GHS分類結果

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一般情報

項目 情報
CAS番号 98-95-3
名称 ニトロベンゼン
物質ID Substance_ID
分類実施年度 平成28年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 (危険物/有害物)  再分類・見直し
他年度における分類結果 平成26年度   平成18年度  
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関連情報

項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) GHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク)  
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイト
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類できない
-

-
- - 爆発性に関わる原子団 (ニトロ基) を含み、酸素収支の計算値は-162であり、判定基準の-200より高く、爆発物に分類される可能性があるが、データがなく分類できない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-

-
- - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外
-

-
- - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-

-
- - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-

-
- - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分4
絵表示なし


警告
H227 P210
P280
P370+P378
P403+P235
P501
引火点88℃ (closed cup) (ICSC (2006)) に基づいて区分4とした。
7 可燃性固体 分類対象外
-

-
- - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類できない
-

-
- - 爆発性に関わる原子団 (N-O) を含むが、データがなく分類できない。
9 自然発火性液体 区分外
-

-
- - 発火点は480℃ (ICSC (2006)) であり常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外
-

-
- - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-

-
- - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-

-
- - 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類できない
-

-
- - フッ素または塩素を含まず、酸素を含む有機化合物である。この酸素は炭素、水素以外の元素(窒素)と化学結合しているが、データがなく分類できない。
14 酸化性固体 分類対象外
-

-
- - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外
-

-
- - 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-

-
- - データがなく分類できない。

健康に対する有害性<

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4

警告
H302 P264
P270
P301+P312
P330
P501
ラットのLD50値として、349 mg/kg (環境省リスク評価第2巻 (2003))、588 mg/kg (EU-RAR (2007))、600 mg/kg (EHC 230 (2003)、ATSDR (1990)、ACGIH (7th, 2001)、IARC 65 (1996)、HSDB (Access on May 2016))、640 mg/kg (EHC (230, 2003)、DFGOT vol.19 (2003)、NITE有害性評価書 (2008)、BUA 59 (1991))、732 mg/kg (EU-RAR (2007)) の報告に基づき、区分4とした。なお、国連危険物輸送では国連番号1662クラス6.1容器等級IIとされている。
1 急性毒性(経皮) 区分3

危険
H311 P280
P302+P352
P312
P321
P361+P364
P405
P501
ウサギのLD50値として、560〜760 mg/kg (EU-RAR (2007)) が1件、760 mg/kg (EHC (230, 2003)、HSDB (Access on May 2016)) が2件、ラットのLD50値として、2,100 mg/kg (EHC 230 (2003)、EU-RAR (2007)、DFGOT vol.19 (2003)、NITE有害性評価書 (2008)、HSDB (Access on May 2016)、BUA 59 (1991)) が3件報告されている。区分3に該当する報告が3件、区分外に該当する報告が3件と同数であることから、有害性の高い区分を採用し、区分3とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-

-
- - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない
-

-
- - データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分4

警告
H332 P261
P271
P304+P340
P312
ラットのLC50値として、556 ppm (4時間) (換算値: 2.79 mg/L) (環境省リスク評価第2巻 (2003)、EU-RAR (2007)) の報告に基づき、区分4とした。なお、この値は飽和蒸気圧濃度 (1.62 mg/L) より高いため、ミストの基準値を適用した。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外
-

-
- - EHC 230 (2003) のウサギを用いた皮膚刺激性試験 (ばく露時間不明) において、「スコア1 (24時間後の時点でかろうじて認識できる程度の非常に小さい紅斑、48、72、96時間後の時点でのスコアは0) が観察された。」、及びPATTY (4th, 1999) のヒトへの健康影響の記述「ヒトの眼及び皮膚を刺激する」より、軽度の刺激性を有すると考えられるため、区分外 (国連分類基準の区分3) とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B
絵表示なし


警告
H320 P264
P305+P351+P338
P337+P313
ウサギを用いた眼刺激性試験結果において、0.05 mLの眼瞼下部適用で、わずかな影響が生じたとの報告 (EHC 230 (2003)) や、ヒトの眼及び皮膚を刺激する (PATTY (6th, 2012)) より、区分2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない
-

-
- - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない
-

-
- - データ不足のため分類できない。なお、モルモットを用いた皮膚感作性試験において、感作性はみられなかったとの報告があるが (EHC 230 (2003))、試験法等の詳細について不明であるため分類に用いるには不十分なデータと判断した。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-

-
- - ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、ラット末梢血の染色体異常試験、マウス骨髄細胞の小核試験、ラット末梢血、脾臓リンパ球の姉妹染色分体交換試験、ラット肝臓の不定期DNA合成試験で陰性 (NITE有害性評価書 (2008)、EHC 230 (2003)、IRIS Tox. Review (2009)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT (2012)、IARC 65 (1996)、EU-RAR (2007)、ECHA RAC Background Document (2012)) である。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陰性、哺乳類培養細胞の小核試験で弱い陽性である (NITE有害性評価書 (2008)、EHC 230 (2003)、IRIS Tox. Review (2009)、IARC 65 (1996)、EU-RAR (2007)、DFGOT (2012)、NTP DB (Access on June 2016)、ECHA RAC Background Document (2012))。なお、哺乳類培養細胞の小核試験で弱い陽性結果はあるが、EU-RAR (2008) は本物質に変異原性はないと評価している。
6 発がん性 区分2

警告
H351 P201
P202
P280
P308+P313
P405
P501
ヒトの発がん性に関する情報はない、実験動物ではラット又はマウスに2年間吸入ばく露した3つの発がん性試験において、肝臓、腎臓、肺、乳腺などに腫瘍発生頻度の増加が認められている (NITE有害性評価書 (2008)、EU-RAR (2007))。この結果を基に、IARCがグループ2B (IARC 65 (1996))、ACGIHがA3 (ACGIH (7th, 2001))、EPAがL (IRIS Summary (2009))、NTPがR (Report on Carcinogens (13th, 2014))、日本産業衛生学会が2B (許容濃度の勧告 (2015))、EUが Carc 2 H351: Suspected of causing cancer (ECHA C&L Inventory (Access on May 2016)) にそれぞれ分類している。したがって、本項は区分2とした。
7 生殖毒性 区分1B

危険
H360 P201
P202
P280
P308+P313
P405
P501
ラットに吸入ばく露した2世代試験において、F0、F1世代とも親動物では 40 ppm (200 mg/m3) で、受胎率の低下と精巣毒性 (精巣の矮小、精細管の萎縮、精母細胞の変性及び多核巨細胞、精巣上体の管腔内の変性精母細胞及び精子細胞の減少など) が認められた (NITE有害性評価書 (2008)、EU-RAR (2007))。ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験でも、親動物に精巣毒性 (精細管萎縮、ライディッヒ細胞の過形成) が認められている (NITE有害性評価書 (2008)、EU-RAR (2007))。最も感受性の高い毒性は血液毒性のメトヘモグロビン生成であるとされているが、EUのリスク評価委員会 (RAC) での検討でメトヘモグロビン濃度が末梢組織で酸素欠乏を生じる程高くない (10%程度の上昇) 状況下で精細管上皮の萎縮や変性、受胎率の低下を生じ、精巣毒性はメトヘモグロビン血症と関連性のない影響であると結論された (ECHA RAC Background Document (2012))。その結果、EUでは区分1Bに分類され (H365F: May damage fertility)、SVHCに指定された (ECHA ANNEX XV ? IDENTIFICATION OF NITROBENZENE AS SVHC (2015))。以上、実験動物で経口及び吸入の2経路で顕著な精巣毒性と受胎率低下が認められており、EUの見解も考慮し、本項は区分1Bとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (神経系、血液系、肝臓、生殖器 (男性))、区分3 (麻酔作用)


危険
警告
H370
H335
H336
P260
P264
P270
P308+P311
P321
P405
P501
P261
P271
P304+P340
P312
P403+P233
ヒトでは本物質の事故または意図的な摂取の数十分後に重篤な意識障害、チアノーゼがみられ、その後血中でメトヘモグロビンの形成がみられる。さらに血液形態学的検査で大小不同性赤血球、多染性赤血球、好塩基性赤芽球が多数確認されている (NITE初期リスク評価書 (2005))。本物質の蒸気を吸入すると、疲労、めまい、頭痛、吐き気などを起こす。高濃度の場合は胃障害、心悸亢進、意識喪失、痙攣などの症状を現す。皮膚からも吸収し中毒する (環境省リスク評価第2巻 (2003))。ラットを用いた実験では、区分1のガイダンス値の範囲内での経口単回摂取により、肝細胞核小体の肥大化、小葉中心性壊死、精母細胞の壊死、精上皮細胞の多核細胞化が認められた (EHC 230 (2003))。以上より区分1 (神経系、血液系、肝臓、生殖器 (男性))、区分3 (麻酔作用) とした。 なお、旧分類で腎臓を標的臓器とした根拠は、マウスを用いた経皮単回投与実験 (EHC 230 (2003)) であるが、投与量の詳細な記載がないため、採用しなかった。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (神経系、血液系、呼吸器、肝臓、腎臓、生殖器 (男性))

危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
ヒトについては、塗装作業中に本物質を含有する塗料を17ヵ月間使用した女性の症状として、重篤な頭痛、目眩、下肢の麻痺、食欲減退、チアノーゼ、メトヘモグロビン血症、黄疸、肝障害、低血圧、痛覚過敏、尿中ウロビリノーゲン陽性がみられ、尿中には代謝物であるp-アミノフェノールとp-ニトロフェノールが入院2週間後まで検出されたとの報告がある (NITE有害性評価書 (2008))。 実験動物については、吸入経路では、ラット、マウスを用いた13週間吸入ばく露試験において、ラットでは、区分1の範囲である25 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.018 mg/L) 以上でメトヘモグロビン、中毒性ネフローゼ、肝細胞の肥大・壊死、81 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.059 mg/L) で溶血性貧血、252 mg/m3 (0.18 mg/L) で精巣萎縮、精子形成上皮変性の増加を認め、マウスにおいても区分1の範囲で肝細胞の過形成、メトヘモグロビン等を認めたほか区分1の範囲である25 mg/m3 (ガイダンス値換算: 0.018 mg/L) で雌の副腎で網状帯の空胞化を認めた (環境省リスク評価第2巻 (2003))。これらの影響のほか、ラットを用いた2年間吸入ばく露試験において、区分1の範囲である125 mg/m3 (0.125 mg/L) で甲状腺への影響 (濾胞上皮細胞過形成)、呼吸器への影響 (鼻腔の炎症) がみられ、マウスを用いた505日間吸入毒性試験において、区分1の範囲である25 mg/m3 (0.025 mg/L) あるいは125 mg/m3 (0.125 mg/L) で呼吸器への影響 (肺の肺胞壁の細気管支化、鼻腔の変性及び炎症性病変等)、甲状腺への影響 (濾胞上皮細胞過形成) がみられている (NITE有害性評価書 (2008))。 経口経路では、ラットを用いた強制経口投与での反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験において、区分1の範囲から血液、肝臓への影響、区分2の範囲で精巣への影響がみられたほか、区分2の範囲である60 mg/kg/day (ガイダンス値換算: 26.7 mg/kg/day) 及び100 mg/kg/day (ガイダンス値換算: 44.5 mg/kg/day) では、加えて、神経系への影響 (異常歩行、斜頸、中枢神経系の壊死/グリオーシス) も認められている (NITE有害性評価書 (2008))。また、ラットを用いた強制経口投与での13週間反復投与毒性試験においても、区分2の範囲である75 mg/kg/day以上で、神経系への影響 (運動失調、斜頸、嗜眠、振戦、旋回運動) がみられている (EHC 230 (2003))。 経皮経路では、マウス、ラットを用いた13週間経皮投与試験において、マウス、ラットとも区分2の範囲である50 mg/kg/dayにおいて肺のうっ血、副腎皮質の脂肪変性がみられ、マウスではさらに肝臓の小葉中心性の核の大きさの変動がみられたとの記載がある (EHC 230 (2003))。 以上のように、主に神経系、血液系、呼吸器、肝臓、腎臓、精巣に区分1相当の用量から影響がみられた。 したがって、区分1 (神経系、血液系、呼吸器、肝臓、腎臓、生殖器 (男性)) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-

-
- - データ不足のため分類できない。なお、HSDB (Access on May 2016) に収載された数値データ (粘性率: 1.863 mPa・s (25℃)、密度: 1.2037 g/cm3 (20℃)) より動粘性率は1.548 mm2/sec (25/20℃) と算出される。

環境に対する有害性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2
絵表示なし


注意喚起語なし
H401 P273
P501
甲殻類(ミシッドシュリンプ)96時間LC50 = 6.68 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2005)であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分3
絵表示なし


注意喚起語なし
H412 P273
P501
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がないが(BODによる分解度:3.3%(既存点検, 1976))、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC (繁殖)=2.6 mg/L(ECETOC TR91, 2003、EHC 230, 2003、NITE初期リスク評価書, 2005、環境省リスク評価第2巻, 2003)であることから、区分外となる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(BODによる分解度:3.3%(既存点検, 1976))、魚類(メダカ)の96時間LC50 = 24 mg/L(EHC 230, 2003)であることから、区分3となる。 以上の結果を比較し、区分3とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-

-
- - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
  * 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。  また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。* 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。* 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。  ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。* 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。  他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

更新履歴:
  2017/7/25

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