名称:塩化リチウム
CAS番号:7447-41-8
物質ID: | 22A4008 |
分類実施者: | 厚生労働省・環境省 |
分類実施年度: | 平成22年度 |
使用マニュアル: | 政府向けGHS分類ガイダンス(H22.7版) |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 爆発物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 | - | - | - | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
6 | 引火性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
7 | 可燃性固体 | 区分外 | - | - | - | - | 不燃性(not combustible)である。(ICSC(1997) |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含まない。 |
9 | 自然発火性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
10 | 自然発火性固体 | 区分外 | - | - | - | - | 不燃性(not combustible)である。(ICSC(1997) |
11 | 自己発熱性化学品 | 区分外 | - | - | - | - | 不燃性(not combustible)である。(ICSC(1997) |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分外 | - | - | - | - | 金属(Li)を含むが、水溶解度は83.2g/100g water(20℃)(Ullmanns(E)(6th, 2003))というデータが得られており、水と急激な反応はないと考えられる。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
14 | 酸化性固体 | 分類できない | - | - | - | - | ハロゲン元素(Cl)を含む無機化合物であるが、データがなく分類できない。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 無機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない | - | - | - | - | 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。なお、水溶液は金属を腐食するとの情報がある。(ICSC(1997) |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 急性毒性(経口) | 区分4 | 警告 | H302: 飲み込むと有害 |
P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P330: 口をすすぐこと。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ラットのLD50値 526-840 mg/kg(IUCLID(2000))および757 mg/kg(HSDB(2007))に基づき、区分4とした。 [健康有害性に関しては他のリチウム化合物も参照のこと] | |
1 | 急性毒性(経皮) | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分2 | 警告 | H315: 皮膚刺激 |
P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。 P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。 P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 |
ウサギを用いた試験(Directive 84/449/EEC, B.4 :GLP準拠)で、3匹中1匹に14日間の観察期間中で回復しない痂皮形成が認められ、刺激性あり(irritating)との結果(IUCLID(2000))に基づき、区分2とした。 | |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2A | 警告 | H319: 強い眼刺激 |
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 |
ウサギを用いた試験(GLP準拠)で、適用1時間後に刺激性が最も強く、洗浄グループでは7日後迄に、非洗浄グループでは16日後迄に回復し、中等度の刺激性(moderately irritating)との結果(IUCLID(2000))に基づき、区分2Aとした。 | |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
4 | 皮膚感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分外 | - | - | - | - | 経口投与によるマウス骨髄染色体異常試験で陽性、同姉妹染色体交換試験で陰性結果が報告されている(IUCLID(2000))ものの、この報告内容には制約が多く、試験法の詳細も提供されていないので、データに基づく明確な結論は出せない。このように、本物質あるいは他のリチウム化合物について染色体異常試験/小核試験での陽性結果(KemI-Riskline NR 2002:16)が散見されるが試験方法等に問題があること、一方、染色体異常試験における陰性結果(KemI-Riskline NR 2002:16)もあり、染色体異常誘発性は明確には示されていないことから、全体的な証拠の重みづけに基づき区分外とした。なお、in vitro試験として細菌を用いる復帰突然変異試験で陰性(NTP DB(Access on Apr. 2010)、KemI-Riskline NR 2002:16)、ヒトの末梢血培養細胞を用いる染色体異常試験で陽性(IUCLID(2000)、KemI-Riskline NR 2002:16)の報告がある。 |
6 | 発がん性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
7 | 生殖毒性 | 区分2 | 警告 | H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い |
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。 P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 P281: 指定された個人用保護具を使用すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
雌ラットに交配前から妊娠期間を通じて飲水投与した試験で、出生仔に奇形は観察されなかったが、対照群と比較し母動物で黄体数の低下が見られた(IUCLID(2000))こと、また、マウスに交配前から妊娠期間および授乳期間を通じ飲水投与により高用量では親動物が死亡したが、親動物の死亡および成長に悪影響もなかった低用量では出生仔および同腹仔全体で死亡率の増加が見られた(IUCLID(2000))こと、さらに、ICR系マウスの器官形成期に経口投与により8.6%の胎仔に奇形が観察された(IUCLID(2000))ことが報告されている(IUCLID(2000))。以上の結果に基づき、生殖への影響が見られたが、同じ用量で親動物の一般毒性に関する記述がないことから区分2とした。 他のリチウム化合物の情報としては、炭酸リチウムを有効成分とする精神神経用剤を妊娠中に服用した女性から生まれた児にエプスタイン奇形(先天性の心血管系奇形)の発生を示す多数の報告(PIM 309F(2000)、Birth Defects(3rd,(2000)、HSDB(2007))があり、かつ、リチウムが胎盤を通過することは知られており(KemI-Riskline NR 2002:16)、医薬品添付文書における使用上の注意として、妊娠または妊娠している可能性のある婦人には投与禁忌とされている(医療用医薬品集(2010))との記載がある。また、リチウムは血清中に近い割合で乳汁中に排泄される(PIM 309F(2000))ので、使用上の注意として授乳婦への投与については、やむを得ず投与する場合には授乳を中止させると記載(医療用医薬品集(2010))されている。 | |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分2(神経系) | 警告 | H371: 臓器の障害のおそれ(神経系) |
P309+P311: 暴露したとき、又は気分が悪いとき:医師に連絡すること。 P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
マウスの急性経口投与試験において、LD50値は1165 mg/kgで毒性症状として後肢麻痺や死亡を伴う昏迷、筋脱力、筋痙縮が記載され(IUCLID(2000))、また、別の試験(用量:1500〜3000 mg/kg)では毒性症状として嗜眠、呼吸緩徐、外部刺激に対する反応の遅れ、死亡前の痙攣などが記載されている(IUCLID(2000))。上記のマウスの所見はガイダンス値区分2の用量範囲で認められているので区分2(神経系)とした。 他のリチウム化合物の情報としては、炭酸リチウムを有効成分とする精神神経用剤の服用により、血液中のリチウム濃度に依存した中毒症状を生じ(KemI-Riskline NR 2002:16、医療用医薬品集(2010))、医薬品添付文書には用法に関連する注意として、血中リチウム濃度の測定を勧める記載(医療用医薬品集(2010))がある。さらに、リチウム治療を受ける患者では血漿中のリチウム濃度が2.5 mMを超えると、意識障害、せん妄、運動失調、全身性筋収縮、錐体外路症候群など重度の神経毒性が数時間から数日の間に発現する可能性があるとの記述(KemI-Riskline NR 2002:16)もある。 | |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分2(神経系、腎臓) | 警告 | H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(神経系、腎臓) |
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ラットに2年まで飲水した反復投与試験において、106 mg/kg/dayで投与後3-5日に傾眠と嗜眠、次いで筋振戦、衰弱が見られ、2-3週間以内に死亡した(IUCLID(2000))。また、イヌの150日までの反復経口投与試験において、100 mg/kg/dayで死亡が発生し、死亡前の症状として振戦、嗜眠、流涎、筋脱力、極度の衰弱などが観察された(IUCLID(2000))。一方、イヌを用いた57週までの反復経口投与試験(20, 50, 100 mg/kg)において、組織学的に遠位曲尿細管と集合管の障害を含む腎臓障害が観察されたIUCLID(2000))、以上の所見はガイダンス値区分2の用量範囲に相当することから区分2(神経系、腎臓)とした。ヒトでは、本物質の塩化ナトリウムの代替塩としての使用により、傾眠、振戦、神経筋過敏などリチウム中毒の徴候を呈した(IUCLID(2000))こと、および低ナトリウム食患者での事例研究に腎不全の患者が含まれていた(KemI-Riskline NR 16(2003))ことが報告されている。 他のリチウム化合物の情報としては、炭酸リチウムを有効成分とする精神神経用剤の服用により、振戦、傾眠、錯乱などの副作用が発生し(KemI-Riskline NR 2002:16、医療用医薬品集(2010))、症状はリチウムの血中濃度に依存し、手の震えから筋力低下、昏睡に至るまで神経毒性が認められている(KemI-Riskline NR 2002:16)。また、リチウム剤を投与されていた患者の追跡調査では、副作用として振戦、自覚的記憶喪失、創造力低下が報告されている(IUCLID(2000))。一方、神経系以外の副作用には、多尿症、多渇症があり、腎性尿崩症を起こした症例の報告(KemI-Riskline NR 2002:16、医療用医薬品集(2010))もあり、慢性腎不全を起こすおそれもある(KemI-Riskline NR 2002:16)と記載されている。 | |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 区分3 | - | - | H402: 水生生物に有害 |
P273: 環境への放出を避けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
魚類(Ptychocheilus lucius)での96時間LC50 = 17 mg/L(AQUIRE, 2011)であることから、区分3とした。 |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分3 | - | - | H412: 長期継続的影響によって水生生物に有害 |
P273: 環境への放出を避けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
急性毒性区分3であり、急速分解性に関する適切なデータが得られていないことから、区分3とした。 |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない | - | - | - | - | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 |
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