GHS分類結果(過年度実施分類結果の再分類)

名称:1, 2-ジクロロエタン
CAS番号:107-06-2

結果:
物質ID: 21B3134
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ICSC(1995)による引火点は13℃(密閉式)、かつ沸点は83.5℃であり、「区分2」に該当する。なお、国連危険物輸送勧告ではクラス3、PGII(国連番号1184)。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性、あるいは自己反応性に関する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が413℃(ICSC(1995))であり、70℃を超えている。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 塩素を含む有機化合物であるが、この塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。なお、「高温で水との接触がある場合には、鉄および他の金属を腐食する」(HSDB(2005))との記述がある。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値680 mg/kg(EHC62(1987))、850 mg/kg(EHC62(1987))、967 mg/kg(SIDS(2002))、794 mg/kg(NITE初期リスク評価書No.3(2005))に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギのLD50値4890 mg/kg(SIDS(2002))、2800 mg/kg(JECFA(1970))に基づき、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分5)とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分3 危険 H331: 吸入すると有毒 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P311: 医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLC50値4 mg/L(4時間換算値:1235ppm)(EHC62(1987))、6.6 mg/L(4時間換算値:2199ppm)(EHC62(1987))、3.29 mg/L(4時間換算値:1285ppm)(SIDS(2002))、6.77 mg/L(4時間換算値:2048ppm)(SIDS(2002))、12000ppm(4時間換算値:4368ppm)(NITE初期リスク評価書No.3(2005))、3000ppm(4時間換算値:2487ppm)(NITE初期リスク評価書No.3(2005))、1000ppm(4時間換算値:1342ppm)(NITE初期リスク評価書No.3(2005))に基づき、7データ中6データが該当する区分3とした。なお、飽和蒸気圧濃度(103816ppmV)の90%値よりも低く、気体と判断し、ppm単位の基準値で分類した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、4時間適用では「刺激性なし〜軽度の刺激性」との記載があり(CERI・NITE有害性評価書No.3(2004))、SIDS(2002)において本物質は「皮膚に対して刺激性無しまたは軽度の刺激性のみ(Noor only slight irritation)」と結論づけているため、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分3)とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
ヒトでは「本物質が眼に接触した場合、痛み、刺激、流涙などの症状がみられるが、重篤な障害が現れるのは洗眼によって直ちに本物質を除去しなかった場合のみ。」(CERI・NITE有害性評価書No.3(2004))との記述があり、ウサギを用いた2つの眼刺激性試験では「軽度の刺激性」、「刺激性無し」(いずれもCERI・NITE有害性評価書No.3(2004))との記載がある。以上より、区分2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
in vivoにおいて、マウススポット試験(EHC176(1995))で弱陽性、マウス骨髄を用いた姉妹染色分体交換試験(CERI・NITE有害性評価書No.3(2004))で陽性、その他コメット試験、DNA損傷試験、DNA結合試験(CERI・NITE有害性評価書No.3(2004)、JECFA(1993))でも陽性結果があることから、区分2とした。なお、優性致死試験(SIDS(2002)、IARC71(1999))、マウス末梢血を用いた小核試験(CERI・NITE有害性評価書No.3(2004)、JECFA(1993)、NTP DB(access on Jul. 2009))で陰性である。in vitroでは、細菌を用いた復帰突然変異試験(CERI・NITE有害性評価書No.3(2004)、NTP DB(access on Jul. 2009))、遺伝子突然変異試験(CERI・NITE有害性評価書No.3(2004))、染色体異常試験(NTP DB(access on Jul. 2009))、ヒトリンパ球小核試験(CERI・NITE有害性評価書No.3(2004))において陽性結果がある。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
IARC(1999)で2B、EPA(IRIS(2008))でB2、NTP(2005)でRに分類されていることから区分2とした。104週間吸入試験では、ラットでは雄に乳腺の線維腺腫、皮下組織の線維腫、腹膜の中皮腫、雌に乳腺の腺癌、腺腫および線維腺腫、皮下組織の線維腫の発生増加がみられ、1, 2-ジクロロエタンのF344/DuCrj(Fischer)ラットの雌雄に対するがん原性が示された。マウスでは雄に肝臓の血管肉腫、雌に乳腺の腺癌、肺の細気管支-肺胞上皮癌と腺腫、肝細胞腺腫、子宮の内膜間質性ポリープの発生増加がみられ、1, 2-ジクロロエタンのCrj: BDF1マウスの雌雄に対するがん原性が示された(厚労省がん原性試験(1991))。この結果に基づき厚生労働省では健康障害を防止するための指針を出している(厚生労働省指針(1993))。
7 生殖毒性 区分外 - - - - マウスを用いた飲水による二世代試験で、生殖能、仔の生存、体重増加、奇形発生に影響がみられなかった(IARC71(1999))ことから区分外とした。より広範に生殖毒性を評価した二世代試験を分類根拠に採用した。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系、血液、肝臓、腎臓、呼吸器、心血管系)、区分3(麻酔作用) 危険
警告
H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用)
H370: 臓器の障害(中枢神経系、血液、肝臓、腎臓、呼吸器、心血管系)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、「うずくまり、混迷、ふらつき、多動、振戦、傾眠傾向、意識混濁、腎臓障害、肝硬変」(CERI・NITE有害性評価書No.3(2004))、「心血管系の疾患、血液への影響、気道の炎症および刺激性」(EHC176(1995))等複数例の記載があり、中枢神経系、血液、肝臓、腎臓、呼吸器、心血管系が標的臓器と考えられる。また、ラットを用いた経口投与試験で「自発運動低下、歩行失調」、ラットを用いた吸入暴露試験(用量不明)で、麻酔作用もみられている(いずれもNITE初期リスク評価書No.3(2005))。 以上より、分類は区分1(中枢神経系、血液、肝臓、腎臓、呼吸器、心血管系)、区分3(麻酔作用)とした。死亡例の所見で、二次的影響と考えられるものについては評価の対象としなかった。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(神経系、肝臓、甲状腺、腎臓、血液) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(神経系、肝臓、甲状腺、腎臓、血液) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、「神経症、脊髄神経根炎、肝・胆管疾患、自律神経失調症、甲状腺腫或いは甲状腺機能亢進症、無力症」(CERI・NITE有害性評価書No.3(2004))、「神経症、肝及び腎の機能障害」(NITE初期リスク評価書No.3(2005))、「白血球減少症、単球増加症」(NITE初期リスク評価書No.3(2005))等の記載があり、実験動物については、ラットを用いた13週間経口投与試験(用量:雄86 mg/kg、雌102 mg/kg)において「腎臓尿細管上皮の可逆性変化」CERI・NITE有害性評価書No.3(2004))、ラットを用いた30日間吸入暴露試験(90日補正用量:0.65 mg/L)において「肝臓の小葉中層壊死および細胞質腫脹、中等度の胆管増殖」との記載があることから、神経系、肝臓、甲状腺、腎臓、血液が標的臓器と考えられた。 以上より、分類は区分1(神経系、肝臓、甲状腺、腎臓、血液)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 区分1 危険 H304: 飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそれ P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P331: 無理に吐かせないこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
環境省リスク評価書第2巻(2003)に「吸入すると肺水腫を起こす場合もある。飲み込むと化学性肺炎を起こす。」との記載、ATSDR(2001)に「急性的に経口摂取し死亡した例で、肺のうっ血、水腫、呼吸困難、気管支炎がみられている。肺の水腫は誤嚥に起因した化学性肺炎であろう。」との記載があるため、区分1とした。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(アルテミア属)での72時間LC50 = 6900μg/L(環境省リスク評価第2巻, 2003)であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分2 - H411: 長期継続的影響によって水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性区分2であり、急速分解性がない(難分解性、BODによる分解度:0%(既存点検, 1978))ことから、区分2とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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