GHS分類結果 (過年度実施分類結果の再分類)

名称:1,4-ジクロロ-2-ブテン
CAS番号:764-41-0

結果:
物質ID: 22B4529
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成22年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H22.7版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分3 警告 H226: 引火性液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点59℃ [密閉式](Gangolli(2nd, 1999))は ≧ 23℃ かつ ≦60℃ であることから、区分3に該当する。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類できない - - - - 分子内に自己反応性に関わる原子団(不飽和結合)を含んでいるがデータがなく分類できない。
9 自然発火性液体 分類できない - - - - データがなく分類できない。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属および半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素を含まず塩素を含む有機化合物であるが、この元素が炭素、水素以外の元素と結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3 危険 H301: 飲み込むと有毒 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットLD50値は89 mg/kg bw(ACGIH(2001), SIDS(2006)), 220 mg/kg bw(SIDS(2006))及び120 - 300 mg/kg bw(SIDS(2006))のデータにより、いずれも区分3に該当することから区分3とした。
1 急性毒性(経皮) 区分3 危険 H311: 皮膚に接触すると有毒 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギLD50値は735 mg/kg bw(ACGIH(2001), SIDS(2006))であるとの報告に基づき区分3とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分1 危険 H330: 吸入すると生命に危険 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P284: 呼吸用保護具を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P320: 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットLC50値は0.45 mg/L/4h(86 ppm/4h)(SIDS(2006), ACGIH(2001))及び1.35 mg/L/4h(264 ppm/4h)(SIDS(2006))とのデータがあり、それぞれ区分1と区分2に該当するが、危険性の高い方の区分を採用し区分1とした。なお、試験濃度(86 ppm)は飽和蒸気圧濃度(3950 ppm)の90%より低いので「ミストがほとんど混在しない蒸気」として気体の基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1 危険 H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトボランティアの試験で、前腕部に無希釈液体を0.5-1時間接触させたところ強度の紅斑、浮腫、水泡の発生が認められた(SIDS(2006))との報告、及び本物質の液体及び蒸気はヒトに対して強度の皮膚腐食性を示す(SIDS(2006))との記載に基づき、区分1とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
ウサギの眼に1滴の適用により、重度の角膜熱傷と永続的損傷を引き起こし、重度の眼刺激物であるとの報告(ACGIH(2001))に基づき、区分1とした。なお、本物質の液体および蒸気はヒトに対して強度の眼刺激性を示すと記載されている(SIDS(2006))。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットの吸入ばく露による骨髄を用いた染色体異常試験(体細胞in vivo変異原性試験)で、陽性結果の報告がある(SIDS(2006))。一方、ラットに2.5ヶ月間経口投与または吸入投与した優性致死試験(生殖細胞in vivo変異原性試験)でも陽性結果(SIDS(2006))の報告があるが、試験法や結果の詳細が不明である。従って体細胞への影響は明確であるが、生殖細胞に対する評価可能な知見が他にないため、上記ラットの染色体異常試験(体細胞in vivo変異原性試験)の陽性結果から区分2とした。なお、ラットに2週間吸入投与した小核試験(OECD TG474、GLP準拠)(体細胞in vivo変異原性試験)は陰性と報告されている(SIDS(2006))。in vitro試験では、エームス試験及びCHO細胞を用いた遺伝子突然変異試験はいずれも陽性と報告されている(SIDS(2006), NTP DB(Access on Jan. 2011))。
6 発がん性 区分1B 危険 H350: 発がんのおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
発がん性分類はACGIHでA2(ACGIH-TLV(2006))、EUでCategory 2(EUAnnex 1(2006))に分類されていることに基づき区分1Bとした。なおIARCではGroup 3(IARC 71(1994))に分類されている。
7 生殖毒性 分類できない - - - - ラットの器官形成期に吸入ばく露した発生毒性試験において、母動物が有意な体重増加抑制を示した高濃度群でも妊娠指標および仔の発生に悪影響はみられず、本物質は胎仔毒性も催奇形性もないと判断されている(SIDS(2006))。一方、雄ラットに2.5ヶ月間経口または吸入投与した試験において、精子形成上皮細胞の異常や壊死等に加え、無処置雌との交配後に着床前胚死亡の増加が報告されている(SIDS(2006))が、試験方法や結果の詳細について記述がなく、評価のための証拠資料として不十分であると記載されている(SIDS(2006))。したがって、性機能・生殖能に及ぼす影響についてデータ不十分であり、また、雌動物のばく露データもないことから、「分類できない」とした。なお、ラットの妊娠期間中に吸入ばく露した別の試験で着床後死亡の増加が報告されているが、評価するには不十分なデータである(SIDS(2006))としている。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器系、神経系、全身毒性)、区分3(麻酔作用) 危険
警告
H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用)
H370: 臓器の障害(呼吸器系、神経系、全身毒性)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットの急性経口毒性試験において、119および297 mg/kgの用量で死亡の発生に加え、毒性症状として全例に攣縮、食欲不振及び脱力、また、ラットの急性吸入(蒸気)ばく露試験では、47 mg/Lの濃度で喘ぎを伴う痙縮、弛緩性麻痺の症状が観察され(SIDS(2006))、ばく露量がいずれもガイダンス値区分1に相当していることから、区分1(神経系)とした。さらに、ラットの急性吸入(蒸気)ばく露試験で、0.364 mg/L以上の濃度で死亡例の発生、不規則呼吸、流涎、流涙が観察され、病理組織学的所見として肺の病変と出血、気管炎の記載(SIDS(2006))があり、別のラット吸入(蒸気)ばく露試験では0.15 mg/L以上で呼吸数の顕著な低下、2.13 mg/L/30min(0.75 mg/L/4h)以上で気管支上皮の損傷が観察され(SIDS(2006))、用量はいずれもガイダンス値範囲区分1に相当していることから、区分1(呼吸器系)とした。さらに、上記の吸入ばく露試験において、同時に、肝臓、脾臓、胸腺、リンパ節の細胞変性、腎臓障害などが観察され(SIDS(2006))、投与による影響が複数の臓器にわたり全身に及んでいる可能性もあることから、区分1(全身毒性)とした。さらに、ヒトで経口および低濃度の吸入ばく露で中枢神経抑制、高濃度の吸入ばく露では急速に昏睡に至るおそれがあるとの記載(HSDB(2009))に基づき、区分3(麻酔作用)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器系) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器系) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットの4週間の蒸気による吸入ばく露試験で、気道上皮への影響が用量依存的に見られ、8および12 ppm/6h(90日換算:0.014および0.021 mg/L/6h)の投与群で鼻腔や気道、気管支粘膜に炎症および巣状性の潰瘍が認められた(SIDS(2006)、ACGIH(2001))。また別のラットの19ヶ月を最長期間とした蒸気による吸入ばく露試験でも、1 ppm/6h(0.0052 mg/L/6h)投与群で、投与開始3ヶ月後に鼻腔の基底細胞過形成や鼻腔粘膜の巣状性の萎縮が見られた(SIDS(2006))。以上の報告から、いずれも用量は区分1のガイダンス値内であることから区分1(呼吸器系)とした。なお、ラットの26週間の経口投与で肝臓への影響の記載があるがリスト3(RTECS(2009))の情報であると共に詳細も不明であるため分類の根拠に採用しなかった。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(ブルーギル)の96時間LC50=0.42mg/L(IUCLID, 2000)から、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性区分1であり、急速分解性がないと推定される(OECD TG305Dによる28日での分解度=0%(IUCLID, 2000))ことから、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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