GHS分類結果

View this page in English



一般情報
項目 情報
CAS登録番号 108-38-3
名称 m-キシレン (再分類)
物質ID H26-B-136, R-082
分類実施年度 平成26年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度  
Excelファイルのダウンロード Excel file

関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版)
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外
-
-
- - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分3


警告
H226 P303+P361+P353
P370+P378
P403+P235
P210
P233
P240
P241
P242
P243
P280
P501
引火点27℃ (closed cup) (ICSC (2002)) に基づいて区分3とした。
なお、国連分類は1307、クラス3、PGIIIである。
7 可燃性固体 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外
-
-
- - 爆発性、自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外
-
-
- - 発火点が527℃ (ICSC (2002)) であり、常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-
-
- - 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外
-
-
- - 酸素、フッ素及び塩素を含まない有機化合物である。
14 酸化性固体 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外
-
-
- - ラットのLD50値として、4,320-6,700 mg/kgの範囲内で複数の報告 (NITE有害性評価書 (2008)、ATSDR (2007)、EPA Pesticide (2005)、ACGIH (7h, 2001)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2001)、EHC 190 (1997)、ECETOC JACC (1986)) に基づき、区分外 (国連分類基準の区分5又は区分外) とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外
-
-
- - ウサギのLD50値として、3,228-14,100 mg/kgの範囲内で複数の報告 (ATSDR (2007)、EPA Pesticide (2005)、ACGIH (7th, 2001)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2001)、EHC 190 (1997)) に基づき、区分外 (国連分類基準の区分5又は区分外) とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分4


警告
H332 P304+P340
P261
P271
P312
ラットのLC50値 (6時間) として、5,984 ppm (4時間換算値:7,329 ppm) (EHC 190 (1997)) 及び約6,000 ppm (4時間換算値:約7,348 ppm) (NITE有害性評価書 (2008)) との報告に基づき、区分4とした。なお、蒸気圧 (8.29 mmHg (25℃) (HSDB (Access on Dcember 2014)) から得られた飽和蒸気圧濃度 (10,908 ppm) の90%よりLC50値 (6時間) が低いため、蒸気として4時間換算LC50値を得て、分類にはミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。新たな情報源 (NITE有害性評価書 (2008)) の追加及び飽和蒸気圧の値の変更を行い、区分を見直した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。なお、飽和蒸気圧の値の変更し、LC50値が飽和蒸気圧濃度よりも低くなったため、吸入:蒸気にデータを移動した。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2


警告
H315 P302+P352
P332+P313
P362+P364
P264
P280
P321
ウサギの皮膚に本物質を適用した結果 (適用時間不明) 刺激性がみられたとの報告がある (NITE有害性評価書 (2008))。また、ボランティア13人の両手に本物質を20 分間浸漬適用した試験で、10分後に焼けるような感覚 (熱傷感) を示し、適用終了10 分以内に回復した。適用箇所に紅斑がみられたが、数時間以内に回復したとの報告がある (NITE有害性評価書 (2008))。以上の結果から区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2


警告
H319 P305+P351+P338
P337+P313
P264
P280
ウサギの眼に本物質0.5 mL (432 mg) を適用した結果、軽度から中等度の刺激性がみられた (NITE有害性評価書 (2008)、ATSDR (2007)) との記載から区分2とした。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-
-
- - ガイダンスの改訂により「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。すなわち、in vivoでは、マウス骨髄細胞の小核試験で陰性である (NITE有害性評価書 (2008)、ATSDR (2007)、ECETOC JACC 006 (1986)、EHC 190 (1997)、IARC 71 (1989))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性である (NITE有害性評価書 (2008)、ATSDR (2007)、ECETOC JACC 006 (1986)、IARC 71 (1989)、ACGIH (7th, 2001))。
6 発がん性 分類できない
-
-
- - IARCでグループ3 (IARC (1999))、ACGIHでA4 (ACGIH (7th, 2001))、EPAでI (EPA IRIS (2003)) に分類されていることから、「分類できない」とした。
7 生殖毒性 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。
ラットを用いた吸入経路での催奇形性試験において、母動物毒性 (体重増加抑制) がみられる用量においてわずかな胎児に対する影響 (胎児体重の減少、骨化遅延、骨格変異) がみられたとの報告がある (ATSDR (2007))。しかし、分類根拠とする影響ではなく、また、生殖能に対する影響に関してはデータがなく不明のため分類できないとした。
なお、旧分類では、母動物に一般毒性を示す用量で胎児死亡がみられていることから、区分2としていた。見直した結果、このデータは講演要旨であり、分類に用いるには信頼性が不十分であることから採用しなかった。
このほか、産業衛生学会では許容濃度の勧告 (2014) において、エチルベンゼン (生殖毒性第2群に暫定的に分類) を含む工業用キシレン (混合キシレン) を生殖毒性第2群 (区分1B相当) に分類(暫定)しており、また、キシレン (o-, m-, p-およびその混合物) を生殖毒性第3群(区分2相当) に分類 (暫定) している。しかし、許容濃度の勧告の分類は暫定期間中であるので採用しなかった。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (呼吸器)、区分3 (麻酔作用)



危険
警告
H370
H336
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
本物質は気道刺激性がある (ATSDR (2007))。ヒトにおいては、吸入ばく露でのボランテイアのデータなどで、悪心、短期記憶障害、反応性低下、平衡感覚低下、肺機能の低下、経口摂取による自殺例で肺のうっ血、浮腫がみられ、死亡は中枢呼吸抑制に起因したものであった (NITE有害性評価書 (2008)、ATSDR (2007)、ECETOC JACC 006 (1986))。
実験動物では、ラットの吸入ばく露で麻酔作用、マウスの3,000 ppmで協調運動失調、500 ppmでオペラント行動低下、75-2,000 ppmで肺ミクロゾーム酵素活性低下 (肺組織の傷害を示唆)、500 ppmで呼吸数低下、2,000-8,000 ppmで姿勢変化、覚醒減少、前肢握力低下、正向反射低下、歩行・運動障害、着地開脚幅増加、様々な感覚刺激への反応性低下がみられたがこれらの影響はその後回復した。ラット、マウスなど (用量不明) で、血圧低下、努力呼吸、刺激過敏性、緊張低下、衰弱、昏睡、振戦、視覚及び聴覚の障害、中脳のアセチルコリン低下及び視床下部のノルエピネフリン低下 (運動制御や睡眠、記憶維持への影響を示唆)、筋肉痙攣、呼吸不全により死亡した (NITE有害性評価書 (2008)、ATSDR (2007)、ECETOC JACC 006 (1986)、 (EHC 190 (1997))。経口投与によるデータはない。
以上より、本物質は麻酔作用のほか、呼吸器に影響があることから、区分1 (呼吸器)、区分3 (麻酔作用) とした。

(この分類結果は、m-キシレンの情報のみからのものであり、キシレン異性体やキシレン混合物のデータを含まない。キシレン異性体やキシレン混合物については、それぞれの分類結果を参照のこと。)
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (神経系、呼吸器)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
ヒトボランティアに本物質を6時間/日で、5日間吸入ばく露し、週末はばく露を休止し、週明けに1日間再ばく露した後、強制運動後の平衡感覚を試験した結果、90-100 ppm の濃度で反応時間の低下が、400 ppm の高濃度で平衡感覚の低下がみられた (NITE有害性評価書 (2008)、ATSDR (2007)) との報告があり、短期間暴露でも神経系への影響を示唆する知見と考えられた。本物質単独ばく露による長期影響の報告例はないが、潜在的にはキシレン (各異性体を含むを混合物) (CAS No. 1330-20-7) と同様の影響を示すものと考えられ、「神経系」、及び「呼吸器系」への影響を懸念すべきと考えられた。
実験動物では雄ラットに本物質 (蒸気と推定) を3ヶ月又は6ヶ月間吸入ばく露した試験において、区分2相当の 100 ppm の濃度 (0.43 mg/L/6時間) で、自発運動の減少、協調運動性の低下がみられ (NITE有害性評価書 (2008))、ヒトでの神経系影響を支持する所見と考えられた。以上より、本物質もキシレン (混合物) と同様に、区分1 (神経系、呼吸器) に分類した。

10 吸引性呼吸器有害性 区分1


危険
H304 P301+P310
P331
P405
P501
炭化水素であり、動粘性率が0.669 mm2/s (25/15℃; 粘性率= 0.581 mPa (25℃)、密度=0.8684 (15℃) より算出 (データの出典元: HSDB (Access on December 2014)) のため、区分1とした。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2
-
-
H401 P273
P501
甲殻類(オオミジンコ)の48時間EC50=2.42 mg/L(環境庁生態影響試験, 2000、環境省リスク評価第10巻, 2012)であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分3
-
-
H412 P273
P501
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性があり(BODによる分解度:100%(m-キシレン及びp-キシレン[m-キシレン(被験物質番号K-38)にて試験実施]の微生物による分解度試験, 1998)、甲殻類(オオミジンコ)の21日間NOEC=0.407 mg/L(環境庁生態影響試験, 2000、NITE 初期リスク評価書, 2005、環境省リスク評価第10巻, 2012)であることから、区分3となる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、魚類(ストライプドバス)の96時間LC50 = 7.9 (NITE 初期リスク評価書, 2005)であるものの、急速分解性があり(BODによる分解度:100%(m-キシレン及びp-キシレン[m-キシレン(被験物質番号K-38)にて試験実施]の微生物による分解度試験, 1998)、生物蓄積性が低いと推定される(LogPow = 3.2 (PHYSPROP Database, 2009))ことから、区分外となる。
以上の結果を比較し、区分3とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。

GHS関連情報トップページに戻る