GHS分類結果

名称:結晶質シリカ (石英)
CAS番号:14808-60-7

結果:
物質ID: H27-B-071/C-108B_P
分類実施者: 厚生労働省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - 不燃性である (GESTIS (Access on September 2015))。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 不燃性である (GESTIS (Access on September 2015))。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 不燃性である (GESTIS (Access on September 2015))。
12 水反応可燃性化学品 区分外 - - - - 水に不溶 (ICSC (2010)) との観察結果があり、水と激しく反応することはないと考えられる。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない - - - - 酸素を含む無機物であるが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 無機物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
In vivoでは、気管内注入によるラット肺胞上皮細胞を用いたhprt遺伝子突然変異試験で陽性、投与方法は不明であるが、マウス肺組織のhprt遺伝子突然変異試験で陰性、腹腔内投与によるマウス小核試験で陰性、ばく露方法は不明ながら、ヒトリンパ球の染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陽性、ラット肺、末梢血を用いた酸化DNA傷害試験で陽性又は陰性、ラット肺上皮細胞のDNA切断試験で陽性である (SIDS (2013)、CICAD 24 (2000)、DFGOT vol. 14 (2000)、IARC 68 (1997))。In vitroでは、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験で陽性、陰性の結果、哺乳類培養細胞の小核試験で陽性、陰性の結果、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陰性である (SIDS (2013)、CICAD 24 (2000)、DFGOT vol. 14 (2000)、IARC 68 (1997))。以上より、ガイダンスに従い、区分2とした。なお、本物質の遺伝毒性は、当該物質からの、あるいは当該物質による炎症細胞からの活性酸素種に起因すると考えられる (SIDS (2013)、IARC 100C (2012))。
6 発がん性 区分1A 危険 H350: 発がんのおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
多くの疫学研究結果において、本物質 (石英) を含む結晶質シリカへの職業ばく露と肺がんリスクの増加との間に正の相関が認められており、特に複数の研究結果をプールし異なるメタ解析を行っても、相対リスクは一貫して有意な増加を示した (IARC 100C (2012)、SIDS (2013))。すなわち、本物質の形状を有する結晶質シリカ粉じんの吸入ばく露によりヒトで肺がんの発症リスクが増加するのは十分な証拠があるとしている (IARC 100C (2012))。 一方、実験動物では雌雄ラットに本物質 (空気力学的中央粒子径 (MMAD) : 1.3 μm) を 1 mg/m3で2年間吸入ばく露した試験、また雌ラットに本物質 (MMAD: 2.24 μm) を12 mg/m3で83週間鼻部ばく露した試験において、ばく露群では肺腫瘍の有意な増加がみられ、組織型としては腺がんが多かった。さらに、雌ラットに本物質 (MMAD: 1.8 μm) を6.1、30.6 mg/m3で鼻部ばく露した試験でも、用量依存的に肺腫瘍の増加がみられ、組織型では扁平上皮がんが最多で、細気管支/肺胞上皮がん、又は腺腫も多くみられた (IARC 100c (2012))。 以上、ヒト及び実験動物での発がん性情報より、IARC は本物質粉じんばく露によるヒト発がん性に対し、1997年に「グループ 1」に分類し、2012年の再評価でも分類結果を変更していない (IARC 68 (1997)、IARC 100C (2012))。他の国際機関による発がん性分類結果としては、日本産業衛生学会が「第1群」に (産衛学会勧告 (2015))、ACGIHが2004年以降「A2」に (ACGIH (7th, 2006))、NTPが結晶質シリカ (吸入性粒子径) に対して、「K」に分類している (NTP RoC (13th, 2014))。よって、本項は区分1Aとした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。 なお、旧分類のヒトにおける呼吸器影響のデータは短期ばく露であり、単回急性影響のデータではない。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (呼吸器、免疫系、腎臓) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器、免疫系、腎臓) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトにおいて、多くの疫学研究において、本物質の職業ばく露と呼吸器への影響 (珪肺症、肺がん、肺結核) が確認されている。このほか、自己免疫疾患 (強皮症、関節リュウマチ、多発性関節炎、混合結合組織疾患、全身性紅斑性狼瘡、シェーグレン症候群、多発性筋炎、結合織炎)、慢性腎疾患及び無症状性の腎変性もみられている (SIDS (2013)、CICAD 24 (2000)、DFGOT vol. 14 (2000))。この腎臓の疾患は自己免疫が関連していると考えられている (SIDS (2013))。 実験動物においても、ラットを用いた反復吸入ばく露試験により肺の線維化が確認されている (SIDS (2013))。 したがって、区分1 (呼吸器、免疫系、腎臓) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外 - - - - 非晶質シリカを用いて試験されたデータで、甲殻類(オオミジンコ)の24時間LL50 > 10,000 mg/L、魚類(ゼブラフィッシュ)の96時間LL0 = 10,000 mg/L(いずれもSIDS, 2013)であることから、区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - 信頼性のある慢性毒性データが得られていない。急性毒性は区分外であるが、無機化合物であり、急速分解性及び生物蓄積性に関する適切なデータが得られていないことから、分類できないとした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルSDS

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