GHS分類結果

名称:キノリン
CAS番号:91-22-5

結果:
物質ID: H27-B-05-METI/M-026B_P
分類実施者: 経済産業省/環境省
分類実施年度: 平成27年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版(Ver.1.1))

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分外 - - - - 引火点が99℃ (closed cup) (HSDB (Access on November 2015))、101℃ (closed cup) (ICSC (2008)) という情報に基づき区分外とした。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団及び自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が480℃ (HSDB (Access on November 2015)) であり、常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属及び半金属 (B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素及び塩素を含まない有機化合物である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値として、331 mg/kg (環境省リスク評価第11巻 (2013)) 及び331〜460 mg/kg (PATTY (6th, 2012)) との報告に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分3 危険 H311: 皮膚に接触すると有毒 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P364: そして再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギのLD50値として、0.54mL/kg (593 mg/kg) との報告 (環境省リスク評価第11巻 (2013)、PATTY (6th, 2012)) に基づき、区分3とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P362+P364: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
本物質は皮膚を刺激する (環境省リスク評価第11巻 (2013)、HSDB (Access on October 2015)) との記載や、ウサギの皮膚へのばく露は中程度から重度の刺激性がある (PATTY (6th, 2012)) との記載がある。以上より、区分2とした。なお、本物質はEU CLP分類において「Skin. Irrit. 2 H315」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
本物質のウサギの眼へのばく露は、中程度から重度の刺激性がある (PATTY (6th, 2012)) との記載がある。また、本物質は眼を刺激する (環境省リスク評価第11巻 (2013)) との記載や、ヒトの眼に対して非可逆的な眼傷害を引き起こす可能性がある (HSDB (Access on October 2015)) との記載がある。以上より、区分2Aとした。なお、本物質はEU CLP分類において「Eye. Irrit. 2 H319」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
In vivoでは、lac Z トランスジェニックマウス遺伝子突然変異試験で肝臓のみで陽性であるが、骨髄、精巣、肺、腎臓、脾臓では陰性、ラット骨髄細胞小核試験で陽性、陰性の結果、ラット肝臓小核試験で陰性、マウス骨髄細胞小核試験で陽性、マウス肝臓小核試験で陰性、ラット肝臓染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陽性、マウス骨髄染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陰性、ラット肝臓不定期DNA合成試験であいまいな結果 (equivocal) であった (IRIS Summary (2001)、環境省リスク評価第11巻 (2013)、PATTY (6th, 2012)、NTP DB (Access on November 2015))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、マウスリンフォーマ試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験でいずれも陽性である (IRIS Summary (2001)、環境省リスク評価第11巻 (2013)、PATTY (6th, 2012)、NTP DB (Access on November 2015))。以上より、in vivo体細胞変異原性試験で陽性、in vivo生殖細胞変異原性試験で陰性であることから、区分2とした。
6 発がん性 区分1B 危険 H350: 発がんのおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトの発がん性に関して利用可能な疫学データはない。実験動物ではラット、又はマウスに2年間飲水投与した発がん性試験において、ラットでは200 ppm以上の雌雄で用量依存的な肝臓腫瘍 (肝細胞腺腫、肝細胞がん、血管肉腫) の頻度増加、400 ppm以上の雄で鼻腔の神経上皮腫の頻度の軽度増加がみられ、マウスでは150 ppm以上の雌雄で皮下組織等の血管腫、又は後腹膜、腸間膜、肝臓、皮下組織等の血管肉腫の頻度増加がみられ、特に血管肉腫は雌雄とも殆どの動物で認められた (環境省リスク評価第11巻 (2013)、厚生労働省委託がん原性試験結果 (1999))。また、雄ラットに40週間、又は30週間、各々500 ppm以上、又は750 ppmを混餌投与した2件の発がん性試験、及び雌雄ラット、雌雄マウスに30週間、 200 ppmを混餌投与した試験のいずれにおいても、肝臓腫瘍 (肝臓結節、血管肉腫、肝細胞がんなど) の頻度増加がみられている (環境省リスク評価第11巻 (2013)、IRIS Summary (2001))。EPAは混餌投与の実験動物データを基に、本物質の発がん分類は1986年クライテリアで「B2 (probable human carcinogen) 」 に、1996年クライテリアで「L (likely to be carcinogenic in humans) 」 に該当する (IRIS Summary (2001)) とし、同様にEUはCLP分類で 「Carc. 1B」 に分類している (ECHA CL Inventory (Access on November 2015))。 以上より、分類ガイダンスに従い、本項は区分1Bとした。 旧分類の区分を変更した。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (神経系)、区分3 (気道刺激性) 警告
危険
H370: 臓器の障害(神経系)
H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P308+P311: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱い後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は刺激性があり、ヒトの吸入ばく露により咳や咽頭痛、経口摂取でも咽頭痛 (環境省リスク評価第11巻 (2013))、悪心、発熱、嘔吐、胃腸管痙攣、眩暈、不規則頻脈 (PATTY (6th, 2012)、HSDB (Access on November 2015))、呼吸筋麻痺による呼吸困難 (HSDB (Access on November 2015)) の報告がある。 実験動物では、経口投与 (詳細不明) で、無気力、呼吸阻害、衰弱、昏睡 (PATTY (6th, 2012)、HSDB (Access on November 2015)) や、キノリン及びその誘導体の多くは、網膜や視神経に対して毒性を示すとの記載 (HSDB (Access on November 2015)) があるが詳細は不明である。 以上より、本物質は気道刺激性があること、呼吸筋麻痺や呼吸阻害がみられることから神経系への影響があり、区分 1 (神経系)、区分3 (気道刺激性) とした。 旧分類で記載されたList 3の情報源は採用しなかった。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2 (肝臓) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(肝臓) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトに関する情報はない。 ラットを用いた40週間混餌投与毒性試験において、区分2の範囲内である0.05% (25 mg/kg/day 相当) で体重増加の抑制、肝臓相対重量の増加、肝臓の軽度から中程度の卵円形細胞浸潤、胆管増生、脂肪変性がみられている (環境省リスク評価第11巻 (2013)、IRIS Tox. Review (2001))。 以上のように、実験動物に関して区分2の範囲で肝臓に影響がみられた。 なお、旧分類でPATTY (5th, 2001に、ラットの肝臓に影響 (肝臓の血管腫瘍、肝重量増加、胆管増生) を与えることが報告されているとの記載があるが、PATTY (6th, 2012) では該当する記載は見当たらなかった。また、ヒトに関しては、ヒトで網膜、視神経に有害な報告があるとの記載があった (HSDB (Access on November 2015))。この結果の元文献はPATTY (3th, 1981-1982) であるが、現在、PATTY (6th, 2012) では該当する記載は見当たらないことから、分類根拠としなかった。 したがって、区分2 (肝臓) とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。なお、HSDB (Access on November 2015) に収載された数値データ (粘性率: 2.997 mPa・s (30 ℃)、密度 (比重) : 1.09 (25 ℃)) より、動粘性率は2.75 mm2/sec (30/25 ℃) と算出される。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(ファットヘッドミノー)96時間LC50 = 0.44 mg/L(環境省リスク評価第11巻, 2013)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく(難分解性、14日間でのBOD分解度=0.2%、TOC分解度=1.7%、GC分解度=5.2%、UV-VIS分解度=2.4%(通産省公報, 1978))、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC = 0.8 mg/L(ECETOC TR91, 2003、環境省リスク評価第11巻, 2013)であることから、区分2となる。 慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、急速分解性がなく、魚類(ファットヘッドミノー)の96時間LC50 = 0.44 mg/L(環境省リスク評価第11巻, 2013)であることから、区分1となる。 以上の結果を比較し、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - データなし


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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