GHS分類結果

名称:無水イソ酪酸
CAS番号:97-72-3

結果:
物質ID: 22A4172
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成22年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H22.7版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分4 - 警告 H227: 可燃性液体 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点67℃ [密閉式](GESTIS(Access on Sept. 2010))は ≧60℃≦93℃ であることから、区分4に該当する。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点は329℃であり(ホンメル(1996))、常温で発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属および半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素を含んでいる有機化合物であるが、この元素が炭素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 分類できない - - - - データなし。なお、加水分解物であるイソ酪酸のラットLD50値は >500 mg/kg(SIDS(J)(Access on Sept. 2010))との報告がある。 健康有害性に関しては本物質の加水分解物であるイソ酪酸(CAS;79-31-2)も参照のこと。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データなし。なお、加水分解物であるイソ酪酸のウサギLD50値は >200 mg/kg(SIDS(J)(Access on Sept. 2010))との報告がある。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - ラットLC50値は>5.1 mg/L(SIDS(J)(Access on Sept. 2010))との報告があるが、区分を特定できないので分類できない。なお、試験濃度(5.1 mg/L)が飽和蒸気圧濃度(42.6 mg/L)の90%より低いので、気体の基準値を適用となる。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1 危険 H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は水と接触すると急速に加水分解し、イソ酪酸となる(SIDS(J)(Access on Sept. 2010))ため、イソ酪酸をウサギの皮膚に開放適用し、24時間以内に壊死(caused some necrosis)を起こしたとの結果(PATTY(5th, 2001))により区分1とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
本物質は水と接触すると急速に加水分解し、イソ酪酸となる(SIDS(J)(Access on Sept. 2010))。イソ酪酸をウサギの眼に適用した試験で重度の角膜炎(severe corneal burning)を起こしたとの結果(PATTY(5th, 2001))に加え、皮膚腐食性/刺激性の項で皮膚腐食性物質として分類していることから区分1とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - データなし。なお、イソ酪酸はエームス試験で陰性が報告されている(SIDS(J)(Access on Sept. 2010))。
6 発がん性 分類できない - - - - データなし。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データなし。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(気道刺激性) 警告 H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットの急性吸入ばく露試験(LC50値 >5.1 mg/L)で観察された臨床症状(ラ音(呼吸音)、鼻分泌物等)に基づき、本物質は上気道に刺激を引き起こす(SIDS(J)(Access on Sept. 2010))との記述から区分3(気道刺激性)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - データなし。なお、本物質の吸入は、単回ばく露では上気道に刺激を引き起こし、反復ばく露では刺激影響を悪化させるようである(SIDS(J)(Access on Sept. 2010))との記載がある。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は水中で速やかに加水分解してイソ酪酸(CAS No. 79-31-2)となる(水中での半減期 = 2.407分(pH = 8)、24.067分(pH = 7)(HYDROWIN))。無水イソ酪酸のデータは無いが、イソ酪酸の藻類(セネデスムス)72時間EC50 = 45 mg/L(無水イソ酪酸換算 = 39.9 mg/L)(IUCLID, 2000)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 本物質は水中で速やかに加水分解してイソ酪酸(CAS No. 79-31-2)となる(水中での半減期 = 2.407分(pH = 8)、24.067分(pH = 7)(HYDROWIN))。イソ酪酸は急性毒性区分3であるが、急速分解性があり(OECD TG301Cによる28日間分解度 > 60%(IUCLID, 2000))、生物濃縮性がないと予想される(LogPow = 1.24(PHYSPROP Database, 2011))ことから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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