項目 | 情報 |
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CAS登録番号 | 1333-82-0 |
名称 | 無水クロム酸 (再分類) |
物質ID | H26-B-138, R-084 |
分類実施年度 | 平成26年度 |
分類実施者 | 厚生労働省/環境省 |
新規/再分類 | 再分類・見直し |
他年度における分類結果 | 平成18年度 |
Excelファイルのダウンロード | Excel file |
項目 | 情報 |
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分類に使用したガイダンス(外部リンク) | 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版) |
国連GHS文書(外部リンク) | 国連GHS文書 |
解説・用語集(Excelファイル) | 解説・用語集 |
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) | 職場のあんぜんサイトへ |
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) | 職場のあんぜんサイトへ |
OECD/eChemPortal(外部リンク) | eChemPortal |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 爆発物 | 分類対象外 |
- |
- | - | 爆発性に関連する原子団を含んでいない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 |
- |
- | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
6 | 引火性液体 | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
7 | 可燃性固体 | 区分外 |
- |
- | - | 不燃性である (ICSC (2013))。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 |
- |
- | - | 国連分類UN1463 クラス5.1 副次6.1、8 PGIIであり、酸化性固体に分類されている。 |
9 | 自然発火性液体 | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
10 | 自然発火性固体 | 区分外 |
- |
- | - | 不燃性である (ICSC (2013))。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 区分外 |
- |
- | - | 不燃性である (ICSC (2013))。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分外 |
- |
- | - | 水溶解度1,654 g/L (20℃) (GESTIS (Access on December 2014)) というデータが得られており、引火性ガスを発生する観察結果はなかったとみられる。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
14 | 酸化性固体 | 区分2 |
危険 |
H272 | P370+P378 P210 P220 P221 P280 P501 |
国連分類UN1463 クラス5.1 副次6.1、8 PGIIであることから区分2とした。なお、容器等級はⅠ、一般的には容器等級Ⅱとされているとの記載がある (危険物輸送に関する勧告 試験方法及び判定基準のマニュアル (2009))。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 |
- |
- | - | 無機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない |
- |
- | - | 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 急性毒性(経口) | 区分3 |
危険 |
H301 | P301+P310 P361+P364 P264 P270 P321 P330 P405 P501 |
ラットのLD50値として、52-113 mg/kgとの報告 (EU-RAR (2005)) に基づき、区分3とした。新たな情報源 (EU-RAR (2005)) を追加し、区分を見直した。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分2 |
危険 |
H310 | P302+P352 P262 P264 P270 P280 P310 P321 P361 P364 P405 P501 |
ウサギのLD50値として、30 mg Cr (VI) /kg (CrO3換算値:57.7 mg/kg) との報告 (CICAD 78 (2013)、ATSDR (2012)) に基づき、区分2とした。新たな情報源 (CICAD 78 (2013)、ATSDR (2012)) を追加し、区分を見直した。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類対象外 |
- |
- | - | GHSの定義における固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 区分2 |
危険 |
H330 | P304+P340 P403+P233 P260 P271 P284 P310 P320 P405 P501 |
ラットのLC50値 (4時間) として、217 mg/m3 (0.217 mg/L) との報告 (EU-RAR (2005)) に基づき、区分2とした。飽和蒸気圧のデータがないが、エアロゾルとの記載に従い、粉じんの基準値を採用した。新たな情報源 (EU-RAR (2005)) を追加し区分を見直した。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分1 |
危険 |
H314 | P301+P330+P331 P303+P361+P353 P305+P351+P338 P304+P340 P260 P264 P280 P310 P321 P363 P405 P501 |
本物質は腐食作用を持つとの記載 (EU-RAR (2005)、ATSDR (2012)、産業衛生学会 許容濃度の提案理由書 (1989)) がある。また6価のクロム化合物について、腐食性を持つとの記載が多くある (DFG vol. 3 (1992))。以上から区分1とした 。なお、本物質はEU DSD分類で「C; R35」、EU CLP分類で「Skin Corr. 1A H314」に分類されている。 |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分1 |
危険 |
H318 | P305+P351+P338 P280 P310 |
ヒトの事故例で、本物質の眼へのばく露の結果、結膜の充血、壊死、角膜浮腫や角膜混濁がみられたとの報告がある (EU-RAER (2005))。また、本物質は皮膚腐食性/刺激性の分類で区分1とされている。以上より区分1と判断した。 |
4 | 呼吸器感作性 | 区分1 |
危険 |
H334 | P304+P340 P342+P311 P261 P284 P501 |
日本産業衛生学会はクロム化合物として気道感作性物質「第2群」に分類している。この既存分類は本物質を明示していないものの、許容濃度の提案理由書 (1989) には、6価のクロム化合物は2価や3価のものより毒性が強いとの記載がある。また、クロム化合物は喘息を引き起こすとの記載がある (ATSDR (2012)、EU-RAR (2005))。以上から区分1とした。なお、本物質はEU DSD分類で「R42」、EU CLP分類で「Resp. Sens. 1 H334」に分類されている。 |
4 | 皮膚感作性 | 区分1 |
警告 |
H317 | P302+P352 P333+P313 P362+P364 P261 P272 P280 P321 P501 |
本物質に限定された情報ではないが、6価のクロム化合物について皮膚感作性をもつとの記載がある (EU-RAR (2005)、ATSDR (2012)、PATTY (6th,2012))。また、6価のクロム化合物を用いたヒトに対するパッチテストにおいて、感作性がみられたとの報告がある (ATSDR (2012))。また、本物質を含むクロム化合物は、日本産業衛生学会で皮膚感作性物質「第1群」に分類されている (日本産業衛生学会許容濃度の勧告 (2014))。この既存分類は本物質を明示していないものの、許容濃度の提案理由書 (1989) には、6価のクロム化合物は2価や3価のものより毒性が強いとの記載がある。以上から区分1とした。なお、本物質はEU DSD分類で「R43」、EU CLP分類で「Skin Sens. 1 H317」に分類されている。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分1B |
危険 |
H340 | P308+P313 P201 P202 P280 P405 P501 |
In vivoでは、マウス骨髄細胞の染色体異常試験で陽性 (CICAD 78 (2013)、ATSDR (2012))、ヒトの末梢リンパ球を用いた染色体分析 (モニタリング解析)、姉妹染色分体交換分析 (モニタリング解析) で陽性である (ATSDR (2012)、EHC 61 (1988)、IARC 49 (1990))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、ヒト培養リンパ球及び哺乳類培養細胞の染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陽性である (ATSDR (2012)、IARC 49 (1990))。本物質に関するin vivo生殖細胞変異原性、in vivo生殖細胞遺伝毒性のデータはないが、水溶性Cr (VI) はin vivo生殖細胞変異原性を有する (EU-RAR (2005)) との評価がされている。したがって、水溶性Cr (VI) である本物質にEU-RAR (2005) の評価を適用し、区分1Bとした。 旧分類では区分2としていたが、上述のような理由により区分を変更した。 |
6 | 発がん性 | 区分1A |
危険 |
H350 | P308+P313 P201 P202 P280 P405 P501 |
IARCでグループ1 (クロム (VI) として) (IARC (1990))、ACGIHでA1 (クロムVI化合物として) (ACGIH (7th, 2001))、NTPでK (6価クロム化合物として) (NTP RoC (2014))、日本産業衛生学会で1 (クロム化合物 (6価) として) (日本産業衛生学会 (1989))、EUで1 (EU (Access on Dec. 2014)) であることから、区分1Aとした。 |
7 | 生殖毒性 | 区分1B |
危険 |
H360 | P308+P313 P201 P202 P280 P405 P501 |
本物質については、ハムスターを用いた静脈内投与での催奇形性試験において、口蓋裂がみられている (EHC 61 (1988)、IARC 49 (1990))。静脈内投与のデータであることから採用しなかった。 クロム (VI) の生殖毒性については、本物質と同様に水溶性であるニクロム酸カリウム (CAS:7778-50-9)、クロム酸カリウム (CAS:7789-00-6) では区分1Bに分類される。したがって、本物質についても区分1Bとした。 このほか、産業衛生学会では許容濃度の勧告 (2014) において、クロムおよびクロム化合物を生殖毒性第3群 (暫定) (区分2相当) に分類している。しかし、許容濃度の勧告の分類は暫定期間中であるので採用しなかった。 また、EU CLP分類では「Repr. 2 H361f」、EU DSD分類では「Repr. Cat. 3; R62」に分類されている。 |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1 (中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系、肝臓、腎臓) |
危険 |
H370 | P308+P311 P260 P264 P270 P321 P405 P501 |
本物質は気道刺激性がある (ACGIH (7th, 2001))。ヒトの吸入経路では、クロムめっき作業での本物質フューム (高濃度) へのばく露で、鼻粘膜の重度の充血、頭痛、悪心、嘔吐、咳、喘鳴、めまい、努力呼吸、呼吸減弱、呼吸困難、腹痛、また、本物質ミストのばく露で、気道の炎症、鼻及び胸の痛み、呼吸困難、チアノーゼ、急性胃炎、激しい出血を伴う貧血、蛋白尿、血尿、無尿による急性腎不全、黄疸、ビリルビン量増加、血清乳酸脱水素酵素増加の肝臓障害が報告されている。ヒトの経口摂取による事故例では、口、喉、胃の痛み、灼熱感、出血、嘔吐、下痢など腐食性による障害が報告されている (ATSDR (2012)、EU-RAR (2005))。 実験動物では、本物質としてのデータはラットの吸入ばく露 (0.217 mg/L、4時間) での気道組織の重篤な損傷の報告のみである (EU-RAR (2005)、SIAP (2005))。このデータは区分1に相当する用量範囲であった。また、6価クロム化合物共通として、経口投与で血液系への影響、経皮ばく露で腎障害、経路不明ながら肝細胞および腎近位尿細管上皮細胞の壊死、肝臓や腎臓の損傷の記述がある (ATSDR (2012)、EU-RAR (2005)、SIAP (2005))。 なお、本物質のデータではないが、6価クロム化合物に共通する影響として、吸入経路では実験動物で肺の刺激性、肺のマクロファージ蓄積、過形成、炎症、肺機能障害など呼吸器系への重篤な影響、経口経路ではヒトで消化管潰瘍、壊死など重篤な胃腸障害、多量摂取で呼吸器、心血管、消化器、血液、肝臓、腎臓、神経学的な重度の影響があるとの記述がある (ATSDR (2012)、CICAD 78 (2013))。 本物質は6価クロム化合物であり、6価クロム化合物の毒性知見を本物質の分類に使用することが可能と考えられる。消化管の所見については、局所刺激の影響として採用しなかった。 以上より、区分1 (中枢神経系、呼吸器、心血管系、血液系、肝臓、腎臓) とした。 旧分類から区分を変更した。 |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1 (呼吸器) |
危険 |
H372 | P260 P264 P270 P314 P501 |
本物質に0.2-23.6年間 (中央値: 2.5年間) ばく露された塗装工43名の疫学調査で、0.002 mg Cr (VI)/m3 以下の低濃度ばく露群では鼻中隔粘膜の汚染、硬化、及び鼻粘膜の萎縮がみられたのみであったが、0.02-0.046 mg Cr (VI)/m3 の高濃度ばく露群では鼻腔粘膜の潰瘍、並びに鼻中隔穿孔がみられた (ATSDR (2013)、EU-RAR (2005)) との報告がある。また、本物質、0.1 mg/m3以上の濃度の反復ばく露により鼻粘膜傷害が生じるとされ、さらに2-3 mg Cr/m3以上の高濃度ばく露では咳、胸痛、呼吸困難、口唇のチアノーゼ、肺のうっ血を生じる (DFGOT vol. 3 (1992)) との報告もある。なお、本物質を含む一連の6価クロム化合物の有害性評価において、職業的に6価クロムにばく露されたヒトでは、呼吸器と眼に刺激性を生じ、その結果、鼻中隔に潰瘍・穿孔を生じるおそれがある (CICAD 78 (2013)) との記述がある。 実験動物では、ラットに無水クロム酸ミストを 8ヶ月間吸入ばく露した結果、3.5 mg/m3以上で呼吸器に腐食性影響がみられた (EU-RAR (2005)) との報告、或いはマウスに無水クロム酸を約 3.9 mg/m3の濃度で12ヶ月間にわたり間欠的にばく露した結果、肺気腫、並びに鼻中隔穿孔を生じた (CICAD 78 (2013)) との報告があり、ヒトでの呼吸器障害を支持する知見が得られている。 以上より、区分1 (呼吸器) に分類した。 |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない |
- |
- | - | データ不足のため分類できない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | 絵表示 注意喚起語 |
危険有害性情報 (Hコード) |
注意書き (Pコード) |
分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 区分1 |
警告 |
H400 | P273 P391 P501 |
甲殻類(Ceriodaphnia dubia)の48時間LC50 = 145μg/L (AQUIRE, 2015)であることから、区分1とした。 |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分1 |
警告 |
H410 | P273 P391 P501 |
信頼性のある慢性毒性データが得られていない。 無機化合物につき環境中動態が不明であり、甲殻類(Ceriodaphnia dubia)の48時間LC50 = 145μg/L (AQUIRE, 2015)であることから、区分1とした。 |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない |
- |
- | - | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 |
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