GHS分類結果

View this page in English


一般情報

項目 情報
CAS番号 79-94-7
名称 テトラブロモビスフェノールA
物質ID H27-A-033/C-063A_P
分類実施年度 平成27年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 (危険物/有害物)  新規分類
Excelファイルのダウンロード Excel file

関連情報

項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - -   爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - -   GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - -   エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - -   GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - -   GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - -   GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - -   不燃性である (GESTIS (Access on July 2015))。
  なお、引火点> 600℃ (NITE総合検索 (Access on July 2015)) との情報がある。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - -   分子内に爆発性、自己反応性に関わる原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - -   GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - -   不燃性である (GESTIS (Access on July 2015))。
  なお、引火点> 600℃ (NITE総合検索 (Access on July 2015)) との情報がある。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - -   不燃性である (GESTIS (Access on July 2015))。
  なお、引火点> 600℃ (NITE総合検索 (Access on July 2015)) との情報がある。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - -   金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - -   GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - -   フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - -   分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - -   固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性<

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - -   ラットのLD50値として、> 2,000 mg/kg (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on July 2015)、NTP TR 587 (2014)、EHC 172 (1995))、> 5,000 mg/kg (環境省リスク評価第1巻 (2002)、EHC 172 (1995))、> 50,000 mg/kg (EU-RAR (2006)) との報告に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - -   ウサギのLD50値として、> 1,000 mg/kg (NTP TR 587 (2014))、> 2,000 mg/kg (EHC 172 (1995))、> 10,000 mg/kg (EU-RAR (2006)) との報告に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - -   GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外 - - -   GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分4

警告
H332
P304+P340
P261
P271
P312
  ラットのLC50値 (2時間) として、2.5 mg/L (4時間換算値:1.25 mg/L) との報告 (NICNAS (2001)) に基づき、区分4とした。
   なお、LC50値及び試験濃度が飽和蒸気圧濃度 (4.0×10-7 mg/L) より高いため、ミストの基準値を適用した。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - -   ウサギを用いた皮膚刺激性試験で、本物質200 mgを24時間適用した結果、顕著な紅斑がみられたが48時間以内に回復したとの報告がある (BUA 239 (2002))。
  また、ウサギを用いた別の皮膚刺激性試験の報告が複数あり、本物質500 mgを適用した結果、刺激性はみられなかったとの報告や (EHC 172 (1995)、EU-RAR (2006)、BUA 239 (2002))や、ラットに本物質を適用した試験においても刺激性はみられなかったとの報告 (EHC 172 (1995)) がある。
  EU-RAR (2006) では、本物質は皮膚刺激性はないと結論している (EU-RAR (2006))。
  以上の結果から区分外 (国連分類基準の区分3) とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分外 - - -   ウサギを用いた眼刺激性試験報告が複数あり (EHC 172 (1995))、EU-RAR (2006))、本物質の適用により刺激性はみられなかった、又は軽度の結膜の発赤、結膜炎、わずかな流涙などがみられたが回復性を示したとの報告があり、本物質は眼刺激性はないと結論されている (EU-RAR (2006)、EHC 172 (1995)))。
  また、ウサギを用いた別の眼刺激性試験において、中等度の紅斑、結膜炎がみられたが、72時間後に回復したとの報告がある (BUA 239 (2002))。
  さらに、具体的な報告ではないが本物質は眼に対しても非刺激性であるとの記載がある (環境省リスク評価書第1巻 (2002))。
  以上、複数のList1の評価書において眼刺激性はないと結論されていることから、区分外とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - -   データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - -   データ不足のため分類できない。
  なお、モルモットを用いた感作性試験において、本物質による感作性はみられなかったとの報告がある (EHC 172 (1995)、EU-RAR (2006))。
  また、ボランティア54人に本物質を同一箇所に10回適用し、10〜14日後に別の部位に48時間適用した結果、惹起後1人に軽度の紅斑がみられたが、著者らはこれはテープによる反応だと考察している (EU-RAR (2006))。
  これらの動物及びヒトの報告は、試験の詳細について不明であるため分類に用いるには不十分なデータと判断した。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - -   ガイダンスの改訂により「区分外」が選択できなくなったため、分類できないとした。
  すなわち、in vivoでは強制経口投与によるマウス末梢血赤血球の小核試験で陰性 (NTP TR587 (2014))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験、不定期DNA合成試験でいずれも陰性である (EHC 172 (1995)、NTP TR587 (2014)、EU-RAR (2006)、厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on July 2015)、EFSA (2011))。
6 発がん性 区分2

警告
H351
P308+P313
P201
P202
P280
P405
P501
  ラット及びマウスに本物質を2年間強制経口投与した発がん性試験において、ラットでは500 mg/kg/day以上で、子宮における腺がん、腺腫、又は悪性ミューラー管混合腫瘍の単独又は合計の発生頻度の増加、精巣間細胞腺腫の発生頻度増加が、マウスでは250 mg/kg/dayの雄に肝芽腫、肝細胞がんの単独又は合計の発生頻度の増加、250及び500 mg/kg/day投与の雄に盲腸又は結腸の腺腫又はがんの発生頻度増加、及び血管肉腫 (全臓器) の発生頻度増加がみられた (NTP TR 587 (2014))。
  これらのうち、雌ラットの子宮の上皮性腫瘍 (主に子宮の腺がん) に対しては発がん性の明らかな証拠、雄マウスの肝芽腫に対しては発がん性のある程度の証拠があるとした一方、雄ラットの精巣間細胞は曖昧な証拠とし、雌マウスには発がん性の証拠なしと結論された (NTP TR 587 (2014))。
   以上、国際機関による発がん性分類結果はないが、米国NTPによる2種の実験動物を用いた試験で、ある程度、又は明らかな発がん性の証拠が得られていることから判断し、本項は区分2とした。
7 生殖毒性 区分1B 追加区分: 授乳に対する、又は授乳を介した影響

危険
H360
H362
P201
P202
P260
P263
P264
P270
P280
P308+P313
P405
P501
  ヒトでの本物質ばく露による生殖発生影響に関する報告はない。
  ただし、ドイツ及びノルウェーでの研究では、母乳サンプルの分析の結果、母乳脂質成分から本物質が検出されている (EU-RAR (2006))。
   実験動物ではラットに本物質を強制経口投与した2世代生殖毒性試験において、親動物ではF0、F1世代の100 mg/kg/day以上で血清T4レベルの低値 (F0は雄のみ)、1,000 mg/kg/dayでF1親動物に体重増加抑制がみられたのみで、F0、F1親動物の生殖能、並びにF1及びF2児動物の生後の発達への影響、さらに、F2児動物に対して生後13〜60日に実施した神経行動学的検査 (自発運動、学習・記憶能力、脳・神経系の病理組織所見) において、いずれも 1,000 mg/kg/dayまで有害影響は示されなかった (EU-RAR (2006))。
   また、妊娠ラットに強制経口投与した発生毒性試験では、妊娠0〜19日まで妊娠期間を通して、最大1,000 mg/kg/dayを投与した試験、同様に最大2,500 mg/kg/dayを投与した試験において、いずれも妊娠20日の剖検で、母動物、胎児ともに異常は認められていない (EU-RAR (2006)、環境省リスク評価第1巻 (2002))。
  さらに、妊娠ラットに50、又は 250 mg/kg/dayの用量で妊娠7日〜生後17日まで強制経口投与した神経発達毒性試験 (OECD TG 426) において、250 mg/kg/dayでは母動物には毒性影響はなく、F1児動物にはF1雌で生後21日に運動活性を指標とした (環境) 馴化能 (habituation capability) の低下、F1雄には生後9〜13週齢にMorris水迷路による学習・記憶能の低下 (遊泳移動距離の有意な増加) が観察されたが、影響の大きさが小さく、測定時点で一貫性がなく、被験物質投与による影響かどうか結論できなかったと記述されている (EU-RAR (2006))。
  この報告の後に、本物質の胎生期、新生児期ばく露による神経発達毒性影響に関して、以下に示すごとく、様々な検討がなされ報告されている。
   EUの臭素系難燃剤に関するリスク評価プロジェクトにおいて、雌雄ラットに本物質を3〜3,000 mg/kg/dayの用量範囲で、交配前から投与した1世代生殖毒性試験において、親動物には甲状腺ホルモン (血中サイロキシン (T4)) レベルの低下が示されたが、児動物の聴覚反応、条件回避行動などの神経行動検査に影響はみられなかった。
  しかしながら、生後50〜110日齢で実施された聴覚脳幹誘発電位による電気生理学的な聴覚反応検査の結果、第IV波発生までの潜時の延長など、難聴を示す所見がみられたと報告されている (Lilienthal, H. et al., Toxicology, 246(1) (2008); Van der Ven, L.T. et al., Toxicology, 245(1-2) (2008))。
  一方、妊娠ラットに本物質を100〜10,000 ppm の用量で妊娠10日から分娩後20日まで混餌投与した実験において、生後20日の新生児に海馬の免疫組織染色を施した結果、海馬歯状回の顆粒細胞下帯でアポトーシス小体の増加がみられ、神経発生障害を示唆する所見とされた。
  この所見は他の臭素系難燃剤 (デカブロモジフェニルエーテル (DBDE)、ヘキサシクロブロモドデカン (HBCD)) でもみられたが、生後20日の血液検査でDBDE及びHBCDでは軽度の甲状腺ホルモン低下症を示す変動がみられたのに対し、本物質投与群では甲状腺ホルモンの変動は示されなかった。
  したがって、著者らは本物質は甲状腺ホルモンを介してではなく、胎生期から新生児期にかけて脳の神経発達に対し直接的な作用を示す可能性があると考察している (Saegusa, Y. et al., Arch. Toxicol., 86(9) (2012))。
  しかし、米国で実施されたラット2世代生殖毒性試験では、F0、F1親動物に血清T4レベルの低下がみられたものの、親動物の生殖能、児動物の一般的な神経行動学的検査項目の範囲では、1,000 mg/kg/dayまで生殖発生への影響はみられなかった。
  ただし、1,000 mg/kg/dayでは、11日齢のF2児動物に頭頂骨皮質の厚さの軽度減少がみられたが、病理組織学的変化を伴わず、生物学的意義は不明と報告されている (Cope, R. B. et al., Toxicology, 329 (2015))。
   以上、2006年のEU-RARの評価以降、本物質経口ばく露による影響に関して、妊娠期・授乳期への投与により新生児の神経発生・発達への有害影響を示唆する知見が報告され、特に海馬の組織における形態学的変化は本物質の神経系発達障害を直接的に示す重要な知見と考えられる。
  よって、本項は区分1Bとし、授乳影響を追加した。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 分類できない - - -   本物質のヒトのデータはない。
  実験動物では、吸入、経口、経皮の各経路で、急性毒性症状は報告されていない (EU-RAR (2006)、厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on July 2015)、EHC 172 (1995)、BUA 239 (2002))。
   以上より、「分類できない」とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - -   ヒトに関する情報はない。
   実験動物では、マウスを用いた14週間強制経口投与毒性試験において、500 mg/kg/day以上で腎臓の尿細管細胞質変性、2年間強制経口投与毒性試験において、250 mg/kg/day以上で腎臓の尿細管細胞質変性、前胃の潰瘍・単核細胞浸潤・炎症・上皮過形成がみられた (NTP TR587 (2014))。
   また、ラットを用いた14週間強制経口投与毒性試験において500 mg/kg/day以上で肝臓重量増加、貧血、2年間強制経口投与毒性試験の3ヶ月の検査において1,000 mg/kg/dayで肝臓重量増加 (NTP TR587 (2014))、マウスを用いた3ヶ月間経口混餌投与毒性試験において15,600 mg/kg餌 (2,200 mg/kg/day) 以上で体重低下、貧血、中性脂肪低下、総タンパク低下、脾臓の重量増加・出血が報告されている (環境省リスク評価第1巻 (2002)、EHC 172 (1995)、NTP TR587 (2014))。
  これらは区分2を超える範囲であった。
   したがって、経口経路では区分外相当であるが、ヒト及び他経路における毒性情報がなく、本項はデータ不足のため分類できないとした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - -   データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1

警告
H400
P273
P391
P501
  魚類(ニジマス)の96時間LC50 = 0.4 mg/L(EHC 172, 1995、NICNAS, 2001)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分2

注意喚起語なし
H411
P273
P391
P501
  急速分解性がなく(14日でのBOD分解度=0%、GC分解度=0.7%(通産省公報, 1997))、魚類(ファットヘッドミノー)の35日間NOEC (surviving fish) = 0.16 mg/L(NICNAS, 2001)から、区分2とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - -   データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
  また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
* 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
* 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
  ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
* 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
  他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

更新履歴:
  2017/2/23 分類情報の修正:生殖毒性 (正誤表 (Excel file))
  2016/6/8 公表

GHS分類結果リストへ