GHS分類結果

名称:タングステン
CAS番号:7440-33-7

結果:
物質ID: H27-B-076/C-124B_P
分類実施者: 厚生労働省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない - - - - データがなく分類できない。なお、粉末は発火する可能性がある (HSDB (Access on September 2015)) が、 塊状では発火しない (GESTIS (Access on September 2015)) との情報がある。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 分類できない - - - - データがなく分類できない。なお、粉末は発火する可能性がある (HSDB (Access on September 2015)) が、固まりは発火しない (GESTIS (Access on September 2015)) との情報がある。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - データがなく分類できない。
12 水反応可燃性化学品 区分外 - - - - 水に不溶 (ICSC (2001)) との観察結果があり、水と激しく反応することはないと考えられる。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - 酸素及びハロゲンを含まない無機物である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 無機物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
ウサギを用いた眼刺激性試験において、本物質100 mgを適用した結果、軽度の結膜刺激がみられたとの報告がある (ATSDR (2005)、PATTY (6th, 2012))。以上から、区分2Bとした。 
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、硬質合金ダストにばく露された労働者において、本物質による喘息が報告されている (PATTY (6th, 2012))。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
6 発がん性 分類できない - - - - デ-タ不足のため分類できない。
7 生殖毒性 分類できない - - - - 本物質の生殖影響に関する情報はなく、データ不足のため分類できない。 なお、可溶性のタングステン酸ナトリウム (CAS番号: 13472-45-2) に関しては、ラットを用いた経口経路での生殖毒性試験の結果、生殖能・性機能への有害影響は示されなかったが、発生毒性影響の評価に十分な情報がないとして、データ不足のため分類できないとした (タングステン酸ナトリウムの本項を参照のこと)。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3 (気道刺激性) 警告 H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は気道刺激性がある (ACGIH (7th, 2001))。ヒトでは、本物質を含む混合物を誤飲した事故例が1件ある (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012)、ATSDR (2005)) が、本物質の症状だけとは言えないため分類に使用できない。実験動物では、モルモットに経口投与 (780 mg/kg以上) した試験で、食欲不振、協調運動失調、振戦、呼吸困難がみられている (ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 23 (2007)、ATSDR (2005)) が、1924年という非常に古い報告であり、この所見をフォローアップするデータがないため採用しなかった。 以上より、区分3 (気道刺激性) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - データ不足で分類できない。 ヒトにおいて、タングステンの平均濃度6 mg/m3以下、最大濃度36.9 mg/m3の3箇所の工場で長期ばく露された労働者において、鼻や皮膚刺激性は認められたが、肺機能への影響や塵肺症はみられていないとの報告がある (DFGOT vol. 23 (2007))。また、タングステン濃度5 mg/m3以下で長期間職業ばく露された労働者の調査において、タングステン及び不溶性タングステン化合物の単独ばく露では塵肺症はみられていないとの報告がある (ACGIH (7th, 2001))。一方、タングステンのみにばく露された従業員の9〜10%に肺の線維化がみられたとの報告がある (ACGIH (7th, 2001))。 実験動物では、モルモットに50 mg/週の用量で3週間、気管内投与した試験において、比較的不活性であるが肺で間質性細胞増殖がみられ、1年後においても影響が残存したとの報告がある (DFGOT vol. 23 (2007)、ACGIH (7th, 2001))。 以上のようにヒトにおける呼吸器系への影響について一貫性がないこと、実験動物において分類に用いることができるデータがない。 したがって、データ不足で分類できないとした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - - - データなし
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - データなし
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルSDS

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