GHS分類結果

名称:トリスジクロロプロピルホスフェート
CAS番号:13674-87-8

結果:
物質ID: 22A4097
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成22年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H22.7版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分外 - - - - 引火点は252℃(Cleveland open cup)(HSDB(2003))であり、所定の密閉式測定でも93℃超えとなると判断できる。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - P-Oを含むが、本物質はホスフェートであり、ホスファイト(亜リン酸)(-P-(-O-)3)ではないので、自己反応性に関わる原子団および爆発性の原子団を含んでいないため分類対象外とした。
9 自然発火性液体 分類できない - - - - データなし。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 区分外 - - - - 半金属(P)を含むが、水溶解度18.1mg/L(SIAP(2009))というデータがあり、水と急激な反応をしないと考えられる。
13 酸化性液体 分類できない - - - - 酸素を含む有機化合物であり、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合しており、酸化性に関するデータがなく分類できない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットLD50値;2236 mg/kg(雄), 2359 mg/kg(雌)および>2000 mg/kg bw(OECD TG 401, GLP)との報告(EU-RAR(2008))に基づき、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分5)とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ラットLD50値;>2000 mg/kg bwであって、2000 mg/kg bwで死亡なし(OECD TG 402, GLP)との報告(EU-RAR(2008))に基づき区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分外 - - - - ラットLC50値;>5.22 mg/L/4h であって、5.22 mg/Lで死亡なし(OECD TG 403, GLP)との報告(EU-RAR(2008))に基づき、区分外とした。なお、暴露濃度の5.22 mg/Lは飽和蒸気圧濃度0.00000171 mg/Lより高いのでミストの基準値を適用した。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギ3匹に0.5 mLを4時間にわたり半閉塞適用した試験(OECD TG404, GLP)で、1時間後2匹にスコア2の紅斑が見られ1匹は24時間持続、3匹目の動物にはスコア1の紅斑が認められた。浮腫は見られず、全ての反応は48時間以内に消失したとの報告(EU-RAR(2008))に基づき、区分外とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分外 - - - - ウサギ3匹に0.1 mLを適用した試験(OECD TG405, GLP)で、1時間後に全例で軽度の結膜発赤が見られたが24時間後に回復し、その他にばく露の影響はなかったとの報告(EU-RAR(2008))に基づき、区分外とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分外 - - - - モルモットを用いたマキシマイゼーション試験(OECD TG406, GLP)の結果、皮膚感作性反応は見られなかった(EU-RAR(2008))との報告に基づき、区分外とした。なお、得られたデータのまとめとして、本物質は皮膚感作性と考えられないとの記載(EU-RAR(2008))もある。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - 経口投与によるマウス骨髄細胞を用いた小核試験(OECD TG474, GLP)および経口投与によるマウス骨髄細胞を用いた染色体異常試験(in vivo体細胞変異原性試験)において、いずれも陰性の結果(EU-RAR(2008))に基づき、区分外とした。なお、in vitro試験では、エームステストは陽性(EHC 209(1998))、チャイニーズハムスターCHO細胞を用いた染色体異常試験は陰性(OECD TG473, GLP)(EU-RAR(2008))、マウスリンパ腫L5178Y細胞を用いた染色体異常試験は陽性または擬陽性(EHC 209(1998)、EU-RAR(2008))、ヒト線維芽細胞を用いた染色体異常試験は陰性(EHC 209(1998))、マウスリンパ腫L5178Y細胞を用いた遺伝子突然変異試験は陰性または陽性(EHC 209(1998)、EU-RAR(2008))の結果が報告されている。
6 発がん性 分類できない - - - - ラットの24ヶ月間混餌投与による発がん性試験(投与量:5, 20, 80 mg/kg bw/day)の結果、最高用量の80 mg/kg bw/dayは雌雄共に死亡率が高く、体重も明らかに低値であった。20 mg/kg以上の雌雄で腎皮質腺腫、雄で精巣の間質細胞腫、80 mg/kgの雌雄で肝細胞腺腫、80 mg/kgの雌で副腎皮質腺腫のいずれも有意な増加がみられ、また、統計学的に有意ではなかったが雌雄とも用量依存的な肝細胞癌の増加が報告されている(SIAP(2009))。以上より、腎臓、肝臓等で腺腫の有意な発生増加の報告があるが、1種の動物のみの所見のため、データ不足で分類できないとした。
7 生殖毒性 区分外 - - - - 妊娠ラットの器官形成期に経口投与した発生毒性試験の結果、最高用量の400 mg/kgでは母体毒性として、体重増加量と摂餌量の有意な減少に加え死亡も見られ、吸収胚と骨化遅延が増加した。100 mg/kg以下の用量では胎仔死亡の増加はなく、胎仔の生育にも異常なく、奇形も見られなかった(SIAP(2009))。吸収胚の増加は死亡を含む顕著な母体毒性が見られた高用量のみでの影響のため分類根拠としなかった。さらに、ウサギに12週間経口投与により、交配、受胎、妊娠の指標に加え、黄体数、着床数、生存胎仔数、吸収胚数にも影響はなく、性機能・生殖能に悪影響が認められなかったとの報告(EU-RAR(2008))もあり、区分外とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 分類できない - - - - ラットの単回経口投与試験(OECD TG401, GLP)において、1710 mg/kg bw以上で死亡発生に加え、呼吸数減少、正向反射の消失、異常発声が見られ(EU-RAR(2008))、ラットの別の単回経口投与試験では、2000 mg/kgで死亡が発生し、流涎、運動低下、運動失調の症状を示した(EU-RAR(2008))が、いずれもLD50値は2000 mg/kg以上であり、中毒症状は非特異的であったとの記述(EU-RAR(2008))もあり、分類の根拠にはデータ不十分なため「分類できない」とした。なお、ラットに2000 mg/kgを経皮投与した試験(OECD TG402, GLP)では、死亡および中毒症状は見られず、剖検により臓器に異常は見出されず(EU-RAR(2008))、また、ラットに5.22 mg/Lを単回吸入投与した試験(OECD TG403, GLP)でも、死亡および中毒症状は見られず、剖検で臓器に異常はなかった(EU-RAR(2008))と報告されている。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(腎臓、精巣) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(腎臓、精巣) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットの24ヶ月間混餌投与試験において、ガイダンス値区分1に相当する5 mg/kg/day以上で雄の腎臓曲尿細管上皮の過形成の発生率が増加し、胚上皮の萎縮、精子過少、精嚢萎縮など精巣への影響が認められたこと(EU-RAR(2008))に基づき、区分1(腎臓、精巣)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(ニジマス)の96時間LC50 = 1.1 mg/L(EU-RAR, 2008)から区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分2 - H411: 長期継続的影響によって水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性区分2であり、急速分解性がない(難分解、BODによる分解度:1%(既存点検, 1980))ことから区分2とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

職場のあんぜんサイトへ

厚生労働省モデルSDS

職場のあんぜんサイトへ


To GHS Information