GHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 7664-39-3
名称 フッ化水素
物質ID H29-B-004
分類実施年度 平成29年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
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厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
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- -    ここで対象としたフッ化水素は無水物であり、事実上のガス (殆どがガス化している状態) を想定して分類を行った。なお、同じCAS番号で「フッ化水素酸 (液体)」の分類も参照のこと。
   フッ化水素の沸点情報は19.5~19.9℃であり、20℃において完全にガスであることを保証した報告は調査した範囲では見当たらず、GHSの定義のガス ((i) 50℃で300 kPa (絶対圧) を超える蒸気圧を有する物質、又は (ii) 101.3 kPa の標準気圧、20℃において完全にガス状である物質) を満たす確証はないが、事実上のガスである。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 区分外
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- -    不燃性である (ICSC (J) (2016))。
3 エアゾール 分類対象外
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- -    エアゾール製品ではない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類できない
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- -    データがなく分類できない。
5 高圧ガス 液化ガス


警告
H280 P410+P403    沸点は19℃台であり、低温では液状。臨界温度188.0℃ (HSDB (Access on May 2017)) の低圧液化ガス。
6 引火性液体 分類対象外
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- -    GHSの定義のガスを満たす確証はないが、事実上のガスである。
7 可燃性固体 分類対象外
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- -    GHSの定義のガスを満たす確証はないが、事実上のガスである。
8 自己反応性化学品 分類対象外
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- -    GHSの定義のガスを満たす確証はないが、事実上のガスである。
9 自然発火性液体 分類対象外
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- -    GHSの定義のガスを満たす確証はないが、事実上のガスである。
10 自然発火性固体 分類対象外
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- -    GHSの定義のガスを満たす確証はないが、事実上のガスである。
11 自己発熱性化学品 分類対象外
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- -    GHSの定義のガスを満たす確証はないが、事実上のガスである。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
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- -    GHSの定義のガスを満たす確証はないが、事実上のガスである。
13 酸化性液体 分類対象外
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- -    GHSの定義のガスを満たす確証はないが、事実上のガスである。
14 酸化性固体 分類対象外
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- -    GHSの定義のガスを満たす確証はないが、事実上のガスである。
15 有機過酸化物 分類対象外
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- -    GHSの定義のガスを満たす確証はないが、事実上のガスである。
16 金属腐食性物質 分類できない
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- -    気体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 分類対象外
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- -    ここで対象としたフッ化水素は無水物であり、事実上のガス (殆どがガス化している状態) を想定して分類を行った。なお、同じCAS番号で「フッ化水素酸 (液体)」の分類も参照のこと。
   
   フッ化水素の沸点情報は19.5~19.9℃であり、20℃において完全にガスであることを保証した報告は調査した範囲では見当たらず、GHSの定義のガス ((i) 50℃で300 kPa (絶対圧) を超える蒸気圧を有する物質、又は (ii) 101.3 kPa の標準気圧、20℃において完全にガス状である物質) を満たす確証はないが、事実上のガスである。旧分類は本物質をGHS定義における液体としていたが、分類対象を事実上のガスとしたことに伴い、分類結果を変更した。
1 急性毒性(経皮) 分類対象外
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- -    GHSの定義のガス ((i) 50℃で300 kPa (絶対圧) を超える蒸気圧を有する物質、又は (ii) 101.3 kPa の標準気圧、20℃において完全にガス状である物質) を満たす確証はないが、事実上のガスである。旧分類は本物質をGHS定義における液体としていたが、分類対象を事実上のガスとしたことに伴い、分類結果を変更した。
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分3


危険
H331 P304+P340
P403+P233
P261
P271
P311
P321
P405
P501
   ラットを用いた1時間の吸入ばく露試験のLC50値として、0.792 mg/L (967 ppm、4時間換算値: 484 ppm) (EU-RAR (2001))、1.069 mg/L (1,306 ppm、4時間換算値: 653 ppm) (EU-RAR (2001)、PATTY (6th, 2012))、1.138 mg/L (1,392 ppm、4時間換算値: 696 ppm) (EU-RAR (2001))、1.317 mg/L (1,610 ppm、4時間換算値: 805 ppm) (ATSDR (2003))、1.828 mg/L (2,233 ppm、4時間換算値: 1,117 ppm) (EU-RAR (2001))、1.909 mg/L (2,332 ppm、4時間換算値: 1,166 ppm) (EU-RAR (2001)) の6件の報告がある。うち1件が区分2に、5件が区分3に該当するが、件数の多い区分を採用して区分3とした。旧分類は本物質をGHS定義における液体としていたため分類対象外としていたが、分類対象を事実上のガスとしたことに伴い、分類結果を変更した。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外
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- -    GHSの定義のガス ((i) 50℃で300 kPa (絶対圧) を超える蒸気圧を有する物質、又は (ii) 101.3 kPa の標準気圧、20℃において完全にガス状である物質) を満たす確証はないが、事実上のガスである。旧分類は本物質をGHS定義における液体としていたが、分類対象を事実上のガスとしたことに伴い、分類結果を変更した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類対象外
-
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- -    GHSの定義のガス ((i) 50℃で300 kPa (絶対圧) を超える蒸気圧を有する物質、又は (ii) 101.3 kPa の標準気圧、20℃において完全にガス状である物質) を満たす確証はないが、事実上のガスである。旧分類は本物質をGHS定義における液体としていたが、分類対象を事実上のガスとしたことに伴い、分類結果を変更した。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1


危険
H314 P301+P330+P331
P303+P361+P353
P305+P351+P338
P304+P340
P260
P264
P280
P310
P321
P363
P405
P501
   本物質に接触すると、皮膚に強度の刺激性又は腐食性がみられたとの記載 (PATTY (6th, 2012)、EU-RAR (2001)、ATSDR (2003)) から区分1とした。なお、EU CLP分類においてSkin. Corr. 1A H314に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on May 2017))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1


危険
H318 P305+P351+P338
P280
P310
   本物質に接触すると、眼に強度の刺激性を生じるとの記載 (PATTY (6th, 2012)、EU-RAR (2001)、ATSDR (2003)) から、区分1とした。
4 呼吸器感作性 分類できない
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- -    データ不足のため分類できない。  
   
4 皮膚感作性 分類できない
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- -    データ不足のため分類できない。なお、旧分類では職業的にばく露されたヒトにおいて、アレルギー性皮膚炎がみられたとの報告 (CERIハザードデータ集 (2002)) を根拠としていたが、CERIハザードデータ集はList 3の情報であるため採用せず、区分を見直した。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
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- -    フッ化水素によるin vivo試験 (マウスの優性致死試験、マウス精巣の相互転座試験、ラット骨髄細胞の染色体異常試験) の結果からは結論できない。フッ化ナトリウム (CAS番号 7681-49-4) による試験では評価が可能であり、染色体異常を示さなかった。ただし、これは分裂後期の細胞で異常が見られたものである。しかし、フッ素イオンはDNAと共有結合せず付加体を形成しないため二次的な影響と考えられ、無機フッ化物はin vivoで染色体損傷を誘発しないと結論されている (以上、EU-RAR (2001))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性である (DFGOT (2014) (Access on May 2017)、EU-RAR (2001))。以上より、ガイダンスに従い分類できないとした。
6 発がん性 分類できない
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- -    ACGIHはフッ化物に対しA4に (ACGIH (7th, 2001))、IARCはフッ化物 (inorganic, used in drinking water) に対しグループ3に分類している (IARC Suppl. 7 (1987)) ことから、分類できないとした。なお、本物質自体の試験データはないが、フッ化ナトリウム (CAS番号 7681-49-4) についてはラット及びマウスを用いた飲水投与試験と混餌投与試験の報告があり、雄ラットの飲水投与試験で骨肉腫の発生頻度のわずかな増加がみられ、発がん性の不確かな証拠とされた以外は、発がん性の証拠がない、又は試験系に不備があり結論を導けないと結論された (NTP TR393 (1990)、EU-RAR (2001))。
7 生殖毒性 分類できない
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- -    本物質自体の生殖毒性に関する情報はないが、生体内では遊離のフッ素イオンとして機能するため、フッ化物、特にフッ化ナトリウム (CAS番号 7681-49-4) の情報が利用可能と考えられる (EU-RAR (2001))。すなわち、フッ化ナトリウムのラットを用いた飲水投与による2世代試験、並びにラット又はウサギの飲水投与による発生毒性試験はいずれも無影響又は母動物毒性のある用量で分類根拠としない軽微な影響のみであった (EU-RAR (2001)、DFGOT (2014) (Access on May 2017)、ATSDR (2003))。
   以上、フッ化ナトリウムでは経口経路で明らかな生殖発生毒性はみられておらず、データ不足で分類できない。本物質もフッ化ナトリウムと同様に、分類できないとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器、心血管系)


危険
H370 P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
   ヒトでは本物質をボランティアに1時間、吸入ばく露した試験で問診による調査の結果、2.5 mg/m3以上で上気道 (鼻、喉) への顕著な影響がみられたとの報告がある (DFGOT (2014) (Access on May 2017)、ACGIH (7th, 2005)、ATSDR (2003)、EU-RAR (2001))。実験動物ではラットの単回吸入ばく露試験で、上気道の損傷、呼吸困難、肺のうっ血、肺胞内浮腫が認められたとの報告がある (EU-RAR (2001))。この試験でのLC50値は区分1相当の653 ppm (4時間換算値) と報告されていることから、これらの影響はLC50値付近の区分1範囲の用量で認められたと考えられる。また、フッ化水素酸 (液体) に関する情報であるが、事故により経皮及び吸入ばく露したヒトが呼吸器への影響に加えて、低カルシウム血症と不整脈を起こした例が複数報告されている (ATSDR (2003)、PATTY (6th, 2012))。低カルシウム血症はフッ素イオンがカルシウムと結合することによると考えられているため (PATTY (6th, 2012))、本物質の吸入ばく露においても、同様の低カルシウム血症による心血管系への影響の可能性が考えられる。以上より区分1 (呼吸器、心血管系) とした。旧分類ではヒトで膵臓の出血及び壊死が認められたとの情報 (CERIハザードデータ集 (2002)) に基づいて膵臓を標的臓器としていたが、CERIハザードデータ集はList 3の資料であり、またATSDR (2003) によると膵臓への影響が認められたのはフッ化水素酸 (液体) の誤飲の症例1例であったため、根拠としなかった。したがって分類結果を変更した。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(神経系、歯、骨、呼吸器)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
   ヒトについては、本物質に関する情報はないが、ACGIH の「フッ化物」において、無機のフッ化物の職業ばく露によるフッ素沈着症に関連する骨の病変の報告がある (ACGIH (7th, 2001))。
   実験動物については、ラットを用いた91日間吸入毒性試験 (6時間/日、5日/週) において、区分1のガイダンス値の範囲内である7.52 mg/m3 (ガイダンス値換算: 6.6 ppm) で死亡、脱毛、円背位、体重減少、不整咬合、分節核好中球数・血小板数増加、赤血球数減少、血糖・アルブミン・A/G比減少、カリウム・無機リン増加、腎臓・肝臓・肺・精巣・脾臓・脳・心臓・副腎相対重量増加等がみられ、ラットを用いた1ヵ月間吸入毒性試験 (6時間/日、毎日) において、区分1のガイダンス値の範囲内である1 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.4 ppm) で歯のエナメル質の障害、気管支粘膜の萎縮及び局所の浮腫、気管支周囲の肥厚、骨の骨髄腔の不整の報告がある (EU-RAR (2001))。また、ラットを用いた5ヵ月間吸入毒性試験 (連続ばく露) において、区分1のガイダンス値の範囲内である0.03 ppm (ガイダンス値換算: 0.12 ppm) 以上で中枢神経系の機能不全 (条件反射の低下、刺激後の運動神経反射が起こるまでの潜時の延長)、0.1 ppm (ガイダンス値換算: 0.4 ppm) で神経細胞シナプスの病理組織学的変化の報告がある (ATSDR (2003))。なお、イヌを用いた5週間吸入毒性試験 (6時間/日、6日/週) において区分1のガイダンス値の範囲内である18 ppm (ガイダンス値換算: 6 ppm) で精巣の変性性変化、精嚢の潰瘍がみられたとの報告がある (ATSDR (2003)) 。しかし、ATSDR (2003) には、 同じ濃度でラット、ウサギに影響がみられず、この試験については詳細不明であり、さらにガスの皮膚への接触による結果か全身影響か明確でないとの記載があったことから、このデータについては分類に用いなかった。また、動物 (モルモット3匹、ウサギ5匹、サル2匹) を用いた50日間吸入毒性試験 (6~7時間/日) において、モルモット、ウサギで肝臓の脂肪変性等の報告がある (ATSDR (2003)) 、しかし、ATSDR (2003) には、 使用動物数が少ないこと、濃度の測定が正確でない旨の記載があったことから、このデータについても分類に用いなかった。
   したがって、区分1 (神経系、歯、骨、呼吸器) とした。
   なお、旧分類で主に用いていたCERIハザードデータ集 (2002) は、List 3の資料であるため使用しなかったことから分類結果が変更となった。
   
10 吸引性呼吸器有害性 分類対象外
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- -    GHSの定義のガスを満たす確証はないが、事実上のガスである。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3
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H402 P273
P501
   甲殻類(ヨコエビ)96時間EC50(遊泳阻害)= 40.3 mg/L[38.28 mgF/L 換算値](ECETOC TR91:2003)であることから、区分3とした。なお、分類にはフッ化ナトリウムのデータを使用した。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外
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- -    対象物質は無機化合物であり、水中での挙動は不明であるが、対水溶解度が自由混和であり、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC(繁殖)= 3.9 mg/L[3.7 mgF/L 換算値](NICNAS PEC:2001), EU RAR:2001)、藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の72時間NOEC(速度法)=> 221 mg/L[210 mgF/L 換算値](環境省生態影響試験:2017)、魚類(メダカ)の28日間NOEC(初期生活段階試験)=>4.7 mg/L[NaF:9.9 mg/L 換算値](環境省生態影響試験:2017)であることから、区分外とした。なお、分類にはフッ化ナトリウムのデータを使用した。
12 オゾン層への有害性 分類できない
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- -    データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
* 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
* 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
* 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

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