GHS分類結果

名称:塩化アンチモン(三塩化アンチモン)
CAS番号:10025-91-9

結果:
物質ID: H27-B-038/C-074B_P
分類実施者: 厚生労働省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - 不燃性である (GESTIS (Access on July 2015))。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 不燃性である (GESTIS (Access on July 2015))。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 不燃性である (GESTIS (Access on July 2015))。
12 水反応可燃性化学品 区分外 - - - - 水溶解度が測定されており、水と激しく反応しないと推定される。 水溶解度:10g/100mL (25℃) (ICSC (2004))
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない - - - - 酸素を含まず、塩素を含む無機化合物であるが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 無機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値として、360 mg Sb/kg bw (SbCl3として:673 mg/kg)、280 mg Sb/kg bw (SbCl3として:523 mg/kg)、214 mg Sb/kg bw (SbCl3として:400 mg/kg) (DFGOT vol. 23 (2007)) に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、モルモットのLD50値として、< 314 mg/kgとの報告 (DFGOT vol. 23 (2007)) があるが、この値のみで区分を特定することはできない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
具体的な動物試験の情報はないが、本物質は皮膚に対して刺激性や腐食性をもつとの記載がある (HSDB (Access on August 2015)) 。なお、ボランティアに対するパッチテストの報告が3報あり、本物質2%を48時間適用した結果、ボランティア17人に反応はみられなかったが (DFGOT vol. 23 (2007))、本物質1%を95人に適用した結果、2人に紅斑がみられ、1人に浸潤性の紅斑がみられたとの報告や (DFGOT vol. 23 (2007))、本物質1%を80人に適用した結果、48時間後に4人に紅斑がみられ、1人に浸潤性の紅斑がみられたとの報告がある (DFGOT vol. 23 (2007))。以上より、区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
具体的な動物試験の情報はないが、本物質はヒトの眼に対して強度の刺激性をもつとの記載や、深部の熱傷を起こすとの記載がある (HSDB (Access on August 2015))。以上より、区分2Aとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、ボランティアに対するパッチテストの報告が3報において、本物質 (1%又は2%) を48時間適用した結果、アレルギー反応はみられなかったとの報告がある (DFGOT vol. 23 (2007))。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
In vivoでは、経口投与によるマウス骨髄細胞の染色体異常試験で陽性 (NITE初期リスク評価書 (2008))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の小核試験、姉妹染色分体交換試験で陽性である (NITE初期リスク評価書 (2008))。以上より、in vivo体細胞変異原性試験で陽性の結果があり、ガイダンスに従い区分2とした。
6 発がん性 分類できない - - - - 三酸化アンチモン以外のアンチモン化合物に対して、ACGIH (ACGIH (7th, 2001)) も日本産業衛生学会 (産衛誌 55巻 (2013)) も発がん性の分類区分を付しておらず、本物質についてもデータ不足のため分類できない。
7 生殖毒性 分類できない - - - - 妊娠ラットの妊娠期間、分娩後哺育期間を通して、さらに児動物に離乳後60日齢まで、1又は10 mg/Lの濃度 (約 0.1、1 mg/kg/day) の本物質を経口 (飲水) 投与した試験で、母動物には妊娠20日目に用量依存的な体重の低下が示されたが、妊娠期間、同腹児数には影響はみられなかった。出生前及び生後も継続的に投与された児動物には高濃度群で体重増加抑制が生じたが、肉眼的に奇形はみられなかった (DFGOT vol. 23 (2007)、HSDB (Access on August 2015)) との記述があるが、外表異常の観察のみであり、催奇形性の有無を評価するには不十分な試験報告である。この他、妊娠ラットの器官形成期 (妊娠6〜15日) に本物質 187 mg/kg/day を筋肉内注射した結果、胎児毒性 (吸収胚増加、生存胎児数の減少、胎児重量の減少) がみられたが、母動物への影響の有無についての記述がない (NITE初期リスク評価書 (2008))。以上、分類に適したデータがなく、データ不足のため分類できない。 なお、旧分類では母動物に一般毒性影響のみられる用量で、次世代に影響がみられたとの記述があるが、児動物においてアセチルコリン等による投与、又は頸動脈閉塞処置により生じる昇圧反応に対する拮抗作用が本物質ばく露による影響とされたが、無処置動物に対し本物質ばく露が収縮期血圧を変化させることはなく、毒性学的意義の観点から分類根拠として妥当性を欠くと判断した。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分2 (呼吸器) 警告 H371: 臓器の障害のおそれ(呼吸器) P308+P311: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は、ヒトに気道刺激性、鼻炎、急性肺水腫を引き起こすとの記載があり (HSDB (Access on August 2015))、呼吸器に対する影響がみられるが、List 1に情報がないため、区分2 (呼吸器) とした。 実験動物のデータはない。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (血液系) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(血液系) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトに関する情報はない。 実験動物については、モルモットを用いた6ヶ月間経口投与試験において、区分1の範囲である2.5 mg/kg/dayで血清タンパクのグロブリン分画増加、総蛋白減少、へモグロビン量・赤血球数減少、網状赤血球数増加、血清中遊離SH基の減少がみられている (DFGOT vol. 23 (2007))。 したがって、区分1 (血液系) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)の64時間EC50 = 19.8 mgSb/L(換算値:37 mg SbCl3/L)(NITE初期リスク評価書, 2008)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分3 - - H412: 長期継続的影響によって水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
信頼性のある慢性毒性データが得られていない。無機化合物で水中での挙動が不明であり、急性毒性区分3であることから、区分3とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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