GHS分類結果

名称:1,1,1,2-テトラクロロエタン
CAS番号:630-20-6

結果:
物質ID: H27-A-036/C-066A_P
分類実施者: 厚生労働省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分外 - - - - 不燃性である (HSDB (Access on July 2015))。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 不燃性である (HSDB (Access on July 2015))。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 不燃性である (HSDB (Access on July 2015))。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素及びフッ素を含まず、塩素を含む有機化合物であるが、この塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値として、670 mg/ kg (雄)、780 mg/ kg (雌) (IARC 41 (1986)) との報告に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギのLD50値として、約20,000 mg/kg (IARC 41 (1986)) との報告に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分3 危険 H331: 吸入すると有毒 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P311: 医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLC50値 (4時間) として、2,100 ppm (雄)、2,500 ppm (雌) との報告 (IARC 41 (1986)) に基づき、区分3とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (15,789 ppm) より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - 本物質はウサギの皮膚に対して軽度の刺激性を有するとの記載がある (HSDB (Access on July 2015))。また、具体的な情報はないが、本物質は皮膚刺激性を有する (HSDB (Access on July 2015)) との記載があるが詳細不明である。以上、ウサギの報告から区分外 (国連分類基準の区分3) とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
本物質はウサギの眼に対して軽度の刺激性を有するとの記載や、イヌの眼に本物質の蒸気をばく露した結果、虹彩に影響はみられず、反復ばく露によっても影響はみられなかったとの報告がある (HSDB (Access on July 2015))。また、具体的な情報はないが、本物質は眼刺激性を有する (HSDB (Access on July 2015)) との記載があるが詳細不明である。以上、ウサギの報告から区分2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
In vivoでは、マウス骨髄細胞の腹腔内投与による小核試験、染色体異常試験で陽性 (NTP DB (Access on August))、ラット及びマウスの腹腔内投与による肺、肝臓、腎臓、胃のDNA結合試験で陽性 (IARC 106 (2014)) である。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陽性、陰性の結果で陰性である (IARC 106 (2014)、NTP DB (Access on August))。以上より、ガイダンスに従い、区分2とした。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質の発がん性に関して、ヒトで利用可能な情報はない。実験動物では、ラット又はマウスを用いた経口経路 (強制経口) での2年間発がん性試験において、ラットでは肝臓腫瘍の増加傾向 (雄: 生存率が低く、感度が低下したが、傾向検定で有意差あり)、及び乳腺の線維腺腫の頻度の増加 (雌、低用量のみ)、マウスでは肝臓腫瘍 (肝細胞腺腫、肝細胞がん) の頻度増加 (雌雄) が認められた (IARC 106 (2014)、NTP TR 237 (1983))。NTPはラットでは生存率低下により統計解析 (Mantel-Haenszel法、Cochran-Armitage法、Fischer の直接確率法) の感度が低下し、発がん性の証拠を示せなかったが、マウスでの肝臓腫瘍の頻度増加は発がん性の明白な証拠であると報告した (NTP TR 237 (1983))。一方、IARCは異なる統計解析法 (Life table 検定) により、雄ラットの肝臓腫瘍も有意な増加傾向ありとし、雌ラットの乳腺腫瘍 (線維腺腫、低用量のみ)、雌雄マウスの肝臓腫瘍とともに、実験動物では発がん性の十分な証拠があると結論した (IARC vol. 106 (2014))。 国際機関による分類結果としては、米国EPAがクラスC (possible human carcinogen) に (IRIS Summary (1991))、IARCがグループ2Bに分類している (IARC 106 (2014))。以上より、本項は区分2とした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3 (気道刺激性) 警告 H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は気道刺激性がある (HSDB (Access on July 2015))。実験動物では、モルモットの500 mg/kg経口投与で、投与24時間から11日後に肝臓傷害の形態学的変化を示した (IARC 41 (1986)) との記載があるが、その詳細は不明であるため、この知見は分類に採用しなかった。 以上より、区分3 (気道刺激性) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2 (肝臓) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(肝臓) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトに関する情報はない。 実験動物では、ラットを用いた2週間経口投与毒性試験において、区分2の範囲である300 mg/kg/day (90日間換算:33 mg/kg/day) で脂肪肝がみられている (IARC 41 (1986))。 このほか、肝臓に対する影響として、ラットを用いた10ヶ月間強制経口投与毒性試験で300 mg/kg/day、ラットを用いた12ヶ月間吸入毒性試験及びウサギを用いた6ヶ月間吸入毒性試験において3430 mg/m3 (ガイダンス値換算:2.29 mg/L) で肝臓の小空胞・小葉中心性壊死がみられている (IARC 41 (1986))、これらは単一用量のみの試験であった。 また、マウスを用いた103週間強制経口投与による発がん性試験において、区分2を超える範囲であるが、最低用量である250 mg/kg/dayで肝臓の炎症・脂肪変性・壊死・巨大肝細胞がみられている (NTP TR 237 (1983))。 以上のように、短期の試験で肝臓に対する影響がみられ、より長期の試験では、区分2を超える範囲であるが、その試験での最低用量で肝臓への影響が認められおり影響のみられる最低用量は確定できていない。 したがって、区分2 (肝臓) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - デ-タ不足のため分類できない。なお、HSDB (Access on July 2015) に収載された数値データ (粘性率: 1.50 mPa・s (20 ℃)、密度: 1.5406 g/cm3 (20 ℃)) より、動粘性率は0.97 mm2/sec (20 ℃) と算出される。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)24時間LC50 = 32 mg/L(ECETOC TR91, 2003)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分3 - - H412: 長期継続的影響によって水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
信頼性のある慢性毒性データが得られていない。急速分解性がなく(BioWin)、急性毒性区分3であることから、区分3とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)


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