GHS分類結果

名称:イソシアン酸メチル
CAS番号:624-83-9

結果:
物質ID: H27-B-040/C-076B_P
分類実施者: 厚生労働省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点-7℃ (closed cup)、沸点39.5℃ (HSDB (Access on July 2015)) に基づいて区分2とした。 なお、UNRTDG分類はUN. 2480、クラス 6.1、副次危険3、PGTである。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 タイプG - - - - 分子内に自己反応性に関連する原子団 (シアン酸化合物) を含むが、UNRTDG分類はUN.2480、クラス 6.1、PGIに分類されているので、上位の危険物自己反応性化学品には該当しない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が534℃ (HSDB (Access on July 2015)) であり、常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 低沸点の液体に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3 危険 H301: 飲み込むと有毒 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P361+P364: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値として、27〜180 mg/kg (PATTY (6th, 2012))、71 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)) との2件の報告がある。1件が区分3に該当し、もう1件は区分を特定できないので、区分3とした。
1 急性毒性(経皮) 区分3 危険 H311: 皮膚に接触すると有毒 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P364: そして再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギのLD50値として、0.12〜0.41 mL/kg (115-394 mg/kg) (PATTY (6th, 2012))、0.22 mL/kg (211 mg/kg) (ACGIH (7th, 2001)) との2件の報告がある。1件が区分3に、もう1件は区分を特定できないので、区分3とした。旧分類根拠となっているLD50値の単位はmg/kgではなく、mL/kgであったので、修正して区分を見直した。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分1 危険 H330: 吸入すると生命に危険 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P284: 【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P320: 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLC50値 (6時間) として、6.1 ppm (4時間換算値:7.5 ppm) との報告 (PATTY (6th, 2012)、ACGIH (7th, 2001)) に基づき、区分1とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (457,895 ppm) より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
ウサギの耳介に本物質を30分間適用した結果、紅斑や浮腫がみられ、壊死がみられたとの記載がある (HSDB (Access on August 2015))。また、本物質はヒトの皮膚に刺激性を有するとの記載がある (PATTY (6th, 2012)、HSDB (Access on August 2015))。以上より区分2とした。なお、本物質は、EU CLP分類において「Skin. Irrit. 2 H315」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
本物質はヒトの眼に非可逆的な損傷を与えるとの記載や (ACGIH (7th, 2001)、HSDB (Access on August 2015))、眼に強度の刺激性を有するとの記載がある (HSDB (Access on August 2015))。また、ボランティアに本物質 (1.75-5 ppm) をばく露した結果、眼刺激性がみられたとの報告がある (PATTY (6th, 2012))。以上、非可逆的な損傷との記載から、区分1とした。なお、本物質は、EU CLP分類において「Eye Dam. 1 H318」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
4 呼吸器感作性 区分1 危険 H334: 吸入するとアレルギー、喘息又は呼吸困難を起こすおそれ P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P342+P311: 呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P284: 【換気が不十分な場合】呼吸用保護具を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質のばく露により喘息が引き起こされるとの記載が複数ある (HSDB (Access on August 2015)) ことから区分1とした。なお、本物質は、EU CLP分類において「Resp. Sens. 1 H334」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
モルモットを用いた皮内感作試験で、全ての供試動物 (16匹) に免疫反応がみられたとの報告や (ACGIH (2001))、ヒトにおいても感作性を引き起こすとの記載がある (HSDB (Access on August 2015)) ことから区分1とした。なお、本物質は、EU CLP分類において「Skin sens. 1 H317」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
In vivoでは、ヒト疫学事例で、本物質ガスにばく露されたヒトの末梢血リンパ球で染色体異常発生頻度が高かったという2例の報告がある (HSDB 2005))。吸入ばく露による雌雄マウス骨髄細胞、末梢血赤血球の小核試験で陰性の結果 (NTP DB (Access on August 2015))、並びに高用量でのみ弱いが有意な小核の増加が認められた (NTP DB (Access on August 2015))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陽性である (ACGIH (7th, 2001)、NTP DB (Access on August 2015)、PATTY (6th, 2012))。以上より、in vivoの体細胞変異原性陽性結果があることから、区分2とした。  
6 発がん性 分類できない - - - - ラット又はマウスを用いた本物質の吸入経路による2年間発がん性試験において、雄ラットのみで副腎髄質の褐色細胞腫、及び膵臓腺房細胞の腺腫の発生頻度に僅かな増加がみられたのみで、雌ラット及び雌雄マウスには腫瘍発生の増加はみられなかった (HSDB (Access on August 2015))。米国EPAはヒトで利用可能な情報がないこと、また実験動物での上記の結果を基に、グループDに分類した (EPA Technology and Transfer Network Air Toxic Website (Access on August 2015)) が、他の機関による分類結果はない。以上より、本項は分類できないとした。
7 生殖毒性 区分1B 危険 H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
インドの工場での事故により本物質にばく露された可能性がある付近住民の妊婦を対象とした聞き取り調査の結果、死産、自然流産の増加、並びに出産後の新生児死亡率の増加が報告されている (EPA Technology and Transfer Network Air Toxic Website (Access on August 2015)、HSDB (Access on August 2015))。実験動物でも妊娠マウスに単回 (妊娠8日)、又は4日間 (妊娠14〜17日) 吸入ばく露した試験で、母動物毒性の有無に関わらず、胎児に体重の低値、又は死亡率の軽度増加など胎児毒性がみられたとの記述がある (EPA Technology and Transfer Network Air Toxic Website (Access on August 2015)、HSDB (Access on August 2015))。以上より、疫学調査の事例は事故による1件のみであるが、結果は動物実験である程度裏づけられたものと考えられ、本項は区分1Bとした。 なお、EU CLP分類では、Repr. 2 とされている (ECHA CL Inventory (Access on August 2015))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (呼吸器) 危険 H370: 臓器の障害(呼吸器) P308+P311: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は、ヒトにおいて吸入ばく露で気道刺激性、胸部痛、咳、努力呼吸、嘔吐、呼吸困難、肺水腫、経口ばく露で腹痛の報告がある (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012)、HSDB (Access on August 2015))。 実験動物では、ラットの吸入、6.1 ppm (0.014 mg/L) (区分1相当用量) で、流涙、活動低下、呼吸困難、口呼吸、ばく露後2週目には症状は緩和されたとの報告がある (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012))。 以上より、本物質は気道刺激性、呼吸器への影響があり、区分1 (呼吸器) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - - - データなし
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - データなし
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルSDS

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