GHS分類結果

名称:亜硝酸イソブチル【イソブチル=ニトリット】
CAS番号:542-56-3

結果:
物質ID: H27-B-029/C-050B_P
分類実施者: 厚生労働省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 区分外 - - - - 爆発性に関連する原子団 (N-O) を含むが、UNRTDGで UN 2351 クラス3に分類されているので、優先評価項目の爆発物には該当しない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点-21℃ (closed cup) (Sigma-Aldrich (Access on June 2015))、沸点67℃ (HSDB ( (Access on June 2015)) に基づいて区分2とした。なお、UNRTDG分類 UN2351 クラス3 等級U、Vである。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 タイプG - - - - 爆発性に関連する原子団 (N-O) を含むが、UNRTDGで UN 2351 クラス3に分類されているので、優先評価項目の自己反応性化学品には該当しない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 爆発性に関連する原子団 (N-O) を含むが、UNRTDGで UN 2351 クラス3に分類されているので、優先評価項目の自然発火性液体物には該当しない。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類できない - - - - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であり、この酸素が炭素、水素以外の元素 (N) と化学結合しているがデータがなく分類できない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値として、410 mg/kg (ACGIH (7th, 2003)) に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分3 危険 H331: 吸入すると有毒 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P311: 医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLC50値 (4時間) として、777 ppmとの報告 (ACGIH (7th, 2003)、NTP TR448 (1996)) に基づき、区分3とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (12,833 ppm) より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
In vivoでは、マウスの末梢血赤血球を用いる小核試験で雌雄ともに陽性の結果 (NTP TR448 (1996)、ACGIH (7th, 2003))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陽性である (ACGIH (7th, 2003)、NTP TR448 (1996)、NTP DB (Access on August 2015))。以上より、区分2とした。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトでの発がん性情報はない。実験動物では、ラット又はマウスを用いた2年間吸入ばく露による発がん性試験において、ラット、マウスの雌雄ともに高用量2群 (75、150 ppm) で肺胞/細気管支の腺腫、又はがんを合わせた発生頻度の増加が認められた (NTP TR448 (1996)、ACGIH (7th, 2003))。また、C57BL6雌マウスにPYB6腫瘍細胞を注射後 (部位の記載なし) に、本物質を900 ppmで最長16日間吸入ばく露し、腫瘍の成長を調べた実験で、腫瘍発生率は対照群の21%に対し75%と3倍に増加し、腫瘍成長速度も同4倍に増加するなど、本物質が腫瘍成長を促進することが証明された (ACGIH (7th, 2003)) との記述がある。国際機関による発がん性分類結果としては、ACGIHがA3に (ACGIH (7th, 2003))、EUがCLP分類でCarc. 1B に (ECHA CL Inventory (Access on June 2015)) 分類している。以上、本物質による発がん性の証拠に関して、実験動物では確かな証拠があるが、ヒトへの種間外挿の妥当性について、現時点では不明であるため、ACGIHを優先し区分2とした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系) 危険 H370: 臓器の障害(中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系) P308+P311: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質はヒトの狭心症の治療に使用されることがある (ACGIH (7th, 2003))。本物質は鼻腔刺激性がある (ACGIH (7th, 2003))。ヒトの中毒例では、室内防臭剤として使用された本物質の経口摂取で気管気管支炎、メトヘモグロビン血症を発症し死亡した事例がある。また、吸入ばく露では、肺水腫、気管気管支炎、メトヘモグロビン血症の報告がある (以上、ACGIH (7th, 2003)、NTP TR448 (1996)、HSDB (Access on June 2015))。 実験動物では、マウスの184 mg/kgの経口投与 (区分1に相当する用量) で、協調運動失調、伸筋剛性 (extensor rigidity)、攣縮、四肢蒼白、衰弱、呼吸困難、重度のメトヘモグロビン血症による無酸素症で死亡、本物質投与前にメチレンブルー投与により、死亡率が減少したとの報告、ラットの777 ppm (3.28 mg/L) 吸入ばく露 (区分1に相当する用量) で協調運動失調、伸筋剛性 (extensor rigidity)、攣縮、痙攣、四肢蒼白、衰弱、呼吸困難、チアノーゼ、重度のメトヘモグロビン血症による呼吸器不全、低血圧と血管拡張による心血管障害、マウスの175-1,000 ppm (0.74-4.22 mg/L) 吸入ばく露 (区分1に相当する用量) で自発運動量 (motor performance) の低下、マウスの900 ppm (3.80 mg/L) (区分1に相当する用量) で赤血球、ヘモグロビン減少、ヘマトクリット値低下で示される一過性の貧血の報告がある (ACGIH (7th, 2003)、NTP TR448 (1996)、HSDB (Access on June 2015))。 実験動物への本物質によるその他の影響として、血液細胞機能への影響、血液細胞破壊、脾臓細胞減少 (spleen cellularity)、T細胞反応性低下、免疫能力低下 (compromise of immunocompetence) の報告があり、本物質の急性毒性は、心血管系、造血系であるとの記載がある (ACGIH (7th, 2003))。 以上より、本物質は中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系に影響を及ぼすことから、区分1 (中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系) とした。 新たな情報を加え旧分類を見直した。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (免疫系)、区分2 (呼吸器、血液系) 危険
警告
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(免疫系)
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(呼吸器、血液系)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
実験動物では、ラットを用いた13週間吸入毒性試験において75 ppm (ガイダンス値換算: 0.23 mg/L) 以上でメトヘモグロビン血症、貧血、脾臓のヘモジデリン沈着、150 ppm (ガイダンス値換算: 0.46 mg/L) 以上で気管上皮の過形成、鼻粘膜の過形成、マウスを用いた13週間吸入毒性試験において75 ppm (ガイダンス値換算: 0.23 mg/L) 以上で細気管支上皮の過形成、脾臓の髄外造血、脾臓のヘモジデリン沈着、150 ppm (ガイダンス値換算: 0.46 mg/L) 以上でメトヘモグロビン血症、300 ppm (ガイダンス値換算: 0.98 mg/L) で貧血、鼻粘膜の過形成がみられた (NTP TR448 (1996))。マウスを用いた14日間吸入毒性試験において900 ppm (ガイダンス値換算: 0.078 mg/L) で白血球数減少、赤血球数増加、顆粒球単球コロニー形成細胞 (CFU-GM)の減少がみられ、白血球数減少、赤血球数増加はばく露終了後1週間以内に回復性が認められた。しかし顆粒球単球コロニー形成細胞の減少はばく露終了後1週間での回復性はみられていない (ACGIH (7th, 2003))。以上のように、ラット、マウスともメトヘモグロビン血症、貧血と関連した所見、呼吸器系に対する刺激性の所見が区分2の範囲でみられ、免疫系への影響が区分1の範囲でみられた。 したがって、区分1 (免疫系)、区分2 (呼吸器、血液系) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - - - データなし
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - データなし
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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