名称:アスファルト (ストレートアスファルト)
CAS番号:8052-42-4
物質ID: | H27-A-018/C-018A_P |
分類実施者: | 厚生労働省/環境省 |
分類実施年度: | 平成27年度 |
使用マニュアル: | 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1)) |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 爆発物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいないと推察される。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 | - | - | - | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
6 | 引火性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
7 | 可燃性固体 | 分類できない | - | - | - | - | 可燃性を有するが、データがなく分類できない。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいないと推察される。 |
9 | 自然発火性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
10 | 自然発火性固体 | 区分外 | - | - | - | - | 発火点が485℃ (GESTIS (Access on June 2015)) であり常温で発火しないと考えられる。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない | - | - | - | - | 融点が140℃以下の固体に適した試験方法が確立していない。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分外 | - | - | - | - | 水溶解度が測定されており、水と激しく反応しないと推定される。水溶解度:不溶 (ACGIH (7th, 2001)) |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
14 | 酸化性固体 | 分類できない | - | - | - | - | 酸素を含む有機化合物で、酸素に炭素、水素以外の元素と化学結合していないと推察されるが、データがなく分類できない。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない | - | - | - | - | 固体状の物質に適した試験法が確立されていない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 急性毒性(経口) | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。なお、ヒトの職業ばく露の報告で、皮膚刺激性がみられたとの記載や (DFGOT vol.17 (2002))、熱した本物質による熱傷の報告が複数ある (CICAD 59 (2005)、DFGOT vol.17 (2002)) が反復ばく露による影響であるため分類に用いなかった。 |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2 | 警告 | H319: 強い眼刺激 |
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。 P264: 取扱い後は...よく洗うこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 |
職業ばく露において、本物質の蒸気による結膜炎の報告や、眼刺激性が複数報告されていることから区分2とした (CICAD 59 (2005)、DFGOT vol.17 (2002))。本物質の蒸気をウサギに複数回ばく露した結果、回復性の結膜炎がみられたが回復性であったとの記載がある (CICAD 59 (2005)、ACGIH (7th, 2001))。 | |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
4 | 皮膚感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分2 | 警告 | H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い |
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。 P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
In vivoでは、アスファルトヒューム凝縮液を用いたラット骨髄の気管内注入小核試験で陽性、アスファルトヒューム又はアスファルトヒューム凝縮液を用いたラット骨髄、末梢血の吸入小核試験で陰性 (以上、IARC 103 (2013))、ラット及びマウスのトランスジェニック動物を用いた鼻部吸入ばく露による遺伝子突然変異試験で陰性 (IARC 103 (2013)、CICAD 59 (2005))、アスファルトヒューム、アスファルトヒューム凝縮液又はアスファルトペイントを用いた、ラット又はマウスの気管内注入、鼻部吸入ばく露又は経皮適用によるDNA損傷試験 (DNAアダクト形成など) で陽性、陰性 (IARC 103 (2013)、CICAD 59 (2005)、DFGOT vol. 17 (2002)) の報告がある。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陽性、陰性の結果 (IARC 103 (2013)、ACGIH (7th, 2001)、CICAD 59 (2005)、DFGOT vol. 17 (2002))、哺乳類培養細胞の小核試験、染色体異常試験、DNA損傷試験で、陽性、陰性の結果が報告されている (IARC 103 (2013)、ACGIH (7th, 2001)、CICAD 59 (2005)、DFGOT vol. 17 (2002))。以上より、陰性のデータもあるが、in vivo体細胞変異原性試験の陽性結果が存在すること、in vivo体細胞遺伝毒性試験の陽性結果が存在すること、並びに、in vitro変異原性試験の陽性結果があること、さらに、本物質は変異原性があるとの記載 (ACGIH (7th, 2001)) を総合的に考慮し、区分2とした。 | |
6 | 発がん性 | 区分2 | 警告 | H351: 発がんのおそれの疑い |
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。 P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
IARCの作業グループはアスファルトへの職業ばく露による発がん性に関して、利用可能な情報を総括し、最も大規模、かつ、アスファルトへのばく露レベルと交絡因子による解析評価が詳細であると考えられたIARC主導の多施設コホート研究を中心に発がん性評価を行った (IARC vol. 103 (2013))。その結果、道路舗装作業者が作業中にばく露される可能性のあるストレイト・アスファルト (本物質、IARC評価では「クラス1」相当物質) では、ばく露と発がん性との相関は示されず、発がん性の証拠は不十分であるとされた。 一方、実験動物ではマウス、ラット、ハムスター等を用いた経皮適用、皮下又は筋肉内注射、及び吸入ばく露による多数の試験結果があるが、信頼性のある結果は少なく、本物質単独でなく、本物質と酸化処理したアスファルト (後述の酸化アスファルト) を両方含む”プールサンプル”の発がん性試験 (主に経皮経路) で、発がん性の限定的な証拠があり、結論として、道路舗装作業中に本物質、及び本物質ヒュームへの職業ばく露によるヒト発がん性をグループ2Bに分類した (IARC vol. 103 (2013))。この他、発がん性の既存分類結果としては、アスファルトヒューム (コールタールフリー) に対して、ACGIHはA4に分類している (ACGIH (7th, 2001))。以上、IARCによる最新の分類結果に基づき、本項は「区分2」とした。 なお、本物質を200-300℃に加熱し、空気を吹き込むことにより製造した酸化アスファルト (ブローンアスファルト (CAS No. : 64742-94-3)、IARC評価では「クラス2」相当物質) を扱う屋根職人を対象とした疫学研究の相関性解析では、ばく露と肺がん及び上気道・上部消化管のがん (口腔がん、喉・咽頭がん、食道がん) の発生に正の相関がみられ、職業ばく露による発がんの限定的な証拠があるとされ、屋根の防水作業による酸化アスファルト、及びそのヒュームへの職業ばく露に対しては、ヒト発がん性分類はグループ2Aとしている (IARC vol. 103 (2013))。 | |
7 | 生殖毒性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分3 (気道刺激性) | 警告 | H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性) |
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
アスファルトヒュームは気道刺激性がある (ACGIH (7th, 2001)、CICAD 59 (2005)) ことから、区分3 (気道刺激性) とした。 | |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1 (呼吸器系) | 危険 | H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器系) |
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P264: 取扱い後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ヒトにおいて、ヒュームの吸入経路で鼻炎、口咽頭炎、喉頭炎、気管支炎、ヒュームの経皮暴露では皮膚炎、?瘡 (にきび) 様の病変、軽度角化症が報告されている (ACGIG (7th, 2001)、DFGOT vol. 17 (2002))。 なお、実験動物において、マウスを用いた吸入毒性試験において呼吸器に影響がみられている (ACGIG 7th (2001)、DFGOT vol. 17 (2002))。しかし、ばく露濃度の記載がなく、分類に用いることはできない。また、マウスを用いた82週間の経皮投与毒性試験において、2.5 mgを適用した例で表皮の過形成、真皮の炎症性浸潤・小膿瘍を伴う潰瘍、脾臓及び肝臓のアミロイド症の報告がある (ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 17 (2002))。しかし、1用量のみの試験であり、また、適用頻度が2回/週であったことから分類に用いることはできないと判断した。 ヒトにおいて呼吸器系に影響がみられていることから区分1 (呼吸器系) とした。 | |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない | - | - | - | - | アスファルトは炭化水素化合物以外に、元素分析により微量ないし僅かに硫黄、酸素、窒素、金属バナジウムなどを含む (IARC vol. 103 (2013)) との記述より、純粋な炭化水素の混合物でないこと、並びにヒトで吸引性呼吸器有害性を示したとの事例がないことから、デ-タ不足のため「分類できない」とした。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 分類できない | - | - | - | - | データなし |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 分類できない | - | - | - | - | データなし |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし |
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