名称:炭酸リチウム
CAS番号:554-13-2
物質ID: | 22A4003 |
分類実施者: | 厚生労働省・環境省 |
分類実施年度: | 平成22年度 |
使用マニュアル: | 政府向けGHS分類ガイダンス(H22.7版) |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 爆発物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 | - | - | - | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
6 | 引火性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
7 | 可燃性固体 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含まない。 |
9 | 自然発火性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
10 | 自然発火性固体 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分外 | - | - | - | - | 分子内に金属(Li)を含むが、水溶解度が1.3 g/100 ml(ICSC(J)(1999))というデータが得られており、水と急激な反応はないと考えられる。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
14 | 酸化性固体 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 無機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない | - | - | - | - | 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 急性毒性(経口) | 区分4 | 警告 | H302: 飲み込むと有害 |
P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P330: 口をすすぐこと。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ラットLD50値は525 mg/kg bw(PIM 309F(2000))に基づき、区分4とした。 | |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分外 | - | - | - | - | ラットLD0値は 2000 mg/kg(GLP準拠)(IUCLID(2000))に基づき、区分外とした。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない | - | - | - | - | ラットLC50値は > 2.17 mg/L/4h(GLP準拠)(IUCLID(2000))と報告されているが、このデータのみでは区分を特定ができないので「分類できない」とした。なお、粉塵として粒径の最大が7.95 μmとの記載(IUCLID(2000))により粉塵とみなした。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分外 | - | - | - | - | ウサギ3匹を用いたドレイズ試験において1匹に紅斑を生じたが5日以内に消失し、「軽微な刺激性(slightly irritating)」であったとの結果(IUCLID(2000))により区分外とした。 |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2B | - | 警告 | H320: 眼刺激 |
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 |
ウサギ用いたドレイズ試験において、非洗浄眼では角膜混濁、虹彩炎、結膜炎、結膜の出血と白色域を生じたが、7日間で回復し中等度の刺激性(Moderately irritating)との結果、また、洗浄眼でも類似の影響が見られたが、刺激の程度は低く4日間で回復し、軽度の刺激性(Mildly irritating)」との結果(IUCLID(2000))に基づき区分2Bとした。 |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
4 | 皮膚感作性 | 分類できない | - | - | - | - | モルモットを用いたBuehler Test(OECD 406、GLP準拠)において、感作性なし(not sensitizing)の報告(IUCLID(2000))があるが、List2の情報であるため「分類できない」とした。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分外 | - | - | - | - | 本物質あるいは他のリチウム化合物の腹腔内あるいは経口投与による染色体異常試験/小核試験での陽性結果が散見されるが試験方法等に問題があること、一方、染色体異常試験における陰性結果もあり、染色体異常誘発性は明確には示されていないことから(IUCLID(2000), KemI-Riskline NR 2002:16)、全体的な証拠の重みづけに基づき区分外とした(KemI-Riskline NR 2002:16)。なお、リチウム治療患者に染色体異常は認められていない(HSDB(2007))。また、リチウム化合物のin vitro試験においては、Ames試験で陰性、染色体異常試験およびHGPRT試験ではそれぞれ陰性および陽性の結果が報告されている(IUCLID(2000), KemI-Riskline NR 2002:16)。 |
6 | 発がん性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
7 | 生殖毒性 | 区分1A、追加区分:授乳に対するまたは授乳を介した影響 | 危険 |
H362: 授乳中の子に害を及ぼすおそれ H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ |
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。 P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P263: 妊娠中/授乳期中は接触を避けること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P281: 指定された個人用保護具を使用すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
本物質はリチウムを含む精神神経用剤であり、妊娠中に服用した女性から生まれた児にエプスタイン奇形(先天性の心血管系奇形)発生の報告が多数ある(PIM 309F(2000)、Birth Defects(3rd,(2000)、HSDB(2007))。さらに、その後の調査では児の心血管系奇形の発生は確認できず、リチウムを含む治療薬による新生児障害のリスクは思ったよりも低いとの報告(KemI-Riskline NR 2002:16)もあるが、リチウムが胎盤を通過することは知られており(KemI-Riskline NR 2002:16)、医薬品添付文書おける使用上の注意として、妊娠または妊娠している可能性のある婦人には投与禁忌とされている(医療用医薬品集(2010))。以上の情報に基づき区分1Aとした。また、リチウムは血清中に近い割合で乳汁中に排泄される(PIM 309F(2000))ので、使用上の注意として授乳婦への投与について、やむを得ず投与する場合には授乳を中止させる(医療用医薬品集(2010))と記載されているので、「追加区分:授乳に対するまたは授乳を介した影響」とした。なお、動物試験ではラットまたはマウスの妊娠期間中に経口投与により、同腹仔数減少、吸収胚増加、胎児死亡増加などが見られ(IUCLID(2000))、マウスでは器官形成期の経口投与により、口蓋裂、肋骨癒合、脳脱出などの奇形の発生が報告されている(IUCLID(2000))。 | |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1(神経系)、区分3(気道刺激性) |
警告 危険 |
H370: 臓器の障害(神経系) H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性) |
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。 P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
本物質を有効成分とする精神神経用剤の服用により、血液中のリチウム濃度に依存した中毒症状を起こし(KemI-Riskline NR 2002:16、医療用医薬品集(2010))、医薬品添付文書には、用法に関連する注意として血中リチウム濃度の測定を勧める記載(医療用医薬品集(2010))がある。さらにリチウム治療を受ける患者では血漿中のリチウム濃度が2.5 mMを超えると、意識障害、せん妄、運動失調、全身性筋収縮、錐体外路症候群など重度の神経毒性が数時間から数日の間に発現する可能性がある(KemI-Riskline NR 2002:16)と述べられている。一方、動物試験ではマウスに経口投与により、250〜1000 mg/kgで死亡前の症状として嗜眠、呼吸緩徐、痙攣、筋力低下がみられ、神経系に病理学的変化が認められた(IUCLID(2000))と報告されている。以上の知見に基づき区分1(神経系)とした。一方、ヒトで当該物質の粉塵ばく露で上気道の刺激が報告されている(KemI-Riskline NR 2002:16)ことから、区分3(気道刺激性)とした。 | |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1(神経系、腎臓) | 危険 | H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(神経系、腎臓) |
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
本物質はリチウムを含む精神神経用剤であり、副作用として、振戦、傾眠、錯乱等が記載されており(KemI-Riskline NR 2002:16、医療用医薬品集(2010))、症状はリチウムの血中濃度に依存し、手の震えから筋力低下、昏睡に至るまで神経毒性が認められている(KemI-Riskline NR 2002:16)。また、情動障害の治療のためリチウム剤を投与されていた患者101人中59人の追跡調査において、副作用として振戦23例、自覚的記憶喪失23例、創造力低下11例が含まれている(IUCLID(2000))。以上のヒトの情報により区分1(神経系)とした。さらに、神経系以外の副作用に、多尿症、多渇症があり、腎性尿崩症を起こした例も報告されており(KemI-Riskline NR 2002:16、医療用医薬品集(2010))、慢性腎不全を起こすおそれもある(KemI-Riskline NR 2002:16)と記載されていることから区分1(腎臓)とした。 | |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 区分2 | - | - | H401: 水生生物に毒性 |
P273: 環境への放出を避けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
魚類(マミチョグ)の96時間LC50 = 8.1 mg/L(AQUIRE, 2011)から区分2とした。 |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分2 | - | H411: 長期継続的影響によって水生生物に毒性 |
P273: 環境への放出を避けること。 P391: 漏出物を回収すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
急性毒性区分2であり、急速分解性に関するデータが得られていないことから区分2とした。 | |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない | - | - | - | - | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 |
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