GHS分類結果

名称:ベンズアルデヒド
CAS番号:100-52-7

結果:
物質ID: H27-B-16-METI/M-029B_P
分類実施者: 経済産業省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分4 - 警告 H227: 可燃性液体 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点 63℃ (closed cup) (ICSC (2006)) に基づき区分4とした。なお、国連危険物輸送勧告では、「その他の危険物」 クラス9 容器等級V (国連番号1990) であり、容器・輸送単位等の規制はあるが、GHS区分と危険物輸送が重なる危険有害性は認められていない。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団及び自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が192℃ (ICSC (2006)) であり、常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値として、1,292 mg/kg (雌) (DFGOT vol. 17 (2002))、1,300 mg/kg (雄、雌) (3件) (環境省リスク評価第12巻 (2014)、DFGOT vol. 17 (2002)、SIDS (2002)、NTP TR378 (1990)、JECFA FAO Nutrition Meetings Report Series 44a (1967))、1,502 mg/kg (雄)、2,279 mg/kg (雄)、2,400 mg/kg、2,850 mg/kg (DFGOT vol. 17 (2002))、1,300〜2,850 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008)) との9件の報告がある。5件が区分4に、3件が区分外 (国連分類基準の区分5) に該当するので、最も多くのデータが該当する区分4とした。なお、1件は複数データを取りまとめた値であるので、分類には採用しなかった。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、ウサギのLD50値として、> 1,250 mg/kg (環境省リスク評価第12巻 (2014)、NITE初期リスク評価書 (2008)、DFGOT vol. 17 (2002)、SIDS (2002)、NTP TR378 (1990)) との報告があるが、このデータのみでは区分を特定できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - 本物質にばく露されたヒトでそう痒、熱傷、充血がみられたが、本物質を除去すると回復したとの報告 (DFGOT vol. 17 (2002)) がある。また、本物質 (4%) をボランティアに48時間閉塞適用した結果、刺激性はみられなかったとの報告がある (DFGOT vol. 17 (2002))。動物試験においては、モルモットを用いた試験 において、本物質適用による刺激性はみられなかったとの報告がある (DFGOT vol. 17 (2002))。以上より区分外 (国連分類基準の区分3) とした。なお、再分類では、ガイダンス又は情報源の見直しにより、区分を変更した。また、ウサギを用いた皮膚刺激性試験2報において、本物質を24時間適用した結果、中等度の刺激性がみられたとの報告があるが (NITE初期リスク評価書 (2008))、24時間適用の試験のため分類には用いなかった。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ウサギを用いた眼刺激性試験において、本物質を適用した結果、中等度の刺激性がみられたとの報告 (NITE初期リスク評価書 (2008)) や、眼への刺激や、眼瞼痙攣、流涙、結膜の充血がみられたとの報告がある (DFGOT vol. 17 (2002))。また、ウサギを用いた別の眼刺激性試験において、軽度の刺激性がみられたとの報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008)、DFGOT vol. 17 (2002))。また、本物質にばく露されたボランティアにおける眼刺激性の報告 (NITE初期リスク評価書 (2008)) がある。以上、動物試験において中等度の刺激性が報告されていることから、区分2Aとした。なお、再分類では、ガイダンス又は情報源の見直しにより、区分を変更した。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - モルモットを用いたマキシマイゼーション試験において、本物質による感作性はみられなかったとの報告や (NITE初期リスク評価書 (2008)、SIDS (2002))、モルモットを用いたOpen epicutaneous試験において陰性の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008))。一方で、マキシマイゼーション試験において陽性の報告が1報ある (NITE初期リスク評価書 (2008))。ヒトにおいては、ボランティア100人にパッチテストを行った結果10人に陽性反応がみられたとの報告や (NITE初期リスク評価書 (2008)、NTP TR378 (1990)、SIDS (2002)、DFGOT vol. 17 (2002))、ボランティア25人に対するパッチテストで感作性はみられなかったとの報告がある (NTP TR378 (1990)、SIDS (2002)、DFGOT vol. 17 (2002))。DFGOTは、本物質は一般的に広く使用されており、数例の感作性の報告のみから感作性を持つとの判断は出来ないと述べている (DFGOT vol. 17 (2002))。以上より、本項は分類できないとした。DFGOTの記載をもとに区分を変更した。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。すなわち、in vivoデータはなく、in vitroでは細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験で陽性、染色体異常試験で陰性、陽性の結果がある (NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第12巻 (2014)、DFGOT vol. 17 (2002)、SIDS (2002)、NTP TR378 (1990))。
6 発がん性 分類できない - - - - ヒトの発がん性に関する情報はない。実験動物ではラット又はマウスに2年間強制経口投与した発がん性試験において、ラットでは雌雄ともに400 mg/kg/dayまでの投与量で腫瘍発生の増加はみられなかったが、マウスでは雄の400 mg/kg/day、雌の300及び600 mg/kg/dayで前胃の扁平上皮乳頭腫の頻度に軽度増加がみられた。これらの群では前胃に過形成も認められており、被験物質投与による腫瘍発生とされた (NTP TR 378 (1990)、NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第12巻 (2014)、DFGOT vol. 17 (2002)、SIDS (2002))。この試験結果に対し、NTPは雌雄ラットには発がん性の証拠なし、雌雄マウスにはある程度発がん性の証拠があると結論した (NTP TR 378 (1990)、NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第12巻 (2014))。一方、DFGOTはマウスの前胃の扁平上皮乳頭腫は恐らく本物質の刺激作用によるもので、種特異的な部位での腫瘍であることからも、ヒトには当てはまらないとし、本物質はラット、マウスのいずれにも発がん性を示す証拠はないと結論した (DFGOT vol. 17 (2002))。 以上、マウスの前胃における腫瘍発生がヒトにおける発がん性の証拠となり得るかどうかは現時点では不明であり、国際機関による分類結果もない。よって、データ不足のため分類できない。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、雌ラットに本物質を 5 mg/kgの用量で1日おきに交配期間を含めて32週間経口投与後に無処置雄と交配したが、妊娠動物数、出産児の数、生後の体重、生存率に本物質投与による影響はみられなかったとする詳細不明の報告がある (NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第12巻 (2014)、SIDS (2002))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分2 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) 警告 H371: 臓器の障害のおそれ(中枢神経系)
H336: 眠気又はめまいのおそれ(気道刺激性、麻酔作用)
H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性、麻酔作用)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P308+P311: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質はヒトに気道刺激性があり、吸入ばく露、経口摂取で咽頭痛の報告 (NITE初期リスク評価書 (2008)、DFGOT vol. 17 (2002)、HSDB (Access on November 2015)、環境省リスク評価第12巻 (2014)) のほか、麻酔作用の報告 (DFGOT vol. 17 (2002)、HSDB (Access on November 2015)) がある。 実験動物では、ラットの経口投与 (1,000〜2,850 mg/kg、区分2相当) で麻酔作用、昏睡、鎮静、振戦、後肢麻痺が認められている (DFGOT vol. 17 (2002))。 以上より、本物質は中枢神経系影響のほか、気道刺激性、麻酔作用があり、区分2 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性、麻酔作用) とした。なお、再分類では、旧分類のSIDSの所見は確認できなかった。また、情報源の見直しを行った。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2 (中枢神経系、血液系、肝臓、呼吸器 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(中枢神経系、血液系、肝臓、呼吸器 P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトに関するデータはない。 実験動物では、ラットを用いた14日間吸入毒性試験において、区分2の範囲である1,000 ppm (ガイダンス値換算:0.68 mg/L) 区分で、異常歩行、けいれん、挙尾など中枢神経系障害、赤血球、ヘモグロビン及びヘマトクリット値の減少、肝臓の絶対及び相対重量増加、血清中AST濃度増加がみられ、また、モルモットを用いた4週間吸入毒性試験において、区分2の範囲である500 ppm (ガイダンス値換算:0.48 mg/L) で気道上皮の化生/過形成がみられている (NITE初期リスク評価書 (2008))。 したがって、区分2 (中枢神経系、血液系、肝臓、呼吸器) とした。 なお、旧分類ではヒトにおいて「少量では沈うつが、大量では痙攣がみられる」との記載があったが、これは急性影響に関する記載と考えられる。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、HSDB (Access on November 2015) に収載された数値データ (粘性率: 1.321 m・Pas (25 ℃)、密度 (比重) : 1.050 (15 ℃)) より、動粘性率は1.258 mm2/sec (25/15 ℃) と算出される。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(ブルーギル)96時間LC50 = 1.07 mg/L(SIDS, 2002、ECETOC TR91, 2003、NITE初期リスク評価書, 2008、環境省リスク評価第12巻, 2014)であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分3 - - H412: 長期継続的影響によって水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性があり(14日間でのBOD分解度=66%、TOC分解度=98%、HPLC分解度=100%(通産省公報, 1980))、魚類(ファットヘッドミノー)の7日間NOEC (致死、成長) = 0.22 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2008)であることから、区分3となる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、甲殻類(オオミジンコ)の48時間EC50 = 50 mg/L(環境省リスク評価第12巻, 2014)であるが、急速分解性があり、生物蓄積性が低いと推定される(log Kow= 1.48(PHYSPROP Database, 2009)ことから、区分外となる。 以上の結果を比較し、区分3とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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