GHS分類結果

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一般情報

項目 情報
CAS番号 1071-83-6
名称 N-(ホスホノメチル)グリシン (別名:グリホサート)
物質ID H28-B-016, C-023B
分類実施年度 平成28年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 (危険物/有害物)  再分類・見直し
他年度における分類結果 平成20年度    
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関連情報

項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) GHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) 職場のあんぜんサイト
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイト
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-

-
- -   爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外
-

-
- -   エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない
-

-
- -   可燃性 (GESTIS (Access on May 2016)) との情報があるが、データがなく分類できない。
8 自己反応性化学品 分類対象外
-

-
- -   爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 分類できない
-

-
- -   データがなく分類できない。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-

-
- -   データがなく分類できない。
12 水反応可燃性化学品 区分外
-

-
- -   水溶解度 (10.1 g/L (20℃)) (GESTIS (Access on May 2016)) が測定されており、水と激しく反応することはないと考えられる。
13 酸化性液体 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない
-

-
- -   酸素を含み、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合している有機化合物であるが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 分類対象外
-

-
- -   分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-

-
- -   固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性<

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外
-

-
- -   ラットのLD50値として、2,047 mg/kg (EHC 159 (1994))、> 4,320 mg/kg (EPA RED (1993))、> 50,00 mg/kg (EHC 159 (1994)、JMPR (2004)、食品衛生研究 (2000))、5,600 mg/kg、10,537 mg/kg、11,343 mg/kg (日本農薬学会誌 (2000))、4,900〜6,300 mg/kg (JMPR (2004)) の報告に基づき、区分外とした。
  
1 急性毒性(経皮) 区分外
-

-
- -   ラットのLD50値として、> 2,000 mg/kg (EHC 159 (1994)、JMPR (2004)、EPA RED (1993))、ウサギのLD50値として、> 5,000 mg/kg (EHC 159 (1994)、JMPR (2004)、日本農薬学会誌 (1983)) の報告に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外
-

-
- -   GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
  なお、ラットのLC50値として、> 4.43 mg/L (JMPR (2004))、> 4.98 mg/L (JMPR (2004)、HSDB (Access on May 2016)) の報告があるが、区分4あるいは区分を超えるか特定できないためデータとして採用しなかった。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外
-

-
- -   ウサギを用いた試験 ((US EPA guidelineまたはOECD TG 404、GLP) において、軽度の刺激性がみられるとの記載があり、スコアは0.8である。
  その他のウサギを用いた4つの試験 (US EPA guidelineまたはOECD TG 404、GLP) では、いずれも刺激性なしと報告されている (EHC 159 (1994)、JMPR (2004)) ことから、区分外とした。
  
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1

危険
H318 P280
P305+P351+P338
P310
  ウサギを用いた3つの試験 (US EPA guidelineまたはOECD TG 405、GLP) において、21日間の観察期間中に回復しない症状が認められる。
  1つ目の試験では、角膜混濁と結膜の水疱形成 (6/6匹)、角膜パンヌス (3/6匹)、結膜への血管形成 (1/6匹) と血液様分泌物 (1/6匹) がみられ、5匹中3匹で21日間継続している (JMPR (2004))。
  2つ目の試験でも、角膜混濁、結膜の発赤、結膜浮腫が全ての動物でみられ、6匹中2匹で21日間継続している (JMPR (2004))。
  3つ目の試験でも、角膜と虹彩、結膜の症状がみられ、そのうち軽度の角膜での反応は試験終了後96時間後も継続した (JMPR (2004))。
  以上のことから、区分1とした。
  なお、本物質はEU CLP分類で「Eye Dam. 1 H318」に分類されている (ECHA C&L Inventory (Access on May 2016))。
4 呼吸器感作性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 区分外
-

-
- -   モルモットのビューラー試験 (GLP) における感作性なしとの報告 (JMPR (2004)) や、マキシマイゼーション試験 (US EPA and the OECD TG 406, GLP) における感作性なしとの報告が多数ある (EHC 159 (1994)、JMPR (2004)) ことから、区分外とした。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-

-
- -   ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。
  すなわち、in vivoでは、マウス骨髄細胞の小核試験、マウスの肝臓、腎臓を用いたDNA傷害試験で陽性の結果が報告されている (IARC 112 (2015)、JMPR (2004)) が、他の多くの試験 (ラット骨髄細胞の染色体異常試験、マウス骨髄細胞及び末梢血の小核試験、マウスの優性致死試験) ではすべて陰性の結果であり (IARC 112 (2015)、EPA RED (1993)、JMPR (2004)、NTP DB (Access on June 2016)、日本農薬学会誌 (1983))、これら陽性の結果は再確認されていない。
  In vitroでは、ヒト末梢血リンパ球を用いた染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験、チャイニーズハムスター培養細胞の小核試験で陽性結果が報告されているものの、他の多くの試験 (細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、染色体異常試験、小核試験) ではすべて陰性の結果である(IARC 112 (2015)、JMPR (2004)、EPA RED (1993)、IRIS Summary (1987)、NTP DB (Access on June 2016)、日本農薬学会誌 (1983))。
  したがって、weight of evidenceにより、本物質に変異原性があるとみなすことはできないと判断した。
6 発がん性 分類できない
-

-
- -   IARCは2015年にグリホサートの発がん性をグループ2A (GHS分類の1B相当) に分類した。
  その根拠はヒトで非ホジキンリンパ腫の限定的な証拠があること、マウス及びラットを用いた混餌投与による複数の試験結果で、傾向検定で尿細管腫瘍、血管肉腫、膵島細胞腫瘍、肝細胞腺腫などの増加が認められ、実験動物では発がん性を示す十分な証拠があること、及び作用機序として遺伝毒性物質であると判断されたことであった (IARC 112 (2015))。
  一方、JMPRは残留農薬の評価としてグリホサートに遺伝毒性、発がん性はないと考えられると結論していた (JMPR (2004))。
  2015年のIARCによるグループ2A評価に対し、EFSA (欧州食品安全委員会) とBfR (ドイツ連邦リスク評価研究所) はIARCが評価に用いたグリホサートの資料には原体だけでなく、製剤のデータが複数含まれ、グリホサート以外の他成分や共製剤の影響がIARCの評価にバイアスを与えた可能性を否定できないとし、JMPRの評価結果を踏まえてグリホサート原体は非発がん物質であると反論した (EFSA explains risk assessment (Access on May 2016))。
  IARC (2015) とJMPR (2004) の評価結果が異なった理由を明らかにするため、WHOはJMPRに対しエキスパートによる作業部会を設けてグリホサートの発がん性を再評価するよう指示した。
  JMPRは再評価の結果、実験動物での発がん性試験結果に関して、ラットでは発がん性はないが、マウスでは極めて高用量で発がん性を示す可能性を否定できないと結論した (JMPR (2016))。
   以上、IARCの最新評価結果は他機関によって支持されず、国際的な議論が継続中のため現時点では分類できないとするのが妥当と判断した。
7 生殖毒性 区分外
-

-
- -   ラットを用いた2世代試験を含む7件の生殖毒性試験では、親動物に一般毒性影響 (1試験では唾液腺の組織変化、他1試験では軟便と盲腸拡張) がみられる10,000〜30,000 ppm (668〜2,150 mg/kg/day) まで投与しても、生殖能・性機能に影響は認められず、児動物に僅かに体重増加抑制と雄児の性成熟遅延がみられただけであった (JMPR (2016))。
   発生毒性試験では妊娠ラットの器官形成期に強制経口投与した4件の試験のうち、最も影響がみられた試験では母動物に体重増加抑制及び軟便がみられた1,000 mg/kg/dayで胎児に軽微な影響 (骨化遅延と骨格変異) がみられたに過ぎない (JMPR (2016))。
  また、妊娠ウサギの器官形成期に強制経口投与した7件の発生毒性試験では、最も低用量での影響は母動物に175 mg/kg/day以上で下痢、軟便がみられ、胎児には母動物毒性発現量で低頻度の奇形 (心臓奇形、腎臓欠損など) がみられている。
  しかしながら、JMPRは胎児への影響は母動物毒性による二次的影響で、ラットの試験結果と併せて、本物質は催奇形性を示さないと結論した (JMPR (2016))。
   以上、ラット生殖毒性試験では受胎能への影響はなく、また、ラット及びウサギにおける発生影響は軽微ないし母動物毒性に伴う二次的影響で、催奇形性なしと結論されている。
  よって、本項は区分外とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(麻酔作用)

警告
H335
H336
P261
P271
P304+P340
P312
P403+P233
P405
P501
  実験動物を用いた単回投与実験では経口投与 (ラット、マウス) により、運動失調、不活発、立毛が認められ、吸入ばく露 (ラット) により、流涎、不規則呼吸、聴覚減退、立ち直り反射の減弱、震えが認められた (いずれもJMPR (2004))。
  したがって区分3 (麻酔作用) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない
-

-
- -   ヒトについての情報はない。
   実験動物では、6つの試験 (混餌投与による90日間反復投与毒性試験3試験 (ラット2試験、マウス1試験)、ラットを用いた混餌による1年間反復投与毒性試験1試験、ラットを用いた混餌投与による2年間反復投与毒性試験1試験、ラットを用いた混餌投与による2世代生殖発生毒性試験1試験) において、唾液腺 (耳下腺及び/または顎下腺)の過形成あるいは細胞変性が認められたが、いずれの試験においても区分2の範囲を超える用量で認められていた (JMPR (2004))。
   唾液腺に対する影響について、JMPR (2004) では、標的臓器とし、また、ラットを用いた2年間反復投与毒性試験での唾液腺の細胞変性を根拠としたNOAEL100 mg/kg/dayを基にADI (0-1.0 mg/kg/day) を設定している。
   旧分類において区分2 (唾液腺) としていたが、根拠であるラット13週間試験での30 mg/kg/day及びその上の300 mg/kg/dayの唾液腺の所見について、JMPR (2004) では頻度及び程度がわずかであるため毒性影響としては疑わしいとしていた。
  したがって、この用量での影響は分類根拠としなかった。
   以上、唾液線に影響がみられるものの区分2の範囲を超えていることから分類できないとした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-

-
- -   データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1

警告
H400 P273
P391
P501
  藻類(スケレトネマ)の96時間EC50 = 0.85 mg/L(U.S. EPA: RED, 1993)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1

警告
H410 P273
P391
P501
  慢性毒性データを用いた場合、急速分解性に関する適切なデータが得られていないが、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC = 100 mg/L、魚類(ニジマス)21日間NOEC(生存、行動等) = 52 mg/L(いずれもEHC 159, 1994)であることから、区分外となる。
   慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性に関する適切なデータが得られておらず、藻類(スケレトネマ)の96時間EC50 = 0.85 mg/L(U.S. EPA: RED, 1993)であることから、区分1となる。
   以上の結果を比較し、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-

-
- -   データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
  * 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
    また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
  * 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
  * 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
    ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
  * 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
    他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

更新履歴:
  2017/7/25

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