GHS分類結果(過年度実施分類結果の再分類)

名称:メタ-フェニレンジアミン
CAS番号:108-45-2

結果:
物質ID: 21B3165
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない - - - - データなし。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性、あるいは自己反応性に関する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 発火点が560℃(ICSC(1999))で70℃を超えている。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 融点が140℃以下の固体に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素または塩素を含まない有機化合物である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3 危険 H301: 飲み込むと有毒 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値は280 mg/kg(環境省リスク評価第3巻(2004))、650 mg/kg(IARC vol.16(1978))、204, 255, 260, 360, 450 mg/kg(BUA(1995))であり、区分3に該当するデータが最も多いことから区分3とした。
1 急性毒性(経皮) 区分4 警告 H312: 皮膚に接触すると有害 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値1100 mg/kg(NITE初期リスク評価書No.54(2008))に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ヒトの皮膚に本物質を開放適用した2試験において、一方は、固体状の本物質を適用した場合影響はみられないが、10%アルコール溶液として適用した場合はわずかな火傷とかゆみが感じられることが報告されており、もう一方は、被験者1人に本物質の1%、5%、10%溶液(媒体:アルコール、ラノリンまたはワセリン)を適用し、24時間以内に明白な影響はみられていない(いずれもDFGOT vol.6(1994))。動物試験においては、4時間適用のデータはないが、ウサギに24時間閉塞適用した試験で刺激性はみられていない(NITE初期リスク評価書No.54(2008))。その他、適用時間不明のウサギを用いた3試験において、固体状の本物質を適用した場合影響はみられないが10%アルコール溶液の場合軽度の紅斑(slight erythema)がみられる(DFGOT vol.6(1994))との記載、2.5%水溶液の適用で影響なし(NITE初期リスク評価書No.54(2008))との記載、軽微な紅斑と浮腫を生じ24時間後に回復(NITE初期リスク評価書No.54(2008))との記載がそれぞれある。以上の結果より、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分3)とした。なお、ACGIH(2001)のウサギを用いた試験(適用時間不明)において「局所的な中等度の刺激性」との記載があるが、DFGOT vol.6(1994)では同じデータついて「そのまま適用した場合では影響はみられず、10%アルコール溶液の場合は軽度の紅斑(slight erythema)がみられた」と記載されている。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ヒトへの影響として「眼を刺激する」との記載があり(環境省リスク評価第3巻(2004))、ウサギを用いた3試験において、本物質の2.5%水溶液を適用した試験では刺激性はみられないが、20%水溶液を適用した試験では結膜の発赤と角膜の混濁が認められ、7日以内に回復しており、本物質50mgを適用した試験では角膜の混濁を示し、7日以内には回復しなかったとの記載がある(いずれもNITE初期リスク評価書No.54(2008))。以上の結果より、区分2とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質の製造工場で5〜10年間暴露された労働者に対するスクラッチテストにおいて、112人中9人がアレルギー陽性反応を示しており、染毛剤を用いて湿疹を患った女性患者19人に対するパッチテストにおいては、濃度0.1%適用では21%が、1%適用では53%の人が陽性反応を示している(いずれもNITE初期リスク評価書No.54(2008))。加えて、産業衛生学会で「皮膚:第1群」(提案年度1999年;産衛学会勧告(2008))、EUリスク警句でR43(EU-Annex I(access on Jul. 2009))とされていることから、皮膚感作性を有すると考えられるため、区分1とした。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
in vivoにおいて、マウスの骨髄を用いた小核試験で陽性(IUCLID(2000))であるため、区分2とした。ラットを用いた3つの優性致死試験中1試験で弱陽性であるが、この試験はテクニカルグレード(純度98%)を用いて行われた試験であり、純度99%以上の物質を用いて行われた同様の試験において再現性はみられない(BUA Report No.97(1992))との記載がある。その他in vivo試験では、ラットの骨髄を用いた小核試験(試験物質:メタ-フェニレンジアミン塩酸塩)で陰性(BUA Report No.97(1992))、マウスの精巣におけるDNA合成阻害試験で陽性(BUA Report No.97(1992))、マウスの生殖細胞を用いた不定期DNA合成試験で陰性である(NITE初期リスク評価書No.54(2008))。in vitroにおいては全ての試験(CHO細胞及びCHL細胞を用いた染色体異常試験、エームス試験、CHL細胞を用いた小核試験、マウスリンパ腫細胞を用いた前進突然変異試験)で陽性である(NITE初期リスク評価書No.54(2008)、NTP DB(access on Jul. 2009))。なお、EUリスク警句でカテゴリー3、R68(EU-Annex I(access on Jul. 2009))に分類されている。
6 発がん性 区分外 - - - - IARCでGroup 3(IARC Suppl.7(1987))、ACGIHでA4(1988;ACGIH-TLV(2009))に分類されていることから、区分外とした。なお、厚生労働省がん原性試験(1988)においては「2年間にわたるメタフェニレンジアミン・二塩酸塩の経口投与(混水)によるがん原性試験の結果、ラットおよびマウスの雌雄とも投与による腫瘍の発生増加は認められず、メタフェニレンジアミン・二塩酸塩のF344/DuCrj(Fischer)ラット雌雄およびCrj:BDF1マウス雌雄に対するがん原性は示されなかった。」との記述がある。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経口投与による発生毒性試験において、親動物に体重増加抑制などがみられる用量で吸収胚数増加(環境省リスク評価第3巻(2004))がみられることから区分2とした。なお、仔に胸骨骨化中心数の減少(NITE初期リスク評価書No.54(2008)))などがみられている。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系、血液) 危険 H370: 臓器の障害(中枢神経系、血液) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
中枢神経系への影響としては、ラットを用いた経口投与試験において用量200 mg/kgで痙攣がみられており(NITE初期リスク評価書No.54(2008))、血液への影響としては、マウスを用いた経口投与試験において用量100-200 mg/kgでチアノーゼ(IUCLID(2000))、ネコを用いた経口投与試験において用量10 mg/kg以上で血中メトヘモグロビン濃度の上昇(NITE初期リスク評価書No.54(2008))がみられるため、区分1(中枢神経系、血液)とした。なお、「経皮投与での急性肺水腫」(RTECS(2004))の記述があるが呼吸器についてはリスト3のデータである事から採用しなかった。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(神経系、肝臓、腎臓、膀胱)、 区分2(血液) 危険
警告
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(血液)
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(神経系、肝臓、腎臓、膀胱)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、本物質に長期間暴露された労働者に「反射異常、皮膚の知覚過敏、腎臓及び肝臓の病理変化」(環境省リスク評価第3巻(2004))、「排尿障害、膀胱の粘膜浮腫、ポリープ状腫脹、膀胱最下部(三角帯)と頚部への細胞浸潤(好酸球)」(ACGIH(2001))等の記述、動物試験については、ラットを用いた13週間経口投与試験において用量18mg/kgで「核濃縮を起こした細胞をともなう肝臓の変性部位増加」(ACGIH(2001))、ラットを用いた4週間経口投与試験において用量100mg/kg(90日換算値:31.1mg/kg)で「メトヘモグロビン血症」、ラットを用いた104週間経口投与試験において用量40mg/kgで「慢性腎疾患」(いずれも環境省リスク評価第3巻(2004))、ラットを用いた4ヶ月間経口投与試験において用量5.6mg/kg以上で「肝臓と中枢神経系の損傷」(IUCLID(2000))等の記載があることから、神経系、肝臓、腎臓、膀胱、血液が標的臓器と考えられた。なお、実験動物に対する影響は、区分1、区分2に相当するガイダンス値の範囲でみられた。以上より、分類は区分1(神経系、肝臓、腎臓、膀胱)、区分2(血液)とした。なお、肺線維化、指皮肥厚」、「逆流性食道炎、足浮腫、徐脈、心ブロック、強指症、指の終末血管拡張症、肺線維化、食道拡張」(IUCLID(2000))との記述は、本物質を主成分とするアミン類の暴露データに基づいており(NITE初期リスク評価書No.54(2008))、混合暴露の可能性が高いため区分2(心血管、呼吸器)は分類に採用しなかった。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)の48時間EC50=2.0 mg/L(環境省生態影響試験、2001)他から、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分2 - H411: 長期継続的影響によって水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性が区分2、急速分解性がない(BODによる分解度:2%(既存点検, 1985))ことから、区分2とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

職場のあんぜんサイトへ

厚生労働省モデルSDS

職場のあんぜんサイトへ


To GHS Information