GHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 7789-38-0
名称 臭素酸ナトリウム
物質ID H29-B-062
分類実施年度 平成29年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成20年度  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 区分外
-
-
- -    爆発性に関連する原子団 (O-ハロゲン) を含むが、UNRTDGで UN 1494、クラス5.1、PG IIに分類されているので、優先評価項目の爆発物には該当しない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外
-
-
- -    エアゾール製品ではない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外
-
-
- -    不燃性である (ICSC (J) (2006))。
8 自己反応性化学品 分類対象外
-
-
- -    爆発性に関連する原子団 (O-ハロゲン) を含むが、酸化性固体に分類されている。
9 自然発火性液体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外
-
-
- -    不燃性である (ICSC (J) (2006))。
11 自己発熱性化学品 区分外
-
-
- -    不燃性である (ICSC (J) (2006))。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-
-
- -    金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 区分2


危険
H272 P370+P378
P210
P220
P221
P280
P501
   UNRTDGで UN 1494、クラス5.1、PG IIであることから区分2とした。
15 有機過酸化物 分類対象外
-
-
- -    無機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-
-
- -    固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(経皮) 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2


警告
H315 P302+P352
P332+P313
P362+P364
P264
P280
P321
   ヒトにおいて本物質は皮膚刺激性を有するとの記述 (HSDB (Access on June 2017))、及び臭素又は臭素酸塩は長期の接触でウサギの表皮に熱傷を起こすが数日で回復するとの記述 (PATTY (6th, 2012)) から、区分2とした。今回の調査で入手した情報をもとに区分を見直した。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2


警告
H319 P305+P351+P338
P337+P313
P264
P280
   ヒトにおいて本物質は眼刺激性があるとの記述 (HSDB (Access on June 2017))、及び臭素又は臭素酸塩は、ウサギの眼に対して中等度の刺激性及び軽度の角膜損傷を引き起こすが数日で回復するとの記述 (PATTY (6th, 2012)) から、区分2とした。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
   
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 区分2


警告
H341 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
   本物質に関しては、in vivoでマウスの骨髄細胞、末梢血を用いた小核試験で陽性 (NTP DB (Access on July 2017)、NTP GMM 6 (2007)、HSDB (Access on June 2017))、in vitroでは細菌の復帰突然変異試験で陰性の報告がある (HSDB (Access on June 2017))。以上より、ガイダンスに従い区分2とした。
6 発がん性 区分2


警告
H351 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
   本物質を遺伝子改変マウス (Tg. ACマウス) 雌雄に最大256 mg/kg/day を最長39週間経皮適用した試験、及び2系統の遺伝子改変マウス (p53欠失マウス、又はTg. ACマウス) 雌雄に最高800 mg/L の濃度 (65~152 mg/kg/day相当) で最長43週間飲水投与した試験のいずれにおいても、腫瘍発生の増加はなく、発がん性の証拠は示されなかった (NTP GMM 6 (2007))。一方、臭素酸カリウム (CAS番号 7758-01-2) を通常の試験動物に投与した発がん性試験報告があり、臭素酸塩として本項分類に利用可能と考えた。すなわち、雄マウスに臭素酸カリウムを2年間飲水投与した試験では、低用量で腎細胞腺腫及びがん発生頻度に有意な増加がみられたが、中用量以上では有意な増加は示されなかった (IARC 73 (1999))。しかし、雄ラットに臭素酸カリウムを2年間飲水投与した2つの試験のうち、1試験では尿細管腺腫及び腺がん、甲状腺濾胞細胞腫瘍、及び腹膜中皮腫の発生頻度に有意な増加が、他1試験では精巣鞘膜中皮腫、腎細胞腫瘍、甲状腺濾胞細胞腺腫及びがんの発生頻度に有意な増加が認められた (IARC 73 (1999))。既存分類ではIARCが臭素酸カリウムに対してグループ2Bに (IARC 73 (1999))、EUが臭素酸カリウムに対して Carc. 1B に (ECHA CL Inventory (Access on June 2017))、EPA が臭素酸塩 (CAS番号 15541-45-4) に対して B2 (Probably human carcinogen) に分類している (IRIS (2001))。以上、本物質自体のデータとしては遺伝子改変マウスで発がん性がみられていないが、臭素酸カリウムについては雄ラットでのみ発がん性が認められた。臭素酸カリウム又は臭素酸塩についての EU と EPA の既存分類結果からは区分1Bとなるが、遺伝子改変マウスを用いた本物質の経口及び経皮投与試験、及び通常マウスを用いた臭素酸カリウムの経口投与試験のいずれも陰性であり、IARCが臭素酸カリウムに対しグループ2Bとしていることを踏まえ、本項は区分2が妥当と判断した。
7 生殖毒性 分類できない
-
-
- -    雄ラットに本物質 25~250 ppm を35日間飲水投与後に2群の雌ラットと交配させ、雌ラットの1群には交配から妊娠初期まで、他の1群には妊娠6日から分娩まで本物質を雄と同濃度で飲水投与した生殖発生毒性スクリーニング試験において、雌の生殖能への影響は認められなかった。雄では高用量群 (250 ppm) でみられた唯一の影響は精巣上体精子数の減少 (これのみでは分類根拠とならない) であった (IARC 73 (1999)、食品安全委員会化学物質・汚染物質評価書 (2008))。本試験はスクリーニング試験であり、この結果のみで区分外とはできず、これ以外に分類に利用可能なデータはないため、分類できない。なお、旧分類が区分外とした根拠データの多世代試験はNTP DB の中で確認できなかった。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(神経系、腎臓、血液系)、区分3(麻酔作用)



危険
警告
H370
H336
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
   ヒトでは事故又は自殺企図による本物質の経口摂取による中毒例が4例報告されている (HSDB (Access on June, 2017)、PATTY (6th, 2012))。症状としては重度の腎不全、聴覚喪失、貧血、末梢神経障害が認められたと報告されている (HSDB (Access on June, 2017)、PATTY (6th, 2012))。また、臭素酸塩 (臭素酸カリウム (CAS番号 7758-01-2) 又は本物質) の経口摂取によるヒトでの中毒症状として、上記の症状に加えて、胃腸に対する刺激性影響として嘔吐、腹痛、下痢、中枢神経系の影響として嗜眠、低血圧、緊張低下及び反射消失がみられたとの記載がある (EHC 216 (2000)、IRIS (2001))。以上より区分1 (神経系、腎臓、血液系)、区分3 (麻酔作用) とした。旧分類は消化器系も標的臓器に含めていたが、本物質の刺激性によるものと考えられるため除外した。また旧分類はICSC (2006) の記述に基づいて、区分3 (気道刺激性) としていたが、ICSCは現行ガイダンスではList 3の情報源であるため不採用とした。
   なお、本物質か臭素酸カリウムか明記されていないため根拠としなかったが、実験動物では、臭素酸塩のラット、マウス、ハムスターへの単回経口投与により、区分2範囲の280~495 mg/kg付近の用量で、運動失調、頻脈、体温低下、下痢、流涙、立毛が認められ、剖検で胃の出血、肺のうっ血、近位尿細管上皮の壊死を含む腎尿細管の損傷が認められたとの報告がある (EHC 216 (2000))。
   
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない
-
-
- -    ヒトに関する情報はない。
   実験動物については、2系統の遺伝子改変マウス (p53欠失マウス、又はTg. ACマウス) を用いた試験があり系統により違いがみられている。Tg. ACマウスでは、27週間飲水投与毒性試験において、区分2のガイダンス値の範囲内である80 mg/L (雄: 13 mg/kg/day、雌: 15 mg/kg/day) 以上で腎症、400 mg/L (雄: 63 mg/kg/day、雌: 72 mg/kg/day) 以上でヘマトクリット値・ヘモグロビン濃度・赤血球数の減少、平均赤血球ヘモグロビン量・濃度の減少、網状赤血球数の増加、甲状腺の濾胞細胞過形成、甲状腺の濾胞分泌減少、甲状腺のリンパ球浸潤、尿細管の過形成がみられ、43週間飲水投与毒性試験 (血液学的検査は未実施) において区分2のガイダンス値の範囲内では甲状腺への影響がみられている。また、26週間経皮投与毒性試験において、区分2のガイダンス値の範囲内である64 mg/kg/day以上で甲状腺の濾胞細胞過形成、平均赤血球ヘモグロビン濃度の減少、128 mg/kg/day以上で腎症、甲状腺の濾胞分泌減少、ヘマトクリット値・ヘモグロビン濃度・平均赤血球ヘモグロビン量の減少、網状赤血球数増加、脾臓の造血細胞増殖がみられ、39週間経皮投与毒性試験 (血液学的検査は未実施) において区分2のガイダンス値の範囲内では甲状腺への影響がみられている。一方、p53欠失マウスでは27週間あるいは43週間飲水投与毒性試験においては、試験の最高用量であり区分2のガイダンス値の範囲内あるいは上限近傍である800 mg/L (27週間試験 (雄: 74 mg/kg/day、雌: 136 mg/kg/day)、43週間試験 (雄: 65 mg/kg/day、雌: 107 mg/kg/day)) において体重の低値以外に影響は認められていない (NTP GMM 6 (2007))。
   本物質と同様、臭素酸塩である臭素酸カリウムの情報として、雌雄ラットを用いた13週間飲水投与試験では600 ppm (臭素酸として63 mg/kg/day) の雌雄でAST・ALT・乳酸脱水素酵素、アルカリ性ホスファターゼ、尿素窒素の増加、雄で近位尿細管の好酸性小滴がみられている (IRIS (2001)、EHC 216 (2000))。雄ラット及び雄マウスを用いた100週間飲水投与試験において、雄ラットにおいて臭素酸として6.1 mg /kg/day以上で尿路上皮の過形成がみられ、用量の記載はないが尿細管上皮の好酸性小滴、腎乳頭の鉱質沈着がみられている 。マウスについては、最高用量の59.6 mg/kg/dayで摂水量減少がみられた以外に影響はみられていない (IRIS (2001))。このほか、ラットに臭素酸ナトリウム (雄のみ)、臭素酸カリウム(雌雄)、臭化カリウム (雄のみ) を飲水投与して腎臓の蛋白滴の蓄積をα2uグロブリンの免疫組織学的染色により評価した試験において、臭素酸カリウム、臭素酸ナトリウム投与の雄で腎臓に蛋白滴がみられ、α2uグロブリンであることが確認されている (IARC 73 (1999))。
   以上、本物質については2系統の遺伝子改変マウスを用いた試験があるが、系統により違いがみられること、臭素酸カリウムについては主に雄ラット特有の腎症がみられ、マウスでは明確な臓器毒性がみられていない。したがって、分類できないとした。
   なお、特定の遺伝子改変マウスのみのデータを分類根拠としなかったため旧分類と分類結果が異なった。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3
-
-
H402 P273
P501
   魚類(ストライプドバス)96時間LC50 = 36.3 mg/L[臭素酸濃度:30.8 mg/L 換算値] (NLM HSDB:2009)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分3
-
-
H412 P273
P501
   慢性毒性データが得られていない。無機化合物であり、環境中の動態については不明であるが、急性毒性区分3であることから、区分3とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- -    データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
* 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
* 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
* 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

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