GHS分類結果

名称:アクリル酸2-ヒドロキシプロピル
CAS番号:999-61-1

結果:
物質ID: H27-B-031/C-067B_P
分類実施者: 厚生労働省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分外 - - - - 引火点が97℃ (closed cup) である (ACGIH (7th, 2001))。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類できない - - - - 化学構造に不飽和結合 (オレフィン) を含むが、データがなく分類できない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が210℃ (GESTIS (Access on July 2015)) であり、常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質とその異性体混合物のラットに対するLD50値として、250〜500 mg/kg、590〜1,300 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)) との2件の報告がある。1件が区分3又は区分4に該当し、もう1件が区分4に該当するので、最も多くのデータが該当する区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分2 危険 H310: 皮膚に接触すると生命に危険 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P262: 眼、皮膚、衣類につけないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P364: そして再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギのLD50値として、170mg/kg、250 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)) との2件の報告がある。区分2と区分3とに該当するが、LD50値の最小値が該当する区分2とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。ラットに本物質の飽和蒸気 (室温) を7〜8時間吸入 (飽和蒸気濃度を9.8×10-4 ppmとしての4時間換算値:1.3-1.4×10-3 ppm) させた結果 、死亡例がなく、100℃で発生させた本物質の飽和蒸気 (650 ppm) を4時間吸入させた結果、死亡例がみられたとの報告 (ACGIH (7th, 2001)) があるが、区分を特定できない。なお、試験は飽和蒸気で行われたとの記載に基づき、蒸気とみなした。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1 危険 H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、本物質 (170〜250 mg/kg) を局所適用した結果、中等度の浮腫、中等度から重度の壊死がみられ、10%水溶液の適用においても中等度の化学火傷が見られたとの報告がある (ACGIH (7th, 2001))。また、本物質75%を含む異性体混合物 (25% 1-ヒドロキシ-2-プロピルアクリル酸) をウサギの皮膚に開放適用した結果、中等度の刺激性がみられたとの報告がある(DFGOT vol. 16 (2001))。また本物質66%を含む異性体混合物 (33% 1-ヒドロキシ-2-プロピルアクリル酸、1%遊離アクリル酸又は1-ヒドロキシ-3-プロピルアクリル酸) を15分又は4時間閉塞適用した結果 (動物種不明)、重度の深部壊死がみられたとの報告がある (DFGOT vol. 16 (2001))。以上の報告から区分1とした。なお、本物質はEU CLP分類において「Skin. Corr. 1B H314」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
本物質 (0.1 mL) をウサギの眼に適用した結果、重度の眼刺激及び角膜傷害がみられたとの報告や (ACGIH (7th, 2001))、ラットに本物質の蒸気をばく露した結果、著しい眼刺激性がみられたとの報告がある (HSDB (Access on August 2015))。また、本物質は皮膚腐食性/刺激性の分類で区分1とされている。以上より、区分1とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
モルモットを用いた感作性試験において、感作性がみられたとの報告や (ACGIH (7th, 2001))、モルモットを用いた別の感作性試験の報告では、弱い感作性しかみられなかったとの報告がある (ACGIH (7th, 2001))。また、異性体混合物のアクリル酸ヒドロキシプロピルを用いたヒトのパッチテストの報告において、感作性の報告が複数ある (DFGOT vol. 16 (2001))。ACGIH (7th, 2001) は本物質を感作性物質としている。以上、本物質を用いた感作性試験において陽性の報告があり、さらに異性体混合物を用いたヒトのパッチテストの報告で複数の陽性反応があることから区分1とした。なお、本物質は、EU CLP分類において「Skin sens. 1 H317」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。すなわち、in vivoデータはなく、in vitroでは細菌の復帰突然変異試験で陰性、陽性の結果が報告されている(DFGOT vol. 16 (2001)、PATTY (6th, 2012))。
6 発がん性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3 (気道刺激性) 警告 H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は気道刺激性があるとの報告 (ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 16 (2001)、PATTY (6th, 2012)) から、区分3 (気道刺激性) とした。 旧分類の区分を見直した。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (呼吸器) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質のみの情報はない。 プロピルアクリル酸異性体混合物 (本物質=74%、1-ヒドロキシ-2-プロピルアクリル酸= 25%、acrylic acid=0.73%) の情報として、イヌ、ラット、ウサギ、マウスを用いた1ヶ月間 (20〜21回投与) 吸入毒性試験において、イヌ、ラット、ウサギにおいて区分1の範囲である5 ppm (ガイダンス値換算:0.006 mg/m3) 以上で、鼻甲介粘膜の扁平上皮化生・潰瘍、粘液膿性鼻炎、鼻粘膜の炎症、喉頭炎、気管炎、気管支炎、肺炎などの呼吸器系への影響がみられた (DFGOT vol. 16 (2001))。 以上のように呼吸器への影響が区分1の範囲でみられたことから区分1 (呼吸器) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(ファットヘッドミノー)96時間LC50 = 3100 μg/L(HSDB, 2012、AQUIRE, 2016)であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 信頼性のある慢性毒性データが得られていない。急速分解性があり(良分解性:28日でのBOD分解度=83%、TOC分解度=93%、HPLC分解度=100%(経済産業公報, 2001))、急性毒性は区分2であるが、生物濃縮性が低いと推測される(LogPow= 0.35(PHYSPROP Database, 2009))ことから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルSDS

職場のあんぜんサイトへ


GHS関連情報トップページに戻る