GHS分類結果

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一般情報

項目 情報
CAS番号 10049-04-4
名称 二酸化塩素
物質ID H27-B-069/C-105B_P
分類実施年度 平成27年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 (危険物/有害物)  再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度   平成26年度  
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関連情報

項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイト
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - -   GHSの定義におけるガスである。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 区分外 - - -   不燃性であるが、熱、太陽光、衝撃により爆発の可能性がある (ICSC (1999)) との情報がある。
  しかし、この物質の熱、光による爆発は、分解爆発であって、空気中の酸素の関わる爆発燃焼ではない。
3 エアゾール 分類対象外 - - -   エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類できない - - -   強力な酸化剤 (ICSC (1999)) との情報があるが、データがなく分類できない。
  なお、ISO-10156:2010による酸化性ガスの試験はごく少数の物質についてしか実施されてないが、未試験のガス物質はCi=40とすることになっており、この場合、区分1になるが、現時点では、ISO-10156:2010にはその記載がないため分類できないとした。
5 高圧ガス 分類できない - - -   データがなく分類できない。
6 引火性液体 分類対象外 - - -   GHSの定義におけるガスである。
7 可燃性固体 分類対象外 - - -   GHSの定義におけるガスである。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - -   GHSの定義におけるガスである。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - -   GHSの定義におけるガスである。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - -   GHSの定義におけるガスである。
11 自己発熱性化学品 分類対象外 - - -   GHSの定義におけるガスである。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - -   GHSの定義におけるガスである。
13 酸化性液体 分類対象外 - - -   GHSの定義におけるガスである。
14 酸化性固体 分類対象外 - - -   GHSの定義におけるガスである。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - -   GHSの定義におけるガスである。
16 金属腐食性物質 分類できない - - -   気体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性<

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 分類対象外 - - -   GHSの定義におけるガスである。
  なお、本物質0.2%溶液のラットのLD50値として、94 mg/kg (OECD TG 401) (SIDS (2009)、CICAD 37 (2002)) との報告がある。
1 急性毒性(経皮) 分類対象外 - - -   GHSの定義におけるガスである。
  なお、本物質5%溶液をラットに24時間閉塞適用したLD50値として、> 2,000 mg/kg (GESTIS (Access on Sptember 2015)) との報告がある。
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分1

危険
H330
P304+P340
P403+P233
P260
P271
P284
P310
P320
P405
P501
  ラットのLC50値 (4時間) (OECD TG 403) として、32 ppmとの報告 (SIDS (2009)、CICAD 37 (2002)) に基づき、区分1とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外 - - -   GHSの定義におけるガスである。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類対象外 - - -   GHSの定義におけるガスである。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - -   データ不足のため分類できない。
  なお、マウスに本物質を含む水溶液 (9.7〜11.4 mg/L) を48時間適用した結果、刺激性はみられなかったとの報告 (ATSDR (2004)) がある一方で、ウサギに本物質 (80%) を24時間適用した結果、刺激性がみられたとの報告 (EPA Pesticide (2006)) がある。
  これらの報告は、低濃度の試験や24時間適用の試験であるため分類には用いなかった。
  なお、ウサギを用いた皮膚刺激性試験 (OECD TG404) において、本物質のナトリウム塩である亜塩素酸ナトリウム (CAS番号: 7758-19-2、34.5 %) を適用した結果、刺激性はみられなかったとの報告がある (SIDS (2009))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B
絵表示なし

警告
H320
P305+P351+P338
P337+P313
P264
  ウサギを用いた眼刺激性試験 (OPPTS 870.2400) において、本物質適用により軽度の刺激性がみられたとの報告がある (EPA Pesticide (2006))。
  また、ガス状の本物質にばく露された結果 (動物種不明)、 眼脂がみられたとの報告や (CICAD 37 (2002))、ヒトにおいて高濃度の単回ばく露により眼刺激性がみられたとの報告がある (CICAD 37 (2002))。
  ウサギを用いた眼刺激性試験において、軽度の刺激性が報告されていることから区分2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - -   データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - -   データ不足のため分類できない。
  なお、モルモットを用いた感作性試験 (OECD TG406、GLP準拠) において、本物質のナトリウム塩である亜塩素酸ナトリウム (CAS番号: 7758-19-2) を適用した結果、感作性は認められなかったとの報告がある (SIDS (2006))。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - -   In vivoでは、ラット、マウスの優性致死試験で陰性、マウス骨髄細胞の小核試験で陽性、陰性の結果、マウス骨髄細胞の染色体異常試験で陰性、マウス骨髄細胞の姉妹染色分体交換試験で陰性である (SIDS (2009)、IRIS Summary (2000)、IRIS Tox. Review (2000)、ATSDR (2004)、CICAD 37 (2002)、ACGIH (7th, 2001))。
  In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性、陰性の結果、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験で陽性、染色体異常試験で陽性、陰性の結果である (IRIS Summary (2000)、IRIS Tox. Review (2000)、ATSDR (2004)、SIDS (2009)、CICAD 37 (2002))。
  SIDS (2009) ではin vivoで多くの陰性結果があり、本物質は遺伝毒性 (変異原性) を有する可能性は低いと評価している。
  以上より、ガイダンスに従い、分類できないとした。
6 発がん性 分類できない - - -   ヒトでの発がん性に関する情報はない。
  実験動物では水を本物質で消毒後濃縮し、本物質残渣を含む水濃縮物を3回/週、2週間マウスに強制経口投与後、既知発がん物質のTPA (12-tetradecanylphorbal-13-acetate) を20週間経皮適用した2段階発がん性試験において、皮膚腫瘍数の有意な増加はみられなかった (SIDS (2009))。
  また、本物質ナトリウム塩 (亜塩素酸ナトリウム) をマウスに250、500 mg/L (36、71 mg/kg/day 相当) の用量で80週間飲水投与した発がん性試験では、高用量群で肺腺腫の頻度増加 (5/43 (12%) vs 対照群: 0/35 (0%)) がみられたものの、用量相関性を欠き、かつ悪性腫瘍がみられていないことから、SIDSは亜塩素酸ナトリウムはマウスでは発がん性を示さないとの著者らの結論を記述している (SIDS (2009))。
  国際機関による発がん性分類結果としては、EPAが1986年ガイドラインの基準ではD (Not classifiable as to human carcinogenicity) に、1996年ガイドラインの基準ではCBD (Carcinogenic potential cannot be determined) に該当するとした (IRIS Summary (2000)) が、他の機関による分類はなされていない。
   以上より、分類ガイダンスに基づき、本項は分類できないとした。
7 生殖毒性 区分1B 追加区分:授乳に対する、又は授乳を介した影響、

危険
H360
H362
P201
P202
P260
P263
P264
P270
P280
P308+P313
P405
P501
  米国の複数の病院で1940〜1955年に生まれた新生児の疾病率と死亡率との記録を調べた遡及的疫学研究の結果、本物質が混入した水道水を摂取した近隣の病院患者の集団では、本物質を含まない水道水を摂取した病院患者の集団と比べて、早産の発生率が有意に高いと報告されたが、早産の判定は医師の評価によるもので客観的な判断基準を欠いており、また、早産の頻度は病院間で大きく異なっていた。
  さらに、本物質へのばく露の程度についても情報がなく、交絡因子についての解析も不十分なため、本結果から結論を導くことはできないと報告されている (CICAD 37 (2002))。
  この他、ヒトでの生殖影響に関する有用な知見はない。
   一方、実験動物ではラットに本物質の水溶液を雄に交配前8週間、雌には交配前2週間、及び交配、妊娠期間を経て哺育5日まで、最大10 mg/kg/day を強制経口投与した1世代試験において、親動物の生殖能に影響はなく、児動物にも同腹児数、離乳までの生存率、離乳時の生殖器官重量に対照群と差異はみられず、親動物、児動物に対するNOAELはともに10 mg/kg/dayであったと報告されている (SIDS (2009)、IRIS Tox. Review (2000)、CICAD 37 (2002))。
  しかしながら、発生毒性影響としては、ラット (SD系) に交配2週間前から児動物が離乳する生後21日まで、本物質を経口 (飲水) 経路で投与した試験において、100 ppm (約14 mg/kg/day) では、児動物に離乳時までの体重の低値推移、自発運動の減少、離乳時の小脳DNA含量の減少、及び離乳時の血清T4値の減少がみられ、母動物への飲水を介した本物質ばく露による神経行動影響に対するLOAELは14 mg/kg/day、同NOAELは3 mg/kg/dayと設定されている (SIDS (2009)、IRIS Tox. Review (2000)、CICAD 37 (2002))。
   なお、別系統 (Long-Evans) のラット母動物に対し、14 mg/kg/dayを強制経口投与 (分娩後、新生児の生後0〜21日相当日 (離乳時) まで) し、新生児を生後35日まで観察した試験においても、児動物の体重の低値推移、離乳時及び生後35日における大脳の絶対重量、DNA含量、タンパク含量の減少がみられたとの報告がある (SIDS (2009)、IRIS Tox. Review (2000)、CICAD 37 (2002))。
   以上、実験動物では本物質水溶液を妊娠期、又は授乳期に経口経路で投与されたラットでは、児動物の生後の成長及び脳神経系発達障害を示唆する所見が示され、甲状腺ホルモンなど内分泌系の関与を介した影響の可能性が想定されている (SIDS (2009)、ATSDR (2004))。
  ただし、SIDSは上記の複数の発生毒性試験がGLP対応のガイドライン試験でなく、限定的なプロトコールの試験であること、本物質ナトリウム塩 (亜塩素酸ナトリウム) を用いたラット2世代生殖毒性試験ではF1児動物の生後25日の検査において、血清T3及びT4値に変化はなく、本物質を用いた発生毒性試験結果と矛盾することを指摘し、以上の発生毒性試験はキースタディとは扱えないと慎重な判断を下している (SIDS (2009))。
  これに対し、ATSDRでは本物質経口ばく露による神経発達毒性影響を重視し、SIDSが引用した上記の亜塩素酸ナトリウムを用いたラット飲水投与による2世代生殖毒性試験において、中用量投与 (6 mg/kg/day) した親動物から生まれたF1児動物の聴覚驚愕刺激に対する反応性低下 (生後24日) を発達神経毒性影響として扱い、この所見を基に最小リスクレベル (経口MRL) の算出根拠としている (ATSDR (2004))。
  以上より、妊娠期・授乳期への本物質ばく露は低用量から新生児に神経系発達障害を及ぼす可能性があることから、本項は区分1Bとし、授乳影響を追加した。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (呼吸器)、区分3 (麻酔作用)


危険
警告
H370
H336
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
  本物質は腐食性ガスであり、気道刺激性がある (SIDS (2009)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2004)、CICAD 37 (2002))。
  ヒトでは、花を漂白作業中に吸入ばく露された事例で、咳、頭痛、咽頭刺激、頻呼吸、頻脈、ラ音、呼吸困難、肺機能低下の報告がある (IRIS Tox Review (2000)、ATSDR (2004))。
  実験動物では、ラットの吸入ばく露 (区分1相当の用量) で活動低下、腹呼吸、呼吸雑音、努力呼吸、呼吸困難、肺胞壁の崩壊、肺水腫 (SIDS (2009)、IRIS Summary (2000)、ATSDR (2004)、CICAD 37 (2002))、ラットの経口投与 (区分1相当の用量) で活動低下、円背位、鎮静、中枢神経抑制、あえぎ、呼吸器症状 (ラ音、赤色鼻汁) の報告がある (SIDS (2009))。
   以上より、本物質は呼吸器への影響及び麻酔作用があり、区分1 (呼吸器)、区分3 (麻酔作用) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (呼吸器)

危険
H372
P260
P264
P270
P314
P501
  ヒトについては、職業ばく露で呼吸器への影響 (気管支炎、肺気腫) がみられている (ACGIH (7th, 2001)、CICAD 37 (2002)、ATSDR (2004))。
  実験動物では、ラットを用いた2ヶ月間吸入毒性試験において1 ppmで肺への影響 (うっ血、細気管支周囲の水腫)、ウサギを用いた45日間吸入毒性試験において2.5 ppmで肺への影響 (肺胞の出血、うっ血) がみられている (CICAD 37 (2002)、ATSDR (2004)、IRIS Tox. Review (2000))。
  また、ラットを用いた90日間飲水投与毒性試験において、2 mg/kg/dayで鼻腔の粘膜の杯細胞の過形成、扁平上皮化生、炎症反応がみられている。この所見は飲水中の塩化水素ガスによるものと考えられている (CICAD 37 (2002)、ATSDR (2004)、IRIS Tox. Review (2000))。
   以上、ヒトにおいて呼吸器への影響がみられ、動物実験においても区分1の範囲で呼吸器への影響がみられた。
   したがって、区分1 (呼吸器) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類対象外 - - -   GHSの定義におけるガスである。

環境に対する有害性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1

警告
H400
P273
P391
P501
  魚類(ファットヘッドミノー)の96時間LC50 = 0.02 mg/L(ECETOC TR91, 2003)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1

警告
H410
P273
P391
P501
  慢性毒性データを用いた場合、無機化合物につき、水中での挙動が不明であり、藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の72時間NOEC = 0.02 mg/L(SIDS, 2009)であることから、区分1となる。
   慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、無機化合物につき、水中での挙動が不明であり、魚類(ファットヘッドミノー)の96時間LC50 = 0.02 mg/L(ECETOC TR91, 2003)であることから、区分1となる。
   以上の結果から、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - -   データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
  また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
* 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
* 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
  ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
* 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
  他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

更新履歴:
  2017/2/23 分類情報の修正:生殖毒性 (正誤表 (Excel file))
  2016/6/8 公表

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