GHS分類結果

View this page in English



一般情報
項目 情報
CAS登録番号 121-69-7
名称 N,N-ジメチルアニリン
物質ID H29-B-010
分類実施年度 平成29年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度  
Excelファイルのダウンロード Excel file

関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク)  
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-
-
- -    爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外
-
-
- -    エアゾール製品ではない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分4
-
警告
H227 P370+P378
P403+P235
P210
P280
P501
   引火点62.8℃ (密閉式) (ACGIH (7th, 2001)) に基づいて区分4とした。
7 可燃性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外
-
-
- -    分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外
-
-
- -    発火点は371℃ (ICSC (J) (1998)) であり常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- -    液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-
-
- -    金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外
-
-
- -    酸素、フッ素及び塩素を含まない有機化合物である。
14 酸化性固体 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外
-
-
- -    分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-
-
- -    データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4


警告
H302 P301+P312
P264
P270
P330
P501
   ラットのLD50値として、1,300 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 3 (1992))、1,348 mg/kg (DFGOT vol. 3 (1992))、1,410 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012)) の報告に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分4


警告
H312 P302+P352
P362+P364
P280
P312
P321
P501
   ウサギのLD50値として、1,692 mg/kg (DFGOT vol. 3 (1992))、1,770 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)) の2件の報告に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-
-
- -    GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分2


危険
H330 P304+P340
P403+P233
P260
P271
P284
P310
P320
P405
P501
   LC50値の報告はないが、ラットの単回吸入ばく露試験において、380 ppm、4時間の吸入ばく露後に40%が4日以内に死亡したとの報告 (DFGOT vol. 3 (1992)) があり、LC50値は100~500 ppmの範囲に入ると考えられる。したがって区分2とした。なお、ばく露濃度が飽和蒸気圧濃度 (924 ppm) の90%より低いため、ミストがほとんど混在しないものとして、ppmを単位とする基準値を適用した。データの見直しにより、旧分類から分類結果を変更した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。旧分類が根拠としたDFGOT vol. 3 (1992) の情報は、ばく露濃度 (380 ppm) が飽和蒸気圧濃度 (924 ppm) の90%より低く、ミストがほとんど混在しないものと考えられるため、蒸気の状態であると考えられる。したがって分類結果を変更した。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外
-
-
- -    ヒトのパッチテストで刺激性なしとの報告や (HSDB (Access on May 2017)) 、ウサギを用いた刺激性試験で軽度の刺激性との報告がある (BUA 91 (1992)) ことから、区分外 (国連分類基準の区分3) とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A


警告
H319 P305+P351+P338
P337+P313
P264
P280
   ヒトの眼に対して刺激あるいは熱傷を引き起こすとの報告や (HSDB (Access on May 2017)) 、ウサギの眼への適用試験で中等度の刺激性との報告がある (HSDB (Access on May 2017)) ことから、区分2Aとした。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
   
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。すなわち、in vivoデータはなく、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、小核試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陽性である (DFGOT vol. 21 (2005)、DFGOT vol. 3 (1992)、ACGIH (7th, 2001)、IARC 57 (1993)、NTP DB (Access on May 2017)、NTP TR360 (1989)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1993))。
6 発がん性 区分2


警告
H351 P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
   ラット及びマウスに2年間強制経口投与した発がん性試験において、ラットでは高用量群の雄で3/50例に脾臓の肉腫、1/50例に骨肉腫がみられた、脾臓の肉腫の発生率は自然発生率より高く、本物質投与による影響と考えられた。一方、マウスでは高用量群の雌で前胃乳頭腫の発生率のわずかな増加がみられた (NTP TR360 (1989))。雄ラットの脾臓肉腫及び雌マウスの前胃乳頭腫に対して、NTPはそれぞれ発がん性のある程度の証拠及び不確かな証拠とした (NTP TR360 (1989)) が、IARCは実験動物での発がん性の証拠は限定的と結論し、グループ3に分類した (IARC 57 (1993))。その他、ACGIHがA4に分類した (ACGIH (7th, 2001)) のに対し、EUはCarc. 2に分類している (ECHA CL Inventory (Access on May 2017))。本物質の基本骨格のアニリン (CAS番号 62-53-3: 本物質と肝ミクロソームとの in vitro培養実験で副代謝物としてアニリンが生成 (HSDB (Access on May 2017)) は脾臓腫瘍を誘発し、区分2に分類されている (平成28年度分類結果、平成21年度分類結果) ことを踏まえ、本項は区分2とした。
7 生殖毒性 分類できない
-
-
- -    ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、一般毒性影響 (血液系等への影響) がみられる100 mg/kg/day まで生殖発生影響はみられなかった (経済産業省による安全性試験結果 (2011))。また、妊娠マウスの器官形成期 (妊娠6~13日) に365 mg/kg/day を強制経口投与した結果、母動物が6%死亡したが、出生児には生後3日まで異常はみられなかった (IARC 57 (1993)、環境省リスク評価第7巻:暫定的有害性評価シート (2009))。以上、反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験はスクリーニング試験であり、この結果のみで区分外とはできない。また、妊娠マウスを用いた発生毒性試験は1用量のみの試験で、発生影響なしと結論するには不十分な試験と考えられ、本項は分類できないとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系、血液系)、区分3(麻酔作用)



危険
警告
H370
H336
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
   ヒトでは本物質による中毒症状は頭痛、チアノーゼ、めまい、努力呼吸、麻痺及び痙攣であるとの記載がある (HSDB (Access on May 2017))。事故によるばく露の症例としては、本物質とフェノールの混合物の入った桶から高温の蒸気に数分間ばく露した労働者が、直後に虚脱して、8時間にわたり意識喪失し、その後、視覚障害、耳鳴り、強度の腹痛を訴えたとの報告及び本物質を容器間で移す作業を7時間行った労働者が、中毒症状を示したとの報告がある (ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価第7巻:暫定的有害性評価シート (2009))。これらの2症例の症状はアニリンの中毒症状に酷似していると記述されている ((ACGIH (7th, 2001)、環境省リスク評価第7巻:暫定的有害性評価シート (2009))。
   実験動物では、イヌへの本物質50 mg/kgの単回経口投与 (ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 3 (1992)、BUA 91 (1992))、ネコへの本物質48 mg/kgの単回経口投与 (BUA 91 (1992)) によりメトヘモグロビン生成が認められ、ネコでの中毒症状はチアノーゼ、呼吸困難及び運動失調であったとの報告がある (BUA 91 (1992))。これらの試験での用量はガイダンスの区分1の範囲に相当する。また、モルモットの単回経口投与試験において、区分2相当の2,000 mg/kgの用量で、衰弱、振戦、持続性及び間代性痙攣、緩徐呼吸を示して死亡したとの報告がある (HSDB (Access on May 2017))。
   以上の情報を総合すると、本物質は中枢神経系、血液系を標的臓器とすると考えられる。また中枢神経系に作用することから麻酔作用も有する可能性がある。したがって区分1 (中枢神経系、血液系)、区分3 (麻酔作用) とした。
   
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(血液系)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
   ヒトについては、長期に本物質製造に従事していた作業者 (ばく露された人数及びばく露濃度不明) において、メトヘモグロビンレベルは5.2%にまで達するものがいたが、一方対照群 (18名) では1名でのみみられメトヘモグロビンレベルは2%であったと報告されている。また、作業者において貧血 (赤血球数の減少、ヘモグロビンの減少)、網状赤血球の増加が認められたと報告されている (DFGOT vol. 3 (1992)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1993))。
   実験動物については、ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、区分1のガイダンス値の範囲内である1 mg/kg/day (90日換算値: 0.47 mg/kg/day) 以上で骨髄の赤芽球系細胞の過形成、脾臓のうっ血、10 mg/kg/day (90日換算値: 4.7 mg/kg/day) 以上で脾臓の髄外造血の亢進、区分2のガイダンス値の範囲内である100 mg/kg/day (90日換算値: 47 mg/kg/day) で赤血球数・ヘモグロビン量・ヘマトクリット値・平均赤血球血色素濃度の低値、肝臓の髄外造血亢進、脾臓の白脾髄萎縮、骨髄の赤芽球系細胞の過形成等の報告がある (経済産業省による安全性試験結果 (2011))。このほか、ラット、マウスを用いた強制経口投与による13週間反復投与毒性試験及び2年間発がん性試験が実施されており、ラットの方がマウスよりも影響が強くみられている。ラットでは、13週間試験において、区分2のガイダンス値の範囲内である31.25 mg/kg/day (90日換算値:22.57 mg/kg/day) 以上で脾臓の腫脹・造血亢進、脾臓・腎臓のヘモジデリン沈着、62.5 mg/kg/day (90日換算値: 45.14 mg/kg/day) 以上で肝臓のヘモジデリン沈着、骨髄の造血細胞過形成、125 mg/kg/day (90日換算値: 90.28 mg/kg/day) 以上で運動量低下がみられ、2年間発がん性試験において、区分1のガイダンス値の範囲内である3 mg/kg/day以上で脾臓のヘモジデリン沈着、造血亢進、区分2のガイダンス値の範囲内である30 mg/kg/dayで脾臓の脂肪変性、線維化がみられている (NTP TR360 (1989)、環境省リスク評価第7巻:暫定的有害性評価シート (2009)、DFGOT vol. 3 (1992)、ACGIH (7th, 2001))。
   なお、ラットを用いた吸入経路の試験の報告があり、100日間連続ばく露した試験では血液系のほかに脳や肝機能に影響がある旨報告されているが、環境省リスク評価第7巻:暫定的有害性評価シート (2009) には詳細不明との記載があり、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1993) には、ばく露技術の信頼度の低さ、及び用量反応関係の不十分さから脳、肝が標的臓器であるとは考え難いとの記載がある。また、ラットに4ヵ月間 (6時間/日、6日/週) ばく露した試験において血液系への影響のほか肝機能に影響がみられたとの報告があるが、環境省リスク評価第7巻:暫定的有害性評価シート (2009) に詳細不明との記載があり、DFGOT vol. 3 (1992) では不十分な記載の試験とされていることからこれらについては分類に用いなかった。
   以上、メトヘモグロビン生成、溶血性貧血と関連する二次的あるいは適応性の所見が脾臓、肝臓、骨髄、腎臓等にみられており、区分1 (血液系) とした。
   旧分類では血液系のほかに脾臓、肝臓を標的臓器としていたが、詳細不明であること、二次的影響あるいは適応性の影響と考えられることから分類が変更となった。
   
   
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-
-
- -    データ不足のため分類できない。なお、HSDB (Access on May 2017) に収載された数値データ (粘性率: 1.300 mPa・s (25℃)、密度: 0.9537 g/cm3 (20℃)) より、動粘性率は1.363 mm2/sec (25/20℃) と算出される。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2
-
-
H401 P273
P501
   甲殻類(オオミジンコ)24時間EC50 = 5.8 mg/L(EPA AQUIRE:2017, Pedersen,F.,et al(1998))であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分2


-
H411 P273
P391
P501
   慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(難分解性、BODによる分解度:1.9%(化審法DB:1976))、藻類(Chlorella pyrenoidosa)の72時間NOEC(生長速度)= 14 mg/L (ECETOC TR91:2003)であることから、区分外となる。
   慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(難分解性、BODによる分解度:1.9%(化審法DB:1976))、甲殻類(オオミジンコ)24時間EC50 = 5.8 mg/L(EPA AQUIRE:2017)であることから、区分2となる。
   以上の結果から、区分2とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- -    データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
* 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
* 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
* 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

GHS関連情報トップページに戻る