GHS分類結果(過年度実施分類結果の再分類)

名称:臭化メチル
CAS番号:74-83-9

結果:
物質ID: 21B3141
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 区分1 危険 H220: 極めて可燃性又は引火性の高いガス P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P377: 漏洩ガス火災の場合:漏洩が安全に停止されない限り消火しないこと。
P381: 安全に対処できるならば着火源を除去すること。
P403: 換気の良い場所で保管すること。
ICSC(1999)による爆発限界下限値は10vol%であり、「区分1」に該当する。なお、国連危険物輸送勧告では、引火性/可燃性ガスに該当せず、特別規定で、「限られた条件でのみ可燃性を示す」としている(国連番号1062(クロロピクリン2%を超えないもの))。また、GHS文書では、引火性/可燃性ガスの分類基準で、「規制目的によっては特殊例と見なされる」としている。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類できない - - - - データがなく分類できない。国連危険物輸送勧告はクラス2.3(国連番号1062(クロロピクリン2%を超えないもの))。
5 高圧ガス 低圧液化ガス 警告 H280: 高圧ガス:熱すると爆発のおそれ P410+P403: 日光から遮断し、換気の良い場所で保管すること。 ICSC(1999)による沸点は4℃、かつMerck(13th, 2001)による臨界温度は194℃(65℃を超える)であり、「グループ低圧液化ガス」に該当する。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
11 自己発熱性化学品 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 気体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3 危険 H301: 飲み込むと有毒 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経口投与試験のLD50値104, 214 mg/kg(SIDS(2002))(NITE初期リスク評価書No.126(2008))から区分3とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分3 危険 H331: 吸入すると有毒 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P311: 医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラット用いた吸入ばく露試験(ガス)のLC50値781ppm(EHC166(1995))から区分3とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外 - - - - GHSの定義によるガスである。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類対象外 - - - - GHSの定義によるガスである。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ヒトでの報告で皮膚への刺激性が多数みられている(ACGIH(7th, 2001), ATSDR(1992), SIDS(2002))ことから、区分2とした。なお、被験物を液体としてウサギ背部に投与した試験で、ごく軽度な紅斑が24時間後に認められたが(1/6匹)、48時間後には消失している(農薬登録申請資料(1979))。また、ラットの背中への暴露試験では、皮膚細胞の障害、更には壊死がみられているとの報告(HSDB(2002))もある。EU分類ではXi;R38である。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
ウサギによる試験(ガス暴露試験)において、虹彩及び角膜へ陽性反応がみられたが、5日以内で消失した(NITE初期リスク評価書No.126(2008), SIDS(2002))ことから、区分2Bとした。なお、EU分類でXi;R36/37/38に該当する。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
マウスおよびラットを用いた2週間吸入ばく露による小核試験(SIDS(2002))、およびマウス小核試験で陽性(ACGIH(2001))の結果に基づき区分2とした。なお、in vivo DNA損傷試験で陽性の結果(SIDS(2002))、in vitroの復帰突然変異試験、染色体異常試験等で陽性の結果(NITE初期リスク評価書No.126(2008))が多く認められている。
6 発がん性 区分外 - - - - ACGIH(2001)でA4、IARC(1999)でグループ3、EPA(1990)でDに分類されていることから、区分外とした。動物実験では「2年間にわたる臭化メチルの吸入投与(全身ばく露)によるがん原性試験の結果、ラットでは雌雄ともに腫瘍の発生増加は認められず、臭化メチルのF344/DuCrj(Fischer)ラットの雌雄に対するがん原性は示されなかった。マウスでは雌雄ともに腫瘍の発生増加は認められず、臭化メチルのCrj: BDF1マウスの雌雄に対するがん原性は示されなかった。」(厚生労働省がん原性試験(1989))。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギの催奇形性試験で母動物に一般毒性を示す用量で児動物に奇形(胸骨の癒着、胆のう、肺の一部の欠損)がみられている(SIDS(2002)、IRIS(2002)、NITE初期リスク評価書No.126(2008))ことから、区分2とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(神経系、呼吸器、肝臓、腎臓、消化器系) 危険 H370: 臓器の障害(神経系、呼吸器、肝臓、腎臓、消化器系) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトにおいて、意識錯乱、けいれん、昏睡、視力、吐き気、嘔吐、腎不全、胃腸障害、肝毒性がみられたとの報告(NITE初期リスク評価書No.126(2008))に基づき区分1(神経系、腎臓、消化器系、肝臓)とした。動物においてはラットおよびマウスの経口投与において呼吸困難、運動失調、胃の異常(膨張、紅潮、他の臓器との癒着、潰瘍等)、肝臓の壊死の報告(SIDS (access on 6. 2009))があり、さらにラットおよびマウスの吸入ばく露において、区分1のガイダンス値(2500ppmV/4時間以下)に該当する用量で自発運動の低下、呼吸数の減少、肺炎様変化が見られたとの報告(農薬登録申請資料(1980))があることから区分1(呼吸器)とした。なお、腎臓と副腎うっ血が見られたとの報告がある(農薬登録申請資料(1980))が詳細は不明である。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(神経系、心臓、血液) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(神経系、心臓、血液) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトにおいて脳神経への影響が報告され(NITE初期リスク評価書No.126(2008))ていることから区分1(神経系)とした。動物においては、ラットを用いた13週間の吸入試験(NITE初期リスク評価書No.126(2008)、NTP TR385(1992))の区分2のガイダンス値(50〜250ppmV)に該当する87ppmの用量でヘマトクリット値、ヘモグロビン量及び赤血球数の減少が見られ、ラットを用いた13週間の経口投与試験(IRIS(2002))では、区分1のガイダンス値(50 mg/kg/day以下)に該当する36 mg/kg/dayの用量で貧血がみられことから区分1(血液)とした。また、ラットを用いた3週間の吸入試験(NITE初期リスク評価書No.126(2008))における区分1のガイダンス値(50ppm以下)に該当する26.7ppm以上の用量で心筋の変性、精巣の変性及び壊死、嗜眠、振戦、四肢の麻痺が見られ、さらに別のラットを用いた3週間の吸入試験(NITE初期リスク評価書No.126(2008))で33.3ppm以上で心筋の壊死及び線維化が見られている事から区分1(心臓)とした。なお13〜25週間の経口投与試験(NITE初期リスク評価書No.126(2008))において区分1のガイダンス値(50ppm以下)に該当する36〜50 mg/kg/dayの用量で胃の慢性炎症及び線維化、50 mg/kg/dayの用量で腺胃のリンパ球浸潤、食道の慢性炎症がみられているが被験物質の刺激性によるものとして分類に採用しなかった。また、ラットを用いた3週間の吸入試験における精巣の変性及び壊死については生殖毒性が区分2であることから、ここでは分類に採用しなかった。
10 吸引性呼吸器有害性 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(ヒメダカ)での96時間LC50 = 0.7 mg/L(CERI・NITE有害性評価書, 2008)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性区分1、急速分解性がない(BODによる分解度:15, 17%(既存点検, 1991))ことから、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 区分1 警告 H420: オゾン層を破壊し、健康及び環境に有害 P502: 回収/リサイクルに関する情報について製造業者/供給者に問い合わせること。 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されているため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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