GHS分類結果

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一般情報
項目 情報
CAS登録番号 10361-37-2
名称 塩化バリウム(再分類)
物質ID H26-B-078, R-032
分類実施年度 平成26年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度  
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関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版)
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-
-
- - 爆発性に関する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外
-
-
- - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外
-
-
- - 不燃性 (ICSC (1999))
8 自己反応性化学品 分類対象外
-
-
- - 爆発性及び自己反応性に関する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外
-
-
- - 不燃性 (ICSC (1999))
11 自己発熱性化学品 区分外
-
-
- - 不燃性 (ICSC (1999))
12 水反応可燃性化学品 区分外
-
-
- - 水溶解度:375 g/L (20℃) (GESTIS (Access on September 2014)) というデータが得られており、水と接触しても激しい反応は起こさないと考えられる。
13 酸化性液体 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない
-
-
- - 酸素を含まず、ハロゲン元素を含む無機化合物であるが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 分類対象外
-
-
- - 無機化合物
16 金属腐食性物質 分類できない
-
-
- - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3


危険
H301 P301+P310
P361+P364
P264
P270
P321
P330
P405
P501
ラットのLD50値として、118 mg/kg (CICAD 33 (2001)、EHC 107 (1990))、132 mg/kg (成獣)、220 mg/kg (離乳直後)、269 mg/kg (ATSDR (2007))、419 mg/kg (雄)、408 mg/kg (雌) (SIDS (2013)) との6件の報告がある。4件が区分3に、2件が区分4に該当するため、分類ガイダンスに従い、最も多くのデータが該当する区分3とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外
-
-
- - ラットのLD50値として、> 2,000 mg/kg (雄、雌) との報告 (SIDS (2013)) に基づき、区分外とした。新たな情報源 (SIDS (2013)) を追加し、区分を見直した。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2


警告
H315 P302+P352
P332+P313
P362+P364
P264
P280
P321
モルモットを用いた皮膚刺激性試験 (適用時間不明) で中等度の刺激性がみられたという報告 (IUCLID (2000)) や、マウス及びラットを用いた皮膚刺激性試験で「刺激性がみられた」との報告 (IUCLID (2000)) から、区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2


警告
H319 P305+P351+P338
P337+P313
P264
P280
ウサギを用いた眼刺激性試験で刺激性ありとの報告がある (刺激の程度等詳細不明) (IUCLID (2000))。また本物質は眼に対して刺激性を持つとの記載がある (HSDB (Access on August 2014))。以上の結果から区分2とした。旧分類の情報とHSDB (Access on August 2014) の記載から区分を変更した。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。すなわち、in vivoデータはなく、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験で陰性、マウスリンフォーマ試験で陽性である (SIDS (2013)、ACGIH (7th, 2001)、ATSDR (2007)、CICAD 33 (2001)、HSDB (Access on August 2014))。
6 発がん性 分類できない
-
-
- - バリウム及びその可溶性化合物として、ACGIH (7th, 2001) でA4に分類されていることから、「分類できない」とした。
7 生殖毒性 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。
マウス、ラットを用いた塩化バリウム二水和物の経口経路 (飲水) での生殖毒性試験において、生殖能に影響がみられていないとの報告がある (SIDS (2013)、ATSDR (2007)、CICAD 33 (2001))。しかし、CICAD 33 (2001) では「ラットとマウス両方のばく露群及び対照群の全てにおいて通常の妊娠率を下回っていたため、この結果の解釈は慎重に行う必要がある。」としている。また、催奇形性に関する十分な情報が得られていないことから分類できないとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (神経系、心血管系、筋肉系、腎臓)、区分3 (気道刺激性)



危険
警告
H370
H335
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
P304+P340
P403+P233
P261
P271
P312
本物質は、気道刺激性がある (HSDB (Access on August 2014))。ヒトにおいては複数の症例報告があり、意図的又は偶発的経口摂取により悪心、嘔吐、腹痛、下痢、胃腸障害、血圧上昇、心筋や他の筋肉の重篤な刺激、重篤な症例では筋肉麻痺、腱反射消失、心室細動、呼吸停止、死亡の報告がある。本物質の影響により、カリウムが強制的に細胞内に送られ血清カリウムの低下 (低カリウム血症) から神経筋遮断、筋力低下等を引き起こす。高用量では、心臓の鼓動、リズムに重大な影響をもたらし、心室頻拍、心臓自律能障害、心室細動、血圧低下、心停止の報告がある (ATSDR (2007)、ACGIH (7th, 2001)、CICAD 33 (2001)、EHC 107 (1990)、HSDB (Access on August 2014))。ヒトでは急性バリウム中毒として腎不全、腎障害を発症したとの報告がある (ATSDR (2007))。
実験動物では、イヌ、モルモットの静注で血圧上昇、不整脈、イヌで骨格筋弛緩、麻痺、低カリウム血症、経口投与 (濃度等不記載) で、流延、下痢、頻脈、攣縮、低カリウム血症、呼吸筋麻痺、心室細動等の記載がある (CICAD 33 (2001)、EHC 107 (1990))。
以上より、気道刺激性があるほか、神経系、心血管系、筋肉系、腎臓が標的臓器と考えられ、区分1 (神経系、心血管系、筋肉系、腎臓)、区分3 (気道刺激性) とした。


9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (心血管系、神経系、筋肉系、腎臓)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
塩化バリウム等の水溶性バリウムを含む飲料水を摂取していた居住地区のヒトの集団において、高血圧、心臓疾患、脳卒中の発生頻度が上昇したとの報告、並びに、同様の他の集団において心血管障害、動脈硬化症など心臓疾患による死亡率の増加がみられたとの報告があり (ATSDR (2007))、バリウム過剰摂取による心血管障害を示唆する知見が得られている。また、バリウムの過剰摂取により、低カリウム血症をきたし、神経系、筋肉系の障害が生じることが報告されている (ATSDR (2007))。初発症状として口や首周囲に痺れや刺痛を感じ、症状は次第に四肢へと拡がり、筋肉虚弱を呈し、重篤な症例では深部腱反射消失を伴う部分的又は完全な筋麻痺に至る (ATSDR (2007))。ACGIHによる記述では、バリウムイオンはカリウムの拮抗物質であり、バリウムがカリウムを細胞外から細胞内へと移動を促進させ、その結果生じた低カリウム血症が引き金になり、全身の筋肉系に加え、心筋、呼吸筋にも麻痺を生じることがあると報告されている (ACGIH (7th, 2001))。さらに、ヒトでは急性バリウム中毒として腎不全、腎障害を発症したとしか報告例がないが、実験動物では本物質又は二水和物をラット又はマウスに13週間又は2年間飲水投与した試験で、いずれも区分2を超える用量 (塩化バリウム90日ばく露換算として: 271-803 mg/kg/day相当) で腎症による死亡例がみられており、腎臓は動物試験では最も感受性の高い臓器であると記述されている (ATSDR (2007)) ことから、ヒトにおいても腎臓は標的臓器の一つと考えられる。
以上、ヒトで本物質を含むバリウムの過剰障害による影響は全身に及ぶと考えられるが、特に心血管系、神経系、筋肉系、腎臓に明瞭に出現する可能性が高いと考えられたため、区分1 (心血管系、神経系、筋肉系、腎臓) に分類した。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3
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-
H402 P273
P501
甲殻類(オオミジンコ)の48時間EC50 = 14.5 mg Ba/L (SIDS, 2008)(塩化バリウム換算濃度:22 mg/L)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分3
-
-
H412 P273
P501
信頼性のある慢性毒性データが得られていない。急速分解性が不明であり、甲殻類(オオミジンコ)の48時間EC50 = 14.5 mg Ba/L (SIDS, 2008)(塩化バリウム換算濃度:22 mg/L)であることから、区分3とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。

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