GHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 1303-96-4
名称 四ホウ酸ナトリウム (十水和物) (別名:ホウ砂)
物質ID H29-B-092
分類実施年度 平成29年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-
-
- -    爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外
-
-
- -    エアゾール製品ではない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外
-
-
- -    不燃性 (ICSC (J) (2014)) である。
8 自己反応性化学品 分類対象外
-
-
- -    分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外
-
-
- -    不燃性 (ICSC (J) (2014)) である。
11 自己発熱性化学品 区分外
-
-
- -    不燃性 (ICSC (J) (2014)) である。
12 水反応可燃性化学品 区分外
-
-
- -    半金属 (B) を含むが、水溶解度は5.1 g/100 mL 水 (ICSC (J) (2014)) との測定データが得られており、水と急激な反応はないと考えられる。
13 酸化性液体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない
-
-
- -    酸素を含む無機化合物であるが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 分類対象外
-
-
- -    無機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-
-
- -    固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外
-
-
- -    ラットのLD50値として、3,493 mg/kg、4,500 mg/kg、4,980 mg/kg、5,660 mg/kg、6,080 mg/kg (EHC 204 (1998))、4,500~6,000 mg/kg (ECETOC TR63 (1995)、PATTY (6th, 2012)) との報告があり、3件が区分外 (国連分類基準の区分5)、3件が区分外に該当する。有害性の高い区分を採用し、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外
-
-
- -    ウサギのLD50値として、> 10,000 mg/kg (HSDB (Access on August 2017)) との報告に基づき、区分外とした。
   
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
   
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- -    ラットの4時間吸入ばく露試験のLC50値として、> 2 mg/L (PATTY (6th, 2012)) との報告があり、区分4又は区分外に該当するが、このデータのみでは区分を特定できないため、分類できないとした。
   
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2


警告
H315 P302+P352
P332+P313
P362+P364
P264
P280
P321
   鉱業の生産部門や粉砕設備において本物質 (ホウ砂塵) をばく露された労働者に皮膚炎がみられたとの記載 (ACGIH (7th, 2001)) や、ウサギ及びモルモットを用いた皮膚刺激性試験で皮膚刺激性を示すとの結果 (ECETOC TR63 (1995)、NITE初期リスク評価書 (2008)) から、区分2とした。
   
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2


警告
H319 P305+P351+P338
P337+P313
P264
P280
   ホウ砂加工施設の労働者が、0.44~3.1mg ホウ素/m3 (5.7~14.6 mg粒子/m3、6時間加重平均) のばく露で眼に刺激がみられたとの記載 (ATSDR (2010)) や、ホウ砂粉砕及び精製施設における労働者の12.4%に眼刺激性がみられたが、低ばく露区域の労働者では2.8%と眼刺激性の頻度に有意差を認めたとの記載 (EHC 204 (1998)) がある。また、ウサギを用いた眼刺激性試験で強度の刺激性がみられたとの記載 (PATTY (6th, 2012)) や、別のウサギを用いた試験で結膜の変色、水疱形成、肥厚が生じ、角膜への刺激は8~21日で回復したとの記載 (ECETOC TR63 (1995)) がある。よって、区分2とした。
   
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
   
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
   
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。すなわち、in vivoデータはなく、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2008)、EHC 204 (1998))。
   
6 発がん性 分類できない
-
-
- -    本物質を含むホウ酸塩化合物はACGIHでA4に分類されている (ACGIH (7th, 2005))。よって、分類できないとした。
   
7 生殖毒性 区分1B


危険
H360 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
   雄ラットに本物質を1,000又は2,000 ppm で最長60日間混餌投与後に無処置雌と交配させ雄の授精能を検討した試験において、1,000 ppm (50 mgホウ素/kg/day) では回復性のある授精能力の低下がみられたが、2,000 ppm (100 mgホウ素/kg/day) では授精能力は12週間の観察期間を通して完全消失した (NITE初期リスク評価書 (2008)、ATSDR (2010))。また、雌雄ラットに本物質を最大1,170 ppm (58.5 mgホウ素/kg/day) で混餌投与した生殖毒性試験において、1,170 ppm群では精巣萎縮及び排卵数の減少、及び完全不妊が認められた。さらに、1,170 ppm投与群の雌を対照群の雄と交配した場合にも不妊であった (NITE初期リスク評価書 (2008)、ATSDR (2010))。以上、実験動物では本物質は一般毒性が明確に示されない用量で雌雄の生殖能力を低下させる。よって、区分1Bとした。なお、EUも本物質をRepr. 1Bに分類している (ECHA CL Inventory (Accesss on August 2017))。新たな情報源に基づき、旧分類から区分を変更した。
   
   
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系、消化管)、区分3(気道刺激性)



危険
警告
H370
H335
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
   本物質を含むホウ酸ナトリウム塩は、生理的pHでは水に溶けてホウ酸 (CAS番号 10043-35-3) を生成する (PATTY (6th, 2012))。ホウ酸及びホウ酸ナトリウム塩の主な有害性情報としては以下の報告がある。
   ヒトでは、ホウ酸30 gを水と共に一度に経口摂取した77歳男性が、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、紅斑、四肢チアノーゼ、急性腎不全、心肺性低血圧を生じ、心不全により死亡した例が報告されている (ATSDR (2010)、NITE初期リスク評価書 (2008))。また、4.5~14 gのホウ酸混入ミルクを摂取した新生児11名が嘔吐、下痢に加えて頭痛、振戦、不穏、痙攣、衰弱、昏睡など中枢神経系の症状を示し、うち5名は3日以内に死亡したとの報告がある (ATSDR (2010)、NITE初期リスク評価書 (2008))。更にボランティアによるホウ酸または七酸化二ナトリウム四ホウ素五水和物 (Na2B4O7・5H2O、CAS番号 12179-04-3) の単回吸入ばく露試験で、鼻汁分泌の増加がみられたとの報告がある (ACGIH (7th, 2005)、ATSDR (2010)、DFGOT (2013) (Access on May 2017))。
   実験動物では、ホウ酸又は本物質の実験動物への経口急性影響は中枢神経系抑制、痙攣、死亡であり、その用量は、区分2のガイダンス値を超える用量 (ラット、マウス: 2,403~6,080 mg/kg) であったと報告されている (ACGIH (7th, 2005)、ECETOC TR63 (1995))。
   以上の本物質に関する情報と、ホウ酸及び七酸化二ナトリウム四ホウ素五水和物に関する情報を総合して、区分1 (中枢神経系、消化管)、区分3 (気道刺激性) とした。
   なお、詳細が不明であるため根拠としなかったが、ヒトで本物質1 g以上が消化管又は皮膚から迅速に吸収された場合には、重度の消化管の刺激、腎障害、中枢神経系抑制又は血管系虚脱を生じて死亡する可能性もあるとの記述がある (ACGIH (7th, 2001))。旧分類ではこの情報に基づいて腎臓も標的臓器としていたが、詳細が不明であり、実験動物でも腎臓への急性及び慢性影響を示唆する情報がないため、不採用とした。また、旧分類での区分1 (呼吸器) に関しては、根拠とされた「呼吸器疾患、肺疾患、胸部X線映像の異常、呼吸器への刺激性」との記述はACGIH (7th, 2001) に原典の情報がないため詳細が確認できず、他の評価書にもホウ酸または七酸化二ナトリウム四ホウ素五水和物の吸入ばく露により鼻汁分泌増加がみられたとの情報しかないことから、区分3 (気道刺激性) が妥当であると判断した。したがって旧分類から分類結果を変更した。
   
   
   
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器、神経系)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
   ヒトについては、アメリカの大規模ホウ砂採鉱・精錬プラントで5年以上働く労働者629人 (うち女性26人) を対象とした横断研究では、非喫煙労働者で咳、粘液分泌過多、慢性気管支炎、喫煙歴ありの労働者で息切れの訴えに有意な増加傾向がみられた。肺機能検査及び胸部X線検査の結果とばく露濃度に関係がなかったとの報告がある (環境省リスク評価第14巻 (2016)、EHC 204 (1998))。また、ホウ砂と蜂蜜を混ぜたものを塗布したおしゃぶりを4~10週間使用した乳幼児 (6~16週齢) 7例で痙攣、易刺激性、消化管障害 (下痢、嘔吐) がみられ、使用の中止に伴い症状は消失したとの報告がある (EHC 204 (1998)、NITE初期リスク評価書 (2008)、ATSDR (2010))。
   実験動物については、ラットを用いた混餌投与による複数の試験があり、精巣の萎縮がみられている (NITE初期リスク評価書 (2008)、ATSDR (2010)) 。しかし、いずれも区分2のガイダンス値の範囲外であった。
   以上、ヒトにおいて呼吸器、神経系に影響がみられたことから、区分1 (呼吸器、神経系) とした。
   なお、旧分類でのヒトの所見「全身及び局所的な交差性運動発作、易刺激性、尿細管の混濁腫脹や顆粒変性」(EHC 204 (1998))のうち、神経系への影響については上記の乳幼児の報告であったが、腎臓の所見については症例が不明であったことから採用しなかった。また、旧分類の実験動物の精巣の所見については、ホウ素としてのばく露量であり本物質に換算すると区分2のガイダンス値の範囲を超えていた。したがって、旧分類から分類結果が変更となった。
   
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
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-
- -    データ不足のため分類できない。
   

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外
-
-
- -    魚類(ゼブラフィッシュ)96時間LC50 = 125 mg/L[14.2 mgB/L 換算値]、甲殻類(オオミジンコ)24時間LC50 = 644 mg/L[73 mgB/L 換算値](WHO EHC :1998)であることから、区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分4
-
-
H413 P273
P501
   慢性毒性データが得られていない。金属は元素であるため難分解とみなされ、LogKowから蓄積性を推定できない。また、高蓄積性の可能性がないとは言えないため、対水溶解度は高い(59,300 mg/L)が慢性毒性を有する可能性があることから、区分4とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
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- -    データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
* 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
* 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
* 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

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