GHS分類結果

名称:アルファ-メチルスチレン
CAS番号:98-83-9

結果:
物質ID: H27-B-036/C-072B_P
分類実施者: 厚生労働省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分3 警告 H226: 引火性液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点46℃ (closed cup) (GESTIS (Access on July 2015)) に基づいて区分3とした。なお、UNRTDG分類はUN.2303、クラス 3、PGVである。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 タイプG - - - - 分子内に自己反応性に関連する原子団 (オレフィン) を含むが、UNRTDG分類はUN. 2303、クラス 3、PGVに分類されているので、上位の危険物自己反応性化学品には該当しない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が574℃ (HSDB (Access on July 2015)) であり、常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素及び塩素を含まない有機化合物である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットのLD50値として、4,900 mg/kgで2件 (PATTY (6th, 2012)、NTP TR 543 (2007)、環境省リスク評価第4巻 (2005)、SIDS (2002)、DFGOT vol. 15 (2001)) 及び4,900〜5,900 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008)) と、合計3件の報告があり、いずれも区分外に該当する。なお、2件が国連分類基準の区分5に該当するので、区分外 (国連分類基準の区分5) とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギのLD50値として、14,560 mg/kg (SIDS (2002)) との報告に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分外 - - - - ラットのLCLo値 (6時間) として、3,000 ppm (4時間換算値:4,500 ppm (21.78 mg/L)) との報告 (SIDS (2002)) に基づき、区分外とした。なお、LCLo値が飽和蒸気圧濃度 (2,962 ppm) より高いため、ミストの基準値を適用した。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
ウサギを用いた皮膚刺激性試験 (標準ドレイズ試験) で中等度の刺激性が見られたとの報告がある (SIDS (2002))。以上、中等度の刺激性との記載から区分2とした。なお、ウサギに本物質の原液0.5 mLを24時間適用した結果、24時間後に激しい紅斑や浮腫、水疱形成、皮膚腐食性が生じ、ドレイズスコアは8.0 (最大値8.0) との結果 (NITE初期リスク評価書 (2008)) があるが、24時間適用の試験であるため分類には用いなかった。本物質は、EU CLP分類において「Skin. Irrit. 2 H315」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
ウサギを用いた眼刺激性試験において、本物質の原液0.1 mLを24時間適用した結果、軽度から中等度の刺激性がみられたが、48時間後には回復したとの報告があり、ドレイズスコアは8 (最大値110) であった (NITE初期リスク評価書 (2008))。ウサギを用いた別の眼刺激性試験において、本物質86 mgの適用により中等度の刺激性がみられたとの報告 (SIDS (2002)) や、軽度の結膜炎がみられたが角膜傷害はなかったとの情報 (NTP TR 543 (2007)) がある。また、ヒトに対しても眼刺激性を示すとの記載が複数ある (NITE初期リスク評価書 (2008)、DFGOT vol. 15 (2001))。以上、動物試験での48時間後に回復したとの記載から区分2Bとした。なお、本物質は、EU CLP分類において「Eye. Irrit. 2 H319」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、職業ばく露において本物質による接触性皮膚炎や湿疹の報告が (NITE初期リスク評価書 (2008)) があるが、ばく露状況等の詳細について不明であるため区分に用いるには不十分な情報と判断した。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - In vivo小核試験の陽性は決定的な知見ではなく、in vitro試験もすべて陰性であることから、ガイダンスに従い分類できない。すなわち、In vivoでは、13週間吸入ばく露による雌雄マウスの末梢血を用いた小核試験で、雌で陽性、雄で陰性結果がみられている (NITE初期リスク評価書 (2008)、NTP TR 543 (2007)) が、このうち雌の陽性知見は10例中2例が死亡した用量で、NCEにおいて対照群の1.8倍 (0.510% vs 0.913%) の誘発を示したもので、PCEでは陰性、雄ではNCE、PCEともに陰性である。雌雄マウスにおける代謝の違いは報告されていない。従って、これらの知見は小核誘発の決定的な証拠とは言い難い。その他のin vivo試験データはない。In vitroでは、哺乳類培養細胞の姉妹染色分体交換試験で陽性結果1例が認められるが、それ以外の試験、すなわち、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験やヒトリンパ球の姉妹染色分体交換試験などで陰性である (NITE初期リスク評価書 (2008)、厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on July 2015)、SIDS (2002)、環境省リスク評価第4巻 (2005)、DFGOT vol. 15 (2001)、NTP TR 543 (2007))。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトでの発がん性に関する情報はない。実験動物ではラット又はマウスを用いた吸入経路による2年間発がん性試験において、ラットでは用量相関的な尿細管の腺腫とがんの合計頻度の増加が雄に、マウスでは肝細胞の腺腫とがんの合計頻度の増加が雌雄ともに認められており (IARC 101 (2012)、NTP TR 543 (2007)、NITE初期リスク評価書 (2008))、IARCはグループ2Bに分類している (IARC 101 (2012))。この他、他の国際機関による発がん性分類結果はなく、よって本項は区分2とした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - ラットを用いた経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、親動物に一般毒性影響 (体重増加抑制、肝臓・腎臓重量増加、胸腺萎縮など) が顕著に発現する高用量 (1,000 mg/kg/day) で、母動物2例 (2/10例) が全身状態悪化により、哺育を十分に行えなかった結果、分娩後の新生児が2日以内に全児死亡した以外、親動物の性機能及び生殖能、児動物の発生、生後4日までの成長に関する指標に影響はみられず、本試験条件下での生殖発生毒性に対するNOAELは1,000 mg/kg/dayと報告されている (NITEI初期リスク評価書 (2008)、SIDS (2002)、厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on July 2015))。ただし、これはスクリーニング試験のため、この結果のみでは区分外とはできず、この他、分類に利用可能なデータがないことから、本項は分類できないとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3 (気道刺激性、麻酔作用) 警告 H336: 眠気又はめまいのおそれ(気道刺激性、麻酔作用)
H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性、麻酔作用)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質はヒトに気道刺激性がある (環境省リスク評価第2巻暫定的有害性評価シート (2003)、環境省リスク評価第4巻 (2005)、ACGIH (7th, 2001)、NITE初期リスク評価書 (2008)、DFGOT vol. 15 (2001)、HSDB (Access on August 2015))。実験動物では、ラットの経口投与 (区分2超の用量) で、自発運動低下、よろめき歩行、吸入ばく露 (区分2相当) で閉瞼、協調運動失調、感覚消失、ウサギの経皮適用 (区分2超の用量) で、自発運動の低下、痙攣の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008))。 以上より、本物質は気道刺激性及び麻酔作用があり、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。 新たな情報を追加し旧分類を見直した。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (肝臓)、区分2 (呼吸器、腎臓) 警告
危険
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(呼吸器、腎臓)
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(肝臓)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、肝機能障害、ビタミンB12の欠乏、免疫学的変化の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008))。 実験動物では、ラットを用いた反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG422) において、区分2の範囲である200 mg/kg/day (90日換算値:雄95.6 mg/kg/day、雌91.1〜100 mg/kg/day) でALT増加、肝臓・腎臓の絶対及び相対重量増加、肝細胞の好酸性変化、尿細管上皮の空胞化 (雌) がみられた (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on July 2015))。 マウスを用いた14週間吸入毒性試験において、区分2の範囲である75 ppm (ガイダンス値換算:0.27 mg/L) 以上で鼻腔の嗅上皮の萎縮・化生、ボーマン腺の萎縮又は過形成、150 ppm (ガイダンス値換算:0.53 mg/L) で鼻腔の嗅上皮の硝子変性、ラットを用いた吸入経路による2年間発がん性試験において区分2の範囲である100 ppm (0.48 mg/L) で嗅上皮の基底細胞の過形成、マウスを用いた吸入経路による2年間発がん性試験において区分2の範囲である100 ppm (0.48 mg/L) で嗅上皮の化生・腺の過形成がみられている (NTP TR 543 (2007))。 以上からヒトで肝臓への影響がみられ、実験動物において区分2の範囲で鼻腔、肝臓、腎臓に影響がみられている。 したがって、区分1 (肝臓)、区分2 (呼吸器、腎臓) とした。 なお、旧分類ではラットにおける腎臓の影響は雄ラット特有の所見として否定していたが、雌ラットにおいても腎臓に影響がみられていることから腎臓を標的臓器とした。また、ラットでみられた肝臓の影響についても適応反応として否定していたが、同試験において肝細胞の脂肪滴の消失、トリグリセライドの減少、腎臓の尿細管上皮の脂肪化、副腎束状帯の脂肪滴の増加等、脂質代謝への影響がうかがわれること、ヒトでの所見の報告があることから肝臓を標的臓器とした。
10 吸引性呼吸器有害性 区分1 危険 H304: 飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそれ P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P331: 無理に吐かせないこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
炭化水素であり、HSDB (Access on August 2015) に収載された数値データ (粘性率: 0.940 mPa・s (20 ℃)、密度 (比重) : 0.9106) より、動粘性率が1.03 mm2/sec (20 ℃) と算出されることから、区分1とした。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)48時間EC50 = 2.62 mg/L(環境省リスク評価第4巻, 2005、NITE初期リスク評価書, 2008)であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分2 - H411: 長期継続的影響によって水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(難分解性、14日でのBOD分解度=0%(通産省公報, 1979))、藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の72時間NOEC = 0.3 mg/L(環境庁生態影響試験, 1996、環境省リスク評価第4巻, 2005)であることから、区分2となる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく、魚類(メダカ)の96時間LC50 = 7.28 mg/L(環境省リスク評価第4巻, 2005、NITE初期リスク評価書, 2008)であることから、区分2となる。 以上の結果から、区分2とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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