GHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 79-01-6
名称 トリクロロエチレン
物質ID H29-B-019
分類実施年度 平成29年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
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厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-
-
- -    爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外
-
-
- -    エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 分類できない
-
-
- -    難燃性 (ホンメル (1991)) との情報があるが、確定的な判定をできるデータがなく、分類できない。
7 可燃性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 タイプG
-
-
- -    自己反応性に関連する原子団 (エチレン基) を含むが、UNRTDGにおいて UN 1710、クラス6.1、PGⅢに分類されているので、優先評価項目の自己反応性化学品には該当しない。
9 自然発火性液体 区分外
-
-
- -    発火点は410℃(ICSC (J) (2013)) であり常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- -    液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-
-
- -    金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外
-
-
- -    フッ素及び酸素を含まず、塩素を含む有機化合物であるが、この塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外
-
-
- -    分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-
-
- -    データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外
-
-
- -    ラットのLD50値として、5,400~7,200 mg/kg (EU-RAR (2004)、ATSDR (2014)) との報告に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外
-
-
- -    ウサギのLD50値として、29,000 mg/kg (NICNAS (2000)) との報告に基づき区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分4


警告
H332 P304+P340
P261
P271
P312
   ラットの4時間吸入試験のLC50値として、4,800 ppm (NICNAS (2000)、EU-RAR (2004)) 及び12,000 ppm (EU-RAR (2004))、6時間吸入試験のLC50値として、5,918 ppm (4時間換算値: 7,248 ppm) (EU-RAR (2004))、1時間吸入試験のLC50値として、26,000 ppm (4時間換算値: 13,000 ppm) (NICNAS (2000) との報告があり、全て区分4に該当することから区分4とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (77,227 ppm) の90%より低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2


警告
H315 P302+P352
P332+P313
P362+P364
P264
P280
P321
   ヒトの事例で労働環境において本物質のばく露により皮膚炎や紅斑を生じたとの報告 (ASTDR (1997)) や、ウサギ及びモルモットを用いた皮膚刺激性試験において顕著な皮膚刺激性を認めたとの報告 (EU-RAR (2004)) から、区分2とした。なお、EU CLP分類において本物質はSkin Irrit. 2に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on May 2017))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A


警告
H319 P305+P351+P338
P337+P313
P264
P280
   ヒトの事故例で、原液の飛沫が眼に入り眼の痛みと角膜上皮の損傷を生じたが数日後に完治したとの報告 (EU-RAR (2004)) や、ウサギを用いた眼刺激性試験において軽度から中等度の結膜炎が生じ、7日後に上皮の角化を認めたが、2週間後には正常に回復したとの報告 (EU-RAR (2004)) から、区分2Aとした。なお、EU CLP分類において本物質はEye Irrit. 2に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on May 2017))。
4 呼吸器感作性 区分外
-
-
- -    ヒトに呼吸器感作性を示す報告はない。また、ヒトの吸入ばく露の事例から、すべての証拠は本物質が呼吸器感作性物質ではないことを示しているとの記述 (EU-RAR (2004)) から、区分外とした。
   
4 皮膚感作性 区分1


警告
H317 P302+P352
P333+P313
P362+P364
P261
P272
P280
P321
P501
   本物質は、日本産業衛生学会で皮膚感作性物質の第1群に分類されている。ヒトにおいて本物質に対する過敏症症候群患者19 名、本物質に12週間以上ばく露した健常者22名を対象に、本物質及び本物質の代謝物である抱水クロラール (CH)、トリクロロエタノール (TCOH) およびトリクロロ酢酸 (TCA) のパッチテストを行ったところ、過敏症症候群患者は全物質に対して陽性を示し、健常者は陰性であった (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2016))。又、本物質に感作性があるとする、動物試験を含む複数の事例の報告 (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2016)) がある。よって区分1とした。なお、ヒトの本物質に対する皮膚感作性症状の報告は散発的であり、感作性発症は特異体質のヒトの症状であるので、本物質は皮膚感作性を有すると結論してはならないとの指摘がある (EU-RAR (2004))。今回の調査で入手した情報をもとに区分を見直した。
   
5 生殖細胞変異原性 区分2


警告
H341 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
   In vivoでは、マウスの優性致死試験で陰性、トランジェニックマウスの腎臓、脾臓、肝臓、肺等を用いた遺伝子突然変異試験で陰性、マウススポットテストで陰性、ラット、マウスの骨髄細胞、ラットの末梢血、ラットの肝細胞を用いた小核試験で陽性、陰性の結果、ラット、マウスの末梢血、マウスの骨髄細胞を用いた染色体異常試験で陰性、マウスの精子細胞を用いた小核試験で陰性、ラット、マウスの肝臓細胞を用いた不定期DNA合成試験で陰性、ラット、マウスの腎臓、肝臓、脾臓、肺等を用いたDNA損傷試験 (コメットアッセイを含む) で陽性、陰性の結果、ラットの末梢血、マウスの脾臓細胞を用いた姉妹染色分体交換試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2005)、EU-RAR (2004)、ATSDR (2014)、IARC 106 (2014)、DFGOT vol. 24 (2007)、IRIS Tox. Review (2011)、ACGIH (7th, 2007))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性、陰性の結果、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験で陽性、遺伝子突然変異試験で陰性、小核試験で陽性、染色体異常試験で陰性、姉妹染色分体交換試験で陽性、陰性の結果である (NITE初期リスク評価書 (2005)、ATSDR (2014)、IRIS Tox. Review (2011)、EU-RAR (2004)、IARC 106 (2014))。以上より、ガイダンスに従い区分2とした。
6 発がん性 区分1A


危険
H350 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
   IARCは本物質はヒトで腎臓がんを生じること、並びに本物質ばく露と非ホジキン病及び肝臓がんとの間に正の相関がみられたことから、ヒトの発がん性に関し十分な証拠があり、実験動物でも本物質の発がん性について十分な証拠があると結論した上で、グループ1に分類した (IARC 106 (2014))。この他、EPAがCaH (Carcinogenic to humans) に (IRIS (2011))、NTPがKに (NTP RoC (14th, 2016))、ACGIHがA2に (ACGIH (7th, 2007))、EUがCarc. 1Bに (ECHA CL Inventory (Access on May 2017))、日本産業衛生学会が第1群に (許容濃度の勧告 (2016): 2015年提案) それぞれ分類している。以上、IARC等の分類結果に基づき、区分1Aとした。
7 生殖毒性 区分2


警告
H361 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
   ヒトの症例や疫学研究で、本物質の生殖毒性を明確に示した報告はない (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2014))。また、全身影響が生じない職場での濃度範囲において、男性・女性の生殖能への有害影響はみられなかったとの報告もある (SCOEL/SUM/142 (2009))。実験動物ではマウス又はラットに混餌投与した連続交配試験において、マウスでは高用量 (0.6%) でF0親動物に精巣重量の減少、F1親動物に精子運動の低下がみられた以外に生殖影響はみられず、ラットの試験でもF1世代に精巣重量減少、精子形成異常がみられたが生殖能への影響はみられなかった (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2014)、ATSDR (2014))。一方、妊娠ラットの器官形成期 (妊娠6~9日) に経口投与した結果、顕著な母動物毒性 (体重増加抑制、自発運動低下、呼吸困難など) がみられる用量 (1,125 mg/kg/day) で胚の完全吸収、胎児奇形 (無眼、小眼) がみられた (ACGIH (7th, 2007)、ATSDR (2014)) との報告、妊娠ラットに妊娠期中1,000 ppm で飲水投与した結果、母動物毒性はなく胎児に心臓奇形の増加がみられた (ACGIH (7th, 2007)) との報告、また妊娠ラットに交配2週間前から妊娠21日まで1,000 mg/kg/dayを強制経口投与した結果、母動物毒性とともに新生児生存率の低下がみられた (ACGIH (7th, 2007)、ATSDR (2014)) との報告がある。既存分類では日本産業衛生学会が生殖毒性第3群に分類している (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2014))。以上、動物実験において概ね母動物中毒量で奇形を含む発生影響を示す報告があること、及び日本産業衛生学会の分類結果を踏まえ、本項は区分2とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系)、区分3(気道刺激性、麻酔作用)



危険
警告
H370
H335
H336
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
   ヒトでは本物質のタンクに作業のために立ち入った3人の男性が5分以内に意識を失い、約4時間後に意識回復した後も頭痛、めまい、流涙と眼の痛みを訴えたとの報告がある (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。またボランティアによる吸入試験で、1,000 ppm、2時間の吸入ばく露後に中枢神経系抑制の症状 (ふらつき、めまい、嗜眠) が認められたとの報告がある (EU-RAR (2004))。実験動物では、ラットの単回吸入ばく露の主な症状は知覚麻痺、眼と気道の刺激、協調運動能の低下、中枢神経系の抑制、呼吸不全であり、肺、肝臓、腎臓に顕著な変化はみられなかったとの記載がある (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2005))。以上より区分1 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(中枢神経系、肝臓)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
   ヒトについては、「本物質の慢性毒性は、神経障害として現れることが多い。本物質の慢性ばく露者は、神経系の自覚症状 (頭痛、めまい、眠気、倦怠感、指の震え、神経過敏、悪心、食欲不振など) を訴えることが多い。このような訴えは50 ppmを超える本物質に長期ばく露した作業者に観察されている」との記載 (産衛学会許容濃度の提案理由書 (1997))、「ヒトに対する反復毒性に関して、中枢神経系の抑制を生ずるという多くの暴露の報告があり、共通の症状は、疲労、精神的混乱、めまい、頭痛、記憶喪失、集中力欠如、加えて皮膚と眼の刺激性である。他の症状として、トリクロロエチレンの職業ばく露者及び被験者に薬物依存性やアルコール不耐性 (過敏症) が認められる。」との記載 (NITE初期リスク評価書 (2005)) がある。
   実験動物については、マウスを用いた30日間連続吸入毒性試験において、区分1のガイダンス値の範囲内である37 ppm (連続ばく露との記載により24時間/日としてガイダンス値換算: 49.3 ppm) で肝臓の相対重量増加、肝細胞の肥大と空胞化の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005))。このほか、実験動物では区分2のガイダンス値の範囲を超える用量で、中枢神経系、視覚、聴覚に対する影響、腎臓への影響 (腎尿細管上皮の巨細胞化、巨核化) が認められている (NITE初期リスク評価書 (2005))。
   以上より、区分1 (中枢神経系、肝臓) とした。
   ヒトへの影響以外に、マウスでの肝臓への影響を分類根拠としたため旧分類と分類結果が異なった。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。なお、旧分類ではICSC (J) (2002) に記載の情報を根拠に区分2とされたが、ICSCはList 3 の情報源で元情報を確認できず今回の分類には用いなかった。また、分類JIS (JIS Z7252:2014) の制定により、本項は区分1のみとなった (区分2はない)。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2
-
-
H401 P273
P501
   甲殻類(オオミジンコ) 48時間EC50 = 7.75 mg/L(環境省環境リスク評価(第2巻):2003)であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外
-
-
- -    急速分解性がなく(難分解性、BODによる分解度:2.4%(化審法DB:1979))、甲殻類(オオミジンコ)の 21日間NOEC(繁殖阻害) = 2.1 mg/L(環境省生態影響試験:2017)、藻類(Selenastrum capricornutum)の96時間NOEC(生長速度)= 17.8 mg/L(NITE 初期リスク評価書:2007)、魚類(Jordanella floridae)の28日間NOEC(生存率)= 10.6 mg/L(NITE 初期リスク評価書:2007)であることから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- -    データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
* 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
* 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
* 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

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