -    信頼性のある急性毒性データが得られていない。
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない
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- -    データなし
12 オゾン層への有害性 分類できない
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- -    データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
* 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
* 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
* 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

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