GHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 79-46-9
名称 2-ニトロプロパン
物質ID H29-B-109
分類実施年度 平成29年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成26年度   平成18年度  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 区分外
-
-
- -    爆発性に関連する原子団 (ニトロ基) を含むが、UNRTDGにおいてUN 2608、クラス3、PGⅢに分類されており、優先評価項目の爆発物には該当しない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外
-
-
- -    エアゾール製品ではない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分3


警告
H226 P303+P361+P353
P370+P378
P403+P235
P210
P233
P240
P241
P242
P243
P280
P501
   引火点24℃ (closed cup) (ICSC (J) (2006)) である。なお、ニトロプロパン類のUNRTDG分類はUN 2608、クラス3、PGⅢである。
7 可燃性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 タイプG
-
-
- -    分子内に爆発性に関連する原子団 (ニトロ基) を含むが、UNRTDGにおいてUN 2608、クラス3、PGⅢに分類されており、優先評価項目の自己反応性化学品には該当しない。
9 自然発火性液体 区分外
-
-
- -    発火点は425℃ (GESTIS (Access on September 2017)) であり常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- -    液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-
-
- -    金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類できない
-
-
- -    フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であり、この酸素が炭素及び水素以外の元素 (N) と結合しているが、データがなく、分類できない。
14 酸化性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外
-
-
- -    分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-
-
- -    データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4


警告
H302 P301+P312
P264
P270
P330
P501
   ラットのLD50値として、720 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)) との報告に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外
-
-
- -    ウサギのLD50値として、> 2,000 mg/kg (HSDB (Access on August 2017)) との報告がある。また、別のウサギの単回経皮投与試験において、2,000 mg/kgで毒性影響は認められなかったとの報告がある (EHC 138 (1992))。したがって区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分2


危険
H330 P304+P340
P403+P233
P260
P271
P284
P310
P320
P405
P501
   ラットの6時間吸入ばく露試験のLC50値として、400 ppm (4時間換算値: 490 ppm) (雄) (ACGIH (7th, 2001)、IARC 29 (1982)、JECFA FAS 26 (1989))、別の6時間吸入ばく露試験のLC50値として、400 ppm (4時間換算値: 490 ppm) (雄)、720 ppm (4時間換算値: 882 ppm) (雌) (以上EHC 138 (1992))、4.5時間吸入ばく露試験のLC50値として、1,513 ppm (4時間換算値: 1,605 ppm) (JECFA FAS 26 (1989)) との4件の報告があり、2件が区分2、2件が区分3に該当する。有害性の高い区分を採用して区分2とした。なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (22,700 ppm) の90%よりも低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない
-
-
- -    ウサギの皮膚に本物質を適用した2件の試験において、局所影響は認められなかったとの記載及び皮膚刺激性は認められなかったとの記載 (いずれもEHC 138(1992)) がある。その一方で、本物質は皮膚刺激性を示すとの記載 (HSDB (Access on August 2017)) と相反する報告がある。よって、分類できないとした。今回の調査で入手した情報を基に区分を変更した。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B
-
警告
H320 P305+P351+P338
P337+P313
P264
   本物質は眼刺激性を有するとの記載 (HSDB (Access on August 2017)) や、ウサギを用いた眼刺激性試験 (ガイドライン非対応) で、本物質は軽度の眼刺激性を示すとの記載 (ECHA登録情報 (Access on November 2017)) があることから、区分2Bとした。旧分類で分類根拠に用いたIUCLID (2000) は、現在入手できないため使用しなかった。今回の調査で入手した情報をもとに区分を変更した。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
   
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。なお、モルモットを用いた皮膚感作性試験 (ガイドライン試験と同等 (Landsteiner and Jacobs法)) で本物質に皮膚感作性は認められなかったとの報告 (ECHA登録情報 (Access on November 2017)) があるが、ヒトにおける報告がないため分類できないとした。
5 生殖細胞変異原性 区分2


警告
H341 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
   In vivoでは、ラットの優性致死試験で陰性、マウスの肝臓を用いた遺伝子突然変異試験で陽性、ラットの小核試験では骨髄細胞で陰性、肝臓細胞で陽性、マウスの骨髄細胞、末梢血を用いた小核試験で陰性、ラットの骨髄細胞、マウスの胃、腸、肝臓を用いたコメットアッセイで陽性、ラットのDNA損傷試験では、肝臓で陽性、肺、腎臓、骨髄、脳で陰性、ラットの肝臓を用いた不定期DNA合成試験で陽性である(IARC 71 (1999)、EHC 138 (1992)、OECD ROBUST STUDY SUMMARIES (Access on September 2017)、ACGIH (7th, 2001)、SIAP (2010))。In vitroでは、細菌を用いた復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いた遺伝子突然変異試験で陽性、小核試験で陰性、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陽性、陰性の結果である (IARC 71 (1999)、EHC 138 (1992)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 3 (1992)、NTP DB (Access on September 2017)、OECD ROBUST STUDY SUMMARIES(Access on September 2017))。なお、新しい評価書では、本物質はin vitro、in vivoともに遺伝毒性がある (Screening Assessment for the Challenge, Environment Canada and Health Canada (2010))、また、本物質はin vitro、in vivoともに変異原性があり、明らかに遺伝毒性がある (SIAP (2010)) と記載されている。以上より、ガイダンスに従い区分2とした。新しい情報源を加え、旧分類の結果を見直した。
6 発がん性 区分1B


危険
H350 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
   ヒトでの発がんに関する情報はない。実験動物では、ラットに吸入ばく露した2つの試験のうち1試験では肝細胞がんがばく露群10例中全例に、他の1試験では肝細胞の腫瘍性結節の発生頻度に有意な増加が認められた (IARC 29 (1982)、IARC 71 (1999)、DFGOT vol. 3 (1992)、ACGIH (7th, 2001)、NTP RoC (14th, 2016))。また、離乳後の雄ラットに16週間強制経口投与後、77週間放置後に剖検した結果、投与群22例全例に肝臓悪性腫瘍 (対照群: 0/29例) が認められた (IARC 71 (1999)、DFGOT vol. 3 (1992)、NTP RoC (14th, 2016))。以上より、IARCは実験動物では発がん性の十分な証拠があるとして、グループ2Bに分類した。その他、ACGIHがA3に (ACGIH (7th, 2001))、NTPがRに (NTP RoC (14th, 2016))、EUがCarc. 1Bに (ECHA CL Inventory (Access on August 2016))、日本産業衛生学会が第2群Bに (許容濃度の勧告 (2016): 1991年提案) 分類している。以上、各機関による分類結果からは区分2又は区分1Bが支持される。試験報告からはラット1種のみであるが、複数の経路で肝臓の悪性腫瘍が100%の頻度で認められたことから、実験動物での発がん性の証拠は十分であると判断できる。よって、EUの分類結果を支持し、本項は区分1Bとした。
7 生殖毒性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。なお、妊娠ラットに170 mg/kg/dayを妊娠1~15日に腹腔内投与した試験で、着床前及び着床後の胚/胎児生存率の減少、及び胎児の成長遅延、心血管系発達遅延がみられたとの報告がある (IARC 71 (1999)、ACGIH (7th, 2001)、HSDB (Access on August 2017)) が、投与経路が腹腔内であることを考慮し採用しなかった。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系、肝臓、血液系)、区分3(麻酔作用)



危険
警告
H370
H336
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
   ヒトでは本物質を含む溶剤を換気の不十分な環境で扱っていた労働者が、高濃度の本物質に吸入ばく露した事故例が複数報告されている (IARC 29 (1982)、EHC 138 (1992)、DFGOT vol. 3 (1992)、ACGIH (7th, 2001))。初期の症状は頭痛、吐き気、めまい、眠気、脱力感、食欲不振、嘔吐、下痢、頸部・喉・腹部の痛みなどであった。その後の症状として、持続性の吐き気、嘔吐、食欲不振、黄疸、尿量減少、下痢、血便、せん妄、不穏、反射喪失、血中アミノトランスフェラーゼ活性上昇その他の肝傷害の所見などがみられ、11例中7例は、ばく露の4~26日後に死亡した。全ての例で、死亡の主要な原因は急性肝不全とされた。
   実験動物では、ラット、ウサギ、ネコを用いた単回吸入ばく露試験で、用量の記載はないが、高濃度のばく露で嗜眠、衰弱、呼吸困難、チアノーゼ、虚脱を生じ、昏睡状態から死亡したとの記載がある (EHC 183 (1992))。また、ラットの1時間単回吸入ばく露試験で、2.8 mg/L (4時間換算値: 1.4 mg/L) では血中メトヘモグロビン濃度が0.2~8.6%、53.5 mg/L (4時間換算値: 26.8 mg/L) では84%に増加したとの報告、及びウサギの単回吸入ばく露試験で、8.5 mg/Lを2.25時間 (4時間換算値: 6.38 mg/L) のばく露又は15.4 mg/Lを4.5 時間 (4時間換算値: 16.33 mg/L) のばく露で、45~80%の赤血球にハインツ小体形成がみられたとの報告がある (EHC 138 (1992))。
   以上より本物質は中枢神経系、肝臓、血液系を標的臓器とし、また、麻酔作用を有すると考えられる。実験動物での血液系への影響は、区分1範囲の用量で認められた。したがって区分1 (中枢神経系、肝臓、血液系)、区分3 (麻酔作用) とした。情報源の見直しにより、旧分類から分類結果を変更した。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(肝臓)、区分2(血液系、呼吸器)


危険
警告
H372
H373
P260
P264
P270
P314
P501
   ヒトについては、DFGOT vol. 3 (1992) には、長期間ばく露すると、悪心、嘔吐、下痢、食欲不振及び重度の頭痛がみられるとの記載がある。しかし、EHC 138 (1992) には、ヒト職業ばく露例での悪心、嘔吐、食欲不振及び頭痛等は1日周期の急性影響であること、発がんや慢性影響に関する症例や疫学的証拠はないとの記載がある。
   実験動物については、ラットを用いた強制経口投与による4週間反復経口投与毒性試験において、区分2のガイダンス値の範囲である50 mg/kg/day (90日換算: 11 mg/kg/day) 以上で貧血等、250 mg/kg/day (90日換算: 56 mg/kg/day) で死亡 、ALT・AST・γ-GT増加、肝臓・脾臓・心臓重量増加、脾臓のヘモジデリン沈着増加、肝臓の肝細胞と核の多形化、単細胞壊死、卵円形細胞及び胆管の増生の報告がある (EHC 138 (1992))。
   ラットを用いた6ヵ月間吸入毒性試験 (7時間/日、5日/週) において、区分2のガイダンス値の範囲 (蒸気) である750 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.88 mg/L) で肺の水腫等の病変、肝臓重量増加、肝細胞肥大・過形成・壊死がみられている (EHC 138 (1992))。ラットを用いた18ヵ月間吸入毒性試験 (7時間/日、5日/週) において、区分2のガイダンス値の範囲内 (蒸気) である360 mg/m3 (90日間換算: 0.42 mg/L) で腎臓の石灰化の増加、ALT増加、肝臓の病変 (壊死、空胞変性、腫大等) がみられている (EHC 138 (1992))。ラットを用いた22ヵ月間吸入毒性試験 (7時間/日、5日/週) において、区分1のガイダンス値の範囲内 (蒸気) である78 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.091 mg/L) で肝臓の重量増加、肝臓の限局性肝細胞空胞化、わずかな肝臓のうっ血及び肝臓の限局性結節の増加傾向がみられている (IRIS (1991))。
   以上、ヒトについては反復ばく露での影響は特定できなかった。実験動物では、区分1のガイダンス値の範囲から肝臓、区分2のガイダンス値の範囲で血液系、呼吸器、腎臓に影響が認められたが、腎臓への影響は偶発的所見と考え分類根拠としなかった。
   したがって、区分1 (肝臓)、区分2 (血液系、呼吸器) とした。
   なお、ヒトへの影響を反復影響としなかったこと、情報源の内容を見直したことから旧分類と分類結果が異なった。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
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- -    データ不足のため分類できない。なお、HSDB (Access on August 2017) に記載された数値データ (粘性率: 0.721 mPa・s (25℃)、密度: 0.9821 g/cm3 (25℃)) より、動粘性率は0.73 mm2/sec (25℃) と算出される。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外
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- -    魚類(ファッドヘッドミノー)96時間LC50 >210 mg/L(WHO EHC:1992)であることから、区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外
-
-
- -    慢性毒性データが得られていない。急速分解性がなく(難分解性、BODによる分解度:14、8%(化審法DB:1987))、急性毒性区分外であることから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
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- -    データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
* 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
* 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
* 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

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