GHS分類結果

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一般情報

項目 情報
CAS番号 75-35-4
名称 1,1-ジクロロエチレン (別名:塩化ビニリデン)
物質ID H28-B-041, C-056B
分類実施年度 平成28年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 (危険物/有害物)  再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度    
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関連情報

項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) GHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク)  
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイト
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-

-
- -   爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外
-

-
- -   エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分1

危険
H224 P210
P233
P240
P241
P242
P243
P280
P303+P361+P353
P370+P378
P403+P235
P501
  引火点-25℃ (closed cup)、沸点32℃ (ICSC (2014)) に基づいて区分1とした。
  国連分類UN1303 (安定剤入りのもの) クラス3 PGT。
7 可燃性固体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 タイプG
-

-
- -   分子内に自己反応性に関連する原子団 (不飽和結合) を含むが、安定剤入りのものがUN 1303 クラス3に分類されており、優先評価項目の自己反応性化学品には該当しない。
9 自然発火性液体 区分外
-

-
- -   発火点は570℃ (HSDB (Access on June 2016)) であり常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-

-
- -   液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-

-
- -   金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外
-

-
- -   酸素およびフッ素を含まず、塩素を含む有機化合物であるが、この塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外
-

-
- -   分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-

-
- -   低沸点の液体に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性<

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4

警告
H302 P264
P270
P301+P312
P330
P501
  ラットのLD50値として、約1,500 mg/kg (ATSDR (1994))、1,500 mg/kg (EHC 100 (1990)、PATTY (6th, 2012)、CICAD 51 (2003)、IRIS Tox. Review (2002))、1,510 mg/kg (EHC 100 (1990)、ATSDR (1994)、DFGOT vol.8 (1997))、1,510〜1,550 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2007))、1,550 mg/kg (CICAD 51 (2003)、IRIS Tox. Review (2002)、DFGOT vol.8 (1997)、ATSDR (1994))、1,800 mg/kg (CICAD 51 (2003)、IRIS Tox. Review (2002))、2,500 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)) との7件の報告がある。
  6件が区分4に、1件が区分外 (国連分類基準の区分5) に該当することから、件数の最も多い区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分4

警告
H332 P261
P271
P304+P340
P312
  ラットのLC50値 (4時間) として、415〜32,000 ppm の範囲内で21件の報告がある。
  2件が区分2に (NITE初期リスク評価書 (2007)、ATSDR (1994)、EHC 100 (1990))、4件が区分3に (ATSDR (1994)、EHC 100 (1990))、14件が区分4に (NTP TR582 (2015)、NITE初期リスク評価書 (2007)、CICAD 51 (2003)、IRIS Tox. Review (2002)、DFGOT vol.8 (1997)、ATSDR (1994)、EHC 100 (1990))、1件が区分外に該当する (EHC 100 (1990)) ことから、件数の最も多い区分4とした。
  なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (791,881 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
  新たに入手した情報に基づき、区分を見直した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない
-

-
- -   ウサギの皮膚刺激性試験において皮膚刺激性が認められたが、本物質に添加された重合禁止剤 4-メトキシフェノールが刺激性に関与した可能性があることから (NITE初期リスク評価書 (2007)、DFGOT vol.8 (1997)、EHC 100 (1990)、PATTY (6th, 2012))、分類できないとした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない
-

-
- -   ウサギの眼刺激性試験で一過性の角膜損傷を伴う中程度の刺激が認められたが、本物質中の重合禁止剤 4-メトキシフェノール (MEHQ) による刺激性の可能性が指摘されていることから (EHC 100 (1990)、PATTY (6th, 2012))、分類できないとした。
4 呼吸器感作性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない
-

-
- -   マウスを用いた皮膚感作性試験 (LLNA法) で陰性との記述 (CICAD 51 (2003)) があるが、他にデータがないので分類できないと判断した。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-

-
- -   ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。
  すなわち、in vivoでは、ラット、マウスの優性致死試験で陰性、マウス骨髄細胞及び末梢血、ラット骨髄細胞の染色体異常試験で陰性、チャイニーズハムスター骨髄細胞の染色体異常試験で陽性である (NITE初期リスク評価書 (2007)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (1994)、CICAD 51 (2003)、DFGOT vol.8 (1997)、EHC 100 (2007)、EPA IRIS Tox Review (2002)、IARC 71 (1999)、NTP TR582 (2015))。
  In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験で陽性、遺伝子突然変異試験で陰性、染色体異常試験で陽性、陰性の結果、姉妹染色分体交換試験で陽性である (NITE初期リスク評価書 (2007)、ATSDR (1994)、CICAD 51 (2003)、DFGOT vol.8 (1997)、EHC 100 (2007)、EPA IRIS Tox Review (2002)、IARC 71 (1999)、NTP TR582 (2015))。
  以上より、in vitro試験では陽性結果が多いが、in vivo試験でほとんど陰性の報告であり、本物質はin vivo系で遺伝毒性を有しないと考えられる。
6 発がん性 区分1B

危険
H350 P201
P202
P280
P308+P313
P405
P501
  ラット及びマウスの経口経路での試験では発がん性の証拠はなかった。
  吸入経路での試験ではハムスターには投与に関連した腫瘍性変化はなかったが、マウスでは肺腺腫の増加が雌雄に、腎臓腺がん及び乳腺腫瘍の増加が各々雄及び雌にみられた (IARC 71 (1999))。
  これらの結果等から、IARCがグループ3に (IARC 71 (1999))、ACGIHがA4に (ACGIH (7th, 2001)) 分類したのに対し、EPAはグループC (possible human carcinogen: 区分2相当) に分類した (IRIS Summary (2002))。
  その後、NTPは吸入発がん性試験を行い、2015年に結果を公表した。
  すなわち、ラット、又はマウスに2年間吸入ばく露した結果、ラットで悪性中皮腫、鼻腔及び腎臓腫瘍が雄に、甲状腺腫瘍、単核球性白血病が雌に、マウスでは肝臓腫瘍が雌雄に、腎臓腫瘍が雄に、多臓器の血管腫、血管肉腫が雌にそれぞれ認められ、雄ラット及び雌雄マウスで明らかな発がん性の証拠があり、雌ラットではある程度の証拠があると結論された (NTP TR582 (2015))。
   以上、最新のNTPによる吸入ばく露試験結果において、実験動物2種で発がん性の証拠が得られたことから、本項は区分1Bとした。
7 生殖毒性 区分2

警告
H361 P201
P202
P280
P308+P313
P405
P501
  ラットを用いた経口経路 (飲水投与) による3世代生殖毒性試験において、F0、F1、F2各世代とも2腹を妊娠・出産させたが、F1、F2世代に肝臓影響 (脂肪肝) がみられる用量 (100, 200 ppm) においても受胎率、次世代の発生・発育に有害影響は示されず、生殖毒性はないと結論されている (EHC 100 (1990)、ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012))。
  一方、妊娠ラット、又は妊娠ウサギの器官形成期に吸入ばく露した発生毒性試験では母動物毒性がみられる用量でラット胎児に骨化遅延と波状肋骨が、ウサギ胎児に胚/胎児吸収の増加と骨格変異がみられている (EHC 100 (1990)、ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012))。
  この他、妊娠動物 (ラット、マウス) の器官形成期に吸入ばく露した試験で母動物に一部死亡例 (死亡率不明) が発現する用量で胎児に奇形 (水頭症)、早期吸収胚の増加、全胚吸収がみられたとの報告もある (EHC 100 (1990))。
  以上、母動物毒性発現量で軽微な影響として許容できないレベルの胚/胎児毒性がみられたことから、本項は区分2とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(神経系、呼吸器、肝臓、腎臓)
区分3(麻酔作用)


危険
警告
H370
H335
H336
P260
P264
P270
P308+P311
P321
P405
P501
P261
P271
P304+P340
P312
P403+P233
  ヒトでは本物質の急性吸入ばく露により、中枢神経系の抑制ないし興奮症状を示し、重篤な場合は意識不明になることが報告されている (NITE初期リスク評価書 (2007))。
  更に本物質を含むタンクの洗浄時に急性吸入ばく露されたヒトの症例で、三叉神経と舌下神経及び聴神経が持続的に傷害された例が2例報告されている (ATSDR (1994))。
  実験動物では本物質の区分1に相当するガイダンス値範囲内の用量の単回経口又は単回吸入ばく露により、毛細胆管の傷害、肝細胞の小葉中心性壊死、近位尿細管の傷害、肺の水腫と出血が起こること が報告されている (NITE初期リスク評価書 (2007)、CICAD 51 (2003))。
  さらに実験動物における本物質の単回吸入ばく露による死亡例ではうずくまり、呼吸困難、昏睡、麻酔状態を呈して死に至ることが報告されている (NITE初期リスク評価書 (2007)、ATSDR (1994))。
  以上より区分1(神経系、呼吸器、肝臓、腎臓)、区分3 (麻酔作用) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(血液、呼吸器、肝臓、腎臓、生殖器 (男性))

危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
  ヒトについては、6 年以下のばく露期間で作業していた重合工場作業者27/46 人 (59%) に肝機能障害が認められたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、ATSDR (1994))。
   実験動物では、ラットを用いた飲水投与による2年間反復投与毒性試験において、区分1相当の50 ppm (9 mg/kg/day) で軽度の小葉中間性の脂肪変性を伴う肝細胞腫脹の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、ATSDR (1994))。
   ラットを用いた14週間吸入毒性試験において区分1の範囲である6.25〜50 ppm (ガイダンス値換算:0.017〜0.132 mg/L) で呼吸器への影響 (嗅上皮の萎縮・鉱質化・壊死、鼻甲介の萎縮等)、肝臓への影響 (小葉中心性細胞質変性、細胞質空胞化等)、区分2相当の100 ppm (ガイダンス値換算:0.26 mg/L) で上記に加えさらに精巣への影響 (精子の運動性低下、精子数減少) の報告 (NTP TR582 (2015))、ラットを用いた105週間吸入毒性試験において、区分1の範囲である25〜50 ppm (0.099〜0.198 mg/L) で呼吸器への影響 (鼻腔の鼻甲介萎縮・骨過形成、嗅上皮呼吸上皮化生、呼吸上皮過形成、慢性活動性炎症等)、肝臓への影響 (肝臓の炎症・び漫性脂肪化等) の報告 (NTP TR582 (2015))、マウスを用いた52週間吸入毒性試験において区分1相当の10 ppm (0.026 mg/L) で腎臓退行性変性、膿瘍、腎炎の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007))。
  マウスを用いた14週間吸入毒性試験において、区分1の範囲である6.25〜50 ppm (ガイダンス値換算:0.017〜0.132 mg/L) で血液への影響 (赤血球数・ヘモグロビン濃度・ヘマトクリット値の減少)、呼吸器への影響 (喉頭の呼吸上皮の扁平上皮化生)、精巣への影響 (精巣上体尾部精子数減少)、腎臓への影響 (腎症、尿細管壊死・タンパク円柱)、区分2相当の100 ppm (ガイダンス値換算:0.26 mg/L) で上記に加えさらに肝臓への影響 (肝臓の壊死・小葉中心性肝細胞肥大) の報告 (NTP TR582 (2015))、マウスを用いた105週間吸入毒性試験において区分1の範囲である6.25〜25 ppm (0.025〜0.099 mg/L) で呼吸器への影響  (鼻腔の鼻甲介萎縮・骨過形成、嗅上皮呼吸上皮化生等)、腎臓への影響 (腎臓の尿細上皮過形成) の報告がある (NTP TR582 (2015))。
   以上のようにヒトで肝臓への影響がみられ、実験動物では、血液系、呼吸器、肝臓、腎臓、精巣への影響が区分1の範囲からみられた。
  したがって、区分1 (血液系、呼吸器、肝臓、腎臓、生殖器 (男性)) とした。
  
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
  なお、HSDB (Access on June 2016) に収載されて数値データ (粘性率: 0.330 mPa・s (20℃)、密度 (比重): 1.22 (20/4℃)) より、動粘性率は0.27 mm2/sec (20/20℃) と算出される。

環境に対する有害性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2
絵表示なし


注意喚起語なし
H401 P273
P501
  藻類(クラミドモナス)72時間EbC50 = 9.12 mg/L(CICADs 51, 2003、 ECETOC TR91, 2003)であることから、区分2とした。
  なお、分類に用いた藻類のデータはバイオマス法によるものであるが、甲殻類、魚類のいずれのデータよりも小さい値が報告されており、区分が小さくなることから、本データを採用して分類を行った。
11 水生環境有害性(長期間) 区分3
絵表示なし


注意喚起語なし
H412 P273
P501
  慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(BODによる分解度:0%(既存点検, 1991))、藻類(セネデスムス)の96時間EC10 = 240 mg/L(CICADs 51, 2003)から、区分外となる。
  慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(BODによる分解度:0%(既存点検, 1991)、甲殻類(オオミジンコ)のLC50 = 11.6 mg/L(CICADs 51, 2003)であることから、区分3となる。
  以上の結果を比較し、区分3とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-

-
- -   データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
  * 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
    また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
  * 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
  * 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
    ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
  * 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
    他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

更新履歴:
  2017/7/25

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