GHS分類結果

View this page in English



一般情報
項目 情報
CAS登録番号 79-10-7
名称 アクリル酸  (再分類)
物質ID H26-B-001, R-001
分類実施年度 平成26年度
分類実施者 厚生労働省/環境省
新規/再分類 再分類・見直し
他年度における分類結果 平成18年度  
Excelファイルのダウンロード Excel file

関連情報
項目 情報
分類に使用したガイダンス(外部リンク) 政府向けGHS分類ガイダンス(平成25年度改訂版)
国連GHS文書(外部リンク) 国連GHS文書
解説・用語集(Excelファイル) 解説・用語集
厚生労働省モデルラベル(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
厚生労働省モデルSDS(外部リンク) 職場のあんぜんサイトへ
OECD/eChemPortal(外部リンク) eChemPortal

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外
-
-
- - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外
-
-
- - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分3


警告
H226 P303+P361+P353
P370+P378
P403+P235
P210
P233
P240
P241
P242
P243
P280
P501
引火点54℃ (closed cup) (ICSC (2013)) に基づいて区分3とした。
なお、国連分類はUN2218、クラス8、副次危険クラス3、PGIIである (安定剤入りのもの)。
7 可燃性固体 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 タイプG
-
-
- - 分子内に自己反応性に関わる原子団 (不飽和結合) を含む。危規則第5条五ハによると、安定剤が規定量未満のアクリル酸は船舶輸送禁止である。純物質及びこれらの混合物はタイプAと推察される。安定剤入りのものはタイプG。安定剤としてはp-メトキシフェノール0.02%が使用される (EU-RAR (2008))。
9 自然発火性液体 区分外
-
-
- - 発火点が360℃ (ICSC (2013)) であり、常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない
-
-
- - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外
-
-
- - 金属及び半金属 (B,Si,P,Ge,As,Se,Sn,Sb,Te,Bi,Po,At) を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外
-
-
- - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外
-
-
- - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない
-
-
- - データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4


警告
H302 P301+P312
P362+P364
P264
P270
P330
P501
ラットの経口LD50値として、33.5-3,200 mg/kgの範囲で複数の報告 (環境省リスク評価第10巻 (2012)、PATTY (6th, 2012)、NITE初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2002)、ACGIH (7th, 2001)、EHC 191 (1997)、IARC 19 (1979)、ECETOC JACC (1995)) がある。分類ガイダンスに基づき、最も多くのデータ (340 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、EHC 191 (1997)、ECETOC JACC (1995)、IARC 19 (1979))、1,250 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、ECETOC JACC (1995))、1,337 mg/kg (環境省リスク評価第10巻 (2012))、1,350 mg/kg (EHC 191 (1997)、EU-RAR (2002)、ECETOC JACC (1995))、1,500 mg/kg (ECETOC JACC (1995)) が該当する区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分3


危険
H311 P302+P352
P280
P312
P321
P361
P364
P405
P501
ラットの経皮LD50値として、300-600 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008))、ウサギの経皮LD50値として、280 mg/kg (PATTY (6th, 2012))、294 mg/kg (環境省リスク評価第10巻 (2012))、295 mg/kg (IARC 19 (1979)、EHC 191 (1997)、ECETOC JACC (1995))、300 mg/kg (EU-RAR (2002))、640 mg/kg (EHC 191 (1997)、EU-RAR (2002)、ECETOC JACC (1995))、640 mg/kg (環境省リスク評価第10巻 (2012))、750 mg/kg (IARC 19 (1979)、EHC 191 (1997)、ECETOC JACC (1995))、950 mg/kg (IARC 19 (1979)、EHC 191 (1997))、295-950 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2008)) との報告に基づき、区分3とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外
-
-
- - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分3


危険
H331 P304+P340
P403+P233
P261
P271
P311
P321
P405
P501
ラットの4時間吸入LC50値として、3.6 mg/L (1,221 ppm) (EHC 191 (1997)、NITE初期リスク評価書 (2008)、IARC 19 (1979)、EU-RAR (2003)、ECETOC JACC (1995)、PATTY (6th, 2012)、> 5.1 mg/L (> 1,740 ppm) (EHC 191 (1997)、NITE初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2002)、ECETOC JACC (1995)、14.4 mg/L (4,522 ppm) (PATTY (6th, 2012)) の3件の報告がある。区分3と区分4とにそれぞれ1件づつ該当し、1件は区分を特定できないデータであるため、LC50値の最小値が該当する区分3とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度 (5,222 ppm) の90%より低いため、ミストを含まないものとしてppmを単位とする基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分4


警告
H332 P304+P340
P261
P271
P312
エアロゾルを用いたラットのLC50値として、11,100 mg/m3 (1時間 (4時間換算値:2.75mg/L))、26,000 mg/m3 (0.5時間 (4時間換算値:3.25mg/L))、7,500 mg/m3 (2時間 (4時間換算値:3.75mg/L)) (EHC 191 (1997)、NITE初期リスク評価書 (2008)) との報告に基づき、区分4とした。なお、上述の1時間、0.5時間、2時間ばく露における各LC50値をエアロゾル (ミスト) として4時間換算値に換算すると、飽和蒸気圧濃度 (15.4 mg/L) より低くなり、蒸気相当となるが、エアロゾルでの試験との記載 (EHC 191 (1997)) に基づき、mg/L を単位とする粉じん及びミストの基準値を適用した。

2 皮膚腐食性/刺激性 区分1A


危険
H314 P301+P330+P331
P303+P361+P353
P305+P351+P338
P304+P340
P260
P264
P280
P310
P321
P363
P405
P501
ウサギに本物質の原液を3分間半閉塞適用した皮膚刺激性試験 (OECD TG準拠) において、表層壊死、軽度の浮腫及び変色が認められ、病理組織学的検査では適用部位で深部に至る限局性壊死、壊死部での表皮付属器消失、病巣周囲の中等度表皮過形成及びびまん性炎症反応が認められた (EU-RAR (2002)) との報告がある。また、ウサギに本物質の原液を1分間適用した結果、腐食反応を示した (EU-RAR (2002)、ECETOC JACC (1995)) との報告がある。さらに、ヒトにおいて1967-1992 年の間に2 人の作業員は皮膚の腐食のため入院が必要であった (EU-RAR (2002))。以上の結果から区分1Aとした。なお、本物質は、EU DSD分類において「C; R35」、EU CLP分類において「Skin Corr. 1A H314」に分類されている。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1


危険
H318 P305+P351+P338
P280
P310
ウサギを用いた眼刺激性試験において、原液の適用により強い刺激性を示し、投与後20日後に眼瞼の瘢痕、角膜混濁が持続することが報告されている (NITE初期リスク評価書 (2008)、EHC 191 (1997)、EU-RAR (2002))。また、ヒトに対しても、眼刺激性を示すとの記載がある (PATTY (6th, 2012))。以上の結果から区分1とした。
4 呼吸器感作性 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 区分外
-
-
- - ヒトにおいて、1989年以来アクリル酸の工業製品を用いた450人以上の労働者に感作性症状が認められていないという報告 (EU-RAR (2002)) がある。また、実験動物では陽性と陰性両方の結果がある。モルモットを用いた修正スプリットアジュバント試験において、皮膚反応は0/10匹であり陰性を示した (NITE初期リスク評価書 (2008)、EHC 191 (1997)、EU-RAR (2002))。モルモットを用いた修正スプリットアジュバント試験では、精製したアクリル酸は陰性であったが、市販のアクリル酸では陽性を示した (NITE初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2002))。なお、EU-RAR (2002) やSIAP (2001) ではアクリル酸に含まれる不純物や重合阻害剤が皮膚感作性を示すが、精製されたアクリル酸では皮膚感作性を示さないとしている (EU-RAR (2002)、SIAP (2001))。以上の結果から、アクリル酸自体は皮膚感作性を持たないと判断し区分外とした。
5 生殖細胞変異原性 分類できない
-
-
- - ガイダンスの改訂により「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。すなわち、in vivoではマウスの優性致死試験及びラット骨髄細胞の染色体異常試験で陰性結果が得られている (NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第10巻 (2012)、EU-RAR (2002))。In vitroでは細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験 (HGPRT遺伝子座) で陰性である (NITE初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2002)) が、哺乳類培養細胞のマウスリンフォーマ試験、染色体異常試験では陽性である (NITE初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2003))。また、仔ウシ胸腺DNAの付加体形成試験で陽性 (環境省リスク評価第10巻 (2012))、ラット肝臓初代培養細胞の不定期DNA合成試験、シリアンハムスター胚細胞 (SHE) の不定期DNA合成試験及び小核試験では陰性 (NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第10巻 (2012)、EU-RAR (2002)) である。
6 発がん性 分類できない
-
-
- - IARCでグループ3 (IARC 71 (1999))、ACGIHでA4 (ACGIH (7th, 2001)) に分類されていることから「分類できない」とした。なお、ラットの2年間 (104 週間) 吸入がん原性試験、マウスの2年間 (104 週間) 吸入がん原性試験 (いずれも、厚生労働省委託がん原性試験結果 (Access on May 2014)) でいずれもがん原性は認められていない。また、SIAP (2001)、EU-RAR (2002) で、「本物質はラットの経口投与及びマウスの経皮適用による発がん性の証拠はない。また、ヒトばく露と関連した発がん性データはない」と報告されている。ガイダンスの改訂により区分を修正した。
7 生殖毒性 分類できない
-
-
- - ラットを用いた経口経路 (飲水) での2世代生殖毒試験において、生殖能に影響はみられていないが、親動物に一般毒性 (体重増加抑制、腺胃粘膜の軽度な浮腫を伴った前胃境界縁の軽度な角化亢進) がみられる用量で児動物の体重増加抑制、発育分化遅延 (耳管開通遅延、眼瞼開裂遅延) がみられた (PATTY (6th, 2012))。
催奇形性試験としては、ラットを用いた吸入経路の試験において、母動物毒性がみられる用量で胎児体重の低値がみられた (NITE初期リスク評価書 (2008))。なお、同一文献を引用した環境省リスク評価第10巻 (2012) には、「吸収胚と死亡胎児の増加」の記載があったが、原著 (Saillenfait et al., 1999) には吸収胚と死亡胎児の増加には群間で差がみられないとして影響を否定していた。また、ウサギを用いた吸入経路の試験では、母動物毒性がみられる用量で児の発生に影響がみられなかった (EU-RAR (2002))。いずれにおいても、催奇形性はみられていない。
上記のとおり、母動物に影響がみられる用量で児に影響が認められたが、発育分化の遅延、胎児体重の低値は発生指標のわずかな変化に該当することから、分類できないとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1 (呼吸器、腎臓)、区分2 (肝臓)


危険
警告
H370
H371
P308+P311
P260
P264
P270
P321
P405
P501
ラットに、経口経路で肝細胞の変性及び壊死 (NITE初期リスク評価書 (2008)、EHC 191 (1997))、嗜眠 (EU-RAR (2002))、吸入経路で呼吸器への刺激による鼻周囲の湿潤、痂皮形成、腹式呼吸、呼吸困難、嗜眠、刺激への無反応、気管支粘膜の強い刺激性及び重度の炎症、気管支腔内への滲出物、肺胞腔内のマクロファージ、肺実質内での限局性炎症、肺出血、肺水腫、腎臓のうっ血、肝細胞及び腎尿細管の変性 (NITE初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2002)、EHC 191 (1997)、ECETOC JACC (1995)、ACGIH (7th, 2001))、ウサギに経皮経路で無気力、努力性呼吸、全身症状の低下、剖検結果で肺水腫 (EU-RAR (2002))、呼吸困難 (ECETOC JACC (1995)) がそれぞれ報告されている。
なお、呼吸器、腎臓に対する影響は区分1に、肝臓への影響は区分2に相当するガイダンス値の範囲でみられた。
以上より、区分1 (呼吸器、腎臓)、区分2 (肝臓) とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1 (呼吸器)


危険
H372 P260
P264
P270
P314
P501
NITE初期リスク評価書 (2008)、環境省リスク評価第10巻 (2012)、EU-RAR (2002)、ACGIH (7th, 2001) にラットに90日間飲水投与した試験報告が3件あり、うち1報において区分2の上限の用量 (2,000 ppm: 100 mg/kg/day相当) で、雄にのみ体重増加抑制がみられたとの記述があるが、標的臓器は特定できない。他の2報告は区分2を超える用量で、腎臓、消化管、肝臓への影響がみられており、すなわち、経口経路では本物質は区分外相当である。
一方、吸入経路では、上記情報源に加えて、厚労省委託がん原性試験報告 (Access on June 2014) より、本物質蒸気をマウス及びラットに90日間又は2年間吸入ばく露した複数の試験において、区分1の濃度 (2-40 ppm: 0.0059-0.118 mg/L/6hr/day) から鼻腔の組織変化 (嗅上皮の変性、萎縮、呼吸上皮化生、呼吸上皮の扁平上皮化生、嗅神経線維束の萎縮、鼻咽頭のエオジン好性変化など) が認められたとの記述より、区分1 (呼吸器) に分類した。なお、マウスの90日間吸入ばく露試験では、区分1の濃度からヘモグロビン濃度の減少がみられ、血液系への影響が示唆されたものの、他のマウス及びラットの試験では一貫した全身性影響は認められておらず、本物質ばく露による有害性影響は鼻腔への局所影響に限定されると考えられた。

10 吸引性呼吸器有害性 分類できない
-
-
- - データ不足のため分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 絵表示
注意喚起語
危険有害性情報
(Hコード)
注意書き
(Pコード)
分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1


警告
H400 P273
P391
P501
藻類(セネデスムス)の72時間ErC50 = 0.13 mg/L (EU-RAR, 2002、 EHC 191, 1997)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分2


-
H411 P273
P391
P501
慢性毒性データを用いた場合、急速分解性があり(BODによる分解度=67.8%(既存点検, 1975))、藻類(セネデスムス)の72時間NOEC(生長速度) = 0.016 mg/L(NITE 初期リスク評価書, 2008、EU-RAR, 2002)であることから、区分2となる。
慢性毒性データが得られていない栄養段階に対して急性毒性データを用いた場合、魚類(ニジマス)の96時間LC50 = 27 mg/L(NITE 初期リスク評価書, 2008, EU-RAR, 2002, EHC 191, 1997)であるが、急速分解性があり(BODによる分解度=67.8%(既存点検, 1975))、生物蓄積性が低いと推定される(log Kow= 0.35(PHYSPROP Database, 2009))ことから、区分外となる。
以上の結果を比較し、区分2とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない
-
-
- - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
  • 政府によるGHS分類結果は、事業者がラベルやSDSを作成する際の参考として公表しています。同じ内容を日本国内向けのラベルやSDSに記載しなければならないという義務はありません。
  • 本分類結果は、GHSに基づくラベルやSDSを作成する際に自由に引用又は複写していただけます。ただし、本分類結果の引用又は複写により作成されたラベルやSDSに対する責任は、ラベルやSDSの作成者にあることにご留意ください。
  • 本GHS分類は、分類ガイダンス等に記載された情報源と分類・判定の指針に基づき行っています。他の文献や試験結果等を根拠として使用すること、また、ラベルやSDSに本分類結果と異なる内容を記載することを妨げるものではありません。
  • 「危険有害性情報」欄及び「注意書き」欄のコードにマウスカーソルを重ねると、対応する文言が表示されます。Excel fileでは、コード及び文言が記載されています。
  • 「分類結果」欄の空欄又は「- 」(ハイフン)は、その年度に当該危険有害性項目の分類が実施されなかったことを意味します。

GHS関連情報トップページに戻る