GHS分類結果

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一般情報

項目 情報
CAS番号 80-05-7
名称 ビスフェノールA
物質ID H28-B-044, C-064B
分類実施年度 平成28年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 (危険物/有害物)  再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度    
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関連情報

項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) GHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) 職場のあんぜんサイト
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイト
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-

-
- -   爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外
-

-
- -   エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない
-

-
- -   可燃性を有するが、データがなく分類できない。
8 自己反応性化学品 分類対象外
-

-
- -   分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外
-

-
- -   発火点は510〜570℃ (ICSC(J) (2011)) であり常温で発火しないと考えられる。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-

-
- -   データがなく分類できない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-

-
- -   金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類対象外
-

-
- -   フッ素および塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
15 有機過酸化物 分類対象外
-

-
- -   分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-

-
- -   固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性<

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外
-

-
- -   ラットのLD50値として、3,300 mg/kg、4,100 mg/kg (EU-RAR (2010)、HSDB (Access on June 2016))、5,000 mg/kg (EU-RAR (2010)) の3件の報告がある。
  これらに基づき、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。
  新たに入手した情報に基づき、区分を見直した。
1 急性毒性(経皮) 区分外
-

-
- -   ウサギのLD50値として、>2,000 mg/kg (EU-RAR (2010))、3,000 mg/kg、3,600 mg/kg (HSDB (Access on June 2016)) の3件の報告に基づき、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。
  新たに入手した情報に基づき、区分を見直した。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
  ラットのLC50値 (6時間) として、> 0.17 mg/L (4時間換算値:> 0.11 mg/L) (EU-RAR (2010)、DFGOT vol.13 (1999)、BUA 203 (1995)) との報告があるが、この値のみでは区分の特定ができないため、分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外
-

-
- -   ウサギの皮膚刺激性試験結果 (4時間塗布、OECD TG 404) では皮膚刺激性は認められなかったことから (DFGOT suppl (2011)、EU-RAR (2010))、区分外とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1

危険
H318 P280
P305+P351+P338
P310
  ウサギの眼刺激性試験 (OECD TG 405) では角膜、虹彩への影響が適用後28日まで持続して観察された (DFGOT suppl (2011)、EU-RAR (2010))。
  また、ウサギで軽度〜中等度の刺激性も報告されていることから (DFGOT vol. 13 (1999))、眼損傷性があると判断され、区分1とした。
4 呼吸器感作性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 区分1

警告
H317 P261
P272
P280
P302+P352
P333+P313
P321
P362+P364
P501
  モルモットのビューラー法による皮膚感作性試験では、50%溶液の誘発で12.5% (16例中2例) に陽性反応が認められたが (DFGOT suppl (2011))、ガイダンス値の15%以下であった。
  また、モルモットのマキシマイゼーション法では陰性 (DFGOT vol. 13 (1999))、マウスを用いた皮膚感作性試験 (LLNA法変法) では30%溶液の誘発で陰性であった (DFGOT suppl (2011)、EU-RAR (2010))。
  一方、ヒトでは、本物質の他、エポキシ化合物等を取り扱った皮膚炎発症作業者を対象としたパッチテストでは、本物質に陽性反応を示す例が認められている (EU-RAR (2010)) が、本物質の製造工場従事者を対象とした疫学調査では、110〜500例のすべての従事者で皮膚感作性は陰性であったとする報告もある (EU-RAR (2010)、DFGOT vol. 13 (1999))。
  本物質は感作性物質として、Frosch接触アレルゲンリスト (Frosch et al. Contact Dermatitis 5th Ed. (2011)) に収載されている。
   以上、多くの動物試験やヒトの疫学調査で陰性との報告もあるものの、明確な証拠が不十分であることから、区分1とした。
   本物質は、EU CLP分類において、「Skin sens. 1 H317」に分類されている (ECHA C&L Inventory (Access on December 2015))。
  また、旧分類で採用した日本接触皮膚炎学会の皮膚感作性に関する情報は、今回の調査で入手できなかった。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-

-
- -   ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。
  すなわち、in vivoでは、ラット、マウスの骨髄細胞を用いる小核試験で陰性、マウス骨髄細胞の染色体異常試験で陽性、陰性の結果、マウス骨髄細胞の姉妹染色分体交換試験で陰性、ラットの肝臓を用いるDNA付加体形成試験で陽性である (NITE初期リスク評価書 (2005)、EU-RAR (2010)、DFGOT suppl (2011)、環境省リスク評価第3巻 (2004)、NTP DB (Access on June 2016))。
  In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験で陰性、遺伝子突然変異試験で陽性、陰性の結果、小核試験で陽性、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陽性、陰性の結果である (NITE初期リスク評価書 (2005)、EU-RAR (2010)、DFGOT suppl (2011)、環境省リスク評価第3巻 (2004))。
  なお、EU-RAR (2010)は、本物質にin vivoにおいて意味のある変異原性を示さないと結論している。
6 発がん性 分類できない
-

-
- -   ラット、又はマウスを用いた2年間の経口経路 (混餌投与) による発がん性試験では、ラット、マウスともに発がん性の証拠は示されなかった (NTP TR 215 (1982)、EU-RAR (2010))。
  その後、複数のイニシエーターを用いた本物質のプロモーター活性の有無の検討では複数の臓器に対してプロモーター作用は全く検出されなかった (EU-RAR (2010))。
  また、出生前に本物質にばく露された動物の乳腺に前がん病変と腫瘍性変化がみられたと報告されたが、評価手法に技術的な問題があり信頼性に疑問があることに加えて、複数ある生殖毒性試験で乳腺に前がん病変が一貫してみられておらず、発がん性の証拠としては不十分であるとされた (EU-RAR (2010))。
  これらの出生前後に本物質投与を行った追加試験でも発がんのプロモーター作用を示す証拠は得られず、初期の2年間発がん性試験結果における発がん性の証拠なしとの結論を支持するものとして、EUは実験動物のデータを総合判断した結果、本物質は発がん作用を有さないと示唆されると結論している (EU-RAR (2010))。
   以上、EUの結論からは区分外とも考えられるが、吸入、経皮など経口以外の経路での発がん性情報が不足しており、本項は分類できないとした。
7 生殖毒性 区分1B

危険
H360 P201
P202
P280
P308+P313
P405
P501
  ラットに低用量 (0.2〜200 μg/kg/day) を投与した2世代試験では生殖能への影響はみられていないが、ラットを用いた3世代試験では各世代とも500 mg/kg/day で一般毒性 (体重の軽度低下 (雌雄)、尿細管の変性(雌のみ)) と共に生殖毒性 (同腹児数の減少) がみられた (EU-RAR (2010))。
  また、マウスに極低用量から高用量まで (0.003〜600 mg/kg/day) 投与した2世代試験では生殖能への影響はみられなかったが、マウスを用いた連続交配試験において、F0の600 mg/kg/day以上で妊娠腹数の減少が生じ、同腹児数と同腹生存児数の減少が第4〜第5腹まで連続してみられた。
  この生殖影響は親動物に一般毒性影響のない用量でみられた (EU-RAR (2010))。
  以上の生殖毒性試験を通して、生殖影響のNOAELはラット3世代試験から 50 mg/kg/day と設定された。
  一方、ラット、マウスを用いた標準的な発生毒性試験ではビスフェノールAが発生毒性物質であるとの証拠は得られていない。
  ただし、上記のラット3世代試験では500 mg/kg/dayでF1〜F3児動物に離乳までの体重の低値推移と性成熟遅延が認められ、またマウス2世代試験でも600 mg/kg/dayでF1児動物の体重の低値とともに、F1、F2雄児動物の離乳時に精巣下降不全、及び精細管の低形成がみられており、次世代への発生・発達影響が示されている (EU-RAR (2010))。
   以上、本物質は実験動物で生殖発生毒性を示す証拠が十分あり、特にマウス連続交配試験では親動物に一般毒性影響がない用量で生殖能低下がみられていることから、本項は区分1Bとした。
   なお、EUは本物質の生殖毒性をRepr. 1B に分類している (ECHA C&L Inventory (Access on December 2015))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器)
区分3(麻酔作用)


危険
警告
H370
H335
H336
P260
P264
P270
P308+P311
P321
P405
P501
P261
P271
P304+P340
P312
P403+P233
  本物質のヒトでの単回ばく露のデータはない。
  実験動物ではラットを用いた単回吸入ばく露試験で、鼻腔上皮組織の軽微な炎症と鼻腔から口腔にかけての粘膜の軽微な潰瘍形成が区分1のガイダンス値範囲の濃度で認められたとの記載がある (EU-RAR (2010))。
  またラットの単回経口投与試験で2,000 mg/kgの用量で傾眠と衰弱が認められたが死亡例はなかったとの記載がある (EU-RAR (2010))。
  さらにラット、マウス、ウサギへの単回経口投与で、興奮とそれに続いて緊張減退、痙攣、運動失調、下痢そして尿量の増加が認められたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、DEFGOT vol. 13 (1999))。
  以上より区分1 (呼吸器)、区分3 (麻酔作用) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2(消化管、呼吸器)

警告
H373 P260
P314
P501
  ヒトについての情報はない。
   ラットを用いた強制経口投与による28〜32日間反復投与毒性試験において、区分2相当の200 mg/kg/day (28日間投与、90日間換算:62 mg/kg/day) で消化管への影響 (結腸粘膜の過形成、十二指腸及び空腸の中心乳び腔拡張) の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005))。
  また、ラットを用いた吸入毒性試験おいて、区分2相当の50 mg/m3 (6時間/日、65日間暴露:ガイダンス値換算;0.036 mg/L) で呼吸器への影響 (鼻腔、呼吸粘膜の炎症、扁平上皮過形成) の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2005)、DFGOT suppl (2011)、EU-RAR (2010))。
   なお、旧分類では肝臓及び腎臓を区分2の標的臓器としていたが、肝臓については区分2相当の用量で小葉中心性肝細胞肥大のみであることから標的臓器としなかった。
  腎臓については尿細管の変性及び壊死の報告があるが区分2を上回る用量であったことから標的臓器としなかった。
   したがって、区分2 (消化管、呼吸器) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2
絵表示なし


注意喚起語なし
H401 P273
P501
  甲殻類(ミシッドシュリンプ)96時間LC50 = 1.1 mg/L(ECETOC TR91, 2003、EU-RAR, 2010、NITE初期リスク評価書, 2005、環境省リスク評価第3巻, 2004)であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分2

注意喚起語なし
H411 P273
P391
P501
  急速分解性がなく(2週間でのBODによる分解度:0%(既存点検, 1977))、魚類(ファットヘッドミノー)の164日間NOEC = 0.16 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2005、環境省リスク評価第3巻, 2004)であることから、区分2とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-

-
- -   データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
  * 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
    また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
  * 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
  * 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
    ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
  * 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
    他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

更新履歴:
  2017/7/25

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