名称:スチレン
CAS番号:100-42-5
物質ID: | H27-B-078/C-130B_P |
分類実施者: | 厚生労働省/環境省 |
分類実施年度: | 平成27年度 |
使用マニュアル: | 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1)) |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 爆発物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 | - | - | - | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
6 | 引火性液体 | 区分3 | 警告 | H226: 引火性液体及び蒸気 |
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。 P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。 P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。 P233: 容器を密閉しておくこと。 P240: 容器を接地すること/アースをとること。 P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。 P242: 火花を発生させない工具を使用すること。 P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
引火点31℃ (closed cup)、沸点145℃ (ICSC (2006)) に基づいて区分3とした。 なお、UNRTDG分類はUN.2055、クラス3、PGVである (安定剤入りのもの)。 | |
7 | 可燃性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類できない | - | - | - | - | 化学構造に不飽和結合 (オレフィン) を含むが、データがなく分類できない。なお、安定剤入りのものは、UNRTDG分類がUN 2055 Class 3 PGIIIに分類されており、優先評価項目の自己反応性化学品には該当しないので、タイプG。 |
9 | 自然発火性液体 | 区分外 | - | - | - | - | 発火点が490℃ (ICSC (2006)) であり、常温で発火しないと考えられる。 |
10 | 自然発火性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない | - | - | - | - | 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | 酸素、フッ素及び塩素を含まない有機化合物である。 |
14 | 酸化性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない | - | - | - | - | データがなく分類できない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 急性毒性(経口) | 区分外 | - | - | - | - | ラットのLD50値として、2,650 mg/kg (環境省リスク評価第13巻 (2015))、5,000 mg/kg (環境省リスク評価第13巻 (2015))、5,000 mg/kg (ATSDR (2010)、ACGIH (7th, 2001)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1999)、JECFA FAS 19 (1984))、5,000 mg/kg (環境省リスク評価第1巻 (2002))、5,000 mg/kg (EHC 26 (1983))、5,500 mg/kg (JECFA FAS 19 (1984))、1,000〜5,000 mg/kg (PATTY (6th, 2012)) との7件の報告がある。最も多くのデータ (6件) が区分外 (うち5件が国連分類基準の区分5に該当) に該当するので区分外 (国連分類基準の区分5) とした。なお、1件のデータは複数データを取りまとめた値であるので、分類には採用しなかった。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 区分4 | 警告 | H332: 吸入すると有害 |
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 |
ラットのLC50値 (4時間) として、2,770 ppm (環境省リスク評価第13巻 (2015)、ATSDR (2010)、NITE初期リスク評価書 (2007)、ACGIH (7th, 2001)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1999))、2,800 ppm (2件) (NITE初期リスク評価書 (2007))、6,000 ppm (PATTY (6th, 2012)) との報告に基づき、区分4とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (7,206 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。 | |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分2 | 警告 | H315: 皮膚刺激 |
P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。 P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。 P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 P264: 取扱い後は...よく洗うこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。 |
ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、皮膚の著しい刺激及び部分的な変性 がみられたとの報告 (NITE初期リスク評価書 (2007)) や、本物質は皮膚を刺激し、皮膚との接触により発赤、痛みを生じるとの記載がある (環境省リスク評価第13巻 (2015))。以上から区分2とした。 | |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2A | 警告 | H319: 強い眼刺激 |
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。 P264: 取扱い後は...よく洗うこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 |
ウサギを用いた眼刺激性試験 (OECD TG405) において、結膜の発赤、結膜炎、流涙などがみられ、4匹中1匹で結膜発赤が7日目まで観察されたとの報告がある (ECETOC TR48 (1992))。また、ウサギを用いた複数の眼刺激性試験において、本物質の適用により中等度の結膜刺激及び損傷がみられ症状は7 日間持続したとの記載 (NITE初期リスク評価書 (2007)) や、眼瞼の炎症及び腫脹の報告 (NITE初期リスク評価書 (2007))、及び眼刺激性がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、EHC 26 (1983))。ヒトにおいても本物質ばく露による刺激性が複数報告されている (NITE初期リスク評価書 (2007)、EHC 26 (1983))。以上、動物試験における中等度の刺激との記載から、区分2Aとした。 | |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
4 | 皮膚感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分2 | 警告 | H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い |
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。 P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
In vivoでは、マウス骨髄細胞の小核試験で陽性、陰性、ラット骨髄細胞及び末梢血リンパ球の小核試験、チャイニーズハムスター骨髄細胞の小核試験で陰性、マウス骨髄細胞の染色体異常試験で陰性、ラット骨髄細胞の染色体異常試験で陽性、陰性、チャイニーズハムスター骨髄細胞の染色体異常試験で陰性、マウス骨髄細胞及びラット末梢血リンパ球の姉妹染色分体交換試験で陽性、マウス骨髄細胞及びラット末梢血リンパ球を用いたDNA鎖切断試験で陽性又は陰性、マウス肝臓の不定期DNA合成試験で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2007)、環境省リスク評価第13巻 (2015)、ATSDR (2010)、IARC 60 (1994)、IARC 82 (2002))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、小核試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陽性、陰性の結果がある (NITE初期リスク評価書 (2007)、環境省リスク評価第13巻 (2015)、IARC 60 (1994)、IARC 82 (2002)、ATSDR (2010))。以上より、ガイダンスに従い、区分2とした。 | |
6 | 発がん性 | 区分2 | 警告 | H351: 発がんのおそれの疑い |
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。 P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ヒトではスチレンばく露により白血病、リンパ腫などリンパ造血系腫瘍のリスク増加が指摘され、欧米の繊維強化プラスチック製造業の作業者、又はスチレン-ブタジエンゴム製造工場の作業者を対象としたコホート研究が多数実施されたが、リンパ造血系腫瘍のリスク増加を示唆する結果と過剰リスクはなかったとする結果の両方があり、腫瘍のリスク増加を示す結果は概して過剰は小さく、統計学的検出力が弱く、サブグループでのみ有意差が得られる場合もあった (IARC 82 (2002))。 実験動物では、吸入経路ではラットを用いた1年間及び2年間ばく露試験の2試験において、最大1,000 ppmまでの用量ばく露によっても、腫瘍発生の増加はみられなかった (IARC 82 (2002))。一方、マウスを用いた2年間吸入ばく露試験では、20〜160 ppmの用量範囲で肺胞/細気管支の腺腫の発生頻度の増加が、160 ppmでは加えて雌に肺胞/細気管支のがんの発生頻度の増加がみられた (IARC 82 (2002))。経口経路ではラットを用いた52週間又は78週間強制経口投与による2試験で、各々250 mg/kg/day、又は1,000 mg/kg/dayまでの用量投与で、いずれも腫瘍発生の増加はなく、飲水投与で250 ppmまでの用量を2年間投与した試験でも腫瘍発生の増加はみられなかった。これに対し、マウスを用いた78週間強制経口投与試験では低用量の150 mg/kg/day 群から、肺胞/細気管支の腺腫、及びがんの合計頻度の有意な増加が雄に、統計的に有意ではないが増加傾向が雌にみられた (IARC 82 (2002))。総じて、ラットでは発がん性の証拠はないが、マウスでは吸入、経口のいずれの経路でも肺腫瘍発生の増加が示唆された (IARC 82 (2002))。 以上の結果より、IARCはスチレンばく露による発がん性に関して、ヒト、実験動物のいずれに対しても証拠は限定的であるとして、グループ「2B」に分類した (IARC 82 (2002))。他の国際機関による分類結果としては、ACGIHが1997年以降「A4」 (ACGIH (7th, 2001)) に、NTPが2011年以降「R」 (NTP RoC (13th, 2014)) に、日本産業衛生学会が「2B」 (許容濃度の勧告 (2015)) にそれぞれ分類している。これらのうち、NTP Report on Carcinogens、第13版においても、IARC発行年以降の合成ゴム工場作業者を対象とした新しいコホート研究データなどが追加評価された結果としても、ヒトでのスチレンばく露による発がんの証拠は限定的とされている (NTP RoC (13th, 2014))。 以上、本項はIARCと日本産業衛生学会の分類結果を基に区分2とした。なお、EUは本物質の発がん性については分類区分を付していない (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。 | |
7 | 生殖毒性 | 区分1B | 危険 | H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ |
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。 P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
スチレン、ビスコースレーヨン製造工場に勤務した女性作業者では自然流産の比率の上昇がみられたとの報告があるが、その後の研究では自然流産の増加は認められなかったとの報告もある (IARC 82 (2002)、産衛学会許容濃度の提案理由 (2015)、ATSDR (2010))。また、職業的にスチレンにばく露された女性の集団では、月経周期の乱れ、続発性無月経、出産児の誕生時体重の低値 (4%、統計的有意差なし) などがみられたとする報告があるが、女性作業者はスチレン以外にも同時に多くの溶媒にばく露されていたことが判明している (IARC 82 (2002)、産衛学会許容濃度の提案理由 (2015)、ATSDR (2010))。 実験動物では、スチレンはラット及びマウスで胎盤通過性が明らかで、ラットの胎児中のスチレン濃度は母動物の血中濃度の約50%との報告がある (IARC 82 (2002))。発生毒性影響として、妊娠マウスの器官形成期 (妊娠6〜16日) に本物質 250 ppmを吸入ばく露した試験で、胎児死亡、及び胚/胎児吸収の増加、奇形誘発頻度の増加がみられたとの記述、また、妊娠ラットに最大300 ppmを妊娠7〜21日に吸入ばく露後に自然分娩させ、出生児の神経系発達への影響を評価した試験において、出生時体重の低値、開眼、歯牙萌出など成長指標の遅延、並びに聴覚驚愕反応性低下、立ち直り反射の低下など神経機能、平衡機能の発達遅延が認められ、これらの神経行動学的影響と脳内セロトニン濃度の低下との関連性が窺われたとの記述がある (産衛学会許容濃度の提案理由 (2015)、ATSDR (2010))。 以上、日本産業衛生学会はヒトでは不妊や妊娠出産異常のリスク増加とスチレンばく露について、ばく露濃度に対応したデータは得られておらず、また報告された生殖影響には交絡要因が非常に多く、ヒトでの影響は証拠が十分とはいえないが、動物実験においてはその次世代に対する影響が多くの実験により示されていることから、本物質を「生殖毒性物質第2群」に分類している (産衛学会許容濃度の提案理由 (2015))。したがって、本項は区分1Bとした。なお、EUは本物質を「Repr. 2」 に分類している (EU CL Inventory (Access on September 2015))。 | |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) |
警告 危険 |
H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性、麻酔作用) H370: 臓器の障害(中枢神経系) H336: 眠気又はめまいのおそれ(気道刺激性、麻酔作用) |
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P308+P311: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師に連絡すること。 P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 P264: 取扱い後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
本物質は気道刺激性、高濃度で麻酔作用がある (環境省リスク評価第13巻 (2015)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2010)、PATTY (6th, 2012))。ヒトにおいては、協調運動失調、バランス感覚の不調、軽度の筋力低下、前庭-眼球運動系の障害、急性神経毒性、吸入経路で眩暈、嗜眠、頭痛、吐き気、嘔吐、脱力感、意識喪失、経口経路で悪心、吐き気、嘔吐の報告がある (環境省リスク評価第13巻 (2015))、ATSDR (2010)、ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012))。 実験動物では、ラットの吸入ばく露で活動低下、昏迷、協調運動失調、振戦、昏睡、マウスの吸入ばく露で呼吸数減少、重度の小葉中心性肝細胞凝固壊死の報告がある (ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2010)、PATTY (6th, 2012))。 以上より、本物質は気道刺激性、麻酔作用に加え、中枢神経系影響があり、区分1 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。小葉中心性肝細胞凝固壊死の報告については詳細不明のため採用しなかった。 | |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1 (神経系、呼吸器、血液系、肝臓) | 危険 | H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(神経系、呼吸器、血液系、肝臓) |
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P264: 取扱い後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ヒトにおいて、色覚異常や高周波難聴を含む中枢神経系に対する影響がみられたとの報告 (ACGIH (7th, 2001))、主に神経系に影響がみられたとの報告 (ATSDR (2010))、皮膚及び粘膜、中枢及び末梢神経系及び肝への影響が特に重要である。主な人への影響は色覚障害の他、末梢及び自律神経系障害、神経行動学的な影響、脳波異常、短期記憶障害との報告 (産衛学会生物学的ばく露指標の提案理由書 (2007))。呼吸器への影響として閉塞性肺障害、慢性気管支炎等を引き起こす。また、めまい、頭痛、疲労感、錯乱、不眠などの中枢神経系への作用、反応時間、言語性記憶の低下などの精神神経機能への影響、視覚・聴覚への影響、血液系への影響、AST、ALT、GGT 活性上昇などの肝臓への影響もみられているとの報告 (NITE初期リスク評価書 (2007)) がある。 実験動物においても、神経系、気道粘膜、血液系、肝臓に対する影響がみられている。肝臓に対する影響は区分1又は2の範囲であったが、その他は高濃度ばく露での影響であり、区分2の範囲を超えていた。 以上のように、ヒトにおいて主に神経系に影響がみられ、その他、呼吸器、血液系、肝臓に対して影響がみられた。 したがって、区分1 (神経系、呼吸器、血液系、肝臓) とした。 | |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 区分1 | 危険 | H304: 飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそれ |
P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。 P331: 無理に吐かせないこと。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ヒトでの直接的な事例に基づく証拠はないが、本物質は炭化水素であり、HSDB (Access on September 2015) 収載の数値データ (粘性率: 0.696 mPas (25 ℃)、密度: 0.9016 g/cm3 (25 ℃)) より、動粘性率が0.772 mm2/sec (25 ℃) と算出される。よって、分類ガイダンスに従い区分1とした。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
11 | 水生環境有害性(急性) | 区分1 | 警告 | H400: 水生生物に非常に強い毒性 |
P273: 環境への放出を避けること。 P391: 漏出物を回収すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)96時間EC50 = 0.72 mg/L(CEPA, 2003、環境省リスク評価第13巻, 2015)であることから、区分1とした。 | |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分2 | - | H411: 長期継続的影響によって水生生物に毒性 |
P273: 環境への放出を避けること。 P391: 漏出物を回収すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性があり(14日間でのBOD分解度=100%、GC分解度=100%(通産省公報, 1979))、藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の96時間NOEC = 0.063 mg/L(環境省リスク評価第13巻, 2015)であることから、区分2となる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、魚類(ニジマス)の96時間LC50 = 2.5 mg/L(CEPA, 2003)であるが、急速分解性があり、生物蓄積性が低いと推定される(log Kow= 2.95(PHYSPROP Database、2009))ことから、区分外となる。 以上の結果を比較し、区分2とした。 | |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし |
政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。 |
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