GHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 7785-87-7
名称 硫酸マンガン(Ⅱ)
物質ID H29-B-037
分類実施年度 平成29年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
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厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
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物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-
-
- -    爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外
-
-
- -    エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外
-
-
- -    不燃性である (GESTIS (Access on June 2017))。
8 自己反応性化学品 分類対象外
-
-
- -    分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外
-
-
- -    不燃性である (GESTIS (Access on June 2017))。
11 自己発熱性化学品 区分外
-
-
- -    不燃性である (GESTIS (Access on June 2017))。
12 水反応可燃性化学品 区分外
-
-
- -    水溶解度は393 g/L (GESTIS (Access on June 2017)) との測定データが得られており、水と急激な反応はないと考えられる。
13 酸化性液体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない
-
-
- -    酸素を含む無機化合物であるが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 分類対象外
-
-
- -    無機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-
-
- -    固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4


警告
H302 P301+P312
P264
P270
P330
P501
   ラットのLD50値として、782 mg/kg (ATSDR (2012)) との報告に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。   
   
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 区分2


警告
H341 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
   In vivoでは、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験で陽性 (NITE初期リスク評価書 (2008)、ATSDR (2012)、CICAD 12 (1999))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陽性である (NITE初期リスク評価書 (2008)、ATSDR (2012)、CICAD 12 (1999))。以上より、ガイダンスに従い区分2とした。
6 発がん性 分類できない
-
-
- -    ラット及びマウスに硫酸マンガン一水和物 (CAS番号 10034-96-5) を2年間混餌投与した発がん性試験において、ラットでは雌雄ともに腫瘍発生の増加はなく発がん性の証拠はないとされた。一方、マウスでは雄に甲状腺濾胞細胞腺腫、雌に甲状腺濾胞細胞の過形成が示され、発がん性の不確かな証拠 (equivocal evidence) と結論された (NTP TR428 (1993)、CICAD 12 (1999)、NITE初期リスク評価書 (2008)、食品安全委員会清涼飲料水評価書 (2012))。この他、マウスに本物質を腹腔内投与 (30週間に22回) した試験では肺に腫瘍発生がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008)、CICAD 12 (1999))。国際機関による発がん性分類結果はないが、WHOはマンガンの発がん性について、げっ歯類での不確かな証拠と他種での証拠が不足していることから、結論は下せないとの見解を示した (CICAD 12 (1999))。また、食品安全委員会はマンガンの発がん性について、ヒトへの発がん性を示す知見は得られていないと結論した (食品安全委員会清涼飲料水評価書 (2012))。以上、マンガンを対象としたWHO等の見解を踏まえ、本項は分類できないとした。
7 生殖毒性 区分1B


危険
H360 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
   本物質を妊娠マウスに単回腹腔内投与した試験で、胚吸収、奇形 (外脳症) などがみられたが、大量のマンガンを腹腔内投与するという特殊な条件下での結果で、ヒトへの適用は困難であると報告されている (NITE初期リスク評価書 (2008))。本物質以外では塩化マンガン四水和物 (CAS番号 13446-34-9) を雌雄マウスに交配前12週間飲水投与後に無処置の雌雄と交差交配した結果、1,000 mg/L (44~48 mg Mn/kg/day) 以上で飲水量の減少がみられ、8,000 mg/L (277~309 mg Mn/kg/day) では授精率の低下が雄に、着床率及び生存胎児数の減少が雌にみられた (食品安全委員会清涼飲料水評価書 (2012)、ATSDR (2012))。四酸化三マンガン (CAS番号 1317-35-7) を交配前90~100日間混餌投与した試験では130 mg Mn/kg/dayの雌で妊娠率の低下がみられた (CICAD 12 (1999)、ATSDR (2012))。塩化マンガン (CAS番号 7773-01-5) を妊娠ラットに妊娠期間を通して飲水投与した試験では、母動物に着床後胚損失の増加がみられた75 mg/kg/day (33 mg Mn/kg/day) で、児動物に骨と内臓の発達遅延、内反足など外表奇形の発生頻度の増加が認められた (食品安全委員会清涼飲料水評価書 (2012)、ATSDR (2012))。塩化マンガン四水和物を雌ラットに妊娠15~20日前から分娩1ヵ月後まで飲水投与し、生後40日齢の児動物の脳を調べた結果、10 mg/kg/day (2.8 mg Mn/kg/day) 以上で大脳皮質のマンガン濃度増加、全脳部位で神経細胞の7~10%に変化、グリア細胞数の用量依存的増加、側坐核で顕著なグリオーシスが認められた (食品安全委員会清涼飲料水評価書 (2012))。 既存分類では日本産業衛生学会がマンガン及びマンガン化合物に対して生殖毒性物質第2群 (区分1B相当) に分類している (産衛学会許容濃度の勧告 (2016))。
   以上、マンガン化合物の生殖発生毒性影響として、親動物の一般毒性影響が概ね明らかでない用量で雌雄とも生殖能低下、児動物に発育遅延、外表奇形、脳神経系への影響などの知見があること、及び産衛学会の分類結果に基づき、本項は区分1Bとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。本物質のヒト及び実験動物での単回ばく露の情報はない。本物質は無機マンガン化合物であり、水に可溶との情報がある (環境省リスク評価第6巻 (2008))。他の可溶性マンガン化合物では、酢酸マンガン(II) (CAS番号 638-38-0)、硝酸マンガン(II) (CAS番号 10377-66-9)、塩化マンガン(II)四水和物 (CAS番号 13446-34-9) は、いずれも本物質と同様に単回ばく露の影響の情報がなく、平成28年度GHS分類において、データ不足のため分類できないとされている。
   本物質ではないが、不溶性マンガン化合物である二酸化マンガン (CAS番号 1313-13-9) 及びマンガン粉じんではヒトで肺への影響が報告されており (CICAD 12 (1999))、旧分類はこの情報を参考として本物質を区分1 (呼吸器) と分類していたが、不溶性マンガン粉じんの吸入ばく露と可溶性の本物質では呼吸器への影響が異なる可能性がある。
   以上、本物質の影響の情報がなく、他のマンガン化合物に関しても参考とできる情報がないことから、分類できないとした。旧分類から分類結果を変更した。
   
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(神経系、呼吸器)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
   ヒトについては本物質の情報はないが、ヒトにおいて経口又は吸入経路でマンガンに過剰にばく露されると、急性影響としては記憶障害、精神症状などがみられ、慢性影響としては歩行障害、言語障害などパーキンソン病に類似したマンガン中毒の症状がみられる。特に吸入ばく露において重篤な影響がみられる (NITE初期リスク評価書 (2008))。経口経路では高濃度のマンガンを含む井戸水を摂取した事例や、マンガン濃度の高い地域に居住する住民に対する疫学調査において、仮面様顔貌、筋硬直、振戦、及び精神障害などマンガン中毒に似た症状が報告されている (NITE初期リスク評価書 (2008))。マンガン酸化物、マンガン塩製造工場において、二酸化マンガン、四酸化三マンガン、マンガン塩 (硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩) の粉じんのばく露による神経行動学的機能への影響の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008))。二酸化マンガンでの職業ばく露により、マンガン中毒による神経毒性の報告があり、視覚の単純反応時間及び眼と手の協調運動の低下に加え、手の硬直がみられた (SIDS (2012)、NITE初期リスク評価書 (2008)、ATSDR (2012)) との報告がある。また、二酸化マンガンを主体とするマンガン化合物では呼吸器障害 (咳、気管支炎、肺炎など) を生じることが多くの報告事例で明らかにされている (ATSDR (2012))。
   実験動物については、本物質の情報は無いが、一水和物についての情報がある。ラット、マウスを用いた混餌投与による13週間反復経口投与毒性試験、ラット、マウスを用いた混餌投与による2年間反復経口投与毒性試験において区分2のガイダンス値の範囲内で有害な影響はみられていない (NTP TR428 (1993)、NITE初期リスク評価書 (2008))。
   以上、ヒトにおいて神経系及び呼吸器への影響の可能性があることから、区分1 (神経系、呼吸器) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
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- -    データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3
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-
H402 P273
P501
   甲殻類(オオミジンコ)48時間EC50 = 22.8 mg/L[8.28 mgMn/L 換算値](環境省環境リスク評価(第10巻):2008, NITE初期リスク評価書: 2008)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分3
-
-
H412 P273
P501
   慢性毒性データを用いた場合、金属塩の水中での挙動は不明であるが、金属は元素であるため難分解とみなされ、対水溶解度が389,000 mg/Lであり、魚類 (ニジマス)の100日間NOEC(生存率)= 2.1 mg/L[0.77 mg/Mn/L 換算値](NITE初期リスク評価:2008)であることから、区分外となる。
   慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、金属塩の水中での挙動は不明であるが、金属は元素であるため難分解とみなされ、対水溶解度が389,000 mg/Lであり、藻類(Nitzschia closterium)96時間EC50(POP、非キレート培地)= 70.6 mg/L[25.7 mgMn/L](環境省リスク評価第10巻:2008)であることから、区分3となる。
   以上の結果から、区分3とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
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- -    データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
* 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
* 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
* 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

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