項目 | 情報 |
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CAS番号 | 593-74-8 |
名称 | ジメチル水銀 |
物質ID | H27-B-035/C-071B_P |
分類実施年度 | 平成27年度 |
分類実施者 | 厚生労働省/環境省 |
新規/再分類 (危険物/有害物) | 再分類・見直し |
他年度における分類結果 | 平成20年度 |
Excelファイルのダウンロード | Excel file |
項目 | 情報 |
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分類に使用したガイダンス(外部リンク) | 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1)) |
解説・用語集(Excelファイル) | 解説・用語集 |
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) | 職場のあんぜんサイト |
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) | 職場のあんぜんサイト |
OECD/eChemPortal(外部リンク) | eChemPortal |
危険有害性項目 | 分類結果 |
危険有害性絵表示 (コード: シンボル) 注意喚起語 |
コード (危険有害性情報) |
コード (安全対策注意書き) |
分類根拠・問題点 | |
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1 | 爆発物 | 分類対象外 | - | - | - |
爆発性に関連する原子団を含んでいない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 | - | - | - |
GHSの定義における液体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 | - | - | - |
エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 | - | - | - |
GHSの定義における液体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 | - | - | - |
GHSの定義における液体である。 |
6 | 引火性液体 | 区分2 |
|
H225 |
P303+P361+P353 P370+P378 P403+P235 P210 P233 P240 P241 P242 P243 P280 P501 |
引火点5℃(方式不明)、沸点93-94℃ (ICSC (2003)) というデータがあり、所定の試験法において区分2に該当すると考えられる。 |
7 | 可燃性固体 | 分類対象外 | - | - | - |
GHSの定義における液体である。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 | - | - | - |
分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。 |
9 | 自然発火性液体 | 分類できない | - | - | - |
データがなく分類できない。 |
10 | 自然発火性固体 | 分類対象外 | - | - | - |
GHSの定義における液体である。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない | - | - | - |
液体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分外 | - | - | - |
水に不溶 (IARC58 (1993)) との観察結果があり、水と激しく反応することはないと考えられる。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 | - | - | - |
酸素、フッ素及び塩素を含まない有機化合物である。 |
14 | 酸化性固体 | 分類対象外 | - | - | - |
GHSの定義における液体である。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 | - | - | - |
分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない | - | - | - |
データがなく分類できない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 |
危険有害性絵表示 (コード: シンボル) 注意喚起語 |
コード (危険有害性情報) |
コード (安全対策注意書き) |
分類根拠・問題点 | |
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1 | 急性毒性(経口) | 分類できない | - | - | - |
データ不足のため分類できない。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 分類できない | - | - | - |
データ不足のため分類できない。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 | - | - | - |
GHSの定義における液体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類できない | - | - | - |
データ不足のため分類できない。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない | - | - | - |
データ不足のため分類できない。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 分類できない | - | - | - |
データ不足のため分類できない。 なお、アルキル水銀化合物は強い皮膚刺激性をもつとの記載がある (HSDB (Access on August 2015)) |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 分類できない | - | - | - |
データ不足のため分類できない。 |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない | - | - | - |
データ不足のため分類できない。 |
4 | 皮膚感作性 | 分類できない | - | - | - |
データ不足のため分類できない。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 分類できない | - | - | - |
データ不足のため分類できない。 In vivoでは、静脈内投与によるマウス卵母細胞の染色体異常試験で陰性 (IARC 58 (1993)) である。 In vitroでは、ヒトリンパ球培養細胞の染色体異常試験で陽性 (IARC 58 (1993))、チャイニーズハムスター培養細胞の染色体異常試験で陰性である (ATSDR (1999))。 旧分類に記載のチャイニーズハムスター細胞を用いる染色体異常試験での陽性結果は1用量のみの結果であるとの記載がある(ATSDR (1999))。 |
6 | 発がん性 | 区分2 |
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H351 |
P308+P313 P201 P202 P280 P405 P501 |
ヒトでの発がん性に関する情報はない。 実験動物ではラット、又はマウスにメチル水銀塩化物を経口混餌投与した発がん性試験において、ラットでは腫瘍発生の増加はみられなかったが、マウスでは3件の試験結果全てで、腎尿細管の腺腫、又は腺がんの発生頻度の増加が雄に認められた (IARC 58 (1993)) との記述がある。 すなわち、メチル水銀塩化物をマウスに混餌投与した異なる試験において、雄マウスに腎臓腫瘍の数の有意な増加がみられたとの記述、及び性腺切除後にプロピオン酸テストステロン処置した雌雄マウスに腎臓腫瘍 (数箇所) がみられた (性腺切除後テストステロン投与を行わない雌雄マウスでは腎臓腫瘍の増加は生じなかった) (IARC 58 (1993)) との記述がある。 これらの結果に基づき、IARCはグループ2Bに分類した (IARC 58 (1993))。 これ以降、いずれの国際機関による発がん性分類結果もなく、ヒトでの発がん性の証拠を補強する知見も得られていない。 よって、本項は区分2とした。 |
7 | 生殖毒性 | 区分1A 追加区分: 授乳に対する、又は授乳を介した影響 |
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H360 H362 |
P201 P202 P260 P263 P264 P270 P280 P308+P313 P405 P501 |
本物質 (ジメチル水銀) に限定した生殖毒性影響のデータはない。 しかしながら、Handbook on the Toxicology of Metals (4th, ed., 2015) 中に、本物質は吸入、又は経皮経路により効率的に吸収され、生体内では「メチル水銀 (MeHg)」 に変換され、数症例の致死的ばく露症例における中毒症状の記述から、ジメチル水銀中毒は症候学的、毒物動態学的にメチル水銀化合物ばく露後に生じる現象と同等であるとの記述、及び本物質単回ばく露5ヶ月後に遅延性に神経症状が発現した症例から推測して、吸収されたジメチル水銀は脂肪組織に分布蓄積し、徐々に脱メチル体が遊離する可能性があるとの記述もある (Handbook on th Toxicology of Metals. 4th. ed., Volume II. pp. 1061 (2015))。 したがって、本項の分類には「メチル水銀」による生殖毒性情報の利用が可能であると判断し、以下、メチル水銀の生殖発生毒性影響に関して、JECFA FAS (2007)、ATSDR (2013)、ACGIH (7th, 2001) からの記述内容、並びに本邦における水俣病問題に対する国の公式見解中の「胎児性水俣病」に関する記述を引用し、分類することとする。 WHOとFAOの合同専門家会議でメチル水銀のヒト健康影響が評価された結果、ファロー諸島での本物質にばく露された妊婦や子供の調査研究、並びに日本、イラクで出生前から、又は生後にばく露された子供を対象とした調査研究から、成長後に生じる微細な運動制御機能の低下、視覚障害など神経行動学的な有害影響に対する感受性は、母親の子宮内で胎児のステージからの出生前ばく露でも、生後の乳幼児からのばく露でも、いずれも脆弱性に差異はなく、妊婦、乳幼児は特にハイリスクグループとして、汚染された魚などからの摂取によるばく露を厳密に制限すべきとされた (JECFA FAS 58 (2007))。 また、ヒトでは妊娠中にメチル水銀にばく露された米国ミシガン州の女性の集団のうち、出産までの妊娠期間が35週未満の早産であったサブグループの毛髪中の水銀濃度が同37週以上の完全な妊娠期間を経て出産した女性のサブグループの同値の90%タイル (0.55〜2.5 μg/g) を超えるレベルを示す傾向にあった (ATSDR addendum (2013)) との記述がある。 一方、メチル水銀については胎児性水俣病と称される胎盤を経由したメチル水銀中毒と新生児水俣病発症との因果関係が明らかにされている。 すなわち、有機水銀に汚染された魚貝類を摂取することで、メチル水銀にばく露された妊婦に神経症状がみられ、感覚障害から次第に運動失調、視野狭窄へと進行していくが、生まれた子供には知能障害、発育障害、言語障害、歩行障害、姿体変性など脳性麻痺様の症状がみられ、成人の場合と比べ重度である場合が多い。 母体には臨床症状を必ずしも示さない量のメチル水銀でも、胎児はメチル水銀の排泄が悪く、感受性が高いことから水俣病の影響を受けやすいと記述されている (平成27 (2015) 年6月 衆議院調査局環境調査室編集 水俣病問題の概要 (2015))。 この他、メチル水銀の実験動物での主たる標的臓器は中枢神経系であり、メチル水銀は実験動物及びヒトで催奇形性物質である (ACGIH (7th, 2001)) との記述もある。 以上、冒頭に記載したように、本項の分類には「メチル水銀」の毒性情報が適用可能と考え、本項の分類は「区分1A 」とし、「授乳影響」を追加した。 |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1 (神経系) |
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H370 |
P308+P311 P260 P264 P270 P321 P405 P501 |
アルキル水銀化合物によるヒトの急性吸入ばく露で、手足のしびれや疼き、歩行不安定、歩行困難など神経影響が認められている (ATSDR (1999))。 本物質においても、ヒトへの影響として、女性の化学者が着用していた使い捨て手袋上に誤ってジメチル水銀を数滴 (0.44 mLと推算) こぼし、手袋を浸透したばく露 (経皮並びに本物質の性状から吸入ばく露も示唆された) により、平衡感覚、歩行、言語に障害がみられるようになり、入院治療を行ったにも関わらず、ばく露後175日目に昏睡状態に陥り、298日目に死亡したとの症例 (ATSDR (1999)) があることから、区分1 (神経系) とした。 |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1 (神経系、腎臓) |
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H372 |
P260 P264 P270 P314 P501 |
ヒトへの影響として、23歳の実験室作業者において、2週間経皮ばく露により、歯肉の痛み、流涎、手・足・舌のしびれ、難聴、弱視、質問に対するゆっくり、不明瞭な声での回答、嚥下時の喉の痛み、会話不能、肺炎により、ばく露12ヶ月以上で死亡がみられ、3ヶ月のうちにジメチル水銀を6kg合成していた30歳の化学者において、視野狭窄、小脳・大脳皮質の障害と関連した症状 (麻痺と難聴) が報告されている (GESTIS (Access on August 2015))。 さらに、本物質ではないが、ACGIHではアルキル水銀化合物の主な標的器官は中枢神経系・末梢神経系及び腎臓としており (ACGIH (7th, 2001))、ATSDRでは、大量のメチル水銀に汚染された魚を食べた一部のヒト、メチル水銀や他の有機水銀化合物で処理された種子を食べた一部のヒトで脳と腎臓に非可逆的な障害が生じたことが報告されている (ATSDR (1999))。 以上から、主に神経系が標的臓器であり、また腎臓についても標的臓器と考えられる。 したがって、区分1 (神経系、腎臓) とした。 |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない | - | - | - |
データ不足のため分類できない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 |
危険有害性絵表示 (コード: シンボル) 注意喚起語 |
コード (危険有害性情報) |
コード (安全対策注意書き) |
分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 分類できない | - | - | - | データなし |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 分類できない | - | - | - | データなし |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない | - | - | - | データなし |
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。 また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。 * 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。 * 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。 ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。 * 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。 他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。 |
2017/2/23 分類情報の修正:生殖毒性 (正誤表(Excel file)) |
2016/6/8 公表 |