GHS分類結果 (過年度実施分類結果の再分類)

名称:クロロメタン(別名塩化メチル)
CAS番号:74-87-3

結果:
物質ID: 21B3120
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 区分1 危険 H220: 極めて可燃性又は引火性の高いガス P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P377: 漏洩ガス火災の場合:漏洩が安全に停止されない限り消火しないこと。
P381: 安全に対処できるならば着火源を除去すること。
P403: 換気の良い場所で保管すること。
ICSC(1999)による爆発限界下限値は8.1vol%であり、「区分1」に該当する。国連危険物輸送勧告では区分2.1(国連番号1063)。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 区分外 - - - - 国連危険物輸送勧告は区分2.1(国連番号1063)。可燃性ガスである。
5 高圧ガス 低圧液化ガス 警告 H280: 高圧ガス:熱すると爆発のおそれ P410+P403: 日光から遮断し、換気の良い場所で保管すること。 ICSC(1999)による沸点は-24.2℃、かつHSDB(2009)による臨界温度は143.10℃であり、低圧液化ガスに該当する。国連危険物輸送勧告では区分2.1(国連番号1063)。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
11 自己発熱性化学品 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 気体状の物質に適した試験方法が確立していない。なお、「アルミニウム、亜鉛、マグネシウムおよびそれらの合金を腐食する。」(ホンメル(1996))との記述がある。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値1800 mg/kg(SIDS(2003))、環境省リスク評価第3巻(2004))に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分4 警告 H332: 吸入すると有害 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
ラットのLC50値2566ppm、2700ppm(いずれもSIDS(2003))に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外 - - - - GHSの定義によるガスである。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類対象外 - - - - GHSの定義によるガスである。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - データなし。なお、液化ガス暴露により、接触部位で凍傷が起こることがある(HSDB(2009))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - 本物質をガスとして用い、ウサギの眼に90秒間暴露した試験では、軽度の結膜充血がみられた(SIDS(2003))が、標準的な刺激性試験のデータは無いため分類できないとした。なお、液化ガス暴露により、接触部位で凍傷が起こることがある(HSDB(2009))。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - In vivo試験の結果がなく分類できない。なお、優性致死試験(IRIS Toxicological Review(2001);CICAD28(2000);IARC71(1999))の陽性結果については炎症作用によるものであることをList1の評価書でも述べており、分類には採用しなかった。in vitroでは全ての試験(ヒトリンパ球を用いた遺伝子突然変異試験および姉妹染色分体交換試験、シリアンハムスター胎児細胞(アデノウイルスSA7感染)を用いた形質転換試験(CERI・NITE有害性評価書(2006);NITE初期リスク評価書No.40(2005))、細菌を用いた前進突然変異試験および復帰突然変異試験(CERI・NITE有害性評価書(2006);NITE初期リスク評価書No.40(2005);NTP DB(access on June. 2009);CICAD28(2000))で陽性である。
6 発がん性 区分外 - - - - IARC(1999)でGroup 3、ACGIH(2001)でA4、EPA(2008)でDに分類されていることから、区分外とした。なお、2年間吸入ばく露による試験がラットおよびマウスともそれぞれ2度実施され、ラットでは一つの試験で雄のみ甲状腺の濾胞状腺腫と濾胞状腺癌を合計した発生の増加、マウスの場合は、一つの試験で雄のみ高用量群で腎臓腫瘍の有意な増加ともう一つの試験で雌のみ細気管支-肺胞上皮腺腫の発生増加が認められたと報告されている。(NITE初期リスク評価書No.40、厚生労働省がん原性試験(1997))
7 生殖毒性 区分1B 危険 H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた二世代生殖毒性試験では、親動物に一般毒性(体重増加抑制)がみられる用量で仔が得られず、親動物には精巣の精細管萎縮、精巣上体の肉芽腫がみられている(CERI・NITE有害性評価書(2006))。また、マウスを用いた2つの発生毒性試験では、親動物に影響のみられない用量で仔に心奇形(房室弁、三尖弁と二尖弁下の乳頭筋と腱索の欠損または減少、小右心室、球状心、左心室壁の白班)がみられている(CERI・NITE有害性評価書(2006))。以上の結果より、区分1Bとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(神経系、心血管系、肝臓、腎臓)、区分3(麻酔作用) 危険
警告
H370: 臓器の障害(神経系、心血管系、肝臓、腎臓)
H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについて、「吸入暴露による眩暈、虚弱、かすみ目、運動失調、嗜眠、不眠、錯乱、感覚異常、神経症及びうつ病様」、「経口摂取による、吐き気及び重度の頭痛、酩酊、錯乱、傾眠、運動失調、言語障害」、および「心電図の異常、頻拍及び心拍数の増加、血圧低下、心臓血管系疾患による死亡の相対リスク増加」の記述(CERI・NITE有害性評価書(2006))に基づき、区分1(神経系、心血管系)とした。また、実験動物を用いた6時間吸入ばく露試験の所見として、マウスでは1000ppm(4時間換算値:1225ppm)で「血尿、近位尿細管の変性と壊死、肝臓の壊死」(ACGIH(2001))、2200ppm(4時間換算値:2690ppm)以上で「肝臓及び腎臓毒性」(CICAD28(2000))、ラットでは3500ppm(4時間換算値:4287ppm)以上で同様の症状が記載され(ACGIH(2001))、マウスにおける用量がガイダンス値区分1相当することから、区分1(肝臓、腎臓)とした。また、ばく露後の症状として嗜眠、傾眠など(CERI・NITE有害性評価書(2006))の記載により、区分3(麻酔作用)とした。以上より、分類は区分1(神経系、心血管系、肝臓、腎臓)、区分3(麻酔作用)となる。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(肝臓、腎臓、中枢神経系) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(肝臓、腎臓、中枢神経系) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについて、「肝臓、腎臓への影響として、黄疸、無尿、タンパク尿」(CERI・NITE有害性評価書(2006))、「肝硬変、腎障害、神経系機能不全」(IARC vol.71(1999))、「遠近調節が困難、複視など中枢神経系への影響」(ACGIH(2001))、「めまい、発話障害、震え、運動失調、精神錯乱、睡眠障害、視覚障害」(BUA No.114(1993))等の記述、他、肝臓、腎臓への影響を示した複数の症例報告(ACGIH(2001))があり、区分1(肝臓、腎臓、中枢神経系)とした。なお、マウスの吸入ばく露(6時間/日)試験でも90日間ばく露により750ppm以上で肝細胞の空胞化(CERI・NITE有害性評価書(2006))、2週間ばく露により1500ppm(90日換算値:233ppm)で小脳の変性(CERI・NITE有害性評価書(2006))、2年間ばく露により50ppmで神経線維の軸索膨化と変性(SIDS(2003))が報告されている。
10 吸引性呼吸器有害性 分類対象外 - - - - GHSの定義によるガスである。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外 - - - - 魚類(トウゴロウイワシ科)での96時間LC50 = 270000μg/L(環境省リスク評価第3巻, 2004, 他)、甲殻類(オオミジンコ)での48時間LC50 = 200 mg/L(NITE初期リスク評価書, 2005, 他)であることから、区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急性毒性区分外であり、難水溶性ではない(水溶解度=5320 mg/L(PHYSPROP Database、2009))ことから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

職場のあんぜんサイトへ

厚生労働省モデルSDS

職場のあんぜんサイトへ


GHS関連情報トップページに戻る