GHS分類結果

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一般情報

項目 情報
CAS番号 7783-96-2
名称 ヨウ化銀 (I)
物質ID H27-B-020/C-041B_P
分類実施年度 平成27年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 (危険物/有害物)  再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度  
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関連情報

項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) 職場のあんぜんサイト
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイト
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - -   爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - -   GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - -   エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - -   GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - -   GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - -   GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - -   不燃性である (GESTIS (Access on June2015))。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - -   分子内に爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - -   GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - -   不燃性である (GESTIS (Access on June2015))。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - -   不燃性である (GESTIS (Access on June2015))。
12 水反応可燃性化学品 区分外 - - -   水溶解度が測定されており、水と激しく反応しないと推定される。
  水溶解度:28E-07 g/L (25℃) (HSDB (Access on June2015))。
13 酸化性液体 分類対象外 - - -   GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない - - -   酸素を含まずハロゲン (I) を含む無機化合物であるがデータがなく分類できない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - -   無機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - -   固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性<

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 分類できない - - -   データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - -   データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - -   GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外 - - -   GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - -   データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - -   データ不足のため分類できない。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - -   データ不足のため分類できない。
4 呼吸器感作性 分類できない - - -   データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - -   データ不足のため分類できない。
  なお、日本産業衛生学会はヨウ素及びその化合物として、皮膚感作性第2群に分類されているが、注意書きとして全ての化合物が同定されているわけではないとしている (日本産業衛生学会許容濃度の勧告 (2015))。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - -   データ不足のため分類できない。
   なお、旧分類に記載のHSDBの情報は確認できなかった。
6 発がん性 分類できない - - -   本物質自体の発がん性に関する情報はない。
  しかしながら、特定標的臓器毒性 (反復暴露) の項に記述したように、本物質は吸入経路で吸収され、その毒性はヨウ素及びヨウ化物、銀化合物の毒性を反映すると考えられた。
  すなわち、発がん性の既存分類結果では、ACGIHはヨウ素、及びヨウ化物に対してはA4に分類した (ACGIH (7th, 2008)) が、銀、及び銀化合物に対しては発がん分類を付していない (ACGIH (2015))。
  よって、本項はヨウ素、ヨウ化物に対するACGIHの分類結果に基づき、分類できないとした。
7 生殖毒性 区分1B 追加区分:授乳に対する、又は授乳を介した影響

危険
H360
H362
P201
P202
P260
P263
P264
P270
P280
P308+P313
P405
P501
  本物質自体の生殖毒性に関する情報はない。
  しかしながら、特定標的臓器毒性 (反復暴露) の項に記述したように、本物質は吸入経路で吸収され、その毒性はヨウ素及びヨウ化物、銀化合物の毒性を反映すると考えられた。
  ヨウ化物の本項の分類に関して、ヨウ化カリウム (CAS番号: 7681-11-0) では区分1B、追加区分:授乳影響 とした。
  ただし、この分類の根拠データは概してヒトにおける経口経路での知見に基づいている。
  Willard, D.H. and Bar, W.J. (1961) の報告には、Ag131Iの経口投与での吸収実験はマウスでは実施しておらず、Na131IとAg131Iをヒツジ各1頭に対し強制経口投与後に甲状腺の131I取込み量は同程度 (131Iの投与量に対する甲状腺組織の最大取り込み率:NaI、AgI で各々56% (28時間後) 及び48% (34時間後)) であったとの結果が示されているだけで、ヨウ化銀の経口経路での吸収性は可溶性ヨウ化物と同様に良好であるとは言えない。
  しかし、本物質を吸入した場合には、吸収され血中でヨウ化物としてヨウ化カリウム経口投与に相当する毒性が発現すると想定されるため、ヨウ化カリウムの分類区分が本物質にも適用できると判断した。
  よって、本項は区分1Bとし、授乳影響を追加した。
   なお、銀化合物の生殖影響に関しては硝酸銀を妊娠サルの子宮内への直接注入により流産を生じた、或いは乳酸銀を妊娠ラットに腹腔内注射により新生児の脳内で銀が検出されたなどの知見はある (ATSDR (1990)、ACGIH (7th, 2001)) が、本項の分類に利用可能な知見はない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 分類できない - - -   本物質の複数人への大量ばく露の事故例があり、病的症状はみられなかったとの記載 (HSDB (Access on June 2015)) があるが、詳細情報はない。
  データ不足のため分類できない。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (皮膚、甲状腺、呼吸器、全身毒性)

危険
H372
P260
P264
P270
P314
P501
  本物質に関する情報としては、本物質を用いて人工降雨の作業を行った作業者において、手の着色が生じたが健康影響はみられていないとの報告 (HSDB (Access on June 2015)) のみである。
   しかし、ATSDR (2004) と CICAD 72 (2009) に本物質の吸入経路での吸収に関する知見の記述があり、原著 (Willard, D.H. and Bar, W.J.: Acta Radiologica, 55, 486-496 (1961)) を入手し詳細に検討した。
  その結果、マウスに131I-ヨウ化銀 (Ag131I) 粒子を吸入ばく露した体内動態試験で、同様にばく露した131I2 (ヨウ素) 蒸気と比べて、不溶性の本物質では総沈着率は約1/5の約12%と少ないが、本物質も迅速に吸収され全身 (複数の臓器) に分布することが示されており、体内負荷量ベースで比較した場合、甲状腺等臓器別の分布割合及び経時的推移に両者で大差はなかった (Willard, D.H. and Bar, W.J. (1961))。
  したがって、本物質も吸入経路で吸収され、その毒性はヨウ素及びヨウ化物、銀化合物の毒性を反映すると考えられる。
   銀化合物については、長期ばく露により銀沈着症を起こすとの記載がある (PATTY (6th, 2012)、ACGIH (7th, 2008)、 HSDB (Access on June 2015))。
  しかし、ヒトの健康への重大な影響を示唆するものではないと考えた。
  ヒトでは、ヨウ素及びヨウ化物については、ヨウ素は甲状腺の機能低下あるいは機能亢進を引き起こし (ACGIH (2008))、ヨウ化カリウムでは、ヨウ素中毒としてヨウ素疹や甲状腺の病変のほかに、喉頭炎、気管支炎、声門浮腫、喘息発作、唾液腺浮腫、耳下腺炎、胃炎、ヨウ素悪液質として、全身衰弱、心悸亢進、抑うつ、不眠、神経過敏などが記載されている (医療用医薬品集 2016)。
  以上のように、皮膚、甲状腺、呼吸器のほか標的臓器の特定が困難な諸症状がみられた。
   したがって、区分1 (皮膚、甲状腺、呼吸器、全身毒性) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - -   データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性

危険有害性項目 分類結果 危険有害性絵表示
(コード: シンボル)
注意喚起語
コード
(危険有害性情報)
コード
(安全対策注意書き)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - -   データなし
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - -   データなし
12 オゾン層への有害性 分類できない - - -   データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
* 「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」のコードにマウスカーソルに重ねると、「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が表示されます。
  また、Excel fileでは、コードと共に「危険有害性情報」及び「安全対策注意書き」が記載されてあります。
* 「分類結果」の欄が空欄、又は『 - 』となっている「危険有害性項目」は、分類が実施されていないため、前回に実施した分類結果が最新の情報となります。
* 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。
  ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
* 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。
  他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

更新履歴:
  2017/2/23 分類情報の修正:生殖毒性 (正誤表 (Excel file))
  2016/6/8 公表

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