名称:抱水クロラール
CAS番号:302-17-0
物質ID: | 22A4071 |
分類実施者: | 厚生労働省・環境省 |
分類実施年度: | 平成22年度 |
使用マニュアル: | 政府向けGHS分類ガイダンス(H22.7版) |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 爆発物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 | - | - | - | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
6 | 引火性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
7 | 可燃性固体 | 区分外 | - | - | - | - | 不燃性(ICSC(J)(1999))である。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含んでいない。 |
9 | 自然発火性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
10 | 自然発火性固体 | 区分外 | - | - | - | - | 不燃性である(ICSC(J)(1999)) |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない | - | - | - | - | 融点140℃以下の固体に適した試験方法が確立していない。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 金属および半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
14 | 酸化性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | 酸素、塩素を含む有機化合物であるが、これらの元素は炭素または水素とのみ結合している。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 | - | - | - | - | -O-O-構造を有していない有機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 急性毒性(経口) | 区分4 | 警告 | H302: 飲み込むと有害 |
P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P330: 口をすすぐこと。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ラットLD50値は480 mg/kg(CICAD 25(2000))に基づき区分4とした。 | |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分外 | - | - | - | - | ラットLD50値は3030 mg/kg(HSDB(2010))に基づき、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分5に相当)とした。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分1 | 危険 | H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 |
P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P310: 直ちに医師に連絡すること。 P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。 P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ヒトで本物質は皮膚および粘膜に対し腐食性(corrosive)がある(NTP TR 503(2002)、HSDB(2010))との記述に基づき区分1とした。 | |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分1 | 危険 | H318: 重篤な眼の損傷 |
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P310: 直ちに医師に連絡すること。 |
ヒトで抱水クロラールは皮膚および粘膜に対し腐食性(corrosive)がある(NTP TR 503(2002)、HSDB(2010))との記述、および皮膚腐食性物質として分類していることから区分1とした。 | |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
4 | 皮膚感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分1B | 危険 | H340: 遺伝性疾患のおそれ |
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。 P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 P281: 指定された個人用保護具を使用すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
マウスに腹腔内投与後の精子細胞を用いた小核試験(生殖細胞in vivo変異原性試験)が5件実施され、うち3件で陽性結果が報告されている(IARC 84(2004))ことから、区分1Bとした。また、マウスに腹腔内投与後の骨髄を用いた小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)では6件中4件で陽性結果(IARC 84(2004))が得られ、一本鎖DNA切断試験では陽性と陰性の相反する結果が報告されている(IARC 84(2004))。なお、in vitro試験として、エームス試験で陰性または陽性、小核試験ではチャイニーズハムスターのCl-1細胞を用いた試験で陰性、V79細胞で陽性、染色体異常試験ではチャイニーズハムスターのCHED細胞で陰性、卵巣細胞で陽性の結果が報告されている(IARC 84(2004))。 | |
6 | 発がん性 | 分類できない | - | - | - | - | IARCの発がん性評価においてグループ3に分類されていることから、「分類できない」とした。なお、マウスを用いた2年間経口投与試験により、雄で肝細胞の腺腫または癌腫の発生率が増加し、発がん性についてある程度の証拠があるとされ、雌では下垂体末端部腺腫の発生率増加が見られ、発がん性が疑われる証拠とされている(NTP TR 503(2002))。一方、ラットの2年間経口投与試験では本物質投与に関連する腫瘍の発生は観察されなかった(IARC84(2004))。 |
7 | 生殖毒性 | 区分外 | - | - | - | - | マウスを用い雌雄共に交配の3週間前より、引き続き雌は妊娠期間を経て出生後21日の仔の離乳まで飲水投与した試験において、母動物の飲水量、体重のみならず、仔の外表奇形、妊娠期間、分娩仔数、などにも有意な影響は観察されず、仔に対する神経行動学的影響を示す二三の指標を除き影響は認めらず、生殖および発生に及ぼす影響のNOAELは最高用量の204.8 mg/kg/dayであったと報告されている(IRIS(2000))。また、妊娠ラットの妊娠期間中に飲水投与した試験で母体毒性は見られず、着床数、吸収胚数、生存および死亡仔数などの仔の発生指標にも変化はなかった(IRIS(2000))。以上の結果により、親動物の性機能・生殖能および仔の発生に対する悪影響が認められていないので区分外とした。なお、本物質は一定時期にヒトの胎盤を通過することが知られているが、妊娠期における本物質使用に関して少ない情報の中で、異常の発生が認識できるほどの増加はない(IARC 84(2004))と報告されている。 |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1(中枢神経系、心臓)、区分3(麻酔作用) |
危険 警告 |
H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用) H370: 臓器の障害(中枢神経系、心臓) |
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。 P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ヒトで本物質摂取による主な影響は、治療剤としての使用理由でもある中枢神経系の抑制であり、鎮静および催眠を引き起こすと述べられている(EHC 216(2000))。動物試験ではマウスに900 mg/kg以下の経口投与により、鎮静化、嗜眠および正向反射の消失が見られ、1200 mg/kg以上では呼吸抑制による死亡の発生が報告されている(IRIS(2000))。以上の知見においてヒトの情報に基づき区分1(中枢神経系)とした。また、本物質はヒトで催眠薬として使用され、マウスでは非致死量で鎮静、催眠、運動失調などの症状を引き起こしている(IRIS(2000))ことから、区分3(麻酔作用)とした。一方、最も重要な毒性影響として心律動異常があり、小児での不整脈の誘発、また、本物質投与の被験者12人中2人に洞不整脈がみられた(EHC 216(2000))との報告により、区分1(心臓)とした。 | |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1(中枢神経系)、区分2(肝臓) |
警告 危険 |
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(肝臓) H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(中枢神経系) |
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
医薬品使用で本物質の投与を受けた患者1618人の医療記録を調査した結果、副作用として中枢神経系の報告が20人と最も多く(IRIS(2000))、また、入院患者5435人の医療記録を調査した別の報告では119件の副作用が見られ、中枢神経系の報告が58人と最も多く、うち3人に生命を脅かす症状として羽ばたき振戦が報告されている(IRIS(2000))ことから、区分1(中枢神経系)とした。一方、動物試験でラットに90日間の飲水投与により、96 mg/kg/day以上の雄の肝臓において限局性肝細胞壊死が観察され、96 mg/kg/dayでは軽微であったが168 mg/kg/dayではかなり重度であった(IRIS(2000))ことに加え、マウスに90日間の飲水投与により、16 mg/kg/day以上の雄で肝腫とミクソーム増生の所見(IRIS(2000))があり、いずれも発現用量はガイダンス値区分2以上のため、区分2(肝臓)とした。 | |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
11 | 水生環境有害性(急性) | 区分外 | - | - | - | - | 甲殻類(ミジンコ)での48時間EC50 = 500 mg/L(HSDB, 2010)であることから、区分外とした。 |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分外 | - | - | - | - | 急性毒性区分外であり、難水溶性でない(水溶解度 = 793000 mg/L(PHYSPROP Database, 2011))ことから、区分外とした。 |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない | - | - | - | - | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 |
政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。 |
使用マニュアル |
|
解説・用語集(エクセルファイル) |
|
厚生労働省モデルラベル |
職場のあんぜんサイトへ |
厚生労働省モデルSDS |
職場のあんぜんサイトへ |