GHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 107-18-6
名称 アリルアルコール
物質ID H29-B-072
分類実施年度 平成29年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成21年度   平成18年度  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
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厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-
-
- -    爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外
-
-
- -    エアゾール製品ではない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2


危険
H225 P303+P361+P353
P370+P378
P403+P235
P210
P233
P240
P241
P242
P243
P280
P501
   引火点21℃ (closed cup)、沸点97℃ (ICSC (J) (2000)) に基づいて区分2とした。なお、UNRTDG分類はUN 1098、クラス6.1、副次3、PGⅠである。
7 可燃性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 タイプG
-
-
- -    自己反応性に関連する原子団 (エチレン基) を含むが、UNRTDGにおいて、UN 1098、クラス 6.1、副次3、PG Iに分類されており、優先評価項目の自己反応性化学品には該当しない。
9 自然発火性液体 区分外
-
-
- -    発火点は378℃ (ICSC (J) (2000)) であり常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- -    液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-
-
- -    金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外
-
-
- -    フッ素および塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外
-
-
- -    分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 区分外
-
-
- -    金属に対して腐食性なし (HSDB (Access on July 2017))。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3


危険
H301 P301+P310
P264
P270
P321
P330
P405
P501
   ラットのLD50値として、64 mg/kg (ACGIH (7th, 2001))、70 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、SIDS (2016))、99 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、SIDS (2016))、105 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、SIDS (2016)) との報告に基づき、区分3とした。
1 急性毒性(経皮) 区分1


危険
H310 P302+P352
P361+P364
P262
P264
P270
P280
P310
P321
P405
P501
   ウサギのLD50値として、45 mg/kg (DFGOT vol. 15 (2001)、PATTY (6th, 2012)) 及び89 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、SIDS (2016)) との2件の報告があり、1件が区分1、1件が区分2に該当する。有害性の高い区分を採用し、区分1とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分2


危険
H330 P304+P340
P403+P233
P260
P271
P284
P310
P320
P405
P501
   ラットの4時間吸入ばく露試験のLC50値として、0.300~0.330 mg/L (124~137 ppm) (SIDS (2016)) 及び165 ppm (DFGOT vol. 15 (2001)、PATTY (6th, 2012)) との報告に基づき、区分2とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (33,515 ppm) の90%より低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2


警告
H315 P302+P352
P332+P313
P362+P364
P264
P280
P321
   ウサギを用いた皮膚刺激性試験では軽度又は刺激性なしとの報告 (SIDS (2016)、NITE初期リスク評価書 (2007)) があるが、ヒトの皮膚に本物質が接触すると腐食と深部の筋肉に痛みがみられるとの記載 (DFGOT vol. 15 (2001)、PATTY (6th, 2012)) から、区分2とした。なお、EU CLP分類において本物質はSkin Irrit. 2に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on June 2017))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A


警告
H319 P305+P351+P338
P337+P313
P264
P280
   ウサギを用いた眼刺激性試験 (Directive 84/449/EEC, B.5) で適用後24、48、72時間における評価の平均スコアが、結膜発赤2.89、結膜浮腫1.23、角膜混濁2.09 であり刺激性があるとの結果であり、他のウサギを用いた複数の試験でも本物質は眼刺激性を示したとの記述 (SIDS (2016)、NITE初期リスク評価書 (2007)、PATTY (6th, 2012)) がある。ヒトでの飛散事故の事例で、角膜火傷を生じたとの報告 (環境省リスク評価第3巻 (2004)) や、一時的な失明の報告 (ACGIH (7th, 2001)) があるがいずれも回復性の症状であった。以上から区分2Aとした。なお、EU CLP分類において本物質はEye Irrit. 2, H319 に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on June 2017))。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
   
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- -    モルモットによる皮膚感作性試験 (OECD TG 406準拠) において、試験動物はいずれも陽性反応を示さず (陽性率: 0/20)、皮膚感作性物質ではないとの記述 (SIDS (2016)) があるが、その他の動物試験やヒトの情報が得られなかったため、分類できないとした。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-
-
- -    ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、ラットの優性致死試験、ラットの末梢血を用いた小核試験、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験でいずれも陰性 (SIDS (2016)、DFGOT vol. 15 (2001)、PATTY (6th, 2012)、環境省リスク評価第3巻 (2004))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、マウスリンフォーマ試験で陽性である (NITE初期リスク評価書 (2007)、SIDS (2016)、DFGOT vol. 15 (2001)、PATTY (6th, 2012)、環境省リスク評価第3巻 (2004))。
6 発がん性 分類できない
-
-
- -    ラットに2年間飲水投与した発がん性試験において、雄には発がん性の明らかな証拠はみられなかったが、雌では肝臓の腫瘍性結節及びがんの発生増加がみられ、発がん性の不確かな証拠と結論された (SIDS (2016))。既存分類ではACGIHがA4に分類しており (ACGIH (7th, 2015))、以上より分類できないとした。
7 生殖毒性 分類できない
-
-
- -    ラットを用いた強制経口投与による生殖発生毒性スクリーニング試験 (OECD TG 421) では、母親動物に肝臓影響 (肝臓の腫大、黄斑、表面粗造) がみられた高用量 (40 mg/kg/day) で、雌に卵巣の黄体細胞の過形成、性周期の延長及び性周期の不規則化が、児動物に生後4日の生存率の低下がみられたが、児動物における有害影響は母体毒性による二次的影響と考えられた (SIDS (2016))。また、雄ラットに11週間強制経口投与し、その間毎週、無処置雌と交配させた結果、雄の生殖能への影響はみられなかった (NITE初期リスク評価書 (2007)、PATTY (6th, 2012)、DFGOT vol. 15 (2001))。この他、妊娠ラットの妊娠6~19日に強制経口投与した発生毒性試験では母動物に重篤な一般毒性 (死亡、体重増加抑制、摂餌量減少、肝臓影響など) がみられた35 mg/kg/day 以上で、全胎児死亡雌の増加が認められたが、胎児死亡は重篤な母動物毒性によるものとされている (SIDS (2016)、PATTY (6th, 2012))。
   以上、胎児死亡の増加は重篤な母動物毒性によるものとされていることから、ガイダンスに従い、分類できないとした。なお、旧分類 (区分外) から分類結果を変更した。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系、肝臓、腎臓)、区分3(気道刺激性)



危険
警告
H370
H335
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
   ヒトでは本物質を誤って床や衣服にこぼし、室内に拡散した蒸気を吸入した事故例が2例報告されており、いずれも吐き気、嘔吐を伴う消化管障害と激しい頭痛を示して、1例では軽度の喀血がみられたが、その後、回復したとの記載がある (ACGIH (7th, 2001)、NITE初期リスク評価書 (2007))。実験動物では、ラットの単回経口投与試験で、無反応、運動失調、攻撃性、皮膚の紅潮、下痢が認められ、死亡例の剖検では肺のうっ血と水腫、肝臓の変色がみられたとの報告がある。これらの影響がみられた用量の詳細な記載はないが、LD50値である95~105 mg/kg付近の区分1範囲と考えられる (SIDS (2016))。また、別のラットの単回経口投与試験で、区分1範囲の30~40 mg/kgで肝細胞の門脈周辺性壊死が認められたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007))。吸入経路では、ラットに本物質の蒸気0.095~5.45 mg/Lを1、4、8時間吸入ばく露した試験で、昏睡と下痢がみられ、死亡例の組織病理所見では肺のうっ血、肝臓のうっ血及び壊死、腎臓での赤色円柱と混濁腫脹が認められたとの報告がある (SIDS (2016)、SIDS Dossier (2016))。また、マウスの感覚刺激試験で、本物質の吸入ばく露により呼吸数の一過性の減少が認められ、気道刺激性を示すものとされている (DFGOT vol. 15 (2001)、SIDS (2016))。以上の情報から、本物質は中枢神経系、肝臓、腎臓を標的臓器とし、気道刺激性を示すと考えられる。したがって、区分1 (中枢神経系、肝臓、腎臓)、区分3 (気道刺激性) とした。旧分類が標的臓器とした肺に関しては、死亡動物の所見であり、二次的影響の可能性があることから、採用しなかったため、分類結果が変更となった。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(肝臓)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
   ヒトに関する情報はない。
   実験動物については、ラット、マウスを用いた14週間反復経口投与毒性試験において、ラットでは、区分1のガイダンス値の範囲内である6 mg/kg/day (90日換算: 4.7 mg/kg/day) 以上で前胃の扁平上皮の過形成、区分2のガイダンス値の範囲内である25 mg/kg/day (90日換算: 19.4 mg/kg/day) で肝臓重量増加、胆管過形成、門脈周囲の肝細胞肥大、性周期の異常 (発情間期の延長、発情後期の短縮) がみられ、マウスでは区分1のガイダンス値の範囲内である12 mg/kg/day (90日換算: 9.3 mg/kg/day) 以上で前胃の扁平上皮の過形成、区分2のガイダンス値の範囲内である25 mg/kg/day (90日換算: 19.4 mg/kg/day) 以上で門脈周囲の肝細胞空胞化がみられている (NTP TOX 48 (2006))。また、ラットを用いた90日間飲水投与毒性試験において、区分2のガイダンス値の範囲内である70 mg/kg/dayにおいて再生を伴った肝細胞壊死がみられている (環境省リスク評価第3巻 (2004)、NITE初期リスク評価書 (2007)、SIDS (2016))。
   ラットを用いた12週間吸入毒性試験 (7時間/日、5日/週) においては、区分1のガイダンス値の範囲内である20 ppm (90日換算: 0.04 mg/L) 以上で体重増加抑制、40 ppm (90日換算: 0.07 mg/L) 以上で肺の相対重量増加、喘ぎ呼吸、重度の抑うつ、鼻出血、眼刺激、角膜混濁がみられ、60 ppm (90日換算: 0.11 mg/L) 以上で死亡、腎臓の相対重量増加がみられた。また、150 ppm (90日換算: 0.19 mg/L) では、1~10回ばく露で全例死亡し、肝出血、肺の変色、腸管うっ血がみられている (NITE初期リスク評価書 (2007)、SIDS (2016))。このほか、ラット、ウサギ、モルモットを用いた5週間吸入毒性試験においては、区分1のガイダンス値の範囲内である7 ppm (90日換算: 0.006 mg/L) の全動物種で肝臓の類洞拡張、肝細胞の混濁腫脹及び限局性の壊死、腎臓の糸球体腎炎様変化、尿細管上皮の壊死、間質組織の増生がみられたとの報告がある (環境省リスク評価第3巻 (2004)、NITE初期リスク評価書 (2007))。しかし、NITE初期リスク評価書 (2007) ではこのデータについて実験条件やデータの詳細が不明であり、評価することはできないとしており、SIDS (2016) では信頼性を評価できないとして引用していない。
   以上、5週間吸入毒性試験のデータは信頼性が乏しいこと、前胃の所見は刺激性によるものと考えられ分類根拠としなかった。
   したがって、区分1 (肝臓) とした。
   なお、5週間の吸入毒性試験のデータを採用せず、腎臓を標的臓器から除外したため旧分類と分類結果が異なった。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。なお、HSDB (Access on June 2017) に収載された数値データ (粘性率: 1.218 mPa・s (25℃)、密度 (比重): 0.8540) より、動粘性率は1.426 mm2/sec (25℃) と算出される。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1


警告
H400 P273
P391
P501
   甲殻類(オオミジンコ)96時間LC50 = 0.25 mg/L(環境省環境リスク評価(第3巻):2004)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分3
-
-
H412 P273
P501
   慢性毒性データを用いた場合、急速分解性があり(良分解性、BODによる分解度:86%(化審法DB:1976))、蓄積性がなく(logKow:0.17 (PHYSPROP Database:2010))、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC(繁殖阻害)= 0.919 mg/L(環境省環境リスク評価(第3巻):2004、NITE初期リスク評価書:2007)であることから、区分3とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
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- -    データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
* 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
* 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
* 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

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