GHS分類結果

View this page in English



一般情報
項目 情報
CAS登録番号 107-07-3
名称 エチレンクロロヒドリン
物質ID H29-B-018
分類実施年度 平成29年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度  
Excelファイルのダウンロード Excel file

関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク)  
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-
-
- -    爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外
-
-
- -    エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分3


警告
H226 P303+P361+P353
P370+P378
P403+P235
P210
P233
P240
P241
P242
P243
P280
P501
   引火点60℃ (closed cup) (ICSC (J) (2003)) に基づいて区分3とした。なお、UNRTDG分類はUN 1135、クラス6.1、副次危険3、PGⅠである。
7 可燃性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外
-
-
- -    分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外
-
-
- -    発火点は425℃ (ICSC (J) (2003)) であり常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- -    液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-
-
- -    金属及び半金属 (B, Si, P ,Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外
-
-
- -    フッ素を含まず、酸素及び塩素を含む有機化合物であるが、この酸素及び塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外
-
-
- -    分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-
-
- -    データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3


危険
H301 P301+P310
P264
P270
P321
P330
P405
P501
   ラットのLD50値として、71 mg/kg (PATTY (6th, 2012))、71.3 mg/kg (DFGOT vol. 5 (1993)、PATTY (6th, 2012))、72 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012))、77 mg/kg (DFGOT vol. 5 (1993))、95 mg/kg (PATTY (6th, 2012)) の5件の報告がある。これらに基づき、区分3とした。
1 急性毒性(経皮) 区分2


危険
H310 P302+P352
P361+P364
P262
P264
P270
P280
P310
P321
P405
P501
   ウサギのLD50値として、68 mg/kg (PATTY (6th, 2012))、ラットのLD50値として84 mg/kg (PATTY (6th, 2012))、モルモットのLD50値として70 mg/kg (PATTY (6th, 2012)) の報告に基づき、区分2とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分1


危険
H330 P304+P340
P403+P233
P260
P271
P284
P310
P320
P405
P501
   ラットの4時間吸入LC50値として、33 ppm (PATTY (6th, 2012)) の報告に基づき、区分1とした。なお、LC50が飽和蒸気圧濃度 (6,436 ppm) の90%より低いため、ミストがほとんど混在しないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外
-
-
- -    ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、わずかな紅斑がみられたとする報告や有意な刺激性はみられないとの報告 (NTP TR275 (1985)、DFGOT vol. 5 (1993), PATTY (6th, 2012)) から、区分外 (国連分類基準の区分3) とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A


警告
H319 P305+P351+P338
P337+P313
P264
P280
   本物質を取扱う労働者において眼刺激性がみられたとする報告 (AGCIH (7th, 2001))や、ウサギを用いた眼刺激性試験で中等度の刺激性を示すとの報告 (PATTY (6th, 2012)、DFGOT vol. 5 (1993)、NTP TR275 (1985)) から区分2Aとした。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
   
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- -    モルモットを用いた皮膚感作性試験において感作性はないとの記述 (PATTY (6th, 2012)、NTP TR275 (1985)) があるが、試験条件や反応率などが不明のため、分類できないとした。なお、旧分類が根拠としたIUCLID (2000) は入手できず、確認不能のため使用しなかった。よって、旧分類から分類結果を変更した。
5 生殖細胞変異原性 区分2


警告
H341 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
   In vivoでは、マウスの優性致死試験、相互転座試験、マウスの骨髄細胞及び末梢血を用いた小核試験、マウスの骨髄細胞を用いた染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陰性、ラットの骨髄細胞を用いた染色体異常試験で陽性である (ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 5 (1993)、PATTY (6th, 2012)、NTP DB (Access on May 2017))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陽性である (ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 5 (1993)、PATTY (6th, 2012)、NTP DB (Access on May 2017))。以上より、ガイダンスに従い区分2とした。
6 発がん性 分類できない
-
-
- -    A社の本物質製造部門 (クロロヒドリン部門) に2年間以上配置された男性作業者278名を対象とした疫学研究において、膵がんによる死亡6例 (期待値0.7例) と白血病による死亡3例 (期待値0.4例) が報告された。クロロヒドリン部門への配置期間と両疾患との間に統計学的に有意な傾向がみられた。クロロヒドリン部門ではエチレンと塩素から本物質を主に製造し、副生物としてエチレンジクロリド (1,2-ジクロロエタン) と ビスクロロエチルエーテルが生成する。10年後の追加調査では、膵がん2例が追加され、膵がん死亡は合計8例 (期待値1.6例) で標準化死亡比 (SMR) は492となった。白血病による追加死亡例はなかったが、リンパ系及び造血系腫瘍が8例 (期待値2.7例、SMR = 294) にみられた。大部分は1930年代に始めてこの部門に配置された作業者で、当時は製造初期でばく露に対する制御も十分ではなかった。産業衛生学的に膵がん死亡例の一部はエチレンジクロリドと恐らく他の塩素化炭化水素との複合ばく露による事故的な過剰ばく露による可能性が示唆されている。一方、B社のエチレンクロロヒドリン及びプロピレンクロロヒドリン製造工程に配置された作業者1,361名を対象とした調査では膵がん、リンパ系及び造血系がんのリスク増加はみられなかった。両者の違いとして、本物質からエチレンオキシドを製造する工程の差異が指摘されている (PATTY (6th, 2012))。以上のように、疫学研究としては相反する報告があり、本物質がヒトで発がん性を示すという証拠が十分にあるとは言えない。
   実験動物ではラット及びマウスに2年間経皮適用した発がん性試験、マウスに70週間皮下投与した試験、及びラットに2年間飲水投与した試験でいずれも発がん性の証拠は示されなかった (NTP TR275 (1985)、PATTY (6th, 2012))。ただ、ラットに1年間皮下投与 (2回/週) し、6ヵ月後に観察した試験において、下垂体腺腫の頻度増加が雌にみられたとの報告がある (PATTY (6th, 2012))。既存分類ではACGIHがA4に分類しているだけである (ACGIH (7th, 2001))。
   以上、ヒトの疫学調査で膵がん及びリンパ系・造血系がんの増加がみられたとの報告もあるが、否定的な報告もあること、動物試験の多くで陰性の結果であったことから、本項は分類できないとした。
   なお、旧分類ではPATTY (旧版) の情報源による疫学データにより区分1とされたが、上記のように本物質の発がん性に関しては相反する報告があること、また発がん性ありとする報告も本物質単独ばく露影響ではなく、混合ばく露影響の可能性が高いことから、分類結果を変更した。
   
7 生殖毒性 分類できない
-
-
- -    妊娠マウスの器官形成期 (妊娠6~16日) に強制経口投与した結果、母動物に体重低下がみられた100 mg/kg/dayで胎児に体重及び肝臓重量の低値がみられただけであった。また、妊娠マウスの器官形成期に飲水投与した試験では200 mg/kg/dayまでの用量で、母動物、胎児ともに影響はみられなかった (DFGOT vol. 5 (1993)、PATTY (6th, 2012))。一方、妊娠マウスに静脈内投与した試験では、母動物に死亡、体重増加抑制が生じた用量 (120 mg/kg/day) で胎児に胚/胎児毒性 (妊娠4~6日、及び同10~12日)、又は催奇形性 (妊娠8~10日) がみられたが、妊娠ウサギに静脈内投与 (妊娠6~14日、最大36 mg/kg/day) した試験では、母動物、胎児ともに影響はみられなかった (DFGOT vol. 5 (1993)、PATTY (6th, 2012))。
   以上、妊娠動物を用いた経口又は静脈内投与による発生毒性試験では、マウス静脈内投与で母動物毒性用量における胎児毒性又は催奇形性がみられた以外に発生影響はない又は軽微であった。したがって、本物質は発生毒性を示す可能性は低いと判断された。しかしながら、本物質の生殖能及び性機能への影響に関する情報はなく、本項はデータ不足のため分類できないとした。
   なお、旧分類は胎児に影響がみられたことを根拠に区分2に分類された。これは妊娠マウスに静脈内投与した試験結果に基づくものと思われるが、上記のごとくウサギ静脈内投与試験及びマウス経口投与2試験のいずれも胎児に分類根拠を支持する所見がなく、マウス静脈内投与試験における発生影響は母動物毒性による二次的影響と考え採用しなかった。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系、心血管系、呼吸器)、区分3(麻酔作用)



危険
警告
H370
H336
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
   ヒトでは本物質の急性吸入ばく露により、初期に頭痛、めまい、眼の焼灼感、吐き気、嘔吐、手指のしびれを生じ、その後に錯乱、呼吸困難、意識喪失、循環虚脱を起こして、心循環器不全と肺浮腫により死亡した例が複数報告されている (DFGOT vol. 5 (1993)、PATTY (6th, 2012))。剖検の結果、多臓器の充血、脳浮腫、肺浮腫、肝臓及び心筋の脂肪性変性、腎臓の腫脹が認められたとの報告がある (DFGOT vol. 5 (1993)、PATTY (6th, 2012))。また、本物質の誤飲による死亡例が2例報告されており、症状は吸入ばく露の場合と同様であったとの記述がある (DFGOT vol. 5 (1993))。更に本物質は上気道を刺激するとの記載がある (HSDB (Access on June 2017))。以上より、本物質は中枢神経系、心血管系、呼吸器に影響を与え、また麻酔作用を有すると考えられる。したがって、区分1 (中枢神経系、心血管系、呼吸器)、区分3 (麻酔作用) とした。旧分類は血液系、腎臓、肝臓も標的臓器としていたが、これらの臓器に関しては詳細が不明であるため、分類結果を変更した。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2(膵臓、全身毒性)


警告
H373 P260
P314
P501
   ヒトに関する情報はない。
   実験動物については、ラットを用いた強制経口投与による90日間反復経口投与毒性試験において、区分2のガイダンス値の範囲内である67.5 mg/kg/dayで成長の抑制、死亡がみられ (PATTY (6th, 2012)、DFGOT vol. 5 (1993)、ACGIH (7th, 2001)) 、ラットを用いた混餌による220日間反復経口投与毒性試験において、区分2のガイダンス値の範囲内である0.12% (ガイダンス値換算: 60 mg/kg/day) 以上で成長抑制、区分2のガイダンス値の範囲を超える0.24% (ガイダンス値換算: 120 mg/kg/day) で死亡率増加がみられている (PATTY (6th, 2012)、DFGOT vol. 5 (1993))。また、 ラット、マウスを用いた13週間経皮投与試験が実施されており、ラットでは区分2のガイダンス値の範囲内である125 mg/kg/day以上で膵臓の腺房細胞の空胞化、区分2のガイダンス値の範囲を超える250 mg/kg/day以上で死亡がみられ、死亡又は切迫屠殺例で肺のうっ血又は水腫がみられている。マウスでは区分2のガイダンス値の範囲を超える用量で死亡、急性腎症、肝細胞の脂肪化、膵臓の腺房細胞の壊死の報告 (NTP TR275 (1985)) がある。
   このほか、ラットを用いた4ヵ月間吸入毒性試験 (4時間/日) において、区分1のガイダンス値の範囲内である0.31 ppm (ガイダンス値換算: 0.0007 mg/L) 以上で体重減少、肝臓、肺の病理組織学的影響、神経系への影響の報告があるが影響の詳細は不明であった (PATTY (6th, 2012))。
   以上、膵臓以外には標的臓器を特定し得ず、死亡がみられているため区分2 (膵臓、全身毒性) とした。
   なお、旧分類ではRTECSを用いていたがList 3の情報源のため分類に用いなかった。また、新たな情報源を用いたため分類が変更となった。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3
-
-
H402 P273
P501
   魚類(キンギョ) 96時間LC50 = 19.1 mg/L(ECETOC TR91:2003)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外
-
-
- -    急速分解性があり(易分解性、BODによる分解度:50%、87%(10日)(NLM HSDB:2005)、蓄積性がなく(BCF=0.62 (NLM HSDB:2005))、魚類(メダカ)の38日間NOEC(生存率)= 8.89 mg/L(ECETOC TR91:2003)であることから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- -    データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
* 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
* 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
* 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

GHS関連情報トップページに戻る