GHS分類結果

名称:メチレンビス(4,1-フェニレン)=ジイソシアネート (別名;4'4-MDI)
CAS番号:101-68-8

結果:
物質ID: H27-B-068/C-104B_P
分類実施者: 厚生労働省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない - - - - データがなく分類できない。
8 自己反応性化学品 分類できない - - - - 自己反応性に関連する原子団 (シアン酸エステル) を含むが、データがなく分類できない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 発火点が240℃ (ICSC (1999)) であり、常温で発火しないと考えられる。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 融点が55℃以下の固体ではあるが、データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットのLD50値として、31,600 mg/kg (CICAD 27 (2000)) に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分2 危険 H330: 吸入すると生命に危険 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P284: 【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P320: 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLC50値 (4時間) として、0.369 mg/L (雄)、0.380 mg/L (雌) との報告 (ACGIH (7th, 2001)) に基づき、区分2とした。なお、被験物質が固体であるため、粉じんの基準値を適用した。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
本物質はヒトの皮膚に対して刺激性を示したとの報告がある (EU-RAR (2005))。また、本物質はウサギの皮膚に対して刺激性を示すとの報告や (EU-RAR (2005)、IARC 71 (1999)) や、軽度の刺激性を示したとの報告がある (EU-RAR (2005))。以上より、区分2とした。なお、本物質はEU CLP分類において「Skin. Irrit. 2 H315」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
ウサギを用いた眼刺激性試験において、軽度の刺激性がみられた (EU-RAR (2005)) との報告や、刺激性はみられなかった (EU-RAR (2005))との報告がある (EU-RAR (2005))。以上から区分2Bとした。なお、本物質はEU CLP分類において「Eye. Irrit. 2 H319」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
4 呼吸器感作性 区分1 危険 H334: 吸入するとアレルギー、喘息又は呼吸困難を起こすおそれ P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P342+P311: 呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P284: 【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質はヒトに対して喘息を引き起こすという報告があり (IARC 71 (1999)) や本物質はヒトと動物に対して気道感作性を引き起こすとの記載がある (ECETOC TR 77 (1999))。また、日本産業衛生学会で気道:第1群(産業衛生学会許容濃度の勧告 (2015))、DFGでSah(DFGOT vol. 14 (2000)) に分類されている。以上から区分1とした。なお、本物質はEU CLP分類において「Resp. Sens. 1 H334」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
モルモットを用いたマキシマイゼーション試験において、本物質 (95%) を適用した結果、感作性がみられたとの報告 (EU-RAR (2005)) がある。また、ヒトのパッチテストで本物質の適用により感作性を示したとの報告がある (EU-RAR (2005)) 。EU-RAR (2005) は本物質を皮膚感作性物質と結論している (EU-RAR (2005))。以上より区分1とした。なお、本物質はEU CLP分類において「Skin sens. 1 H317」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - ガイダンスの改訂により区分外が選択できなくなったため、分類できないとした。すなわち、in vivoでは、マウスの小核試験で陰性 (DFGOT vol. 8 (1997))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性、陰性の結果、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験で陽性、ヒトの培養リンパ球を用いた染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陽性、陰性、ヒトの培養リンパ球を用いた小核試験で陰性である(CICAD 27 (2000)、ACGIH (7th, 2001)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (1993)、DFGOT vol. 8 (1997)、IARC 71 (1999)、NTP DB (Access on October 2015))。
6 発がん性 分類できない - - - - ヒトでは国際がん研究機関 (IARC) がイソシアネートへの職業ばく露に関連した発がん性リスクに関して、3件のコホート研究及び1件の症例対照研究を対象に評価した結果、調査した何れの部位の発がんリスクについても、強い相関性も一貫した傾向も示されず、本物質モノマー、及び本物質のポリマー (PMDI) のいずれに対しても、ヒトでの発がん性の証拠は不十分であると結論した (IARC 71 (1999))。 実験動物ではラットに本物質 (4,4'-MDI) を2年間吸入ばく露した結果、高用量 (2.05 mg/m3) で、細気管支/肺胞腺腫が1例にみられ (CICAD 27 (2000)、IRIS Summary (Access on August 2015))、さらに前がん病変と考えられる肺胞上皮の増殖がみられた (IRIS Summary (Access on August 2015)) との記述、並びに、ラットに本物質のポリマー (PMDI) を2年間吸入ばく露した結果、高用量 (6.03 mg/m3) で、肺の腺腫が雄6/60例、雌2/59例にみられた (CICAD 27 (2000)、IRIS Summary (Access on August 2015)) との記述があり、IARCは後者のポリマーのデータのみを評価に利用し、本物質と本物質ポリマーを含む混合物に対して、実験動物での発がん性に関して限定的な証拠があるとした (IARC 71 (1999))。 既存分類結果としては、IARCが上記の通り、ヒトの不十分な証拠と実験動物での限定的な証拠より、1999年に「グループ3」に (IARC 27 (1999))、米国EPAはMDIとMDIのポリマー (PMDI) に対して、1998年に「CBD (cannot be determined)」 に分類した。一方、EUは本物質の異性体混合物 (MDI) を対象としたリスク評価を行い、結論的にはIARCと同様にヒト発がん性の証拠は不十分、実験動物での発がん性の証拠は限定的としたにもかかわらず、評価書中の分類の項にはCMR作業グループがCarc. Cat. 3 を提唱していると記述しており (EU-RAR (2005))、現在ではCLP分類で「Carc. 2」 に該当するが、分類根拠は入手可能な資料からは不明であった。 以上、EUの分類根拠が不明である以上、区分2を採用するのは妥当でなく、従前のIARC、EPAの分類結果を基に、旧分類以降に改訂した分類ガイダンスにしたがい、本項は分類できないとした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - ヒトの生殖影響に関する情報はない。実験動物では、本物質 (4,4'-MDI) を妊娠ラットの器官形成期 (妊娠6〜15日) に吸入ばく露した発生毒性試験において、高用量群 (9 mg/m3) では母動物に肺の絶対・相対重量の増加、胎児に胸骨分節非対称の軽度増加がみられた (CICAD 27 (2000)、IRIS Tox Review (1998)、EU-RAR (2005))。この試験結果からは、母動物に有害性影響のある用量で、胎児に骨格変異がみられただけで、軽微な発生影響のため分類区分を付すのは適切でない。この他には、本物質の性機能・生殖能への影響評価、発生影響評価のための試験結果はなく、本項はデータ不足のため分類できない。 なお、本物質の異性体混合物ポリマー (PMDI) に対しては、妊娠ラット (Wistar) を用いた器官形成期 (妊娠6〜15日) 吸入ばく露による発生毒性試験報告が2件あり、1つは母動物毒性 (摂餌量減少、肺重量増加) がみられた12 mg/m3の用量で、胎児に異常なしとした報告 (CICAD 27 (2000)、EU-RAR (2005))、他方は母動物に死亡例 (2/25例)、胎盤重量の減少がみられた12 mg/m3で、胎児に体重の低値、骨格変異頻度増加、骨化遅延がみられたとの報告 (CICAD 27 (2000)、IRIS Tox Review (1998)、EU-RAR (2005)) がある。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (呼吸器) 危険 H370: 臓器の障害(呼吸器) P308+P311: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は気道刺激性がある (DFGOT vol. 8 (1997)、IARC 71 (1999))。実験動物では、モルモットの吸入ばく露 (区分1相当の用量) で呼吸数の低下や呼吸量の増加、ラットの吸入ばく露 (区分1相当の用量) でばく露直後の剖検で、肺出血、肺水腫がみられている (CICAD 27 (2000))。 以上より、本物質は呼吸器への影響があり、区分1 (呼吸器) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (呼吸器) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
加熱したMDIを使用する木材製品工場の作業者18人を対象とした調査で、下部気道症状がみられ、後に症状発現時期を交絡因子で補正した結果、職業性喘息であり、加熱した本物質の蒸気に2.5年間以上のばく露で発症したことが示されたとの記述があり、MDIによる感作の原因物質は蒸気とMDIポリマーとの反応生成物、MDI単独、又はMDIと反応性生物との混合物のいずれかと推定されている (CICAD 27 (2000))。また、死亡する5年前に本物質誘発性の喘息と診断され、その後も本物質に継続ばく露された鋳物工の剖検の結果、肺に上皮細胞の剥離、好酸球、好中球浸潤、浮腫、細気管支血管の拡張などの形態学的変化がみられたことが報告されている (CICAD 27 (2000))。 実験動物では雌ラットに本物質 (純度: 99.5%) を2年間吸入ばく露した試験において、区分1の用量範囲 (0.23〜2.05 mg/m3: ガイダンス値換算 (0.00047〜0.0041 mg/L/6 hr/day)) で、肺重量の増加、限局性又は多巣性の肺胞/細気管支上皮過形成、間質の線維症、粒子を取込んだマクロファージの集簇、及び肺機能の低下がみられたとの記述がある (CICAD 27 (2000))。また、MDIモノマーを52%、イソシアネートを30%含むPMDIをラットに13週間、又は2年間吸入ばく露した試験においても、13週間ばく露では区分1に該当する4.1〜12.3 mg/m3で、鼻腔組織の萎縮、変性、肺、縦隔リンパ節にマクロファージの集簇がみられ、高濃度では重篤な呼吸器症状を呈し、25% (15/60例) の動物が死亡したとの記述 (CICAD 27 (2000)、DFGOT vol. 8 (1997))、2年間ばく露では、0.98 mg/m3以上の用量で、影響は呼吸器に限定的にみられ、鼻腔 (嗅上皮の変性、基底細胞の過形成)、肺 (線維症、間質性肺炎)、及び縦隔リンパ節に所見がみられたとの記述がある (CICAD 27 (2000)、DFGOT vol. 8 (1997))。 以上より、区分1 (呼吸器) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、EU-RAR (2005) に記載された数値データ (粘性率: 4.7 mPa・s (50℃)、密度 (比重) : 1/325 (20℃)) より、本物質の動粘性率は3.547 mm2/sec (50/20℃) と算出される。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - - - データなし
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - データなし
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルSDS

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